たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「ハレルヤオーバードライブ!」4巻感想殴り書き〜自分の好きを諦めるな!〜

 
ハレルヤオーバードライブ!」の4巻が出ました。
でかい音を打ち鳴らす、あの女の子が大好きだから!「ハレルヤオーバードライブ」
「ハレルヤオーバードライブ」のツンデレベーシスト、たんぽぽさんが可愛すぎて大変だ。
恋をしろ、オーバードライブのスイッチを入れろ!「ハレルヤオーバードライブ!」は全力疾走中!
「けいおん!」の次は「重音!?」 ヘヴィメタルで『ハレルヤオーバードライブ!』(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース
 
音楽をテーマにした、青春疾走劇です。
主人公の少年小雨は女の子に惚れて、相手に思いを伝えたいというパワーだけで音楽をはじめる本当にバカな、まっすぐすぎるくらいバカなやつです。
しかし好きになった相手は小柄なのにツーバスがんがん鳴らすウルテクドラマー。先輩たちのはメタルミュージシャンとして強烈なパワーの持ち主で全然追いつかない。
さあどうする? 諦める?
諦めないんだなー。食いついて、引き離され、もう一度食いついて、引き離されの繰り返し。
必死に走って走って走って。
でも彼はまっすぐすぎるから、入るんだよ。
オーバードライブのスイッチが。
 
このメタルジュブナイルの傑作の4巻目は、巨大な転機になっています。
むしろ1〜3巻はキャラが揃うまでの前哨戦といっていいでしょう。十二分に面白いしニヤニヤできますが、4巻のパワー見たら圧倒されてしまって。
というのも、4巻は小雨達が好きな相手ハルさんに観てもらうために組んだ別バンドが初めてライブをやる巻なんです。これだけでも大きな転機ですよね。
なのに、それに加えて小雨のトラウマ、ハルの悲しみが強烈に詰まっている。ここを乗り越えられるかどうかで物語そのものが大きく変わる分水嶺なのです。
ちょっと今回は自分語りもいれながら、殴りがいていきます。
昨日も殴り書きだっただろうって?
うん。そうなんだよ。
殴り書きしたくなるほど衝動に駆られるんだからしょうがないじゃん。
 

                                                                                                                                          • -

 
ハレルヤオーバードライブ!」は決してゆるい作品ではないです。
確かにラブコメ的要素もあるし、ギャグもありますが、音楽の基礎練習がいかに大切か、しっかりした練習をしないといかに演奏できないかを叩きつけてきます。このへん、楽器経験ある人だったら「あー」と、わかるわかるというニュアンスでもあり、きついなあーというニュアンスでもある声を漏らすかもしれません。
それでも動く。彼らは続ける。
なんで?
楽しいからなんだよ。
好きだからなんだよ。
これはもう絶対忘れてはいけない。
 

                                                                                                                                          • -

 
4巻で小雨達のバンドが演奏時に直面する問題は、とても大きくて厳しいものです。
まっすぐバカな小雨だけど、パワーだけでうまくいくわけじゃないんだ。

ライブバンドには2種類あって…
勢いに乗ってると凄いけど、ダメだとハシにも棒にもひっかからないタイプと、
やれば全戦全勝っていうタイプだ。
俺達は前者!
ハル姉達は後者だ!!

小雨の喧嘩相手であり、同じバンドのドラマー冬夜のセリフです。
冬夜もかなりの実力の持ち主ですが、小雨が本当にへたっぴでどうしようもないけれども魂の底から奮い立たせるものを持っているのを認めざるを得なくなります。
だけどそれは自分の力で操作しきれていない。「ひょっとしたらすごい」は「いつもすごい」じゃない。
まさにオーバードライブ。
そのオーバードライブのスイッチを自分たちで入れられるのは、ハル達「メタルりかちゃん」。
入れられないのが、小雨。入ったらそれはもうすごいんだけどね。
 
ライブで彼はオーバードライブする気満々でした。
しかし、とある出来事でそれが入らなくなります。
誰が悪いんじゃない。自分の問題だ。
 

                                                                                                                                          • -

 
自分の問題だ、とはいえやっぱりね。
動揺させるだけの出来事が起きるんですよ。これ読むと分かりますが、メンタルが音にそのまま出るというのがほんとストレートに描かれています。
 
自分は「必死に努力する人間を笑う人」とか「好きなモノを踏みにじる人」がすごく苦手です。
苦手……いや、怖い。
それは空回りかもしれない。あるいは勘違いかもしれない。
それでも本当に必死になっている人を指さして笑うのが許せないし、好きなモノをけなすのを聞けない。
小雨にとって、最初のそれは「恐怖」でした。
一生懸命やったつもりのものをむげにされる恐怖。
怖いよ。
恐ろしいよ。
悔しいよ。
 
後半、さらに巨大な恐怖が襲ってきます。
それは小雨にとっても強くて揺るがなかったはずのハルに対してです。
まさに「好きなモノを踏みにじった」人間の登場です。
彼女は今音楽が好きでやっています。
けれども音楽で傷ついたトラウマは、音楽をやるたびに襲ってきます。
好きでやって、そして傷つく。音楽なんてやらなくたって生きていけるじゃないか。
私は。
信じずに諦めてしまったほうが楽になるんじゃないのか?
 

                                                                                                                                          • -

 
弱者と強者の差は、あります。残念だけれども。
でもね。
弱き者が立ち上がるストーリーは最高に好きだ。
特に、弱い者たちが、大好きなものを守るために歯を食いしばって立ち上がるのが大好きだ。
なぜなら、「必死に努力する人間を笑う人」とか「好きなモノを踏みにじる人」をあざ笑うことが嫌だからです。
抗いたいんだよ。「大好きなんだ」の気持ちを信じたいんだよ。
ハレルヤオーバードライブ!」は、ちゃんとそこに向かって動き始めました。
 
自分もバンド関連ではちょいとしたトラウマがあって「もう楽器には触らない」って思っていた時期がありました。
やらないほうがいいなって。ドラムに触れるだけで嫌な思い出が湧き上がって悲しい気分にしかならないからもうやめちゃおうって。
でも、今あらためて楽器ができるのは友達がいたから。
そして、なんつーか・・・やっぱり好きだから。
プロになるわけでもなし。遊び。なーんの役にも立たないよ音楽。
でも好きなんだよなー。
その「好き」を捨てきれない。
 
大人から見ると「ハレルヤ」の子たちの理論は幼いです。
だけど、「本当は自分たちだってそうやって感動したり好きだったりしたものがあるんじゃないか?」と問いかけてきます。
音楽じゃなくてもいい。絵とか、文とか、スポーツとか、もっといえば趣味全般なんでも。
心が傷ついてやめた経験ある人も多いと思います。
でも「好きだったんだろ?」「感動したんだろ?」と背中叩くんです。
 
「ハレルヤ」は「これからバンドやりたい」と思っている人には、割と酷なこともべちっと叩きつけてもきます。続けられるの?結構大変だよ?って。
リアルな苦しみを描いた作品でもあるんだけど、同時にまさに叱咤激励する作品だなーと思います。
自分の「好き」を諦めるな。
人に笑われたって構わない。
必死な子ども?
必死で何が悪い。
 

                                                                                                                                          • -

 
小雨は「子どもなんだからしょうがない」と言います。
これダブルミーニングになってるのがまたいいんだ。
「子どもだから幼いことしか考えられない」
「無力だからこそ必死にあがきたい」
ハレルヤオーバードライブ」は、楽器をやり続けていたときに忘れていた、初心者ならではのパワーを思い出させてくれます。
なぜ小雨が、下手くそなのにみんなの心を震わせるのか。
彼に特殊能力があるわけじゃないんだと思います。
彼の真剣が伝わるからなんだと。
 

                                                                                                                                          • -

 
ふと「ハレルヤ」を読んでいると、自分もやっぱり子どものままなんだなあーと感じます。
ばっかだなーとか、幼いなーとか。笑われるかもなあとか。
趣味に関して言えば、失敗とかもするし、時には本当にどうもならなくて恥ずかしいこともあるし、パンクしちゃって迷惑もかける。そう言うのも含めてまだまだだなあと。もっとがんばらないとなあと。
でもさ。「好き」ってもっと次元が別なんだよね。人にしろ、モノにしろ、趣味にしろ。
 
ハレルヤオーバードライブ!」は、「子ども」の持っている「無限の可能性」を秘めた気持ちに戻って「やっぱり俺は○○が好きなんだ!」って叫べる。これってすごいことじゃない?
小雨の歌が音楽の魔法なら、ハレルヤオーバードライブ!」はマンガの魔法だよ。
 

                                                                                                                                          • -

 
ハルと小雨達は、これからその「好き」を噛み締めるため、取り戻すために立ち上がり、強大な壁にタチムカウことになります。
無謀にも思えるかもしれないことです。努力でどうなる、というのもわからないものです。
でも小雨は、子どもだから、バカだから、立ち向かおうとします。
いや、飛び越えようとします。
いいじゃないか。
愚者よ。
おろかだからこそ、君はどこにだっていけるさ。
音楽はバトルの道具じゃない。愛して大切にしていくもの。
だから、小雨達にはぜひとも、音楽を武器にするんじゃなくて、音楽で自分たちの本当に好きなモノを大音量で「好きだ!」と叫んでもらいたい。そして鼻で笑う奴を軽く飛び越えて行ってもらいたいのです。
もちろん、信じてるよ。
小雨だけじゃない、冬夜も麗も、ハルさん達も、みんな音楽が大好きでやってるんだもの。一生懸命な愚者だもの。
「過去」はどこまでも追ってくる。決して傷は消えない。
それすら全部ひっくるめて信じられる力がこのマンガにはある。
みんな傷を負って「好きなもの」を守ってきたんだ、どこまでもその「好き」を貫いていけ!
 

ちょうど今月のゲッサンで続きが読めるんですが・・・これがもうニヤニヤでしてねえニヤニヤ。
そっちも、うまくいくといいねー。
 
とりあえず「ハレルヤオーバードライブ!」は「読みながら聞きたい曲」を準備しておくことをオススメします。
4巻はこれをおすすめ。

the pillowsの「その未来は今」。
ハレルヤのタイトルはほぼ全て実在の曲なので検索して聞いてみてください。
一巻あたりはひねっているのもあり。「音楽の魔法を信じるかい?」はラヴィン・スプーンフルの「魔法を信じるかい?」、「溺れる小雨は藁をも掴む」は髭の「溺れる猿が藁をも掴む」、「この愛はまだ始まってもいない」は真心ブラザーズ「この愛は始まってもいない」、4巻の「hammer fall!」はまんまバンド名hammerfall(ヘヴィメタルバンド)かな? 色々探してみると楽しいです。