たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

こんなギャルたちの世界に入りたい、入れない!「オトメの帝国」

ちょっと前の作品になるんですが、友人に教えてもらって買ったらものすっごいツボだったのでご紹介。
というか岸虎次郎先生が一番ぴったりはまる場所にたどり着いた!という感じですよもう!
とりあえず試し読みできるので、気になる方はこちらをどうぞ。
試し読み | s-manga.net オトメの帝国 1巻
 

●下品とときめきのタイトロープ●

かの有名な「マリア様がみてる」は、女の子同士の不思議なつながりを夢を見るかのように描きました。恋愛とも友情とも微妙に違うんですよね。きらら系4コマの女の子オンパレード物も割とこの系列でしょう。
大島永遠先生の「女子高生」はそれのカウンターのように、女子高生のリアルを描くことに全力を費やし、臭いとかしてきそうなお下劣ギャグで突き抜けました。開き直った下品は非常に心地良いです。
で、岸虎次郎先生はすっごいうまい具合にその中間をぶちぬきました。
描かれているのは、お嬢様ではなくてギャルです。これはもう岸虎次郎先生がずーっと追求しているテーマです。「ギャルのかわいさ」。
で、軸になっているのは女子高生ならではの無防備感です。
女子高だからいいよねー、といってスカートめくってパタパタあおぐとか、そういうの。
 
女子高「あるある」なんだと思いますが、同時にちょっと違和感も感じるかもしれません。
というのも、限りなく男性が思い描いた「こうだったらいいな」の極限に近づけられているからです。
実際にこういうことがあるのかどうかは、ぼくが女子高生だった経験あるわけじゃないのでわかりません。
ただ、女子高生にやってもらいたいことが、もうまんま載ってるんですよ。
ふざけておっぱい揉みあったりするの、超見たいじゃないですか!
それだよそれ!
 
例えば、こんなシーン。

元気ないたずらっ子の美好が、クールな友人綾乃を理科室の机に押し倒す場面。
といっても、マジではないです、ふざけて。
理科室の黒い机って、ここで押し倒されたりしたらなんかエロいよねー、って会話から、いたずらで美好が押し倒しちゃうわけですよ。
美好はもうノリノリで「興奮した?」とか聞いてくるわけですが、冷静に「しない、重たいわ」と切り返す綾乃。
この「えっちごっこ」ってだけで見ていてこっちとしては「キャー!」ですよ!
まーやってることは下品な女子高生ネタなんですが、不思議なことにこれが下品に見えないんです。
というのも、このあと二人トイレに行くんですが、その時の会話がもうね。
「ねー綾乃ー、濡れてたぁー?」
「濡れてません。変なこと聞かないで!」
ところが綾乃は……!
わー! わー! そう落とすのか!
そうなんすよ、やってることは下ネタだったり下品ネタだったりエロばっかりなんです。
ですが、ギャルな女の子同士の距離感が本当に微妙に計算されておりまして、見事なまでに下品とときめきの間の隙間を縫うような作品に仕上がっています。
下品っちゃ下品ですし、ギャルっ子達みんな性には興味津々なんですが、妙なところでシャイでプラトニックなんですよ。
これはもう、男の夢の塊ですね。絶対入れない世界を覗き見るような興奮で溢れかえります。
 
また、美好と綾乃の二人のこんなシーンも。

保健室で寝ていた綾乃のおっぱいを触って見ちゃう美好!
女の子同士だけど、妙な背徳感で心臓がバクバク言っちゃうようなね。
別に性的興味でどうこうじゃなくて、ちょっとしたいたずらなんですよ。
いたずらしていたら、おかしなくらいに興奮してしまってどうしようっていうね!
いやあ、夢のような光景だね!
 

●彼女たちの日々を覗き見る●

この二人だけでなく、何組かの女の子達が入れ替わり立ち代わり出てくる群像劇オムニバスなんですが、まさに「見てみたい」シチュエーションがっちり詰まりまくっていますし、今後どんどん増え続けるでしょう。もう職人技の域です。
読者は彼女たちにシンクロしつつ、それを第三者視点でも見ることができる、という非常にテクニカルな作りになっています。それができるのはキャラが多いせいなんですが、ちょっと例をあげて説明してみます。

ぼくの好きなカップル?の一つなんですが、ヤンキーっぽい怖い見た目の貧乳少女亜衣と巨乳関西弁ギャルっ子ちえの二人。
最初のうちはそんな仲よくないんですが、「おっぱいの触りっこ」というおふざけを重ねているうちに、気づいたら惹かれあっているというね。
見てくださいよこの「あなたは特別」感! この表情!
いいね!
ラブまでいかないないけど、おふざけの延長よりちょっと上。微妙な距離のとり方が見事です。
この二人の一連のエピソードは、子供同士っぽいイタズラなのにすっげーときめきまくりますので必見。
 
また、くっきりとしたサディスティックとマゾヒスティックの関係を描いたこの関係も素敵。

茉莉と優は、一見ただの仲良しさんなんですが、お互いのもとめる「命令」の受け答えが成立しているんですよ。
優のドSっぷりがそりゃーもー華麗なまでに完成されているんですが、茉莉はそれに反抗したりいやがったりしつつも従っちゃうんですよ。
というのも、優は茉莉が求めているものを理解した上で言葉を発しているから。なので本当にアウトなことはしません。
いやあ、SMは加虐と被虐じゃなくて、信頼関係の確認作業だよなあ。
 
こんな女子高生いるんかい!と突っ込みたくなるところですが、そこは突っ込んでもOKでしょう。だってそう描いてますし。
突っ込みつつ、「でもいいよね!」というのが最高の楽しみ方です。
これが先ほど述べた第三者視点なんですが、その視点の代理として描かれているのが真面目な学級委員の小野田さん。

キャッキャウフフと下品な会話や行動を繰り返す少女たちを見て、すごく苛立つんですよ。
「このギャル!」っていいですよね。私はその枠じゃないですから!と。
これは美好と綾乃がお互い盗撮ごっこをやっているのを端から見ていて苛立っているシーンなんですが、彼女、家に帰ると。

自分も試し撮りするんだなこれが。
 
「このギャル!」というのは小野田さんという外部視点でありつつ、読者側の視点にもなります。
基本的には読んでいると、ふざけあいながらちょっとドキドキしている女の子にシンクロさせられるようにうまく描かれているんですが、随所に小野田さんの視点が挟まれることで一旦第三者視点に引き戻す。これがうまい。
女の子達の輪に入るのを拒絶しつつも、実は入りたい、性にも興味津々という彼女。かわいい女の子を見るのが趣味というオッサンぷりも発揮します。
小野田さん。お前はオレか。
 
いやあ…実にいい妄想具現化作品でございます。
友人曰く「いきなりエロマンガを読むよりも、先に『オトメの帝国』を読むとテンションが高ぶる」とのこと。あー、わかるわー。
百合好きじゃなくても、女の子のおっぱい描写と唇描写が非常にフェティッシュなので、興奮しまくれます。
男性はもちろん、かわいい女の子好きな女性にも文句なしにおすすめ。
あーもう、女の子って、いいなあ。
 

MAKA-MAKA (Vol.1)
MAKA-MAKA (Vol.1)
posted with amazlet at 11.06.09
岸 虎次郎
ジャイブ
orizarot(岸虎次郎公式ブログ)
今までも「女の子同士」のセクシャルを描いた作品が多かったのですが、今回は一切男出てきませんので気楽に読めます。
ガチなガールズラブを読みたい場合は「マルスのキス」の方がいいと思いますが、寝る前に読んで心地良く安心するなら「オトメの帝国」の方がおすすめ。
ギャルの帝国じゃないのよね、やっぱり「オトメ」なのですよー。みんな何かと雑なんだけど、ピュアなのがねー。