たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ふたごの違いとかわいらしさ、読めば伝わるよ。「ふたごもんじゃ」

 
大好きな矢直ちなみ先生の新刊は、ふたごマンガでした。2回の読み切り集中連載と本連載をまとめたものです。
内容はいたってシンプル。
双子姉妹の日常を描いた物語です。特に事件などはないです。
 
髪の毛をしばっているほうが、奈乃子。通称奈乃。元気で考えるより先に行動するタイプです。
キャラ紹介によると「元気っ子」となっています。
髪の毛をしばっていないほうが、香乃子。通称香乃。行動する前に考え込んでしまってストップしてしまうタイプです。
キャラ紹介によると「気にしい子」となっています。
 
こう書くと、どっちがどっちかすごいわかりやすそうに見えます。
ところが、最初の方読んでいて分からなくなってすっごい困惑するんですよ。
というのも、こういうコマがあるせい。

さあどっち?
髪型で見分けると奈乃ですよね。しかしこれ「気にしい子」じゃないの?って混乱させられるんです。
序盤は特に奈乃が双子であることを気にしているシーンがカラーでも描かれているため、「あれ?気にしい子じゃないの?」とミスリード誘われます。繰り返し出てくるのでおそらくわざとだと思います。
実際、髪型以外で見分けるのは序盤本当に難しいんです。
 
ところが読み進めていくと一気に「あ、こっちが奈乃でこっちが香乃だ!」とすぐ見分けられるようになります。髪型抜きで。
この緩急が見事。
ようするに「本人達にしたら違いは重要」なのですぐわかって当然、それに読者が誘導されるわけです。
しかし「外部から見たらどっちがどっちかわからない」ので、合間合間にわざとどっちかわからないシーンが挟まれるんです。
この目線の切り替えが頻繁に行われることで、ふたごだけど個人、個人だけどふたご、というテーマを強く押し出すことに成功しているユニークな作品になっています。
 
いかにも「ふたご」なネタも結構多く入っています。
たとえば仕草がシンクロしたり、好みがかぶったりなどなど。
けれどそれが「ふたごだからねー」とほほえむ視線だけじゃなく、「同じ環境で育てば似てくるのは当然」という冷静な意見もきちんと盛りこまれているのがまた面白い。
ふたご神秘論だけじゃないんですよ。あくまでもベースに「ふたご」ではなく「それぞれ個人」という考え方が一貫しています。
みんなふたごを見分けられないんだけど、先生が唯一見分けることができる、というのもいいんだなー。
他の人の「ふたご」に向ける奇異の視線から彼女たちを守り、励ます先生、非常に素敵なんです。実はそれも理由があって……これは読んでのお楽しみ。
 
まあとはいえ、「ふたごとはいえどもそれぞれ個性が!」を強調するだけではありません。
やっぱりふたごはふたごなんですよ。

なんだかんだでお互いが好きで好きでしょうがないんだなー。
ついついつられて一緒に寝ちゃったり、リアクションが一緒だったりというのを見ていると微笑ましいのも事実。
この「個性」と「ふたごらしさ」のギャップがなんともキュートなんです。
 
奈乃は基本何も考えず行動します。とにかくのんき。
それに対して気苦労耐えないのが香乃。髪の毛しばってないほう。
例えば、このふたご、クラスおんなじなんです。普通それは分かりづらい、クラスの子の好奇の目を引いてしまうなどの配慮でクラスを分けるのが通例(現実でもそうです)なのですが、なぜかこの二人は一緒のクラスです。
理由は、香乃が「別のクラスはいやだ」と駄々をこねて泣いて熱を出してしまったからと、先生が双子を見分けられるという理由で引き受けてくれたから。特例ですね。
香乃はこの出来事に対して、答えます。

香乃……お前ってやつは……ほんとかわいいな!
 
考えていることや好みは、やっぱり育った環境が同じなので似ているんです。
けれど「好きー!」って言えちゃうのが奈乃。
一歩ひいて言えなくなっちゃうのが香乃。
一巻読み終わった頃には、この二人が「やっぱりふたご」でありつつ「全然別人」なことが楽しくなってしまうはずです。
うん、この視線なんだろう?と思って読んでいたのですが、ふたごを見守る親の目線なんだな。
元気なほうがいいとか、しっかりしているほうがいいじゃなく。ふたりともすくすくと育ってくれればそれでいい、っていう。
なんとも読後感が心地良い作品です。
二人がショートカットなのもポイント高い! ロングじゃなくてショートのほうが彼女たちの性格「らしい」んです。
ぶっちゃけロリコン目線で自分読むのかなーと思っていましたが、読み終わった後は先生か親の気持ちでした。
二人がすくすく育つ様子をずーっと見ていたくなる、そんな作品です。で、完結した「一緒にかえろう」の二巻はいつ出るんですか。いつ出るというのですか。
(4コマにありがちな不安を抱えつつ)。