たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

そしてアネキから少年は発っていく。「鬼灯さん家のアネキ」3巻

エロ姉貴にいじられまくられたい人手を挙げて。
はい!
そんな人のためのバイブル的作品がこの「鬼灯さん家のアネキ」シリーズです。

たまらんよなー!
鬼灯さん家のアネキ (1) (角川コミックス・エース・エクストラ 22-1) 鬼灯さん家のアネキ (2) (角川コミックス・エース・エクストラ 22-2) 鬼灯さん家のアネキ (3) (角川コミックス・エース・エクストラ 22-3)
 
少し前にヤングエースにて完結しました。いいラストでした。
まあそれはさておき4巻発売時に話すとして、少し前に出た3巻の話をしたいと思います。
義理の姉弟の二人。
1巻が二人のいちゃつきと微妙な距離感を描き、2巻ではなぜ二人が義理の姉弟でこんないたずらをしているか描いていました。
そして3巻では、アネキが姉として、彼をきちんと見守り始めます。
いたずらはするんだけどね。
この作品は主に、「吾朗視点」「アネキ視点」「水野さん視点」で進行していますが、その引水ともなった水野さんと吾朗のディスコミュニケーションの話です。
 
エロラブコメと見せかけて何気にシリアスラブな「鬼灯さん家のアネキ」が熱い。
アネキがかわいいのは、色々な人間関係があるからさ「鬼灯さん家のアネキ」2巻
 

●精神的な一本のライン●

精神的な距離があって……一本のラインがある。
越えてはいけない線……。
その線より先に……1歩踏み込んだら軽蔑する。2歩踏み込んだらもう口をききたくない。3歩踏み込んだら……。
死んで欲しいって願う。
他の人でも家族でも同じ。嫌いだから距離を取ってるわけじゃないの。
ちょうどいい距離があるのよ。うまくやれる距離が。

水野さんは、語ります。
 
ちょっと水野さんというキャラについて見直してみます。
髪の毛が黒くて長くてふわふわでわかめみたいなキャラ。前髪はぱっつん。
席は吾朗の後ろ。
最初はクラスで吾朗のことをどちらかというと嫌っていた、汚いものを見るような目で見ていたんですが、吾朗がアネキとやたら仲がいいので、ふと自分が家庭でモヤモヤを抱えていることを愚痴ります。体が弱いから、家族がすごい優しいんだけれども、それが重荷だと。
水野さんも吾朗もクラスであまり友人のいるタイプでも社交的なタイプでもない。

水野さんは誰にも言えなかった反抗期の悩みを打ち明ける相手ができた。別にすきじゃないけど気楽だし、という感じです。
で、上のコマですよ。
かわいいでしょう。
そう、かわいいのですよ。ちなみにこれは「アネキ視点」です。
アネキから見ても、水野さんはかわいいし、吾朗と仲良くしているように見えるんです。
上記の通り、実際には「仲がいい」わけではない。愚痴り相手です。
アネキも一巻では二人をみて、こんな行動にでました。

踏みとどまったのがすごいですね。
いわば軽い嫉妬。
「義理の姉ならキスしちゃえよ!」とか思うのですが、うんうん、こういうのは違うよね。
まあ、その話はあとで。
 
クラスメイトですら、水野さんと吾朗が特別に仲が良いように見えている様子。
水野さんが他のクラスメイトに一切心を開かない(というか虚弱体質なので開く余裕がない)から。
ましてこんなにかわいい水野さんです、自分にだけちょっと心を開いてくれた、となったら、そりゃもう男の子ならこうなりますよ。

なるよね。
この時点では、これが吾朗の一方的な勘違いなのか、水野さんも多少は好意を持ってくれているのかはわかりませんでした。
少なくとも、普通の人の考える「好意」は持っていません。
なので、こうなります。

アイタタ。
あるある。男の子だもん。
まあこれは「迷惑」ではありますが、じゃあ、水野さんにとって吾朗ってなんなのか、ですよ。
特に好いていないとはいえ、嫌っているともちと違う。
ちょっといい雰囲気になったりもするし。吾朗視点だと。じゃなんなんだ?
 

●それでも私に近づきたいの?●

要するに水野さん、「他の人よりは距離が近い」のが吾朗。
だからといって「自分の圏内に入ってこないでほしい」のが本音。
ただしそれは吾朗に関わらず、どの人間に対しても同じというのが興味深いところです。
 
吾朗は、勘違いしていた最中、自分には心をひらいてくれていると思い込んで踏み込んでしまい、水野さんに殴られます。
流血するほどに。
水野さんの言う「越えてはいけない線」を踏み越えたからです。
なるほど、水野さんの言うとおり、あまりにも余計に踏み込んできたりしたら、拒絶する思いは人間誰しもが持つ物。勘違いして踏み込み過ぎた吾朗が良くない。
 
しかし吾朗にも納得が出来ないことがあったのです。
自分が水野さんを好きとか、水野さんが自分を好きとか、そういうのと別次元の部分です。

好かれていると勘違いしていたのは、悪かったと謝りつつ、彼の中に眠っていた思いはこれです。

お前もちょっとおかしいんじゃねえか!?
お前さ、他の皆に対してもそんなんでいいの!?
なんかおかしくないか!?

この順序いいですよね。
まずは自分と相手との距離を考えよう。
 
どうなりたいの?
友達になりたい。
 
自分の悪いところは?
つい水野さんにとって自分が特別だと思い込んでいて、踏み込み過ぎた。
 
相手の悪いところは?
水野さんはATフィールドを張りすぎていて、自分から距離をとり過ぎている。
あと、それを口で言わない。
 
ここまできたら、あとは行動と言葉で解決。
二人はこのあと、とある行動に出ます。なかなか珍しいシーンなので是非読んでみてください。
それを経て、やっと二人は始めてきちんとお互いの距離を、関係を得ることが出来るようになります。
これは、吾朗にとっても、水野さんにとっても、「自分」を探す本当に大きな経験になったはず。
 

●姉として。●

以上が「吾朗視点」ですが、じゃあアネキはどうだったのか?
実はこの考えの流れを教えてくれたのは、すべてアネキでした。

水野さんになぐられた日、苛立ちと混乱で吾朗はアネキを押し倒してしまいます。
1コマ目だけみたらなかなかドキドキなシチュエーションですが、二コマ目以降見て分かるように、彼は姉を直視できず目を逸らしてしまいます。
アネキも、彼のこの今までになかった暴走に対して、抵抗をしません。
顔も笑わず、怒らず、ただ弟を見つめています。

……簡単に優しくしてくれるところに逃げちゃ駄目だよ。
ねぇ吾朗ちゃん。
お姉ちゃんのこと好き? あの子のことは好き?
あの子が好きなのとお姉ちゃんが好きなのは同じ気持ち?
よく分からないでしょ?
吾朗ちゃんはねきっと……ただ好き好き言ってるだけなんだよ。
よく考えてみたこともないでしょ?

エロトラップをしかけていた姉のセリフとは思えないですね。
でも1巻から順に読んでいけば、彼女がなぜ彼にこういうセリフを言うか、よくわかるはずです。
 
アネキは、吾朗の苦悩の日々を知っています。
アネキもまた、吾朗が成長することで上に挙げたような嫉妬のような寂しさのような感覚に襲われ、戦っていました。
そして、アネキは決めていたのです、いたずらするのはスキンシップだけれども、吾朗は成長して旅立たなければいけない。
自分に依存していちゃいけない。
自分もまた、弟離れしなければいけない。

アネキが、明るく走ってクラスメイトのところに行く吾朗を見守るシーン。
なんてことのないシーンなのですが、2巻の吾朗の過去を知っていると非常にクるもののあるカットです。
そう、これでいい。
これでいいんだ。
 
水野さんと吾朗は距離を保つ方法を自力で見つけられました。
あとは、吾朗とアネキが姉弟の距離をどう保つか。
それは4巻で語られることでしょう。
 

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にしても、今回も美咲は酷かったですね。
逆レイプしかけていたところを姉に殴られて止められるのですが、「(壊れたドアの弁償を)するから抱かせてよ!」という開き直りっぷりに彼女の酷さを感じました。大好き美咲。
一巻に一美咲あるのは、なんか和みます。
ただ彼女に関しては「酷い」意外の形容詞がないです。褒め言葉なの。
 

大好きな作品だったので終わったのはさみしいですが、きちんとアネキと弟が関係を切り開いて育んだのを描いたのは素晴らしかったです。
エロコメかと思いきや、家族愛を考えるしっかりした物語に。
でもやっぱり言っちゃおう、アネキかわいい!