たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

真面目な私ですが、これだけはゆずれないものなの「マシカク・ロック」

表紙買いでしたよー。
そりゃ買うよー。
 

地味眼鏡少女がリッケンバッカー持ってるんだぜ!
そりゃ買いますよ。
 
見ての通りの音楽物語なんですが、非常にこれ面白いです。
そもそも「マシカク」ってなに?ってとこからですよね。
 

●清く正しく美しく●

ヒロインの少女都は、お父さんに言われて「正しくまじめに生きる」ことを決意した真面目少女です。
まあ、言ってることは普通ですよね。
ただ、この言葉すごい重いんですよ。お父さんミュージシャンを夢見ていたんですが、それが叶わなかった。だから真面目に生きなさいと娘に言って、亡くなりました。
重いね。
都は公務員を目指して校則を完璧に守って生きてきました。

最初がこんな感じなので、流れとしては重いんですが笑ってしまいます。
それはあれだ、なんだ。
勘違い的なものだ!
でもねえ、学生時代なんてそんな勘違いの繰り返しですよね。そうですよ。
勘違いして痛い思いをすることで本当に自分が好きなものは見つかるものです。
 

●私の本当に好きなこと●

「マシカク・ロック」の「マシカク」は、型にはまった四角四面という意味のマシカク。
そんなマシカクな彼女にはひとつ秘密があるわけです。

ギターが趣味という秘密。
なんでそれが秘密?ってなるかもしれませんが、実はこのマンガの学校では昔生徒が問題を起こしてバンド活動が禁止されているから。
つまり「ギターが趣味=校則違反」!
……その考え方もなんというかちょっと偏ってる感じはします。そう偏ってます。
(おまけ・最近はバンド活動禁止という学校はそんなにないですが、やはり生徒が問題を起こすと(上級生下級生間でのお金の問題とか)禁止されることもまれにあるのです。清く正しくバンドやろうね!)
 
面白いのは、彼女の偏りすぎた思考は別に足かせではない、ということです。
本人、苦じゃないんですよ。お父さんの事大好きですし、決まり守るのいやじゃないんです。辛くもなんとも無いんです。
ただ、その一点だけ、ギターが好きで仕方ないという気持ちだけが決まりと噛み合わなかった、というだけ。それ以外は品行方正です。
 
本当に好きなものって、決まりごととかではなかなか縛り付けられません。
まして、新しい楽しさを知ってしまったら。

バンドで初めて音を合わせた瞬間の気持ちよさは、ひとつの通過儀礼ですね。
興奮なんてもんじゃない。衝撃。
「すごーい!」ではなくて「なんだこれ!」って表現のほうが的核だと思います。
自分がそうでした。驚いたね全くもう。
そして、どんどん彼女は確信していきます。
私は、ギターが好きだ。
 

●正しくない事が不幸とは限らない●

まあ、隠し通せるわけもなく、あっさりバレます。
先生に怒られます。
頭の柔らかい子なら「怒られちゃったー」ですむかもしれませんが、都は品行方正の塊みたいな子です、それは大事件でした。
ここでやり過ごすこともできたでしょう。嘘をつくこともできたでしょう。
でも彼女は言うのです。
「……私はギターが好きです。東くん達とバンドをして、もっと好きになりました。それが悪い事だとは、どうしても……思えなかったです……私はバンドもギターもやめたくありません……」
 
もちろんバンドやギターは、大きい視点で見ると悪いことでもなんでもありません。
「校則を守るかどうか」という一点においてのみ、それは引っかかっていたわけです。
彼女はマシカクな子だからこそ、それを曖昧にせずまっすぐに言いました。
ごまかすこともできたでしょう。でもごまかさないことこそが、彼女が次のステップに進む大きな石段なんです。
 
マシカクなままだと「自分で選択する力」が身につかない。
彼女の、人生で始めての選択でした。
私はこうしたい。
わたしはこれをやりたい。

父さんはたくさん苦労したと言っていたけど
でも決して
不幸ではなかったでしょ? 父さん

好きなものを、大好きだ、と心から声にする人間の姿が、大好きです。
 

彼女のマシカクは最後まで別に直るわけじゃないですし、治す必要もありません。
ただ、彼女は「選択するように」なりました。
恋愛要素も入りつつ、徹底してこの「好きなものを好きだと選択する」ことを描いたこの作品。短いながらも少女の熱い気持ちがパンパンに詰まっていて、読み応えあります。
三人のキャラが非常に立っているので、出来ればもっと続いて欲しい作品ではありますが、まあスパッと終わったほうが彼女たちらしいかもしれません。結論は出せていますしね。
 
真面目で道を外れるのが苦手な子の、「不良」ではない、「大好き!」を見つける姿。
学生はもちろん、大人目線でも是非読んでみて欲しいのです。
途中、お母さんが出てくるシーンがあるんですが、これがもう最高によくてですね。シンクロ出来ますよ。

短編「となりのハナコさん」がこれまたすごいんだ。
これで初単行本とは……今後楽しみな作家さんです。