たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「ゆるゆり」みたいに、もっとアニメは気楽に楽しんでみよっかなと。

キャラ☆メル Febri」はほんと面白いアニメ雑誌ですわあ。
そもそもゆるゆり」について新房昭之監督が語るってどういう企画だよ!
最初ものすごい勢いでツッコミをいれたくなったのですが、うん、買ってみてみたらこれめっちゃ面白い。
この雑誌自体、アニメ評論じゃないんですよね。基本紹介なんだけど、切り口がものすごく面白い。
というのも「この作品はよいものだ」というのをベースにした上で、何をどう楽しむかを徹底して掘り下げている。視聴者目線からもそうだし、作り手視点もかなり意識して作られているため、とにかく読んでいて「またアニメが見たくなる」という本当にいい雑誌です。大好きだなー。
 
で、テーマは「ゆるゆり」。
ぼくも「ゆるゆり」は大好きで、どのくらい好きかというと雑誌は「百合姉妹」から全号(「百合姫S」含む)買っているので、雑誌では欠かさず読んでいつつ単行本も全巻買っている程度に好きです。
が!
ぼくの「ゆるゆり」好きは、「けいおん!」や「まどか☆マギカ」や「輪るピングドラム」や「電脳コイル」への「好き」となーんか違うんですよ。
僕だけかもしれないですが、読んでいて・見ていてほとんど考えない。考察とかしない。
でもないと寂しい、キャラは大好き、という感じ。「けいおん!」なんかだと一挙一動まで人間関係描写に意味があるので見逃せないんですが(ってぼくは思ってます)、「ゆるゆり」はそこまでは考えてないです。
本当は考えて作られているのかもだけど、あんまり真剣に考えると「あかりに対してのみんなの行動はいじめなんじゃないだろうか?」という疑問も首をもたげてきてしまいます。でもそうじゃないんよなあ、仲良しだよなあ、となんかストンと腑に落ちるんですよ。変な作品です「ゆるゆり」。
 
その解答を、今回気付かされました。
そのために新房昭之監督が「ゆるゆり」特集に必要だったんでしょう。これは製作者側では言えない意見。

新房:BGVみたいに、ただキャラクターがその空間にいるだけで楽しくなってくる。自分が『ひだまり』で目指していたものは、そういう空気感で。
 
まどか☆マギカ』のようにストーリーに集中させる作品のほうがテレビ作品としては特殊だと思いますよ。本来のテレビ作品は、テレビの前にごろんと横になりながらリラックスした姿勢で楽しむものが主流ですから。最近は、ゆるいドラムのほうが好みです。テレビを見ている最中に電話がかかってきても大丈夫……くらいのほうが(笑)

ああー、そうか。
これだ。
 
シリアスで重たい作品は、再生するときに「覚悟」がいります。そして次週までもうハラハラして見ないと落ち着かない。それが面白い。
しかし全部が全部それでは疲れてしまう。仕事から帰ってきてテレビつけて、まーどうでもいい感じの、でも丁寧に作られたもの、見たいんですよ。
それが「ゆるゆり」だったり「ひだまりスケッチ」だったりするんだ、と思うとすごく納得できます。だから、考察とかは今は僕はしなくていい。
もちろんそこからさらに考察したり、二次創作的に深いキャラの心理を考えていく余地も残されている(埋め尽くされていないけどほのめかされている)。
ゆるゆり」は思った以上に話題になってびっくりしていたのは事実なんですが、そう考えていくと今の需要に見事にマッチした気がします。
 

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加えてなんですが。
「百合作品」ってどうしても保守的な部分があったり、ナイーブで触れづらいところがあって話題にしづらいんですが、二次創作的な面ではもうかなりオタク層では一般化しています。
ただし「女の子のキャッキャウフフが見たい」という層と「少女同士の関係性をじっくり見たい」という層と「言葉では表現出来ない女の子の切ない世界を見たい」という層と「女の子同士のエロエロが見たい」という層と……言ってしまえばもう「百合」って言葉自体が多様化してきていて、定義できない状態だと思うんですよ。
ある人は友人レベルでも「百合」って言うし、ある人は「恋愛じゃないのは百合ではない」と言う。どっちも正しい。
漠然とした女の子同士の関係の描写の面白さを「百合」って言葉が便利だからストンとはまった感じがあります。まさにここ数年の出来事です。
一概には言えないんですよね。
で、作品が百合的な空気をもっている、ではなくて、「百合」を最初から意識して描かれる作品が、「百合姉妹」「百合姫」で確立していき、今はどんどん広まっているんですが、問題点としてとにかくハードルが高い。
BLは割と長い時代を経て、間口が広くなって受け皿そのものが大きくなってきている(でもまだ厳しい)気がしますが、百合はまだそこに至っていないし、同じ道をたどって広まって欲しいか?と問われるとどう答えればいいかわからないです。
個人的にはもっと色々な百合作品見たいんですけどね。でも「百合です!」ってかしこまらなくてもいい気がしたりもします。「けいおん!」「ひだまりスケッチ」は百合ですか?って聞かれるのと同じ事で。あのくらいの入り口だとハードルが低くてイメージを共有しやすい。ラブかどうかは別として。
ヒロさんと沙英さんはラブに見えちゃうのはぼくの色メガネです。
どこまで色眼鏡をかけるか、外すか、そこを託されるくらいがらくちん。
深く読み下げたい人は自力で、傑作と言われている百合作品の数々を読んでいくわけですから、そうじゃない層に受けないといけない。男女問わず。
 
で、「ゆるゆり」って見事にそこにはまったんですよね。
似た様な作品だと同じく百合姫の「ストロベリーシェイク」。
 
最初見た時、タイトルがずるいなーと思ったんですよ。
ゆるゆり」って、「これ百合だから! じゃあの」ってかんじじゃないですか。
それってようするに、最初にレッテル貼ってしまって、相手をリラックスさせちゃうんですよね。うまいなあ。これタイトルが「ゆるゆり」じゃなかったらヒットの仕方変わっていたんじゃないかとすら思います。
で、百合ですか?って聞かれたら、表面的には女の子イチャイチャなので百合っぽいけど、基本ネタなんですよね。というかネタに落とし込んでる。

鼻血は特に大事よね。彼女の存在があるからゆるゆりは成り立っている気がします。
「ゆるゆり」から見る、形式としての百合世界。 - たまごまごごはん
 
で。
「あれ、思ったほど百合じゃないね、っていうか\アッカリーン!/」
という視聴者層を取り込んだのはうまい。まあ、マンガもたいがい酷いことしてますが。いやちがう、何もしていないのか。
これがめっさ気持ちいいんですよね。要するに「ひだまりスケッチ」などの作品に求めている、BGV的感覚。そこは見事に計算されていると思います。だからかしこまらないでも気楽に見られる。
ところが、ここがキモだと思うんですが本質的な部分でガールズラブの軸はしっかりおさえられてるんですよねこの作品。
百合かと思ってみてみたら案外百合じゃなかった、けど更に良く読んでみると細かい部分に少女同士の心理がえがかれているじゃないか、っていう仕組み。
なもり先生、相当巧みですこのへん。
 
ゆるゆり」って作品自体は、BGVとしてみていいと思います。
だけど百合好きな人が四ツに組んでがっちり見たときに、浮かび上がるキャラ像・人間関係があるのが本当に面白い。
この両側面があるからこんなにも魅力的になったんだろうなあ、としみじみ感じます。
百合姫からの初アニメがこれってのは、ある意味大正解だったんでしょうね。(正確には最初は「百合姫S」)
個人的には百合がもっと浸透して、乙ひより先生の作品なんかがアニメ化したらいいなーと妄想はしますが、それはまだまだあとかなーと思ったりもします。
むしろ一般作品の中の天然もののGLを発見した時の喜びの方が今は大きいかも。
 
最後に、新房監督のゆるゆりコメント。

観る人に緊張感を強いない、ゆったりした空気感がいい

簡単なコメントではあるけど、ものを作っている外部の人が言うと重みがあります。
空気系、なんて言葉も一時期ありましたが、むしろその空気をちゃんとエンタテイメントとして創り上げて提供する、受け取るという関係が今あるのなら、大事にしていって欲しいなあ。
 

まあ、何も考えずに楽しむのが一番だとは思いますが!
この部分を丁寧に切り取っている「キャラ☆メルFebri」は面白い雑誌だなあとつくづく感じます。こういうの頑張って欲しいです。
あと「ゆるゆり」はOPとEDのパワーでかいですよね。後ハイテンションなBGM。
なんか見ている側の感覚を吹っ切ってくれました。「なるほどこういうノリでいいのかー」って。

で、ベタですが京子が大好きです。
意外にスペック高いところとか。人間関係の軸でもあり、百合ビジョンも豊富。おいしいキャラですな!