たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

千早が歩いてきた道、私達が歩いてきた道「アイドルマスター」20話 その1

アイマス20話見たよー。
いやーよかったですね。

雪歩のTシャツな!
I LOVE BRAZIL。
穴掘り過ぎて貫通したか……。
 
そんなわけで、今まで積もり積もった千早の確執が爆発した回でした。
まさに、重ねて、重ねて、重ね続けた千早の物語。原作ゲームをやっているファンでも「どこまでやるのだろう?」と思っていたエピソードでした。
今回の物語の感想を書く前に、まず今まで千早がどう描かれてきたのかをちょっとまとめてみます。
それぞれ全てが一つの糸になって束ねられているのはグッと来ます。
確かにそこまで真剣に見なくても楽しめるギャグ回(あずさ回など)も多い作品ですが、まずはちょっと千早の描写をなぞってみます。
本編の感想はその2から。
 
 
 
 

●アイドルになる、って目覚める前まで●

アニメ版「アイドルマスター」一話の、一瞬にこめられた千早の心理描写がすごい - たまごまごごはん
 
一話はかなり露骨に千早のキャラが出ていた回でした。
まあこの時は全員が協調性がない頃。バラッバラもいいところでした。
なんだろ、ちょっと前なのにすごい大昔のことみたい。今は多分A〜Bランク程度の人気があると思うんですが、このころFランクレベルですもんね。美希とかずっと寝てたもんなー。
千早は真面目です。真面目ですが、アイドルという目標に対して積極的ではありませんでした。

「はい、私には歌しか有りませんから。だから、遊んでいる暇はありません。あの・・・すみません、もういいですか?集中したいので・・・」

歌を歌うということで自分を縛る子、それが千早でした。
束縛されているのとは違うと思うんですよ。自らを縛っていた。
「好き」って言っちゃいけない。私は歌わないといけない。ただそれだけしかない。
 
二話では、「笑えない少女」として千早がカメラマンに指摘をされます。

P「笑えない、ってどういうことだ?」
千早「カメラマンに、笑顔が不自然だと言われました」

この時点では、事情をしらないと「コミュニケーションが苦手な少女」のように描かれています。かなり意図的に。
結局「笑わない」という手段で撮影をします。なんてことはない、冷静に考えたらそれで十分問題はありませんわな。
ただ「笑顔」は彼女にとって大きなポイントになりますのでこの回のシーンは重要。
 
三話は雪歩が吹っ切って前に進む回ですが、千早が雪歩たちを見ている表情は一人だけ複雑です。

アイドル、芸能人というものに対しての微妙な不信感。
2話の「NoMake!」でも言っていますが、「芸能界って無礼な人が多い面倒なところ」という不信感がまだ拭いきれていません。
まだ、余裕がありません、いっぱいいっぱいです。
 
四話ではそれが爆発。生放送の「ゲロゲロキッチン」の収録中にぶち切れしてしまいます。

転んだ春香をネタにするカエルに対して一言。
「あの、何が面白いんですか?」
一瞬で凍りつくステージ。春香のポジティブなフォローによって番組はセーフ。
彼女のいらだちは、無駄にハイテンションなバラエティ番組の現場や、下品なカメラアングル、歌が歌えないことに対して向けられていました。
「これが歌の仕事につながるとは、私には思えなくて」
Pに対して彼女はこぼします。収録の合間も、時間を惜しむように歌の練習をしています。
カツカツだったんです。なにもかも、歌以外には「それどころじゃない」と。
Pがここで「千早は本当に歌が好きなんだな」「俺も千早に歌の仕事が来るように努力しないとな」ということで、千早の芸能界への不信を少し崩し始めます。
そして、春香への信頼が大きく進むのはこの回からでもあります。第一話から春香は積極的に千早に声をかけ続けていますが、ここで大きく花開いた感じです。
「取ったゲロー!」と叫んだのも彼女が「自分を変えた」大きな一歩。
しかしこれが生放送だったのがアダとなり、スキャンダルにまさかの拍車が……。まあおいておきます。
 

●がんばろう、と踏み出して●

そして11話。
「アイドルマスター」11話の、春香と千早の思いやりの繊細な距離 - たまごまごごはん

まずこのカットで、弟の物語が出ることが確定しました。
今まで誰にも言っていなかった、弟の話。家族の話。
写真がある状態で、千早が春香を家にあげた、という事自体が彼女の大きな成長です。
この回は本当に会話が繊細でした。

春香が、人に対してはれものに触れるようにしゃべるわけではない子であることを明確にした回です。
聞くことは聞く。いやなら聞かない。
千早が比較的考えすぎて行き詰まるのに対し、春香は前に前に進むタイプの子です。
考えてないわけじゃない。考えた上で「でも、やろう」と前に進む。

千早は春香のそんな眩しいところに大きく惹かれます。
春香もまた、頑張っている千早が好きなんです。これは忘れちゃいけない。
 
実際、12話で美希がいなくなり、千早は立ち上がります。

「美希には美希の事情があるのかも。私達にできることは、ライブに向けて集中することじゃないかしら」

「私は、今出来る事をやるべきだと思う。美希の事情が分からない以上、私達がそのことで動かないほうがいいんじゃないかしら。私は、美希が帰ってくるまでに出来るだけライブの準備を進めておきたいわ」

「謝って欲しくない。それよりも、今は遅れを取り戻したいの。プロとしてライブを成功させたい!」
上の2つは美希は聞いていませんが、3つ目は美希は聞いてます。
軸が全くブレなくなりました。
ひとつ。今目の前にある仕事を全力でやろう。
ひとつ。仲間を信じよう。
 
13話、ライブで穴を埋めるために全力を尽くした美希に、千早は話しかけます。

「すごかったわ美希、今度は私の番ね」
千早の言葉は、すべて本音。美希を心から信じたからこその言葉です。
美希に対してのこの姿勢が、この後美希が千早を見る姿勢に関わってきます。詳しくは「NoMake!」20話分で。
 
14話では、みんながひとつ壁を超えたことで千早にも笑顔と希望が宿ります。

こうしたい、頑張りたい。
今までだったら絶対やらなかっただろう衣装も着ます。
挑戦しがいがあるものに積極的に挑もうとします。
 
同時に、弟のことを思い出しもします。
これは千早ファンから届いた手紙。姉弟で応援してくれています。
素直に喜べない複雑な心理。いや、でも今はすすめる。前にすすめる。
 
千早と春香の関係はさらに強いものになっていきます。
15話では看板番組として「生っすか!?」で765プロが出演。
「アイドルマスター」15話、「楽しい」を見つける千早、もう一歩前進! - たまごまごごはん

千早は春香、美希と並んで司会進行を務めることになります。
これは多分Pの案でしょう。そもそも千早自体はそんなに話すのがうまいわけじゃないですし、その点天才的な美希にはおとりますが、きっちりまとめることに関しては長けていますし、なにより彼女のためになる。
その結果が、これです。

笑えなかった少女は、今、笑顔になった。
 

●避けられないもの●

15話で決意がかたまり前向きになった彼女ですが、16話以降、避けて通れないものに直面することになります。
 
16話冒頭の、彼女のフラッシュバックのシーン。
そう、弟は事故で死んだのだ。
父と母は、喧嘩して別れたのだ。
今私はニコニコしながらやれるようになったけど、この事実が消えたわけじゃない。消せるわけじゃない。
ここからは仕事を頑張りながらもグイグイ弟と両親の記憶に責めさいなまれることになります。
 
17話、唐突に彼女の携帯電話に電話がかかってきます。

千早の不穏な空気から、何かが起きていることは春香も察知します。
春香は本当にアンテナの高い子。ここは真が愚痴ってるシーンですが、すぐに千早の異変に気づくんです。
 
電話は18話でもかかってきます。

これも春香と一緒にいる時。
いらだち。
嫌悪。
拒絶。
みんなと歌を歌い、前向きになってきた彼女の心に歯止めがかかりはじめます。
 
そこにきて19話。

ゴシップ記者がたまたま撮影した墓参りと母親との口論シーン。
これが961プロの目にとまり、ゴシップとして報道され、彼女の心はボッキリと折られるのです。
 
他の子もかなり丁寧には描かれていますが、千早はほんとうに丁寧に重ねられている子です。
ここまであげてきた全ての出来事がつながって、20話になっています。一つもかかせません。
最初は「私は歌手になるんだ」という自縄自縛で動けない、周りを見ようとできない子でした。
でも春香とプロデューサーと、そしてみんなによってほどかれ、前に動こうとできるようになりました。
ただし、一番自分が抱えている心の重みを無視した状態では本当の意味では笑えない。
961プロの陰謀はもちろん問題のあることですが、それがあってもなくても、彼女は家族の問題を、自分の視野を切り開く痛みの瞬間に、絶対立ち会わないといけなかった。
それがたまたま今来た、ということだと思います。
 
で、ここから20話の感想に続けますが、もう一点だけ。

「プロデューサー回」とでもいえる6話。直接的に千早の成長とは関係ないですが、プロデューサーは春香から勇気と甘いものを受け取りました。
これがまさか、20話で春香自身にとっての大きな励ましになるなんて!
 
続きます。
歩こう果てない道、歌おう空をこえて「アイドルマスター」20話 その2