たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ネタを積み重ねていくのか、大木から削り出していくのか?「ミルキィホームズ」の作り方

「たまごまごのココがアニメを楽しむツボ!」第5回『探偵オペラミルキィホームズ 第二幕』
 
ほびーちゃんねるにて、「ミルキィホームズ」二幕の記事書かせていただきました。
相変わらずひどい(褒め言葉)ですよね。
一期でもかなりひどかったんですが、拍車をかけて二幕では悪化しているというのがすごいです。
最初なんてトイズ忘れて、学校にも行かず、畑で野菜作って暮らしているっていうマイナスからのスタートですもんね。探偵ですらねえよ!
 
ほんっと申し訳ない話しですが、一期の最初は全然興味なくて。萌えアニメはじまったーくらいでしたよ。
でもやられたのは4話でしたね。「バリツの秘密」
そもそも会話成立してないんですよこの回。

「その呪文みたいのを聞いておじいちゃんに教えてもらった格闘術を思い出しました! その名もー、バリツ!
呪文から格闘術につながる意味がわかりませんがミルキィホームズだから仕方ありません。
 
バリツというのは御存知の通り、「シャーロック・ホームズ」が習得していた日本式格闘術。モリーアティをこの格闘術で投げ飛ばし滝に落とした、というのは有名な話。
実際そのバリツとは何なのかは諸説あり、今も研究されていますが、柔術ではないかというのが一般説。
で、ここはどうでもいいです。
 
このバリツが出てくる強引な流れ、そこから滝に落ちるまでのムチャぶり、落下してから生還するCMパロディ、しかも本家シャーロック・ホームズで滝から生還しているネタにかけている内容、というのがすごすぎてもう大笑い。
アニメ見て「腹筋崩壊」とは文字で打ちますが、この瞬間から「ミルホ」は本気で笑って何度も見なおしたアニメになりました。

そこから最後の「縛られた縄は食ったよ」はズルすぎですよね。なぜ縄が美味かったのかの理由すらない。セリフのトーンは例のアレ。ルルルールルールールー。
ジブリネタ「バルス」のみならず、カリオストロの城やらナウシカやらの連携パロディ、その合間に無駄な(褒め言葉)ギャグ。上のコマは「私の両手に手を乗せて」と言ったら二人が頭に手を乗せて「冗談はやめて」と言う、ほんとどうでもいいネタ。テンポよく挟まれるので笑えて仕方ない。
 
作りがとにかくうまいんですよ。
パロディは言わば客をジェットコースターに「乗せる」作業なんです。
全く知らないネタばっかりだと面白いかわからないからそもそも乗らないじゃないですか。でもパロディがあるとか、可愛い女の子がいるとかってわかってると、とりあえず乗り物に乗りやすいんですよ。
そこからはもうこちらが操作できないジェットコースター。パロディの連続と、カットごとに画面隅々まで配置されたギャグの数々。一回見ただけでは把握しきれないくらい笑いが詰め込まれていて、30分あっという間です。
息も絶え絶えにゴールについてから元ネタ探し。
 
探偵オペラ ミルキィホームズ -ネタ解説/感想-
 
こちらの感想とネタ解説がすごいです。
アニメ・マンガネタは分かりやすいの多いですが、推理小説ネタは結構調べないと難しいのも多いんですよね。タイトルとか。
それすらも探したくなる作りは、「絶望先生」のようなノリに近いです。
絶望先生」がネタ重視だとしたら、「ミルキィホームズ」はテンポ重視でしょうか。
 
二期で好きなのは、3話。

島で囚人になってナマコを拾い続けるってどういうアニメなんでしょうねこれ。
モブは今までかろうじて人間だったのに、この回は人間ですらありません。
あと出てくるナマコの数が多すぎる。いやあひどい回(褒め言葉)でした。

鼻フックされるヒロインとかね。
「美少女度」に関しては、こだわっていないというか極端に道を外れています。
だけど、かわいいのがこの作品のすごいところなんですよねえ。
 
先ほどのほびーちゃんねる記事でのインタビューで、ちょっと興味深い話が出ていました。

中村P:シナリオ段階で仕込むところについては、基本「盛れるだけ盛って、引いていく」作業をじっくりやっているので、計算のつもりです。

ミルホってスタッフの暴走と制作クオリティが奇跡的に噛み合った作品だ、と思ってたんですが違うんですね。
 
アニメやマンガを作る時、小説もかな、ネタをプラスして積み重ねてふくらませるという「ねんど手法」と、巨大なテーマの固まりから削り出していくという「彫像手法」があると思うんですが、ミルホは削り出していく彫像型だったようです。
なるほど、盛れるだけ盛って引いていく、ってことは限界いっぱいまでネタになるわけだ、表面張力ギリギリで保たれてるくらいですよ。
そしてもうひとつ。

中村P:絵柄は特にあまりないです。キャラクターアニメなので自由にやってくださいと。そのかわりキャラの発言と露出度については結構厳しくやってます。

メガミマガジンとか見てると「シャロブヒィ!」「アルセーヌ様ー!」ってくらいエロかわいいんですが、確かにアニメ本編では脱げば脱ぐほどエロくないですよね、ミルキィホームズ。お風呂に入っていてもエロくない。ぱんつも見えない。
発言についてはもうちょっと聞いてみたかった気もしますが、「なんでもあり」ではあるけど「なにやってもいい」ではないんですね。
 
このへんのバランス感覚ってすごく大事だと思っていて。
例えば、極端な笑いを追求しようとしていくと、必ずそびえ立つのが「シモネタ」の壁。これに触れるか触れないかは大きな分かれ目になります。
ミルキィホームズはたしかにいき過ぎてるネタ(伸びる乳首とか)はあるけど、「下品なネタ」ないってのは大きい気がします。
だからキャラはめちゃくちゃにされるし、ひどい目にもあうんだけど、安心してみていられる。
エローさん……じゃなかった、エリーさんがちょっとエロいのも、「ムクムクです!」で解決している。直接的なエロ表現(パンチラとか、触られるとか)はないです。これは個人的にすごく好み。こっちが勝手に想像できるけど、想像しないで上品にも楽しめる。
「下品」のラインを越えなかったことで、キャラクター達が「かわいい」の範疇をしっかり保っているのはうまいなあとしみじみ感じています。
 
いやー、ほんとギャグバランスに関しては奇跡のような作品だと思ってはいましたが、計算でできるものなんですね。
一応大きなテーマ「探偵とはなにか」は二期の要になってくるのでそこも楽しみですが、あんまり考えずジェットコースターのスピードに翻弄されたいところです。
ムクムクです!ムクムクです!

マネをしたくなるアニメだと思うんだ。