たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

サンカクヘッド先生のノリって「起承承承転転転結」みたいなかんじ。あとなつみちゃんかわいすぎる。「厨二くんを誰か止めて!」

サンカクヘッド先生が好きです。
めちゃくちゃなスピードで、勢い良く描いているイメージの作家さんなんですが(実際連載量がときどきとんでもないことになることがある)、なーんか奇妙なんですよね。
 
今回「厨二くんを誰か止めて!」という新刊が出たんですが、これがえらい面白い。
でも面白さの根幹である「中二病ネタ」自体は、今まであるものとそれほど変わりません。ネタがすごくずば抜けて特殊、というわけじゃないんです。
厨二病ネタ自体がかなり飽和しているから、というのはあるんですが。ネタ化というよりも、完全に属性の一部みたいになってきましたものね、「ツンデレ」みたいなかんじで。
「あるある」度もそこまで高くありません。リアル寄りではないです、ギャグ寄りです。
でも極度に尖っていない。
およ、じゃあ何が面白いの?
ぼくがこの作品を読んでいてクセになるのは二点です。
 

●1・間の取り方のテンポが珍妙●

サンカクヘッド先生作品全般に言えるんですが、ギャグのテンポが独自なんです。
普通よくあるのは基本にのっとった、「起承転結」タイプ。最もわかりやすく、かつ最も難しいスタイルです。
もう一つ最近多いのは、「ボケ」「突っ込み」を高速で繰り返すタイプ。この繰り返しを沢山詰め込んで大きな「起承転結」の流れを作ります。これはとにかくネタの数勝負なのでやはり大変。
 
サンカクヘッド先生はじゃあどうかというと……やたら承と転が多い。
とにかくネタ振りが多い。「○○だし」「○○してるし」「○○になってるし」とどんどん重ねていくタイプです。
しっかりした突っ込みキャラにあたるキャラは存在するので、ちゃんとオチはついてまとまるんですが、そこまで積み木のようにどんどん重ねていきます。
突っ込みキャラもそこまで強くない(これが魅力の一つ)ので、押され気味になっていきます。
 
このマンガで言うと、ボケにあたるのが厨二病になりすぎた困ったクンことシリウス・厨二で、突っ込みに当たるのが戻ってきた幼馴染の五十嵐なつみ。
なつみがまず出てきて(起)、そこで厨二の奇行を発見(承)、その奇行を何度も繰り返し(これも承)、結果ちょっとアレなことをやらかし(転)、別の人が絡んだりしてさらに面倒になり(これも転)、どうしてこうなるー!となつみが心の中で突っ込む(結)。これの繰り返し。
ネタ密度自体は実はすごく多いんです。けれども起承転結の中に落としこみながら、承と転を増やす独自の間のもたせ方でスゴイさっくりと読めます。
やり取り自体は「ボケ・突っ込み型」に似ているんですが、まとめてブロック単位にしているから読みやすいんです。
 
加えて、そのブロックの結・オチのコマが次のページの一コマ目に食い込まされているのが面白い。
ページをめくったらオチ、というのはギャグマンガでよく使う手法ですが、その後すぐに下のコマで続きが描かれるので、オチのコマが小さい!(しかもなんかネタ盛りこまれている場合が多い!)
(でかい時は逆に2P使ったりしますが、オチじゃなくて転の方です)
このおかげで、突っ込みのパワーがあまり強くないのが増幅。
基本的にトンチンカンなことをやって、突っ込んで入るんだけど心の中だったり止まりで暴走したまま終わる、しかもそのあとすぐ再開する、という「振り回され」をうまいこと描いています。
この開いたところの一コマ目に「転」が来ることも多いので、パラパラとめくると右上に特徴のあるマンガなのがわかると思います。
読み慣れないと、ほんとキャラクターによるツッコミパワー不足でずるずる引きずられてよくわからなくなるのですが、慣れてくるとクセになります。
 
正確に言うと、キャラのツッコミ自体はそこまで弱くないです。包丁が飛んでくる程度には強いです。
けれどもそこに至るまでの重ね量が多かったり、ツッコミキャラ内にもツッコミ要素があったりするため、比較すると立場のギャップがそこまで大きくない、の方が近いのかも。
途中からなつみもボケの対象になっていくので、ますます。
もちろんこの手法自体は他にも使われてはいますが、サンカクヘッド先生の、ハイテンションでいながらちょっと力の抜けた絵柄とマッチして、独自のテンポを作っています。
 
なんかすごく曖昧な感じの説明になっちゃってますが、「ここがすっげえ面白い!(ババーン!)」って感じじゃないんですよ。あとからジワジワ来るタイプ。
厨二病ネタだから面白い、というよりも「サンカクヘッド先生だから面白い」マンガだと僕は思います。
で、じゃあもっとわかりやすく「ここが!」ってのはないか?というと、多分ここじゃないかと。
 

●2・女の子はかわいい、かわいいのだ●

「この女の子はかわいいです!」と作者ががっちり頭で考えながら描くと、キャラってかわいく感じられる事が多いです。
他の作品と比べて、とか、他の世界と比べて、ではないです。その世界において「このキャラはかわいい!」という強度みたいなものです。相対的っていうよりも絶対的。
カワイイキャラがいっぱい出てきてあっちもこっちも……ではなくて、もう一点突破。ヒロインは徹底して一人。
このマンガでいうと、とーにかく五十嵐なつみがかわいい!

振り回され属性の強いあずにゃん(髪型が)みたいなキャラです。
起きる出来事に対して全て一人で黙々とツッコミを入れる(脳内で)、どちらかと言うと読者寄りのキャラなんですが、この子血行見ていてムラムラします。
いやマジで。
絵的にはサンカクヘッド先生の絵は脱力系なので、こうやって一コマだけ抜き出してもそのかわいさが伝わないのが悔しい!くっ!
でも読むと一発でわかります。他にも厨二のお母さんとか、クラスメイトの女の子とか、かわいい女性キャラはたくさんいます。けれども飛び抜けて「なつみはかわいいのです、かわいいですから!」と作者が力点をおいて描いているのがはっきりしているので、自然となつみが好きになるような仕組みになっています。
 
困ってる女の子はかわいいからとか、縞パン属性だからとか、ツインテールずるいとか、色々あります要素は。
けれどもなつみ自体はずば抜けた特徴自体はない普通の子です。
ところが周囲が狂っているとこの「普通の子」が一番目立ってかわいい、ってのもまた真実。
変なマンガですよ。厨二病の厨二は明らかにおかしいんだけど、その両親も同じようなノリ、学校の友人も慣れているのでサラッと彼の奇行を受け流す。
えっ、私だけおかしいの!?ってなるなつみ。かわいい。

とても優しいとか、ツッコミがきついとか、そういう針の振り幅も特に無いです。普通です。
普通に「えーっ・・・」となり、普通に「・・・は?」といらだち、普通に冷や汗をかきます。
すっげえ普通です。それがかわいい。作者の「この子は!かわいいんです!」の念がこもっています。
サンカクヘッド先生自体は逆にその唯一ヒロインがトンチンカンだ、というマンガも描いていますが、今回はトンチンカンキャラ達にもみくちゃにされる普通ヒロインを描くことでかわいさを強調することに大成功していると思います。
なんでしょう、正直この子が逆らおうとしてももみくちゃにされる様子がムラムラするというか。
 
6話で普通属性から、少し強めの負けず嫌い属性がついて強化されていますが、それでもやっぱり振り回されているのには変わりないのがいいんだなあ。
実はとあることで一つ屋根の下に住むことになる、というおいしいシチュエーションなんですが、全く恋愛話に発展しそうなにおいがしないのもいいです。
その割に、異性として意識してしまう存在(=パンツが見たい)として家にいる、というのも。
話自体はなつみの1人称なんですが、なつみの描き方は厨二から見た肉感的な女の子なので、ことさらに強調されますかわいい。
 
今後どう展開するのかわからないんですが、厨二病ネタは物語の軸程度にして、なつみと厨二と、これから出てくるであろうキャラ達の関係をサンカクヘッド間合いで描き続けてくれたらかなり楽しめそうです。
ドS幼馴染の山田純ちゃんと、いつも目が><になっているお母さんもかわいくてオススメですが、なつみですなつみ! すっごいかわいいよなつみ! 性的に興奮するよ!

今までもサンカクヘッド先生作品は読んでたんですが、今回で特にはっきりと「あ、これが面白いんだ」と明確になった感じです。
サンカクヘッド作品をどれから読んだらいいかと言われたら、これからすすめるかも。