たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

冬コミで見たモバマス同人誌いろいろ 〜アイドル達の熱い思いはどこまでもまぶしい〜

冬コミからもう半月ですねえ。
あらためて『CGモバ通』及び『CGBR@S』手にして下さった方、ありがとうございます!
おかげさまで持ち込み分は完売いたしました。今はメロンブックスにて委託中です。
『CGモバ通』メロンブックス通販
よろしくお願いいたしますー。
 

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さて、冬コミでは自分も興味がある本をいろいろ買って回ってました。
ギャグ、シリアス、エロ、創作、二次創作、資料、写真。ほんと宝の山ですね。
 
で、今回は友人のところをお手伝いさせていただいていたので、基本アイマスモバマス同人の島でした。
アイマス同人誌はギャグ・ラブラブが多いですが、僕が一番興味あるのはアイドルって存在はなんなんだろう?ってところを描いたもの。
最近マジすか学園の影響もあってAKBやSKEも見るようになったんですが、ようは夢中になってキラキラ輝いている女の子が見たいんですよ。
それが通過地点であろうと、ゴールであろうと、あるいは裏があるのであろうと。
アイマスモバマスは二次元でかつ設定がそこまで明確化されきっていないため(アニメアイマスは明確ですが)、キラキラな部分と淀んだリアルの部分を描くのに非常に適しまくってる。
ぼんやりそんなこと考えて探していたら珠玉の本に出会えたので、いくつかご紹介します。
品切れかまだ残っているかはぼくにはわかりませんので、すいませんがそこは検索して探してみてください。
 

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島村卯月がブレイクしなかった世界で!』(日々の暮らし(鈴木雄一郎))
今回この記事を書きたい、と感じるきっかけになるほど、とにかくすごい本。何冊も買って配りたい。
もともとこの作家さん、『アイドルのむすめさん』ってシリーズで、実在のアイドルをモチーフにした創作を描き続けている方。
アイドル業界であった事件や、頑張っている姿の本当に細かいところを丁寧に、内面から描くんですよ。そもそも「アイドル」ってなによ。偶像でしょう?でも女の子が憧れて、そこに行きたいと願って、手を伸ばして必死に苦しい日々を乗り越えてなぜアイドルやってるの?ってとこを、がっちがちに捉えて紙に叩きつけるから、読んでいてこみ上げるのなんの。「ファンが増えればアンチも増える、何やったって出来レースって言われるんだぞ」「私だってセンターで歌いたいよっ!だってアイドルになったんだ!!」とか、会話一つ一つが熱いんだこの作家さん。
で、『島村卯月が〜』は熱血要素とかではないんです。静かな情熱を描いた作品です。だよね。しまむらさんって熱血絶叫タイプってより、コツコツ積み上げそうですが、まさにそれ。
ところがその「コツコツ」が災いして、ブレイクしなかったしまむらさんを描いた作品です。
面白いのは、デビューしてるんですよ。CDも出てるんですよ。人気もあったんですよ。でもブレイクしてないんですよ。
渋谷凛も、本田未央も、同期でアイドルとしてデビューしてブレイクしましたが、しまむらさんはブレイクはしなかった。でもアイドルであることには間違いない。
3年後の20歳になって、先輩に言われます。
「女の子が芸能界に3年もいたら、その3年が既に結果なのよ。気持ちの問題じゃないの」
時代の流れは残酷。次々新しいアイドルが出て、すっかり過去のアイドル扱い。現状でもアイドルなのに。
カラオケで大学の仲間と集まって自分の曲を歌った瞬間、彼女は気づきます。
「わたし この歌きらいだ」
このマンガのすごいところは、前向きにがんばれ、とか、現実はきびしい、とかでとどまらないところ。
実際、前編ではしまむらさんがどんどん現実に蹴飛ばされ追い込まれていく様が描かれています。それが、厳しくも事実であるのを読者側が知っている。きつい。
しかし後編で、彼女は這い上がってくるんです。アイドルとしてしがみつくという形ではなく、全く別の形で。
コツコツ積み上げ続けるしまむらさんの静かで激しい情熱が強烈。その期間実に10年。
アイドルは終点じゃない。人生の通過地点であり、永遠に追いかける場所であり、走っていける場所。
島村卯月渋谷凛本田未央の三人が「ずっとずっといっしょにがんばろう」と言った言葉が、そのままの意味ではなく、けれども確実に最後まとめられています。
モバマス自体あんまり原作的なものがないので、キャラクターは大幅に作者流になっていますが、だからこそ面白い。そして実際彼女たち150人以上のアイドルが独自の道を追うであろう、そのひとつの形を完成させたとんでもないマンガです。
よくあるはなし、と作者は言ってますが、まさにそうなんでしょうね。そしてそこが「アイドル」なんだろうなって。
ほんとこのマンガに冬コミで出会えたことが最大の幸せ。
 

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『冬のカナリアはゆがんだ口端でうそぶいて』(22w(藤原とうふ))
表紙は左なんですが、もう裏表紙がよすぎるので右側に。
多分オンリーワンの、愛野渚本です。誰だかわからないっていう人はロードを走ろう。「イヨッ」ってかんじで出てくるノーマルさんです。
ってか、初期ノーマルで続きが出てきてないのって彼女だけなのね!?びっくりしたわ……。バスケ枠のキャラで、熱血漢のパッションさん。
で、この作品どういう内容かというと、愛野渚に引退専門のプロデューサーがつくという話。
えぐい!って最初思ったんですが、違う。
バスケットが好きで、アイドル業よりバスケの試合を優先する渚。かといってアイドル業がいやなわけじゃなく、彼女自身どちらも全力投球なだけ。
けれども本当にそれでいいのだろうか。彼女の幸せを考えた場合、ムリにアイドル業やるよりも、その労力をバスケに注いで一本で頑張ったほうがいいじゃないか。だから引退専門Pはメンタルケアに入ろうとした。
この引退専門Pにアイドルをやめさせられて、後悔している子が一人もいないのがまた面白い。進学、趣味、交友、結婚。「その子の幸せ」を応援するために、後腐れなく、引退させるP。
そのPにも実は複雑な過去があるのですが、これは読んでみてください。
このマンガいろいろなところがテクニカル。
タイトルがうまいよね。「カナリア」とは、パッションのカラーユニット。USAツアーで登場した「カナリアサマー」から取られています。
恐ろしいことに、カナリアサマーの他のキャラ、龍崎薫姫川友紀・大槻唯はレアもSレアも出ているというすごい状況。
なのに渚ちゃんなんにもない。
これ読んでから、渚がもし別のカードで登場したら……ぼくは泣いちゃうなあ。
たかがカードだけどさあ、マンガがうまくて。「愛野の宣材なんて今だにスカウトした時の試合帰りなんだぞ」っていう事務所の会話が、重なりすぎてグッときます。
愛野渚マンガですが、ぶっちゃけ、プロデューサーのためのマンガだったりします。
 

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『彼女がアイドルになった理由または彼女がアイドルにならなかった理由』『彼女がここにいた理由』(ISSK 些(四隅、ヒロマ)
左が夏コミ、右が冬コミの新刊。どちらもすごい。
『彼女がアイドルに〜』はそもそもチョイスがすごいですよね。野々村そらと槙原志保!
タイトルの通り「アイドルになった」野々村そらと、「ならなかった」槙原志保を描いた作品です。
野々村そらは765プロのアイドルに憧れる普通の女の子。塾に通い、勉学に励む子でした。ある日スカウトされ、キラキラな世界を見て「アイドルになりたい!」と強い願いを持つのですが、家庭はマジメでキビシイ。そんな「アイドル」なんかになれるわけがない。
諦めて、泣いてしまう彼女。でもそれを見て確信するんです。「なんだ、やっぱりアイドルになりたいんじゃないか。早く言ってくれればよかったのに」
うまいなーと思うのは、彼女は勉学とアイドルを両立させがんばるのですが、まだデビューはしないところで終わっているところ。これからなんです。
そこからの、アイドルにならなかった槙原さんマンガですよ。
プロデューサーは、それはそれは熱心に槙原さんのスマイルに惚れんこんでスカウトしまくるんですが、彼女は決してなろうとしない。
プロデューサーは間違いなくこの笑顔は素質だ、というのですが、違う。お客さんが来て笑顔になってくれるのが好きで、彼女は笑顔になっている。
そう、甘いモノを食べに来る人はみんな笑顔だ。スカウトにきたプロデューサー以外は……。
彼女の望みははっきりしていて、最後までアイドルになりませんが、後味は非常にいいです。
どちらも彼女たちの幸せ。夢。結果はもう表紙の通り。中にあるのは「理由」ってのが、いい。
『彼女がここにいた理由』は、ヤンデレヒロインで名を轟かせた佐久間まゆのマンガ。
この作品のすごさは、彼女の依存的愛情を「きみはおかしくない」と受け止めきったこと。
「「おかしい」「消えろ」どれも拒絶の言葉だ。それ以上の意味があるとは思えないよ。だってきみは消えていいような人間じゃない」
「きみが消えたらとても困る」
内容は結構シビアなものですが、佐久間まゆというキャラクターをネタではなく救済した意味で強靭な作品。
 

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『ニジゲンヨリアマク』(ARANCIO TELA(美月めいあ))
モバマスって、アイドルになってから眼鏡外すキャラすげー多いんですよね。
本当はキャラ萌え的に言うと、眼鏡って「属性」だから、外したらあかんわけですよ。アイマスのりっちゃんだって「私の眼鏡好き?嫌い?」って言ってますし。
けれども、モバマスキャラは外す。10進(10枚あつめて段階を踏んで進化するカード)は遊びで眼鏡かけることありますが、このマンガで描かれる荒木比奈は外します。
以前のRはむりやり上条・眼鏡・春菜に眼鏡かけられましたが、クリスマスではまた外してました。
なので一部からは「裏切り眼鏡」と呼ばれていましたし、ぼくも「なんで比奈ちゃんは眼鏡外すんだ!」とプンスカしていました。
違う。違うよね……。
仕事のオフで荒木比奈とプロデューサーが買い物に行く話なんですが、このメガネがかなり重要なポイントになってきています。
オフなのでメガネはしてきているんですが、途中で彼女ふっとメガネ外すんですよ。
それを見てプロデューサーは「今日はオフだって自分で言ってたじゃないか。だったら仕事の時みたいに無理して外さなくてもいいんだぞ」と言います。まあ気の利いたプロデューサーですが、ここなんですよ。
彼女は、自分の意思でメガネを外している。
踏み出そうとしている自分、照れのある自分。少しでもかわいいと思われたい自分。
アイドルであるがゆえにデート的なことはできないけど、メガネを外したい時がどういう時なのか、言葉にしないけどわかってほしい。
なにがうまいかって、表紙はメガネN+なんですが、表紙めくるとメガネオフN+なのね。
やられた……。
もう裏切り眼鏡なんて呼べない。彼女たちはアイドルであり、かわいくありたい女の子なんだ。
 

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『幸せという花の蕾はきっと辛いという名前だろう』((キュートビリビリ(マツシマ愛コ)
今回紹介する中では多分いちばんヘヴィな内容の作品。安倍菜々本ですが、一切ウサミンなネタないです。
18禁と書いてますが、特にエロ表現が過激というわけではないです。ただ内容の救いのなさは18禁かも。
この中での安倍菜々は、すぐクビになるヒモな彼氏と同棲しています。目を赤く腫らして、ネガティブなことばかり話して、責めてもいうことを聞かなくて、ひたすらセックスを要求してくる。
自虐する彼を見ては、嘘で救おうとし、彼の激しい感情も受け止め続ける日々。
もちろんそれが幸せなわけはなく、他の人に「彼氏は?」と聞かれると「何もしてないよ」と笑い話にするしかない。
どこに向かっても泥沼しか見えない生活。けれども「私が助けなきゃ」の思いでひたすら働く菜々。
……本当に?
男女の共依存のスパイラルと、勘違いの傷を描いた痛烈な作品。あとがきで救いのある作品を書きたいと書いてあったので、そちらも期待したいところ。
この作者の作品は、いずれも性と、アイドルと、人生の酸っぱい部分と、そして救いがあって本当に面白いので是非読んでみて欲しいです。
あえてアイドル達の性を赤裸々に描くことで、本音の部分を引き出すってのはすごい。
菜々、みく、杏という、普段ならネタにされやすいキャラを、人間の女の子としてぎっちり描く手法は読んでいてグッときます。
もっともっと読みたい。
 

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面白かった作品はまだまだあるんですが、今回はリアルの部分に絞ってなのでこのくらいで。
どの本も見てもらいたいのですが、同人誌は一期一会。会えるかどうかはタイミング次第。
リンク先に委託の有無は載ってるとおもうので探してみてください。