たまごまごごはん

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我々は死を恐れぬイカれた猟犬だ、戦車前進!『シェイファー・ハウンド』

戦車とか軍艦とか流行っている(?)ので、ぼくも大好きな戦車マンガの話をします。
シェイファー・ハウンド 1 (ジェッツコミックス) シェイファー・ハウンド 2 (ジェッツコミックス)
伏士隆・かたやままこと『シェイファー・ハウンド』
どんな漫画かというと、うーん……人が死ぬガルパンです
 
そんなの逆だよむしろ当たり前じゃん! と自分で書いていても思うんですが、ガチ戦車戦マンガというにはちょっと違って女の子しかいない一個隊の話ですし、みんなキュートでかわいいですし、だけどガンガン人死ぬし殺すので、この表現をするしかないなあ、という感じ。
だからガチの戦記物を期待してみると、妙に女の子ばっかりなので肩透かしを喰らうかもしれませんし、逆にかわいい女の子+戦車を期待してみると、ガチで死ぬのでビビリます。
そのへんはもう10年前に通過済みよ!っていう人なら、全力全開で楽しめると思います。
 
先にこのかたやままこと先生という漫画家の話をしておきます。
これ以前にも沢山の戦車マンガを描き続けている作家さんで、これがまたガチ戦記とユーモアの合いの子みたいな作品ばかりで面白い。
基本、原作付きですが、ドイツ軍を中心に描く作家さんです。

『砂漠の獅子』は、短身砲で、戦車戦ではちょっと装甲抜けないよどうすんの?っていうドイツ4号戦車を次々に改造し、アハトアハト(88ミリ)を載せたり、対空砲を載せたり、155ミリ臼砲を載せたりしちゃって、イギリス軍を北アフリカ戦線で撃退しまくる、ムチャな展開が楽しい戦車ネタマンガ。
88ミリはその後ナースホルン88ミリ戦車砲搭載自走砲になってますし、対空戦車はヴィルベルヴィント4連対空砲搭載対空戦車に、山なりに砲弾を飛ばすのはブルムベア150ミリ突撃榴弾砲搭載自走砲として、ドイツ軍が大戦後期に投入しています。
その元ネタがこうだったら面白いね、というIFです。
あと女の子がかわいい。
 『豹と狼』もドイツ軍の話で、こちらは大戦後期の話。
ドイツ軍5号戦車パンターで戦う1小隊の話。
ルーマニアパルチザンの少女、オリガと出会います。彼女まるで狼のように野生的な勘と視力を持ちあわせており、歩兵戦闘能力が尋常じゃない。
彼らは意見が一致し合流します。というのも、もうヒトラーにはついていけない、ドイツは愛しているが、ヒトラーのやり方にはうんざりだ、というチームだからです。
その後、SS(ヒトラー武装親衛隊)の少女クリームヒルド・ボック少尉に出会い、彼女もまたドイツ軍には勝ち目がないと考え、アメリカ軍との講話交渉を行おうと考えるはみ出し者。
さてアメリカ軍と合流する脱走作戦だ。でもソ連にはドイツ軍として追われているからなんとかせねばいけない。
かくして、オリガの活躍と、パンターの奮戦で、大戦にケリをつけるべく大作戦が決行されます……。
 
どっちも滅茶苦茶面白いです。この時は女の子が出てくるのが最大で二人。でもかたやままこと先生の女の子は花があるので、キラっと光ります。
描かれるのは戦車戦ですので、戦車好きなら楽しいでしょう。
というかものすごい面倒くさい画面作りになってます。大量の戦車が進むシーンとか、漫画家さん殺しだわ。
でもそれが見たいんだよ、見たかったのですよ。
 
さて、面白いのはかたやままこと作品は基本ドイツ軍を描いていますが、ヒトラーの主義には反対している人々を描いていること。
ドイツの国のために戦う軍人を描いているんです。ただしナチスドイツの政策はどうなのよ?という人々を描いています。
伍長閣下(ヒトラーの蔑称)という単語も端々に出てきます。
この問題が、『シェイファー・ハウンド』で牙をむき出しにします。
 
『シェイファー・ハウンド』とは、502猟兵大隊所属特務救助猟兵小隊。女性の戦場での運用性を試験するために結成された部隊。
通常の兵士は、負けそうになったら引いて態勢を立て直すとか、迂回して攻めこむとか、命を守るための作戦を考えるのですが、彼女たちは違います。
自分たちは消耗品。武器と同じ。だから真正面から突撃するんです。
クレイジーな部隊です。まさに猟犬。
ツインテールやふわふわヘアーなど、絵に描いたような萌え系ヒロインがわんさか登場しますが、全員死を恐れずに突撃。バリバリ殺します。
その小隊の指揮を取るのがカヤという女性。
表紙のキンパツロングヘアの凛々しい子です。
彼女は特にシェイファー・ハウンドの冷酷さが染み付いた代表のようなキャラで、全く死を恐れません、前進あるのみ。今まで作戦の失敗は一度もなし。ただし、沢山殺すかわりに、味方も沢山死んでいます。
そりゃそうだ、突撃だもの。
 
ここに投入されたのが、ユート・ツァイスSS上級曹長。それほどヒトラーの感が方には同意できていない彼、シェイファー・ハウンドの小隊長になります。
彼の信念は「君たちは人間だ、消耗品なんかじゃない」
突撃しろ、速やかな作戦成功が第一だ、というカヤ。
遠回りでも苦労してでも、生き残るんだと言い続けるユート。
 
まー難しいですよ。戦争だから「自分たちが生きる=相手を殺す」ことになるわけですし、「仲間を助けることは他の仲間を殺すこと」にもなりうる。
ユートとカヤの対立はどんどん溝が深まります。ユートが白ならカヤは黒。
二巻では敵対勢力になる米陸軍第101空挺師団010特殊作戦小隊『グレイ・オックス』が登場。
このグレイ・オックスもまた、女の子部隊です、やったね!
名前の通り、ユートの生き残り思想「白」でも、カヤの皆殺し思想「黒」でもなく、「正義は灰色」と語るもう一つの考え方です。
 
個人的には、それが正解な気がしますが、でもユートのやってることは憎めないし、カヤの戦い方も決して悪く無い。
カヤはこう言います。
「ここにある全てのものが一つの目的のために作られている! それがなんだか分かっているだろう?ユートっ!! 人を殺すためだ!!!」
そうなんだよなー、戦車も銃もそのためにある、だから兵士も、ってな。
そしてそれが間違っているのもわかる、どうしたらいいんだろう。そもそも死なないために、君たちはいっぱい殺しているじゃないか? ユート君?
 
非常に厄介で難しいというか、これが解けたら戦争なんて起きないよという話を、うまーくマイルドに、楽しく描いています。
やっぱり女の子部隊 VS 女の子部隊ってのがいいですね。見ているだけで勇壮でワクワクします。
単純に女の子バトルものとしても爽快ですし、殺されるレジスタンスや敵兵もゲスな男ばっかりなので、スカッとします。描写的にそこに女の子持ってくるのはズルいんですが、それが見たかったんだからいいんだよ!
女の子がバリバリ人を殺しまくるマンガとしても面白い、戦争の中での正義とは何かを真剣に考えるにも面白い作品です。
 
まあ、シェイファー・ハウンド部隊で死んだある少女の死因にはちょっと驚いたけどね……。
そういうのもあるのかーと。確かに「戦車撃たれた時に衝撃で鋲がはずれて中で跳ねまわって死んだ」とかもあるそうなので、何が起きるかわからんとは思いますが。
カヤとかユゥカみたいな勇壮な女性は滅茶苦茶好きなので、こういうマンガを探しては読みふけるんですが、でもユートみたいに「誰も死なせたくない」という気持ちにどうしても感情移入はしちゃうよね。
……グレイオックスで顔に迷彩を入れてる狙撃手の少女・シィーズが好きですはい。
 ところどころに、サービスシーンがあるのは、ヤングアニマル嵐だからしかたないな!
カヤのおっぱいは見たい。