たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

げに難しき、比較表現

とあるところで、好きな作品についての評を見ました。
「この作品は、まるまると比べてほにゃららが欠けていてよくない」
なるほどね。
大変悲しい気持ちになりました。
よく読むと、その人が作品の本質をちゃんと見ないで、叩きたいだけなのがわかったので、まあ仕方ないかー程度で流しました。
けど、本質的に違う2つを並べて「よくない」って言われてもなー。
「この作品は、ここがよくない」なら納得できるのに。
 
比較表現は本当に難しいです。
○○より大きい、○○より軽い、○○より長い。more、most。
当たり前のように使う言葉です。でもこのニュアンスが、人を大いに傷つける。
 
「○○よりこれは劣っている」というのは、傷つけるために言っているのは承知の上として。
「○○よりこれはすごい」というのも、その前者を好きな人や製作者に失礼な表現になります。
 
例文です。
 
「この物語は泣かせるための物語ではなく、勇気づけさせるための物語だ」
 
一見普通に見えますが、これ場合によってとても失礼です。
本質を説明するためなら、特に問題はない。
ところが、その物語を褒めるための表現だとしたら「泣かせるための物語」を卑下していることになります。
そもそも「勇気づけさせるための物語だ」だけで十分。前半は完全に余分だから、書くこと自体不要です。
 
という編集さんの受け売りでした。
いい編集さんにあったもんですよぼくは。
 
あんまり気にしすぎてもしかたない。書けなくなっちゃう。
でも、もし人に見てもらう評なら、比較は極力避けないといけないなあと痛感中です。
自分がそういうのを見て、嫌な気持ちになったのなら、他の人だってそう感じるのだもの。
 
難しい例としてこんなのも。
「○○と似たような感じで面白いです!」
褒めてるように見える、○○もその作品も。
ところが、○○ありきで比較してしまっているので、その作品の本質を見ておらず、側で評価してしまっている。似てるだけで、作品独自のよさに目が行っておらず、模倣と取られてしまう。
うーーーーん、難しい!
 

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比較が必要な場合もあります。
 
例えば、作品の構造を人に伝える場合。
「この作品は物語が○○することで成立している。○○の手法を思い浮かべれば分かりやすいだろう」
「語り口調の軽快さは○○作品を彷彿とさせる」
相手に伝える場合、具体例がないと伝わらない事があるなら、それは比較対象があったほうが親切だろうなあ。
比較より先に本質を書くのは、必須。
ただ、比較対象がなくても済むなら、できるだけ入れない方がいい。
 
絶対必要になるのは、作品群の概観を考えた、全体像を考える場合。
 
ちょっとわかりづらいので例をあげます。
一つの空間に少人数が集まる作品はとても多いです。でもそれぞれ目的が違います。
ハルヒ」のSOS団、「カゲプロ」のメカクシ団、「けいおん!」の軽音楽部、「はがない」の隣人部、その他「ゆゆ式」とか。
これを、作品について語るんじゃなくて、それぞれがどう異なるかを考える場合は、具体例がないと何の意味もないので、比較必須になります。
 
例えばぼくはメカクシ団には入りたいけど、SOS団には入れない。
なんでだろうなあ?
「メカクシ団は孤独を抱え心に傷を負った少年少女達が前を向くための集団」だから共感しやすい。一方「SOS団は個々が完成しているから、その和を乱すことは非常に難しいけれども、キョンになれるのならその輪に入りたい」。
嗚呼なるほど、、構造が違うんだ。「けいおん!」の場合は娘を見る視点なので壁カメラになるか、さわちゃん視点で、あの輪には入れないね、とかね。
あ、このテーマ面白いですね。
 

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ようは、比較って使いようなんだよなーと。
比較を使うことで、その人がなにを表現しようとしているのかまで、見えてしまう。
逆に言えば、うまく使えば武器になる。
 
食べ物評なんかは特に当てはまりそう。「どこどこの店よりおいしい」なんて書けない!
だからといって「甘い」「辛い」「あぶらっこい」だけだと、受け手の判断基準と咬み合わない可能性もあるから難しい。
「沖縄産の塩が野菜の味を引き立て」とか「しっかりと昆布で出汁をとっており」のような具体性が必要になるんでしょうね。
うーーーん、難しい!
ライターだから、というのを抜いても(抜けんけど)、やっぱりきちんと伝えたい。言葉については日々、悩んでおります。