たまごまごごはん

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褐色少女とお前は本当に夫婦なのか?「スイようび」のセックスレス

スイようび 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)Kindle版)
 
おい。
夫婦ってなんだよ!
まじかよ、この子は妻かよ! 聞いてないよ!(ウラ表紙に書いてあります)
 
『スイようび』は、褐色の女の子が日本にやってきて、「日本人の旦那」のもとで暮らすハートフル褐色ストーリーです。
ああ、ハートフルだね! 褐色美少女と夫婦とかハートフルすぎるね! くっそ悔しい!
 
解せぬ。
身長などみても、ローティーンにしか見えません。ロリコンにも安心です。
作中でも、隣の学生少女・さつきちゃんが、「儚げな少女」と評し、異文化交流とかホームステイと勘違いしていたほど。わざと幼くかわいく描かれています。
……まじかよ、夫婦って。後出しじゃんけん級にずるいよ。
だって、夫婦ってことはムフフなこともしていいわけでしょう合法的に。
 
ところが。
ヒロインの褐色っ子スイちゃんと、太田学の二人。
おかしい。全くセックスをしていない。
雑誌のレーティング的に描けないんでしょとか、そういう問題じゃない。
耳かきをしてスイの吐息を聞くだけで学が焦るシーンを見るに、キスすらしたことないはず。
 
まるで付き合い始めて三日目くらいのカップルみたいです。
「親戚の女の子を預かることになったさあどうしよう女の子は好意を寄せているけどなあ」ではない。
高杉さん家のおべんとう』的な曖昧な感情の家族暮らしでもない。
一応恋愛感情はあり、それを了承しあっている様子。
 
生活感のあるシーンは、極めて少ないです。一応掃除洗濯はこなし、一緒に食事もしています。
でも「夫婦独特のオーラ」がない。「これ預かった子と兄さんだよ」って言われてもわからない。
さつきちゃんが、夫婦だと気づかなかったのも無理はない。ぼくもわからん。
 
最も新婚感のなさを物語っていたのは、スイと学の部屋が別々なこと。
せめて一緒の部屋で寝たいとスイは目で訴えるのに、ふすまがある。
お前一緒に寝てやれよ!と学にアームロックかけたくなります。そんなんだったらスイちゃんとおれが寝るぞ!
サザエさん」や「ドラえもん」の家にも感じようと思えば感じられるセックス感が皆無すぎて、奇妙で仕方ない。
でも、偶然じゃなくてわざとそう描いている。
これはどういうことなんだろう?
 
そもそもスイちゃんがファンタジーな存在です。
どこの国かもわからない、なんとなく異国のなんとなく褐色のなんとなく小柄な女の子です。
現地の謎アイテムも引っ越しに使っているし、武器めいたものも持っている。
そして、日本語は99%話せません。
 
ところが、スイちゃん日本語を聞き取ることはできるんです。
彼女は「日本語わからないキャラ」ではなく「しゃべるのが得意じゃないキャラ」として設定されています。
 
この『スイようび』という作品は、それぞれがどう歩み寄るかを、2つにわけて考えた物語です。
 
まずスイ側。
相手に気持ちを上手く伝えられません。無口+異国の組み合わせで、ダブルパンチです。
自分がひとりぼっちになることへの恐れ、学への愛情、謎の多い日本への怯え。
これらを日本語で学に伝えることができません。
学に心を伝える高い壁をどう乗り越えるか、彼女は必死になります。
それがうまくできない文化すれ違いがギャグな部分です。
でも笑ってばっかりじゃ、夫婦にならない。
どうやったら気持ちの共有をできるんだろう?
 
一方、学側。
彼は極度に鈍いです。スイが手をつなぎたいと思ってもつなごうとしない。
手を握りたくないんじゃない。気がついてない。
睡眠の件もそうです。二人でいい解決策を見つけようとしてふすまを開けておいたものの、スイが学を見つめて寝ているのに、学がスイに背を向けて寝ている。
なにやってんだ。鈍いにもほどがある。
その割に、スイに耳かきした時に焦って離れたり、スイが成人向け雑誌を見ている時に「それは大人の男の人向けの本で、って別に俺が読んでるとかそういう意味ではなく」となぜか自己弁護している。
彼はスイを純粋な存在と考えすぎるあまり、そして鈍すぎるあまり、スイへの接触がうまくできていない。
一人の女性として、妻として、見ることができていない。
 
二人の間に恋愛感情は間違いなくあります。
時に見つめ合って照れたりしてもいます。
 
なるほど、「ディスコミュニケーション×2」の、そういう夫婦もあるだろう。
この夫婦はこれから二人で努力して、家族の形を作る、0の段階の夫婦なんだ。
だから男女の性行動は一切ない。言葉のコミュニケーションもあえて異国ルールを入れて曖昧にしている。
「一緒に食事」からのスタートだ。
 
0からだから、これからは「夫婦独特のオーラ」を1つずつ勝ち取るのでしょう。
炊事・洗濯・掃除はできるようだ。次はスイちゃんの服だろう。
子供のように手をつなぐまではいっている。次は愛する人との手のつなぎ方へ。
いつか二人がセックスするようになり、子供を産むようになったら……そこまでの道のりは遠いけれども想像するだけで楽しい。
ファンタジー味の強いスイちゃんがリアリティあふれる人間像に近づいた時、二人の夫婦生活は一歩前に進むはず。
 
しかし、学がスイのことを「女の子」と言っていることからも、やっぱりスイは幼い少女のようです。
でもさつきいわく、小さい子ではない様子。
なんか裏があるのかなあ? ……うーん……かわいいから、いっか。