たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「電気GROOVEお兄さんのお仕事いろいろ」結局裏側は全部ブルースかもよ

 
電気GROOVEお兄さんのお仕事いろいろ』を発掘しました。

94年ですね。アルバム『ビタミン』が出たあとです。
この当時、ソニー・マガジンズからは、ミュージシャンの文庫がドサドサ出ていました。
有名なのは木根尚登の『鉛筆を削って』と、サンプラザ中野の『青春ピコポコポコポコ』かなあ。
他にも米米CLUBやBOOWY尾崎豊ユニコーンリンドバーグ、スカンチ、徳永英明と、「らしい」ラインナップ。
 
そんなオシャレーなラインナップにこれですよ。
中身全く音楽の話ししてない。3人のコラムもない。
お仕事をいろいろ紹介しています。
メジャーデビュー当時の電気らしい内容です。
 

3Kとか流行ったなー。今の仕事にも当てはまりますけどね3K。便利な言葉。
一応子供が読む本、という体裁になっておりますが、当然そんなことは書いてないです。
「みんなもこの本をよむ見て、大人になったらなるべくラクチンでお金をいっぱいもらえる仕事ができるようにお勉強しよう」
はーい。
 

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お仕事例。

病人。
(突っ込んだら負けだと思っている)

いっけん、なんの社会的貢献もしてないように見えるお仕事ですが、病院や製薬会社の大切なお得意さんで、そうぎやさんの潜在的顧客というみすごせないポジションにいます。また、健康保険や生命保険からかくじつな収入が見込めることも病人の役得です。

んーーー???
これ、なんか今の世相とかぶってないか?
 

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真面目な職業についてもちゃんと(?)載っています。
Jリーガー。

「昔はあまりパッとしないスポーツでしたが、近ごろ急に人気が出たため、みんなにこにこにゃんにゃんになっています。今ならとにかく女の人にモテるので、これまでモテなかった人はチャンス!」
このへん時代を反映してますね。Jリーグできたばっかりのころだ。
「ハデに暴れてじゅうぶんに目立ったら審判に蹴りでも入れて、イエローカードなんかをもらって早々に引っ込まなければなりません。あまり真面目に走り回っていると選手生命が縮むからです」
このへん考えたの多分卓球だと推測。
しっかし、漢字とひらがなの基準が全くわかりません。「じゅうぶん」と「蹴り」だったら、蹴りのほうが読めないだろ。
 

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劇団員。

「お芝居でわき役を演じるお仕事です」
「「夢」や「サクセス」という言葉が大好きです。劇団の公演で名前のついた役をもらったあたりが毛虫からさなぎへの出世といえますが、たいていのさなぎはそのまま腐ってしまうか冬虫夏草になってしまうのが現実です。こんな、子供でもわかる現実に目をそむけ、きょうもデパートでのぬいぐるみショーのバイトに汗するのが劇団員の仕事です」
 
当時の電気グルーヴの曲って、まあ基本ネタではありました。
けれど、猛烈な虚無感が根本にあった。
 
お笑い。

漫才ブーム以降はそれなりの脚光を浴びるようになりました。ただし、それにともなってお笑いになりたいなどという考えなしも増えたため、一部の頂点と多数のていへんの構造は変わっていません」
 

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アイドル。

「絶滅に瀕したお仕事です」
「昔は一世を風靡しましたあ、最近はあまりパッとしなくなりました」
あー。このへんは時代の間を感じますね。
ピンアイドルが落ち着いてきて、バンドブームが到来、アイドル氷河期。
97年にモー娘。が出て、アイドル業界は華やかになりました。
今はもう、石を投げたらアイドルにあたる時代なので、改めて卓球と瀧に語ってもらいたいですね。
 
追っかけ。

「へんてこな格好で、妙ちきりんなプレゼントを手にもっています。どうでもいいことを書いた手紙を渡そうとしたり、逆にアーティストが身につけているものをむしりとったりしようとします」
「まったく収入がないように思える不思議なお仕事ですが、日本全国を飛び回っているところを見ると、一般人にはわからない特殊な収入があるのかもしれません。もちろんモテません」
今もいるのかな。90年代は顕著でしたね。
女性に大して身も蓋もないことを言うのが電気。「君はほんとにブスだからー」とか。
 
バニーガール。

「おもな仕事はバニークラブや欽ちゃんの仮装大賞です」
今バニーじゃないんだよねー。非常に残念。あれは性の目覚めの一つだったのに。
「バニーガールになることが許されているのは美人でスタイルのいい女の人だけで、それ以外の女の人がバニーガールの格好をすることは犯罪となっています」
「バニーになれないのはブスの人やデブの人やチンチクリンの人のような産業廃棄物の女の人ですが、そうした人のためにはワニの格好やカニの格好、ウニの格好が用意されているので安心です」
世の中の女性は二種類ある。バニーガールと、バニーガールじゃない人だ。
 

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テクノ・ユニット。

ちゃんちゃらおかしいことに楽譜も読めなければ楽器も弾けません。すべて機械におまかせなので、テクニックもいらないのもすごくラクチンなお仕事です。ただし、テクニックがないというコンプレックスは強く、なにかというと「センス」を強調したがります。シンセサイザーサンプラーが近くにないときは、まったく社会の役にたちません。それ自体ではなんの価値もない、納豆菌のような存在といえるでしょう。

あえて電気が自分たちを語っているとしたら、この項目。
「電気ビリビリ」と「マイアミ天国」の歌詞を思い出します。

今が旬のまがいもの 
それがパンク ハード・ラップ テクノ ハウス(イージー!)
辞書を引いても載ってねえ(イエロー)
ページ引いても載ってねえ
ヘビメタよりも音でけえ
だけどパンクスよりも気がちっちぇえ
(中略)
人にばれなきゃオリジナル(リサイクル)
濃いも薄いもミクスチャー(リミックス)
人のモノでもサンプリング(ドロボー)
全部まとめていただき
(「マイアミ地獄」)

電気ビリビリデジタルDG 今だに生身じゃ恥ずかしい君の頭の中にはICあるか、俺の頭にゃLSI
頭もピッカリLEDヒューズもふっとぶ高圧電流
DG自慢のリズムマシンは、消費電力7000W
 
K太はDJ、俺はDGどっちも電気にありがとう 
全ての音をかっぱらえだけど停電だけが恐ろしい
DGDGCQCQ応答応答ハイハイハイ
デジタルリズムでデジタルハイ 俺らDGデジタルスラッシャー
 
電気ビリビリデジタルDGどうだい見てくれすげえだろ
俺の自慢のスペシャサンプラーだぜ特別限定リミテッドエディション
黒いボディのデジタルマシーンだターボチャージャーもついてるんだぜ
サカモト教授小室哲哉コモロ諸島でももってねえ。
(「電気ビリビリ」)

ものすごいコンプレックスと虚勢感。
デビュー当時の電気の、特に石野卓球の持つ「何もない」感覚、何かを侮辱するようで実は悲しみを抱いている感覚、人生結局からっぽだよ感。
電気GROOVEお兄さんのお仕事いろいろ」はひどい下世話なネタばっかりです。でも一個一個を考えていくと、どうにも切ない、やりきれない。
夢をおっかけてもかなわないのが現実じゃないかい。
お金があればというけれどお金もないよ。
何をやっても人生滑稽な空回り。

今じゃ言えない秘密じゃないけど
できることなら言いたくないよ。
今話しても仕方がないし
でも言いたくて仕方がないし
 
学校ないし家庭もないし
ヒマじゃないしカーテンもないし
花を入れる花瓶もないし
嫌じゃないしカッコつかないし。
 
仕方ないなとわかっていながら
どこかイマイチやりきれないよ
先を思うと不安になるから
今日のところは寝るしかないね
 
学校ないし家庭もないし
ヒマじゃないしカーテンもないし
花を入れる花瓶もないし
嫌じゃないしカッコつかないし。
 
話すコトバはとってもポジティヴ
思う脳みそほんとはネガティヴ
バカなヤングはとってもアクティヴ
それを横目で舌打ちひとつ
(「N.O.」)

何度聞いてもやりきれなくなる。
「N.O.」は珍しく、正面から卓球の思想が出ている曲。
他の曲は基本茶化して笑いに変えていました。
最近はここまでの虚無感はない。やっぱり円熟したんだなーと感じます。
(それでも昔ながらのやりかたで音を作ることにこだわる卓球が大好きです)
 

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「お仕事いろいろ」は大変頭の悪い本。
でも90年代の漠然とした不安や、バブルのとんちんかんさ、その裏に眠っている人間たちのブルースを、かなり鋭くついた本だとも思います。
だから電気が好きなんだよなー。
まりんがとっても楽しそうにしているのがいいですね。
 
最後。
タキ

やっぱただの悪ノリな気がしてきました。
 
終わり。


 

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