たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「俗・さよなら絶望先生」のOPとEDが作る物語

「俗・さよなら絶望先生」OPに隠された謎
今までのOPはモノクロでしたが、少しずつフィルムが劣化していくという特殊な演出がされていました。
特に12話のラストではフィルムが巻きついて切れてしまい、可符香(P.N.)と首を吊った糸色先生がカットされるという、なんとも後味の悪い終わり方を迎えました。
ここまできたら、最終回のOPはどうなるのだろうか、もしかしてみんな死んでしまっているのではないか!?と不安になったものですが、ここにきてまさかのフルカラーでした。
しかもただのカラー化じゃあない。背景も何倍も派手になってよみがえったのです。
まず一番鮮やかで分かりやすいシーンから。

こちらが10話のモノクロのシーン。12話では切れてしまったところです。
そして13話ではこうなりました。

ゴージャス&ロマンス!
これがまた、普通のアニメカラーとちょっと違うんですよね。白黒フィルムに実際に色を塗って映写していた頃の再現のような色選びをしているのがすばらしい。
時を追ってフィルムは劣化し、そして最後の最後によみがえったのですよ。
いや、本当に蘇ったのか?
 

●浮世。●


これが最初のOP。
モノクロの中でみんなが踊るユニークなシーンですが、大幅どころではない、むしろ別物になりました。

浮世絵の前で踊る面々。色とりどりのスポットライト。
ああ、まるで別世界。色味はかなり古い、それこそ浮世絵のような色のためかなり特殊な印象がありますが、今までの鬱が一気に反転したかのようなとんでもない描写になりました。

背景は歌川国芳の『みかけハこハゐがとんだいゝ人だ』。役者が美人画をはじめ、春画や妖怪やだまし絵などのような一風変わった浮世絵を得意とした浮世絵師です。
俗・絶望OPは解体新書をベースにしたグロテスクメインの作品ですが、歌川国芳も妖怪画を描く際に骸骨などを詳細に描写しているのは興味深いところ。
実際に解剖学を学び、描いたという説もあります。
 
彼が絵を描いていた「大御所時代」と呼ばれる化政期(1804〜1829)は、エログロナンセンスが人気を博した時代でもあります。
政治が緩んで町人文化もブワブワと広がった時期なのですが、ちょうどそのころ「天保の改革」が行われたことで恨みつらみが爆発。
そこで心を反映するかのように、妖怪や幽霊のような魑魅魍魎の物語や浮世絵が愛されるようになります。

浮世絵の前で踊り狂うカエレと、超高速で絶望先生の後ろを流れる浮世絵の背景。
今までの廃れていく鬱屈とした世界が、急に開けていく様子はまさに、絶望先生世界の「浮世」です。
 
「浮世」という言葉は、戦国時代の戦乱と死の恐怖から抜け出し、気楽に今の世(江戸時代)を生きようじゃないか、という意味合いがあります。「憂き世」から「浮世」に、なんて話もあるようです。
明るく楽しく生きよじゃないか、はあそれそれ。
今までの絶望先生OPが、死の臭いをまといながらどんどん消えてしまいそうな「憂き世」ならば、13話で一気に、ただカラーになるだけではなく派手さ何十倍にもなって戻ってきたのは、まさに「浮世」的なのです。
 

●躁●


OPの一瞬に挿入される「躁」の字。左が最初のもので、右が13話のものです。

前作より。
躁と鬱は隣り合わせ。どちらかが先にくるものではありません。
鬱が重なり、酷さをますほどに反動で躁の波がやってきます。
12話のOPまでの道のりが、暗く陰鬱とした心の現われだとしたら、13話の過剰なまでの色使いはまさに反動の「躁」を描き出しているかのようです。
 
俗・さよなら絶望先生」は、「サザエさん」のような形式で進むため、一貫したストーリーはありませんでした。その細切れ感と詰め合わせっぷりがたまらないのですが、通してみるとこのOPの緩急が、確かに一つの物語になっているんだなあと思ってなりません。
特に12話の失われたフィルムの恐ろしさと、13話での鮮やかさの比を見ると顕著です。
しかしここで「ああ、よかったね!」と言えないところが、なんとも自分でもうがっているなとは思うのですが。
ようするに鬱屈がたまってたまって、最後に「躁」になったわけです。その躁のあとの反動たるや。あがりきったテンションから一気に突き落とされる「鬱」の恐ろしさよ。
絶望先生は13話OPで、最初のように首を吊ることになります。前回はカットされていたのですが、そのシーンはあせた色です。明るいシーンじゃないですしね。
糸色先生は、躁と鬱の中でどんな浮世を見たのでしょうか。
 

●EDのマジック●

なんともシャフトらしいんですが、EDも最終回だけ違うというむちゃなことをしでかしました。今回はレトロ洋物ホラー風。ちょっとB級風。

最初のEDが病室、次のEDが町を一人歩き思いにふける先生、最後がモンスターと化した先生。
この組み合わせもなかなか興味深いです。いずれも耽美性の味が強いんですが、その前のEDで首吊りの縄を見ながら自虐していた先生が、今回は貪り食らう側として、締め。
色々な映画のパロディとはいえ、選び方描き方にはため息をつきつつ、「本当にこっているなあ」と感服です。
 
しかしこれだけ凝ったら大変でしょう?
Bパートの久藤くんの落語の「色と声がついてるー、怖い怖い」のネタにあわせたというのもあるんでしょうが、それにしたってOP・EDをちょいちょい変えるとは…。

エンディングとオープニングが本編を圧迫します。
現在はひだまりを圧迫しています。

やっぱり大変だったみたいです。お疲れ様です。何度も見るほど楽しませていただきました。
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
おまけ、今日のエロス。

霧ちゃんが湯浴みしているシーンもいいのですが、ここですここ!
なに、エロくないですと?
よくみるんです。

こたつの中の汗ばんだ足よ!
ああ、霧ちゃん。色々なエロスをありがとう。
 
〜関連記事〜
「俗・さよなら絶望先生」OPに見る躁の心とエログロナンセンス
「俗・さよなら絶望先生」OPに隠された謎
「さよなら絶望先生」OPにみる、少女解体とオブジェ観
「俗・さよなら絶望先生」第7話が、フリーダムなのに原作準拠なのがすごい
「絶望先生」でシャフトが描く、藤吉さんのスパッツの美しさよ
「絶望先生」でシャフトが布教する、霧ちゃんのスパッツの輝かしさよ。
ボーカロイドほぼ全員集合!「俗・さよなら絶望先生 最終回」

俗・さよなら絶望先生 サウンドトラック空想ルンバマリオネット俗・さよなら絶望先生 第一集【特装版】 [DVD]