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学園物4コマが終わる転機は「卒業」だけなのか? 〜4コマまんがのフォーマット〜

WEB拍手より。

卒業ってのは学園漫画の一つのターニングポイントですよね
みつどもえ」のように当初からサザエさん時空である作品なら別ですが、「けいおん!」はきちんとリアルタイムで進んでる作品なのでいきなり途中からサザエさん時空にするのは無理があるのでこれはないと思います
あずまんが大王」のように卒業とともに終了というのも後腐れしなくていいとは思いますが、やっぱりファンとしては終わってしまうのは悲しいですし、ここまで商業的にも成功し、さらにまだブームが続いてる作品を終わらせるとはちょっと考えづらいです。「らき☆すた」のように卒業しても続けるというのも一つの手です。
特に「けいおん!」はバンド漫画でもあるので卒業しても放課後ティータイムは解散しないという手を使えば長く続けられます。ただこの手を使うと学園漫画では無くなってしまいます。「けいおん!」は学園漫画のノリも大切にしていると思うので学園漫画らしさが無くなってしまうのはちょっと違和感を感じるかもしれません(まあ四人が同じ大学に進めば話は別ですが・・・)
「キャプテン」のように卒業させて後輩を主人公するというのも一つの手です。梓は人気もありますし主人公に繰り上げても大丈夫でしょう。ただこの手は四人は卒業してしまうので四人のファンは悲しいですし、卒業してしまうと部員が足りなくなるので新入生が入ってくるでしょう。
この新入生がうまく「けいおん!」に溶け込めればいいですが溶け込めないと四人のほうが良かったと言われ兼ねません(まあ憂や純を使えば最小限には抑えられそうではありますが・・・)。
個人的には一度終わらせて憂ちゃんあたりでスピンオフというのも面白いとは思います。

けいおん! (1) (まんがタイムKRコミックス) けいおん! (2) (まんがタイムKRコミックス) けいおん! (3) (まんがタイムKRコミックス)

けいおん!」のコミックスはリアルタイム進行なので、もう現時点で3年生の学園祭終わっちゃったんですよね。このペースだと4巻が出るくらいで卒業までいってしまいそうです。時間と内容のタイミング的に4巻ぴったりかどうかはちょっとわかりませんが…。
このスピード、通常の学園もので考えるとびっくりするほど早いんですが、学園物4コマだと比較的よくあること。
コメントに書いてくださったように、「あずまんが大王」がその典型、というか典型を作った、という気がします。やっぱり学園4コマにおいて「あずまんが大王」フォーマットは絶対欠かせません。
 

●4コママンガのフォーマット●

けいおん!」は、いわゆる「ストーリー4コマ」のうちの「萌え4コマ」に当たります。受け手側から見て「萌えかどうか」は全くバラバラですが、出版社側は意図的にきらら系列は「萌え4コマ」というフォーマットで出していますね。
「4コママンガの終わり方」を考える際、4コマフォーマットの分類を整理する必要があります。
以下、簡単に分けて見ます。
 

1、単発4コマ
新聞4コママンガのように、4コマで完結しており、次の4コマに話が続かないもの。月刊ものでもばらばらなネタの詰め合わせ的に成立する場合は時間軸なし。植田まさし先生なんかもそのパターンの継承者。かつては通常「4コマ」とだけ言うとこれを指す事が多かったが、最近ちょっと下記の3が増えているので少し語義は変わりつつある。
 
2、不条理系4コマ
伝染るんです」や「G組のG」のように、一定のパターンやキャラの交錯がありつつも、オチがあるのかないのか分かりづらいのが面白い4コマ。これも4コマで完結していて、物語的な展開はあまりなし。時間の軸の概念すらもなくなること多し。ただし1回の掲載につき1回ずつクセのあるキャラが出てくる、というパターンを踏襲していることが多いのがちょっと特徴的。
 
3、回単位ストーリー4コマ
今4コマ誌に載っている作品でかなりの比重を占めているのがこれ。4コマ同士のつながりがあったりなかったりしながら、月単位で一つの作品になっているもの。季節ネタを盛り込む作品はだいたいコレ。さらに時間の分け方でフォーマットが異なる。
A・「その次の月とは余りつながりがないものの、ゆるやかに時間が進む作品」
けいおん!」や「ひだまりスケッチ」「あずまんが大王」など、萌え4コマの学園もので年を取るタイプの作品に多い。また小笠原朋子先生のような、ほんわかラブコメディ4コマを描く場合にも用いられる。
B・「人間関係や時間軸は変わらないもの」
日常の切り取りに特化しており、完全に回単位で物語が終わり、オムニバスになっているもの。何度も同じ季節ネタを繰り返せる強みがあり、学園絡みではないものだと圧倒的にこれが多い。最初から長続きさせるつもりで描かれている、「ファミリー系」と呼ばれる「まんがライフ」「まんがタイム」などの系列や、パロディ系に多い。
C・「新キャラが増えたり人間関係が変わりつつも時間は変わらないサザエさん時空
「ちとせげっちゅ!」や「らいかデイズ」「サナギさん」など。こちらも季節ネタのギャグを重ねられる強みがありつつ、比較的ストーリー性や人間関係に比重が置かれる作りになることも。
 
4、一貫ストーリー4コマ
4コマの形式を借りてストーリーマンガを描く手法。4コマごとに切られているけれども次の4コマ、次の月、と話が普通につながっており、一つの作品で一つの物語になっているタイプ。「恋愛ラボ」「男爵校長」などがこれ。一応4コマとしてのオチもあるけれども、オチすらなしで話がどんどん続いていき、4コマの区切りを使って魅せるストーリーマンガ形式のものもある。「柩担ぎのクロ」「ひとには、言えない」など。

かつては3、4を「ストーリー4コマ」と呼んでいましたが、今は3が圧倒的に大多数を占めているため、会話中で「ストーリー4コマ」といわれると4のタイプを指す場合が増えてきました。
もちろん厳密には作品ごとに色が異なってきますが、作品の時間の流れは大きく分けてこんな感じになります。主に雑誌の形態に合わせて、また作者の意向にあわせて変化していくため、途中からのシフトチェンジ作品も多いです。極端なものだと1からシフトチェンジして4になる作品などもなくはないです。
 

●終わり方とフォーマット●

さて、4コママンガの「終わり方」を考える場合、このフォーマットが非常に重要な意味を持つことがあります。
というのも、「それらのフォーマットを取っている=読者層を意識している」ということだからです。
今回は全部見てもきりがないので、「学園もの」という点に絞ってみます。
 
もう終わった作品から、いくつか例を挙げてみます。
まず「さゆリン」
さゆリン (1) (まんがタイムコミックス) さゆリン 2 (まんがタイムコミックス) さゆリン 3 (まんがタイムコミックス) さゆリン 4 (まんがタイムコミックス)
大雑把で適当な感じの明朗快活ヒロインのさゆりが、割と真面目な男の子高品くん、おとなしいまとめ役イズミさんと繰り広げる学園コメディです。掲載誌は「まんがタイムジャンボ」。
基本的には月単位で季節ネタを交えていくフォーマットを使っており、人間関係は進展しそうで全然進展しないままの、いい具合のぬるま湯のまま終わりました。よって上記の見方だと「3-B」です。
はて、この作品のラストがどう終わったかと言うと、ネタバレもへったくれもないくらいものすごい唐突に、どうでもいいところで終わりました。
いや、ほんとどうでもいいところなんですよ。
だって最後のコマのヒロインさゆりの台詞が「しかもお尻にやさしいエンボス加工」ですよ。えっ?そこで終わり!?
これ打ち切りでもなんでもなく、意図的にされたちょん切り方です。

4コママンガの基本を踏襲しました。キャラの関係を変化させず、大きなテーマを作らず、できるだけ普通の日常を描いたつもり。
(あとがきより)

ファミリー向けの、ベーシックな4コマだと比較的こういうぶつ切りは存在します。ようは「この世界はまだまだ終わらないけども、作品は終わりですよー」という締め方です。
ファンとしてはすっかり「学園もの」という見方で見ていたのでびっくりしましたが、うん、考えて見たら4コマって元々そういうの多いですものね。その次の作品の「あさぎちゃんクライシス」がおもしろエロいのでOKです。
 
次に共鳴せよ!私立轟高校図書委員会
共鳴せよ!私立轟高校図書委員会 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス) 共鳴せよ!私立轟高校図書委員会 (2) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス) 共鳴せよ!私立轟高校図書委員会 3 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス) 共鳴せよ!私立轟高校図書委員会 4 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
結構まじめに図書委員会をこなしつつも、ネットオタク、ゲームオタク、BLオタクなどがナチュラルに混じってカオスになっていく、学園コメディ。オタクマンガというよりは「文系だとこんなんなるよねー」というのを、あるある+ないない交えながらどたばたと描いていく作品で、時折定期的に普通のコマ割のマンガが混じる変則型の4コマです。掲載誌が「ゼロサム」というのもまた特殊。
キャラがどんどん増えていくタイプの作品で、それぞれの個性を生かしたストーリー性もほんのりあるのがミソですが、実質そんなに物語性はないです。時間の経過も季節感もさほどなく、延々と図書委員の作業をどたばたとし続けています。回によっては一気に話がつながることもありますが、全く4コマごとにつながっていない場合も。なので「3-C」とします。
この作品のラスト、卒業とか一切しません。一応「ありがとうございました!」とか「閉館」とか終わりっぽいことしていますが、内容的には「まだまだこいつら図書委員続けそうだなあ」というヒキで終わりました。

そういうわけで、これから先、何の目標もなくまた同じように1年続けるのは無理だなぁと思って、まさに「起承転結」という感じの4巻目で閉幕させて頂くことにしました。
(あとがきより)

ばっさり終わり、とまでは行かず、しっかり「終わりますよー」という着地をしつつも、基本的には特に何かがあるわけではなくスルッと終わります。
これも典型的な学園物なので卒業エンドかと思いきや、全く卒業のにおいを漂わせもしなかったのでかなりびっくりしました。確かに時間が具体的に流れているようでもないんですよね。
書き手側が意図的に終わらせた、というのも含みつつ、「この図書委員の空間はいつまでも続くよ」という含みも持たせており、4コマらしい終わり方だったとも言えます。
 
そしてもう一つ。みずたま注意報
みずたま注意報 1 (バンブー・コミックス) みずたま注意報 2 (バンブー・コミックス) みずたま注意報 3巻 (バンブー・コミックス)
天気が何故か100%予測できるという特殊能力を持ちながら、全然生かせないくらいのんびりまったりした幼稚さが魅力な女の子雨音玲音と、幼馴染の紙フェチの秀才石塚晴太の淡い恋愛模様を描いた作品。掲載誌は「まんがライフオリジナル」と「まんがライフ MOMO」です。
まんがライフ」などの系列は一応「ファミリー向け」のくくりに相まって、一人目立つ特徴のキャラクターが主役というパターンが非常に多いです。というのも、購読者が「どこから買っても分かる」というのが重視されるため、明確なキャラクター性が重視されるから。玲音の「天気予報100%」はその流れの一環です。
しかし山東先生は4コマでギャグを重ねながら、人間関係の機微をほんとうにミルフィーユを作るように積み上げていく作家さんです。すごーくゆるやかではありますが、時間は経過します。そこから後半、怒濤のように物語が産まれていく様は必見。「3−A」から「4」にシフトチェンジした形態です。
2年生だった玲音は色々な人との出会いを繰り返し、でこぼこコンビだった幼馴染の晴太との絆を模索していきます。そして最終回では…おっと、これはネタバレですね。内緒です。
最終回は卒業し、大学入学で締められます。物語の締めと人間関係の一つの節目を重ね、物語はがっちりをエンディングを迎えます。
4コマはギャグが基本ながらも、物語重視の場合はストーリーマンガ同様、明確でしっかりした風呂敷のたたみ方が要求され、それを満たした作品は読後確実に心に残ることを体言したようないい作品です。
 

●4コマで「卒業」がよく使われるように感じるワケ●

学園生活ものの4コマは、こんな感じで「ばっさり終わる」か「しっかり終わる」か、かなり幅があります。では学園萌え系4コマにあたるものはというと…「卒業で節目を迎えるもの」と「ばっさり終わるもの」と……「最終巻が出ない」ものが多いかと。
特に最後が多いからすごい困る。4コマは一冊が出るまで長いので仕方ないのですが…。
いみぎむる先生の「キミに幸アレ!!」なんかはキレイに2巻で、卒業にもならずばっさり終わっていますね。ガム掲載で単行本あわせだったのかも知れませんが、なかなか4コマらしいすっぱり感。こういう作品なにげに多い気がします。
 
はて、それでも卒業が節目になる作品が多い、という感覚は大いにあります。というのも、ストーリーマンガよりも「月刊誌である」というのが最重要事項である4コマ場合、区切りを持たせるには最大の月行事である卒業がもっとも明確で分かりやすいからです。季節ネタが多くなるほど「卒業」の匂いが強くなるのもまたしかり。
また、少年少女達がわいわいやっている楽しい時間、中学、高校、大学時代を描く場合、「卒業」というピリオドがその時間が特別であることを表現することにもつながります。終わりがあるから、特別なんです。
あとは共感の得やすさ。卒業したことのない人間はほとんどいないはずだからです。
 
もちろん、安易になんでも卒業させればいい、というわけではありません。しかし「今この楽しい時間にも終わりが来る」、その事態にいかにキャラが向かっていき成長するかは見せ所の一つとしては非常においしいのもまたしかり。
4コマでギャグを見せながら、卒業でどう締めるか、それは作家の腕の見せ所でもあります。
あずまんが大王」がすごいのは、ちゃんと卒業して終わらせたからだけではありません。最終回でゆかり先生があるセリフを言ってくれるからだと自分は思っています。(あんたらは〜のくだりの部分)。あれこそがあずまきよひこ先生の腕だと思うのです。そういう味付けができるかどうか、卒業をどう捕らえるかが、作品を大きく左右します。
 
とはいえ、学園系萌え作品が絶対卒業式に向かっていくかと言えば、決してそうではありません。先ほど書いた区分けのように、フォーマットが違う作品も数多くあります。思っているほど卒業エンドは多くないのではないか?という気すらします。ただし統計を取ったわけではないので断言できません。
それでも「卒業式が来たら最終回」という印象が強いのは、卒業式がそれだけ印象的に描かれている作品を読んできたからだと思います。あとやっぱり「あずまんが大王」の影を引きずっているから。
 
らき☆すた」の最近の話が、卒業してすんなり大学生になっていることに驚いた人は自分だけではないはず。卒業という大事件すらものんびりした日常の一つのパートにすぎないという、ある意味割り切って冷めた目線にはびっくり。もっとも「人気があって終わらせられない」というのもあると思いますが、まさか何事もなかったかのように続くとは。これも「卒業=エンディング」という思い込みから出てしまった色眼鏡ではあるのですが。人生は卒業式で終わるわけじゃないですしね。
 
ストーリーマンガと違って、時間の流れを自在に操れない4コマならではの時間の流れの捉え方は、その作品ごとに大きく異なります。時間の流れを気にしながら再度4コママンガを読み直してみると、作者の時間感覚と掲載誌の方針の関係が見えてきて、ちょっと面白いです。
 

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はて、「けいおん!」がどうなるかは自分にはさっぱり読めません。なんせきららの看板作品になっています、売り上げの関係もあるでしょう。
ただ、ざっくりと卒業式に終わるのもありかもしれないなあ、とは思います。4コママンガで3から5巻完結が多いのは、サイクルの問題だったり作者さんが新作を描けるように道を作る関係だったりするとも思いますし。
終わって欲しくない!という思いも当然あります。4コママンガをストーリー的に見ているから、なんですが。いわば「マリア様がみてる」が祥子様の卒業を迎えつつも、スピンオフや外伝でじわじわ続いているあたりと似たような感覚を期待してしまいます。
けれども「けいおん!」自体は割とでかい事件もさらっと流して、ほんわかした空気を維持することに長けたマンガでもあります。あんまり事件らしい事件がないし、あってもすぐ終わるんですよね。「えっ、終わり!?」という感じで終わるのも、ある意味この作品らしいかもしれません。
という建前。
本音「終わって欲しくないよう! 大学に行っても放課後ティータイムやってくれよう!」。
(こうして置いてきぼりをくらいます。)