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まだまだ続く、中野梓の憂鬱「けいおん!!」第五話 その2

第五話感想、その1からの続きです。
純ちゃんマジAKY(あえて・空気・読まない)かわいい。「けいおん!!」第五話 その1
1では純ちゃんに焦点を当ててみましたが、こちらでは梓にスポットを当てて5話を振り返ってみます。
ではネタバレ有りなので収納。
 

ペロペロ(^ω^)
 
 
 
 

●光と影●

さて、話の内容自体は極めて明るく楽しい回でしたが(純ちゃんがムチャクチャなせいで)、たぶん多くの人が「暗いカットが多い」と感じたんじゃないかと思います。
ここでいう暗いは雰囲気ではなく、文字通りの光の暗さです。

学校探検の、わくわく楽しいシーンですが、やけくそなまでに校内暗いです。
まあ誰もいない日ですから当然ではあるんですが。それにしても暗い。

部室に行ってトンちゃんに餌をやり、そのあとセッションにまで入るのに、部屋の電気つけないんですよね彼女たち。
アンプの音は出しているのに。
また、某漫画の6巻を探すシーンでも、唯の部屋の電気をつけません。

暗いままで探します。
部屋の電気くらいつけてもいいのに、とは思うのですが、つけないんです。
時間にしてそこまで長い間真っ暗なワケじゃないんですが、とにかく暗い、電気をつけないシーンが非常に多めな上に、心に引っかかるような場面が多いため、終わった後「明るさ的に暗い回だった」という感覚が強いです。
 
それに対してのカタルシスがきちんと用意されています。
セッション後の軽音部室。

レンズフレアを使いながら、雨が止んで夕日の差し込むこのまぶしさ!
ちょっと使い方を間違えると押し付けがましくなってしまいがちな演出でもありますが、この「暗さ」が適度に強調されていたため、夕日によって一気に明るくなるシーンの爽快感は半端ではありません。
この夕日の光は、彼女たちの中に生まれた新しい友情の開け方の象徴でもあるでしょう。
また上級生チームが「こちら側」に帰ってくることへのわくわく感でもあることでしょう。
くっきりした明暗が3人を眩しく照らしています。光が差した瞬間、彼女たちの不安は一つ取り払われます。
が。
差してきたのは夕日なんですよね。
このシーンの後に、上級生+梓の「軽音部」が再度集結し、「けいおんぶ」のキーホルダーを持ち寄ることになります。
とてもとても、心のあったまるいいシーンです。
が。
夕日はその後に沈み、夜になります。
暗闇にさしてきた夕日が沈み、また暗くなるのはあっという間なのです。
まさに、過ぎ去っていくわずかな瞬間。

純ちゃんが「ほら梓、もっとよって!」と言いながら撮った写メ。撮影しているのは憂ですね。
この微妙な、恥らいと不安の混じったような複雑な表情こそが、今の梓の心境そのものです。
嬉しいんです!楽しいんです! でも、ちょっとだけ固いんです。
 

●自分の知らない場所で●

梓は一人でライブハウスに行けるくらい行動力のある子です。
おそらく、家族などとも練習していたでしょうし、他のバンドの演奏も数多く見てきていることでしょう。
(ただ、人前でバンドを組んでやる経験が少ないであろうことは、DVDのみに収録されている「ライブハウス!」での慌てっぷりを見るとわかります)
そんな彼女がジャズ研の部室を見た時のカットがこれ。

最近絶賛増量中の、俯瞰から少女たちを眺めるカットです。

純「ふふん、楽器の数ならブラバンにも負けないもんね」
梓「こんなに弾く人いるの?」
純「まあね」

「眺める視点」が多くなっている「けいおん!!」ですが、このシーンは圧倒的に多い楽器の数と人数、それに対しての少女たち3人という比較になっています。
憂はお姉ちゃんさえいればいいから、いいんですよ(よくはないですが)。
純ちゃんは、その大人数部活を見ています。
やはりここでの問題は梓でしょう。
 
以前も純ちゃんとの会話の中で「5人が結束しているから他の子が入りづらい」という話題が出ていました。
だから「この1年は5人でやっていきたい」と新人勧誘をきっぱり諦めたはず、でした。原作は少なくとも割りきって、今を楽しむ方向に動いています。
しかし「けいおん!!」での梓は、かなり毎回不安を抱いています。
人数の少なさ、3年生が卒業したときに自分だけが取り残される寂しさ。
 
一期の9話で梓は、ライブハウスで他のバンドの演奏を見ながらも、なぜかこの軽音部に惹かれてしまう心に戸惑っていたことがありました。
人数じゃない、技術じゃない、この軽音部に惹かれているんだ、でもなぜ?
そう感じていることを強く噛みしめて泣いたこともありました。

梓「分からなくなって……どうして軽音部に入ろうとしたのか。どうして新勧ライブの演奏にあんなに感動したのか……。しばらく一緒にいてみればきっと分かると思ってやってきたけど、けどやっぱりわからなくって!」

梓「(唯先輩はまるで音楽用語知らないし、律先輩のドラムも走り気味なのに、4人そろって演奏すると、どうしてこんないい曲になるんだろう。どうして……)」
澪「梓、なんで私が外バン組まないか聞いたよね」
梓「はい」
澪「やっぱり、私はこのメンバーとバンドするのが楽しいんだと思う」
梓「えっ?」
澪「きっとみんなもそうで、だからいい演奏になるんだと思う」
(「けいおん!」9話より)

「中野あずにゃんの憂鬱」と、ゆるさを維持する努力。
後者は原作にもあったセリフです。
こういう波を乗り越えてきて、それを噛みしめ、強く握りしめた!
だからこそ、今こんなにも楽しい、先輩たちがいてくれるのが嬉しい!
バンドやっているのが、こんなにも楽しい!
 
けれども、高校生の女の子に「だから安心しなさい」と言うのはやはり難しいです。
大人数で今後も次々後輩が入ってくる部活を見れば、やはり漠然とした不安にもかられます。
かられるけれども、決して口にはしません。もう決めたから。
でもそんなに簡単なもんじゃない、よね。
 

●下級生と梓●

非常にぐっときて、見ていてなんだか泣きそうになってしまうシーンがありました。

ここです。ハウス名作劇場的下級生にギターを教えるシーン。
ギターは普通にストラトっぽいですね。ギターの入門編ならやっぱりストラトよねー(部屋に置いてある、触ってないギターを見ながら)。
つかまあ、泣くようなシーンではないですよね。
でもね、梓がここではじめて先輩になるんですよ。
今までずっと下級生だった、今までずっと小さい存在だった彼女が、先輩として下級生に教えているんですよ。これってすごいことじゃないですか。
おそらく軽音部にずっといたら出来なかったシーンでしょう。しかし、彼女にはこういう「可能性」の未来もあるんです。
ものすごい極端な話。仮にですよ、あくまでも仮に。
新入生がいなかったら、軽音部自体は廃止されて「放課後ティータイム」というバンドを大学生の唯達と続けていくのか?
それとも新入生が入ってきて軽音部を存続し、高校生バンド「放課後ティータイム」はなくなるのか?
それとも……。
 
ベストなビジョンとしては「放課後ティータイムは継続」「軽音部には憂や純ちゃんや新入生が入って存続」「梓はかけもち」なんて夢も有ります。可能です。
可能ですが、そんなにうまく行くとは限りません。
自分が梓の立場なら、下級生のいる部活を見て、いろんな思いが湧いてきて止まらなくなりますよ。
どうすればいいか、分からなくなっちゃいますよ。
どうすれば……。
 

●不安●


修学旅行中、先輩たちは楽しく過ごしている。
もしかして私のことなんて忘れてるんじゃないだろうか。
いや、忘れてたって仕方ないのは分かってる。悪いわけじゃない。けれども……。
このシーンは梓が布団の中で、杞憂に溺れているシーンです。
杞憂なんです。そもそも梓が慕っている澪が、そんなことを言うわけがないのは分かってる、分かってるんだけれども。
(原作では唯が「忘れてはいないけどお金がなくて、ピックを買って渡す」という展開でオチてました。うん、唯なら仕方ない。)
 
普段とは違う、別の人間関係。いつも一緒にいたはずの人がいない世界。
いわば、5話のシチュエーションは「今後起きるであろう世界のシミュレーション」なわけです。
梓自体それほど精神的に強い子ではありません。非常に繊細すぎるくらい繊細な子です。だからこそ、感性のアンテナは非常に高くて、たくさんのことに感動したり、「放課後ティータイム」の演奏に喜びを見出したりしているんです。
それがカウンターになって、必要以上に「失われる可能性のある未来」に不安を抱くんです。

基本的に彼女は愚痴ったりしません。先輩たちに注意する時も「下級生ポジション」を守って声にします。
しかし憂と純ちゃんという親友だけのいる空間では言えるのです。
「あーあ、いいなあ」と。
寂しいよ。
寂しいに決まってるじゃん。
 
明るく手を伸ばしてくれた憂の温かさを感じつつも、非情にも降りしきる雨。

けいおん!!」は、卒業までの1年のカウントダウン付き。*1
上級生チームでもっともそれを体現しているのは、ムギだと思っています。ムギは「最大限まで今を楽しもう!」としています。
そのためなのかどうなのか、ムギだけ現時点まで、一回もモノローグがありません。
二期はおそらく、今後も上級生の軸になるのはムギでしょう。
対して、残されるものとして、失われていく時間を体現しているのが梓です。
なんとも歯に引っかかるようなよろしくない表現だと思いますが、実際そうでしょう。もうどうしようもないです、時間はすぎるし、人間関係は変わるのです。
梓が考えているのは、悪い未来。寂しい未来。
けれども明るい、さらによい未来の可能性もあるんです。
でも、彼女はそこに気付いていないし、気が回らない。そりゃそうだ、梓はまだ高校二年生、理解・納得できるものじゃない。
 
この「梓取り残され問題」は、アニメではガチで描いていくようですね。
願わくば、彼女が時が流れていくことが、失われるだけではなく新しい可能性を手に入れる事もありうることに気づき、そしてよりよい地点に着地できますように。

この梓の微妙な表情が、まぶしさの中でさらに生き生きと明るいものになりますように。
 

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余談コーナー。
 
その1。

このシーンのパンのもっちり感がすごい!
いやまあどうでもいいっちゃいいんですが、こっちと比較するとよくわかります。

ドーナッツはポクッっと食べれるんです。でもパンは伸びる。
細かい部分が非常に丁寧だから、この世界は箱庭的理想郷でありながら、ファンタジーの枠に留まらないリアルも持ち合わせています。
 
その2。

このシーンを見て「フリクリ」思い出した人は握手。
 
その3。
次回予告なんですが・・・立花姫子がかわいすぎて!
 
笑ったよ!
唯の事見て、笑ったよ!!!!
ああー、姫子はほんと唯のこと大好き説を強く推したい!
 
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今使われているBD/DVDパッケージの梓の「ドや顔」のように、彼女の自信と「自ら動こう!」という活力が湧いていきますように!
 
※本感想は、本放送放送地域在住の友人が録画したものを送ってもらった上でキャプチャ・引用しております。
 
 

*1:もちろん、それ以降もらき☆すたのように続く可能性大!ですが。