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女の子は二人だ、二人で向き合うんだ!「O/A」2巻

最強の事後絵師とも言える渡会けいじ先生の「O/A」2巻が発売されました。
どのくらい事後かというのはサイトを見れば分かります。
Upper Ground
いやあ素晴らしい。実に事後。
 
さて、「O/A」は事後マンガではありません、ラジオマンガです。
が。
渡会けいじ先生の描く女の子の色気は留まるところを知りません。
個人的には、メインヒロインじゃないんですがライバルっつーかどうみてもかませ犬感満々の海江田ミホの色気がツボ過ぎてやばいです。
だってね! だってね!

ツインテールツンツン貧乳スパッツ裸足とか組み合わせダイヤモンドだろ!
殺す気か!
死んだ!
しかもだよ、しかもだよ。

渡会けいじ先生、あんた、あんたって人は……最高だよ!
 
なんかここだけ抜き出すと「そんなマンガなの?!」って聞かれそうですね。
実際はそうではないんですが、そうでもあるとだけ。
このへんのさじ加減がうまい。
 
いや、海江田ミホめっちゃいい素質のキャラなんですが、とってもいい具合のサービスキャラ、というか渡会けいじ先生描きたいこと描いてくれてありがとう!なキャラです。
 
ここまで書いておいてなんですが、まったく本の本筋に触れてません。
すいません。だってかわいいんだもん。
とりあえず一巻の分のレビューはこちら。
 
アイドルだって夢は見るし、毛も生えます!「O/A」
 
売れていたのに落下したアイドルゆたかと、売れない芸人少女はるみ。同じ声を持った二人の歯車がはまったのが一巻。
二巻から、二人の歯車は動き始めます。
ここで大事なのは二人だということ。
歯車って、二枚以上無いと回らないんだぜ。
 

●思いが通じ合うには時間が必要だ●

一人二役ではなく二人一役という発想が面白いこのマンガ、前回も書きましたがとんでもないくらい熱血です。
ラジオがテーマの物語なので、大きなアクションはあまりなく、ネタで魅せる作品。そのためパラパラめくってみるだけでは本当の魅力は伝わりづらい作品ではあります。しかしその中でも最大限画面に動きをつけ、じっくり読み進むほどに面白さが滲み出してくる構成は見事です。
 
で、構図の中心になっているポイントの一つは二人の位置です。

右がアイドルのゆたか。看板番組持ち。
左がジャージピン芸人はるみ。売れない。
この構図はなかなか象徴的です。なんだかんだでえらそうでわがままで気まぐれ、ちょっと子どもっぽいのがそんな簡単に治らないのがゆたか。そもそもこの家はるみの家だというのにこの有様。ジャージも一応作業のために着ていますが、こだわって「着こなしている」感を出しているのがね。
一方はるみは基本下っ端みたいな感じなので腰が低いです。ジャージもだぶだぶで「着られている」感が強いです。ゆたかには比較的なんでもガンガン突っ込んでいく芸人気質なんですが、ここでは二人が背中を向けているのがなんとも「らしい」。
 
確かに一巻の時点でゆたかとはるみは出会い、共にラジオという戦場で戦うことになりました。
しかしまだ「出会った」だけなんですよ。はるみはゆたかに余計なスキンシップを求めたりもしますが、決して打ち解けあったわけじゃないです。
そらそうよね。むしろ無理やり引き込まれて引き合わされて「二人で一役ね」なんて言われたって、ねえ。やるのは可能でも気持ち的に無理っスよ。
どうにもこうにも、二人一役はめちゃくちゃ進行。第三者としてゆたかをライバル視しているミホは言います。
くだらない番組だと。
しかし、くだらない、という気持ち分かるでしょうか。
 
その後一悶着あってゆたかとはるみはバラバラになってしまいます。
ミホはゆたかが一人で番組をやったのを聞いてこう言います。

「くだらない番組のほうが、つまらない番組よりよっぽどマシだわ」
なんてかっこいいんだろうミホ好き!!!!
……置いといて(ミホはメインキャラじゃないです僕が好きなだけです)。
二人一役というのがいかに歪かをゆたかとはるみは分かりつつも、うまく歩み寄れません。
その間の焦らしっぷりもすごいんですよ……渡会先生ほんとずるいよ、あんなに焦らされたらたまらなくなるよ!
 
うまくいきそうでうまくいかない。うまくいかなさそうで意外とうまくいく。
それはなぜか。二人だからだ。
女の子二人。そこには魔法が宿ります。
 

●女の子ふたり●

ゆたかとはるみ、二人がメインになってお互いの距離感を計っていくのが二巻なんですが、それを隠喩するかのように、今回は「女の子二人」が強く強調されます。

女の子大人数も、男の子二人も、やっぱり特別ではあるんですが、女の子二人ってのはさらに特別なんですよね。
これは投稿ハガキで来ていた「二人の女の子」のイメージ絵。あくまでイメージ。
しかしこの二人のぎこちなさはゆたかとはるみの距離感を遠まわしに表現しています。
ああこれって私たちみたいじゃないかと。

実際にその二人が会うシーン。
 
僕は女の子じゃないからわからないですけどさ。
女の子二人の親友が出来た時に、トラブルがあった時のぎこちなさといったらないんでしょうね。
殴り合って終わる人もいるかもしれないけど、どっちから謝ろうか、どうすれば元に戻れるかと試行錯誤至難することしきり。
しかしその、背中合わせで近づこうとして近づけないジリジリ感がこの作品に通っているテーマの一つでもあります。
この子たちがどうなったかは実際に読んでみてください。
とても渡会けいじ先生的なので(?)。
 
さて、個人的にもう一組気になっていた「二人」がいます。
ものすごいチョイ役で、話しに全く絡まないんですがインパクト絶大。
はるみの前に漫才をやっていたコンビ「ろーるしゃっは」。

うおおおい!
そのキャラと、そのキャラは……大好きだから!
な、なんてものを描いてくれるんだ……元ネタは推して知るべし。あかん、あかんよ、なんでこんなにぼくのツボを突いてくるんだ……。
このキャラ自体には全く意味が無いんですが(あくまでもゆたかの前のコンビ、というだけ)、ある意味理想的な「二人の姿」を演じているんですよね、舞台の上で。
これを見てゆたかが、はるみがどう感じたか、それはちょっと考える価値あると思います。
にしてもいいなあ。
誰かこのコスで漫才やってくれる女子中生いないかなあ。
 

●オレとお前で、「オペレーション・オーロラ」だ●

気づいたらものすごい勢いで近づいたり。
そうかと思ったら急に離れたり。
近づこうとしたら逃げたり、逃げようとしたら側にいたり。
女の子二人とは本当に摩訶不思議。
そんなぎこちなさを描いた二巻ですが、後半になって一気に盛り上がります。
ためにためた鬱憤をはらすべく、ゆたかとはるみは最高のカタルシスを掴んでこっちにぶん投げてきます。
さすがだ、さあこい、こっちはリスナーだ、どんとかかってこい!

溜めた分の解き放ち方の描写の熱血度の高さはこの作家さんの力量だと思います。
ほんとね、戦闘するわけじゃなし、ラジオですからやってることは地味なんです。
しかし、何もかもをかなぐり捨てて、共に手をとりあって爆進する二人の少女はこんなにもかっこいいんだよ!
片方ジャージというへっぽこぶりもいいよね。
 
まだまだ歪な二人一役のゆたかとはるみ。
しかし実は、二人二役、お互いにとって欠かせない存在になっていることにもうすぐ気づくかもしれません。
それ以外のことに気づいちゃうかも知れませんが……おっとっと。

それでもなんでも。二人の見ている光景が新しい世界を誰かに伝えることは間違いない。
おっちょこちょいでヘッポコプーでガタガタグダグダな二人ですが、エンジンかかってからの勢いが本当に心地いい。
ミホが「くだらない」と言い放った世界は、意外と明るくて眩しいんだよ。
 

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にしても相変わらずシモネタオンエアー。

毛にこだわりすぎ。
そんなに剛毛なのか……。
あ! ぼくは生えてる方が好きだよ!
 

一巻も面白いのですが、やはり物語が動き始め熱を帯びるのは二巻から。ここからが本番。
しかし堅苦しくなく、ゲラゲラ笑えるので、とってもオススメしたいところ。特にラジオ好きな人には是非。
それにしても一巻の表紙について「ぶっちゃけ某アニメが好きでギターを描いちゃいましたが……」とか、ラジオの投稿ハガキに「続いて二枚目です、ペンネーム渡会けいじさん」と自分を出したり、さっきの「ろーるしゃっは」といい、フリーダムにもほどがある。さりげなく「あまがみ」の文字も後書きに入れたり。
なんだろう、この作家さんの面白さは「本当に好きで描いている」という溢れる熱量だと思います。
絵の技術的なうまさもあり、また「見せないことで魅せる技術」もあるんですが、やはりそれを超越した「これ描きたい!」「こういうの描いてて楽しい!」がパンパンに溢れてる。だからこっちも熱くなる。熱いんだけどうまくシモネタで中和されている。いいバランスです。
 
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