たまごまごごはん

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【ネタバレあり】「けいおん!」コミックとアニメの幸せな関係〜ありがとうかきふらい先生〜

今日はまんがタイムきららの「けいおん!」最終回を読んで余韻に浸りたいのでお休みします。
 
 
 
……なんて言えるわけもなく。
けいおん!」として最高の最終回だったので書くよ!
 
ただし!
きららまだ読んでいない人多いと思いますし、なんといってもぼくのまわりには「けいおん!」だけはまだ読まずに取っておいているという人が多いので、オープンには話しません。
 
以下ネタバレあり注意!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

●今を生きる●

漫画版、本当にいい最終回だったと思います。
泣くかな、読んだら泣くかな、なんてビクビクしてましたがそんなどころじゃなかったね!
だよなあ、そうだよ。今を幸せに生きている彼女たちが振り返るわけがなかった。
 
このへん、アニメもマンガも「梓視点」「唯達視点」の平行で描かれているのが上手いんですよね。
というかもしこのラストを見越して、梓ひとりだけを入部させたとしたらかきふらい先生天才と言わざるをえない。
 
ようは、「去る女の子たちは意外とさっぱりしている」
この事実は唯達視点なんですよ。

すげーさっぱり!!!!
ムギなんてまだまだ充実眉毛だよ。
 
この感覚は「けいおん!」の一巻一話からの感覚そのまま。
刹那的なわけじゃないんですよね。「今」の「楽しい」を逃さない。それだけなんです。
特に主張したいことがあって音楽をやっているわけじゃない。何かと戦って音楽に行き着いたわけじゃない。もてたくて音楽をはじめたわけじゃない。
みんながつながりたい、そのアイテムとして音楽があった
だから1巻の時点から一貫して、意図的に音楽ネタが省かれ続けています。努力というものを全く見せない姿勢のままやってきました。
あくまでも「みんなと一緒にいたい」のが徹頭徹尾描かれています。音楽は接着剤。
 
しかし本当に「努力をしてないか」というと、そんなことはないのはマンガ読者なら分かるはず。
けいおん!」3巻67ページで憂はこう言いました。

お姉ちゃん……そういえばギター買ってから毎日練習してたもんね……

毎日ってすごいことだよ。
ところが彼女たち、そんな苦労を見せません。辛い、大変、でもがんばろう、目標に向かって、というのがありません。
それは唯達は努力を努力だと思ってないからです。
何回か書いてますが、面白いことって努力じゃないんですよ。たとえばアニメ見るのが好きな人にとって、アニメ視聴が努力ではないのと同じように。趣味なんです。今その瞬間を楽しむことなんです。
この3年で全員が成長をしましたが、ムギのこの一言、「泣いてる暇なんてないわよ澪ちゃん!」はグッと来ますね。
これって、僕らに言ってるのかもね。
これからがまた楽しいんだよ!って。
 

●梓と読者●

コミックスで梓が登場してから、梓のモノローグは一気に増えました。
梓の立ち位置は本当にうまい。
「幸せな楽園」としての軽音部を描くためには、それを別視点から見る人が必要になります。それが梓でした。
そして梓ひとりしか入部しないという設定も、今にして思えば英断でした。
だってさー、高校の軽音部って人めっちゃ入るっすよ普通。しかもライブ受けてたわけだというのに。澪ファンクラブできてるのに。
でも入らないのよね。
それは純ちゃんの言う3巻48Pの「多分軽音部って5人が結束してみえて外から入りにくいんじゃないかなぁ…」というセリフと、梓の表情に集約されていました。
ようは梓は「軽音部」という幸せの園の参加者であり監視者だった。
だから今回、卒業式だけど泣くのは梓だけなんです。
(澪は泣いてるけどすぐ開き直る)

梓にとって、唯達は、放課後ティータイムは眩しかったんだよ。
それは僕らも同じ。マンガの中の唯達にゲラゲラギャグマンガとして笑いながら、ああいいな、うらやましいな、と思いながら軽音部の部室になっていました。
感情移入がしやすかったのはそういう面では梓。なぜなら「マンガが終わる」=「過ぎ去っていく」のを見送る側なのは梓だから。上級生4人は「これからの楽しいこと」という続きを見ているけれども梓は続きがないように感じてしまう。
実際は続き、あるんですよね。終わったわけじゃない。

一人だけセンチメンタルに沈む梓の気持ちは僕らの代弁でした。
それに対してのフォローが丁寧に入っているのは素晴らしい。ムギのセリフですね。

またスタジオとかで会えるから……

この一言すごいよ!
放課後ティータイムは、卒業しても続くってことだよ!!!
すげーじゃん! やったじゃん!!
今後は「軽音部」としては純・憂・梓+アルファ、「放課後ティータイム」は5人のまま、音楽を続けることになります。
ああー理想的だ、求めていたものだよ!
だよね、音楽は何かに仕切られてやるものじゃなくて、人の輪の中でつながりとして出来るもの。卒業したら音楽は終わるわけじゃない。そういう意味で彼女たちが「音楽」をやっていたのは意味があることだし、まだまだ「終わった」わけじゃないよと。
 
卒業に対してあんまり感慨を感じていない卒業生チーム。
卒業に対して過剰に悲しみをいだいている梓。
この構図を作るために「けいおん!」のマンガは描かれ続けていたんだろうなあと考えると、じわっとくるものありますね。ちゃんと今までの話の粒を拾っている、読者の求める理想の最終回でした。

一個いいなあと思ったのは、純と憂が入部するくだり。
本当に純ちゃんと憂はいい子でウルウルきそうですが、その後梓が「確保ー!」ってやるシーン、背景が、梓を確保した時の律なんですよね。
律は部長として軽音部をバックアップしてきた子なのは読んできて分かるとおり。
漫画版の律は、アニメよりは大雑把ですがそれでも常に「どうやったら部が楽しくいられるか」を考えているキャラでした。
今後は、純と憂が「楽しい!」と今を見つめられるようにバックアップするキャラとして梓がフォローに回るのかな、と考えると、なんだか素敵なことじゃないですか。
 
卒業生4人は全然しれっとした顔で「次また楽しいことやろう!」と続いていきます。
梓達もまた「次また楽しいこと」を探すために旅に出ることになります。
ぼくらも、じゃあ楽しいこと探そうか。
おう、マンガとアニメ終わったからって終わったわけじゃないぞ、まだまだ楽しいことは山ほどある。自分で探していくんだぞ!
 

●「けいおん!」のアニメとマンガは「ライバル」と書いて「親友」だった●

ちょっと思い出語り。アニメ最終話の時にでもまたすると思いますが。
かきふらい先生の作品は同人では読んでいなかったので、きららでの連載が初でした。
初めて第一話を読んだ時の感想は「あっ、(「女子高生」の)香田がいる!!」でした。
最初の頃のりっちゃんてほんと香田っぽかったんよ。それからしばらくも香田っぽかったし。
唯もこの頃はニーソだったよねえ。
 
まあ、一話の頃はそんなに記憶に残りませんでした。
ただ自分がドラムをやっていたこともあって「音楽マンガいいなあ」と思ってきららで見続けていた、という感じ。
気づいたら一巻が出て、この不思議なテンポの「楽しい」ワールドの虜になって即買いでした。
その頃の記事がこれ。
 
お菓子・コスプレ・ロックンロール!「けいおん!」
 
ブログって書き続けるもんですね。読んでいて懐かしい気持ちに。
この頃ちょうど大量に音楽マンガが出ていた時期でした。
リンク先でも書いていますが、まさにここです。

「集まること自体が実は最高に楽しいんだよ」というのを描こうとしているからだと思うんです。

そのアイテムとしての、お茶と音楽。だから音楽に対してこだわりがあるわけじゃないけど「大好き」なのは変わらない。この感覚がすごい不思議だったし興味深かったんですよね。
 
そして二巻が発売されて、アニメ化。超スピードでびっくりしましたが、ここからアニメとマンガの競り合いが始まります。
アニメ一期はマンガの持っていた「集まること自体が実は最高に楽しいんだよ」の精神をうまいこと掬い上げつつ、独自の解釈を挟んで非常に「魅せる」作品になりました。
ここがアニメの力というか、動いている、音楽が鳴っている、という強みなんですよね。マンガでは出来ない。
気づけば楽器業界の活性化になるほどの大きなムーブメントに。さすがにこれには驚いたけど、納得もしました。
 
ああそうか、「音楽がやりたい」じゃなくて「音楽で遊びたい」という原作の力を増幅して、みんなの心を刺激したんだと。
なんせ楽器は敷居が高いですが、「力まなくていいよ、遊ぼうよ」と言われたら、ねえ。楽しくなっちゃうよ!
 
ここで「アニメ圧勝」かと思いきや、マンガは負けじと食いついてきました。
アニメで深まったキャラクター性を生かして、読者の望んでいるシーンを大量に投入してきたんです。
特に原作の「私とたんこぶ」回や「生徒会長ファンクラブ会長」回あたりは、本当にうまい具合にファンの欲していたものでした。リアルタイム読者だったら、たんこぶ回の時のニヤニヤ感は忘れられないはず。
また、キャラ同士の絡みをうまく使い分けるようになりました。特に梓は様々なキャラと独自のラインをつくっていくことになります。梓・ムギ回なんかはその代表のような回。アニメにキャラが深まったならさらにこっちでも面白くしてやるよ!と。
かきふらい先生は「音がならない」「絵が動かない」というデメリットの中で、キャラ達を最大限まで動かすように、しかもキャラを崩さないように描き始めました。これはかきふらい先生の愛情であると同時に、アニメとのいい相乗効果だったと思います。
アニメ二期が、さらにそこで練られたキャラを増幅させて表現する。
どこまで登りつめていくんだ、アニメスタッフとかきふらい先生!!
 
本当に幸せなマンガとアニメの関係だったと思います。
無論、それぞれが協力して良いものを作ったんですが、同時にライバルでもあったと思うんですよね。
アニメが結構なところまで踏み込んできたら「なにくそ負けるか!」とさらに面白いものを出そうと全力疾走した作品だと思います。
もちろん、キャラクターたちは「おもいっきり楽しく過ごすぞ!」の思いを胸に秘めたままの全力疾走。
 
卒業という今回でも、それは終わりませんでした。この後も全員が、卒業生も梓も走り続けるのがかきふらい先生の望みだとしたら、本当に愛情を注いできたんだなあとうれしくなるばかりです。
最後にこのコマを出しておきます。

あずまんが大王」最終回も、来るのがいやでいやでしかたなかったんですが、ゆかりちゃんの対応を見てすごい救われたんですよね、自分。
全く同じことを、このさわ子を見て感じました。
ああそうか、さわ子にしてみたらこの光景は毎年行われるもの。
まあ今回は特別に感慨深いけれども「これからもみんな続いていくんだよ」と口に出すまでもなく聞いている。言うのも野暮というもの。だって本人たち分かってますしね。
澪の「その意気だ!」なんて、この3年がなかったら出なかったセリフでしょう。そう聞いているさわ子の心境もまた、ぼくらと同じかもしれません。
 
楽しい時間が終わったわけじゃない。
むしろこれからだろ?
悲しんでいる暇なんて無いよ! 楽しいこといっぱいあるよ!
楽しもうよ!
 
そりゃ淋しいけどさ。
でも「けいおん!」という作品に出会えなかったことを考えたら、本当に幸せでしたよ。
消失したわけじゃないですからね
これからも一生忘れない作品として、これから出る新刊と合わせて本棚に4冊、並べさせていただきます。
 
かきふらい先生。
この子達を心から愛し育んで、僕らに魅せてくれて。
ありがとうございました。
ぼくも次に向かって楽しみ続けます!
 

泣いてなんかないよ! これは汗だよ!
それにしても「唯が一人暮らし」という設定、なんつーかこう、刺激されますな!
 ちなみに今月はリサリサ先生の「PONG! PONG! PONG!」が最終回です。こちらも大好きだったので淋しい限り。
けいおん!」表紙は連続18回ですが、次回は「あっちこっち」が表紙なので本当に打ち止め。
よし、負けてらんないな!
(そういって、たまごまごはドラムのスティックを握りつつ、同人イベント申し込みをしたのだった)
 
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