たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

あの子と二人で無人島ってパラダイスじゃね?「レッツ☆ラグーン」

いきなり関係ない話ですが、ぼくの好きな映画の一つに「青い珊瑚礁」があります。

考えてみたら本当は「無人島」って最悪な状態だし、実際ならもう泣いて帰りたいと叫ぶ部分なんですが、「かわいい子と二人」だと一気にパラダイス化するこの不思議。
いやまあ、現実だったら二人で遭難したって泣き叫びたいくらいきっつい状態なはずなんですが、ちゃうんですよ。
そこに二人の幸せな空間をつくろう、と開き直ったとき、無人島はエデンの園になるんですよね。
まあ、現実的なサバイバルとかは置いといて。丸太もおいといて。
またブルック・シールズの裸が死ぬほど綺麗なんだこれが。健康な男女の住まう美しい島の光景は見ているだけでもうたまらなく幸せなのです。こんな幸せな無人島生活憧れますよ。
あまりにそのエデンの園固執したため、エンディングはあんなことになりますが、それは見てのお楽しみ。古い映画ですが、いま見ても本当にゾッとするくらい綺麗な瓶詰めの極彩色の天国。
あと無人島物といえば、ナディア島編とかでしょうか。カーテンでワンピース作ったナディアに激しく欲情した過去を思い出します。
 
そんな二人の無人島生活の幸せ至上主義な自分として、このマンガはあまりにも魅力的だったわけです。岡崎武士先生の久々(13年振り)の新刊。
無人島で少女と二人暮らし。
表紙の天真爛漫な少女。
 
買わないという選択肢が見つからないじゃないかばかっ、もう大好き!
 
ベッドに寝転がってブルック・シールズのこと思い出しながら「女の子と二人で無人島えへへー」とか思いながらページをめくったわけですよ。めくるめく女の子とのえっちなハプニング祭りだろうと。
ものすごい勢いで裏切られました、いい意味で。
 

●二人でいれば幸せ●

物語の前半は自分の思い描いていた「女の子と二人で無人島ライフ!」を満喫しまくれました。
完全に主人公の少年山田君視点で進みます。
何が起きているのか分からないけどとりあえず漂流してる、やべえ帰らないと……そこに現れたのは一人の少女。よく憶えてないけど名前は衣舞瀬チカといい、どうやらクラスメイトだったらしい。
衣舞瀬さんは、衣舞瀬さんは……。

かわいい!
とにかくポジティブで元気で、だけど思いやりもあって、それでいてさりげなくガードも固くて、だけど一人だったら絶望していた世界を照らす。
そう、この少女は太陽だ!
 
また、最初からすぐ仲良しにはなるけど、最初は恋仲にはならないのもいいんですよ。一緒に寝泊りするんじゃなくて、島の境界線をちゃんと区切っておいて、別々に住むんです。
わー、わー、わかる、わかるよ!
誰も見ていないんですもの、不安解消と称してその性欲のたぎりをぶつける人である可能性だってあるわけですが、ちゃうねん、できないできない。最初はできないからこそいいにきまってるでしょう!
この人間の距離感がねえ。
とはいえ衣舞瀬さんはとにかくどんどん入り込んでくるタイプの子なので、仲良くなるのは超スピードです。それになんといっても助け合わないと死んじゃいますしね。
だけど必要以上に仲良くなる所まで行かないんですよ。お互いがうまく距離を計りながら助け合って、なんとか生きていこうと頑張るんです。ここ、そうここがいい。

一気にもつれ合って転落するのも面白いんですが、このギリギリの信頼関係を保ち続ける二人の気持ちを考えるだけでたまらないです、ぼくたまらないです。
第一こんなおっぱい大きくてチラリには無防備で、そしてこんな健康的でむっちりした裸足なの見せられ続けたら男なら色々反応しそうですが、あえてそれを抑えこむ心意気!
というか自分がもしこのくらいかっこよくて、かつこんなシチュエーションになったとしても、多分手を出せないのは目に見えているので分からんでもないです。
「出せない」し、「出さない」よね。
だって上のコマ見てください。
地獄のような無人島生活ではあるけど、この瞬間すげー幸せなんですよ。
一応魚をとって食料に出来る。水もある。何とか生きていける。
なんといっても、二人で笑っていられる。
この関係、崩す必要ない。もちろん恋仲になったらうれしいけど、釘も刺されているし、なによりそこまで焦ってない。

無人島の、プラトニックな少年の恋と、健康的な男女のこの関係。
誰も見てないのに襲わないの?と無邪気に聞ける少女を襲うなんてできないよ……!
「嫌われたらやだな」というチキンっちゃチキンなんですが、このオトコノコ心がたまらない。
 
衣舞瀬さんが何を考えているかはほとんど描かれません。
なぜなら完全に山田君視点だからです。
女の子の気持ちなんてわからないんだよ、わかんないよ。
そんな中でのこの微妙な関係の時間は、たまらなく幸福に見えます。見えるよ!
途中、自己嫌悪や苦悩に迷って山田君は苦しむのですが、それでも衣舞瀬さんがいるだけで癒されていたのです。

お互いが、お互いを必要としていることに気づいたとき、この島はエデンの園になる。
なんて理想郷。なんというパラダイス。
 
しかし、この作品の怖いのはここからだ。
 

エデンの園の崩壊●

序盤がこんな感じで、最高度まで「無人島で二人幸せ!」なので、不安はありつつも「このまま続くんだろうなー」とニヤニヤしてみていたんですが、崩壊はものすごいスピードでやってきます。
 
そもそも「無人島に二人」ということに喜びを感じているということは、増えたらどうなる?ということです。
当然増えたほうが助かる確率があがるのですが、オトコノコ的にはそんなこと知ったこっちゃないですよね。

山田君は本当にピュアな少年なんです。
ピュアすぎて、正直このへん読んでいたときは衣舞瀬さんよりも山田君を抱きしめてナデナデしてあげたかったくらいピュア。
まだまだ心も身体も少年なんです。幼いんです。
そこが衣舞瀬さんも認めるいいところなんですが、山田君は苦悩します。
なぜぼくは子供なんだろう。
 
そこからは急転直下どころの騒ぎじゃないです。
この幸せは完全に崩壊します。
どういう形でかはネタバレを避けるために詳しくは書きませんが、とにかく完全に、です。
途中、無人島に一人現れることでギスギスと壊れていくのかと思ったら、とんでもないところからミサイルが飛んできてあたったかのような衝撃の展開。
まさかそういう物語とは思いもしなかったので声が漏れるほどでした。
少年の記憶や感覚からも、あの幸せだった二人の無人島生活のことが徐々に薄れていって、無かったかのようになりすらします。
でも……だけど……!

本当に序盤の生活、幸せなんです。
サバイバル的には極地に追い込まれている世界なんですが本当に幸せなんですよ!
多分自分みたいに「無人島二人きり生活」妄想に憧れている人にはどえらいキツイ展開だと思いますし、山田君にとってもそれはキツイ話です。
しかし上のコマ見てください。
「あの無人島での10日間は現実だ」
何が「現実」かは読んでみてください。まあ問題はそこじゃないです。
そう、山田君は信じる少年なんです。
それはもう、馬鹿みたいに!
 

●少女を助けに●

中盤からの転落、そして絶望。
だけど山田君は徹底して諦めませんでした。
彼は、行くんです。

少女を助けに行くんです。
前半の、女の子に対しておっかなびっくりしていたチキンな少年の姿はもうないですね。
少女を助けるために進む少年は、何よりも強い。異論は認めない。マンガの世界の中においては。だってそれが見たいのだから。
 
「レッツ☆ラグーン」はその題名と表紙に反して、貫かれているのは少年の成長の物語でした。
もう「だまされたー!!!」と思いつつ「もっとだましてくれー!!!」と本気で思いましたよ。二巻楽しみというか気になって眠れないレベル過ぎなんだけどどうしてくれる!
ああもう、面白いよ! 山田君最高にいいやつだよ!
山田君が成長するために、あの元気で明るくて太陽のような少女衣舞瀬さんは絶対必須。だから前半がぽわぽわパラダイスでいいんです。無くてはならないんです。
この一巻の構成はほんと参ってしまいました。しかも話としては割と超展開なんですが、すさまじい説得力があるのは画力と物語の組み方のせいだと思います。
凄まじい漫画に出会えました。さーて楽しみが増えたぞ!
 

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余談ですが、山田君の妹がかわいすぎて生きていてよかった。

超ちょい役なのに死ぬほどかわいいんですがどういうことなの……!
再登場希望したいですが、む、難しいよね。
 

青い珊瑚礁」はラストシーンが賛否両論起きた、単なるラブラブハッピー映画ではないんですが、それに対する熱血な解答の一つがこれかもしれません。