たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

私の涙は、大切な宝物「けいおん!!」第24話 その2

卒業は終わりじゃないよ、はじまりだよ「けいおん!!」第24話 その1
その1からの続きです。今度は梓視点の話。
 

ではネタバレ有りなので収納。

ペロペロ(^ω^)
 
 
 

●茫然自失●

今回は唯達の表情だけを遠くから見守る視線と、残されることになる梓そのものの視線、そして他の数多くのキャラの視点が入り交じった物語になっています。
しかし主軸はどれかというとおそらく梓だと思います。
今回梓だけ、一人称視線なんですよね。

二期は、丁寧に丁寧に、本当にゆっくりと梓の行き場のない気持ちを描き続けてきました。
考えてみたら24話まるまる、「来年新入部員がいなくて一人になってしまう」という少女の気持ちを描き続けてきたってものすごいことですよ。
小出しに、でも確実に、しっかりと描き続けてきた。だから見ているこちらもおそらく梓への感情移入度半端じゃないと思います。
 
この点に関しては「メガミマガジン10月号」の山田尚子監督のインタビュー必見です。

めちゃくちゃ核になる話が載っているので、興味のある方は是非読んでおいたほうがいいと思います。
その中で、山田尚子監督はこう書いています。

−−視聴者としては、唯たちの高校生活があとわずかだと思うと寂しい気持ちがありますが……
山田「その気持を代弁してくれるのが梓だと思っています。唯たちには寂しさに気づかずあっけらかんとさせていたいので、現実的な考え方ができる梓がとても大切なポジションにいます(中略)ただ、先輩たちがいなくなることだけを意識させて、梓に悲しい顔ばかりさせると物語が思い雰囲気になってしまいそうで、避けるようにしました。(中略)『重々しくならず、軽い気持ちで最後を迎えて欲しい』という私の気持ちは、第二期後期OP映像でも表現しています。」

梓に対して特別な思い入れを入れて作られている二期。その卒業式となると「もう号泣状態」にするのか「それでもまだ続く」にするのか、非常に困惑させられるところだと思います。
実際、作品を見るとわかるのですが、ものっすごい綱渡りを今回しているんですよね。
風船が針の上を転がるように。特に梓は前半、破れる寸前です。

この茫然自失っぷりは上手いですよね。
本当は泣けるシーンなんですが、梓の顔がデフォルメされているので笑えてしまう。スタッフ相当ここ気を使っていると思います。
無性に落書きのしたくなる顔ですな。
 

●キラキラと眩しくて●

梓の一人称視点は、今回特殊でした。

ちょっとわかりづらいんですが、
周囲がぼやけていて、4人だけにフォーカスがあたっています。
そう、今梓の視界はものすごく狭いです。
軽音部の先輩4人しか、この世界にみえていません。

でも、それはそうですよ。
他の先輩をみている余裕なんてないじゃないですか。
この2年間、色々な問題を共に過ごしてきた、放課後いつも一緒にいた、あの先輩たちのことを、見つめないわけにいかないじゃないですか。
あんなに笑ってる。いつもどおりだ。
なのに、明日からは。
学校にいないんだ。

明るくて、キラキラしていて、眩しくて。
あの輪の中に私はいた。
でも、明日からは、少なくとも高校では。
いないんだ。
もう、いないんだ。
 
梓の気持ちは、ぼくらの気持ちでもあります。
なんていい笑顔なんだろう。これからも、ずっと笑っているんだろう。
でも、会えない。
あまりにもまぶしすぎて、目を離せないよ。
 

●一人ぼっち? いや違う!●

そんなパンク寸前の梓がそれでも踏ん張れたのは、純ちゃんと憂の存在のおかげでした。
 
すぐに側によりそう憂。
話をあえてそらして不安を取り除く純。
梓は本当に、本当に恵まれた仲間に囲まれているよ。
今回は特に、憂がキーになっていましたね。
憂視点はこの作品では殆ど描かれません。しかし影でお百度参りをしたりと、相当ものすごいことやってのけています。もう「愛」としか言えない。
今回、憂の愛は、お姉ちゃんと梓に惜しみなく注がれました。

憂は、姉が高校からいなくなることを心の底から寂しがります。でも「卒業はお祝い」といいます。
これは梓の視野には欠けていた部分。
卒業生の4人は割と「これはお祝い」「これからも一緒」と卒業をスタートラインに置き換えているのですが、梓は「お別れ」の一点で縛られていました。まあ、立場的にそうですよね。
しかし憂がお姉ちゃんに、そして梓に本当に惜しみなく愛情を、無私で注ぎ出すことが梓にとって大きな支えになります。
 
どんなことでも、視点を切り替えると実は「幸せ」ということは多々あります。
どうしても梓の立場は、傍から見ると一見不幸に見えてしまいますが、実はそうではない。卒業式はお別れに見えてしまいますが、そんなことはない。
ただ、一人ではそれは気づけません。

梓には、それを突き破ってくれる憂がいる。
これは幸せなことだ。
 

●破裂しても受け止めてくれる場所●


梓が、軽音部の卒業生全員に手紙を渡すシーン。
この手紙がもうたまらないのですよ。
準備してきた便箋入の手紙じゃないの。
ルーズリーフ折ったヤツなのな!
もう、ついさっきまで必死に書いてたんですよ!
あのルーズリーフ折って手紙にする方法忘れたなあ。女性なら覚えてそうですね。全員分の手紙を渡して、泣かないようにひっきりなしにしゃべり続ける梓がもう痛々しくてたまらない。
律はこういうの勘付くのやっぱり早いですね。眉毛を見るとわかると思います。
もういいよ、そんなにがんばらなくていいよ。
 
今回、梓とさわ子以外は泣きません。一切。
でも梓とさわ子だけは泣いていいんです。
なぜなら、この二人こそがぼくらの代弁者だから。

梓の「卒業しないでください」は原作にもありましたが、もう心の叫びだよ。
言ったら駄目だ、一番言ったら駄目だ、我慢しなきゃ駄目だ、今はお祝いだから言ったら、駄目なんだ!……それを一番分かっているのは梓。
でも、一番言っちゃいけないと分かっていることを言わないともたない、限界なんです。
この1年間言いたかったこと、言わないで我慢していたことを、とうとう吐き出せた。
 
告白ですよね。
「卒業しないでください」ってさ。
言えてよかったよ!
だって、これ言わないでそのまま我慢していたら、梓は一生後悔していたと思うから。
最初見たときは平静を保つので精一杯でしたが、今となってはここで彼女が言えたことを心から祝福したい。
よく言った。よく頑張った。
もう十分。

言った瞬間泣き崩れたのは、もう今までのありとあらゆる感情の爆発でした。
そして、言ってしまってから「一番言っちゃいけないことなのに」と後悔したのもあるでしょう。
でも誰も責めませんし、誰も困りません。
 
すごいのは、梓視点がここでバツンと終わって、ここからは一気に先輩たちと後輩の関係を見守る部室視線になることです。
部室視線って妙な言い方ですが、もうそうとしか言いようないんですよね。ただそこで起きていることを見守る視線です。
 
まず、ここでかかる曲のチョイスに驚きました。普段の日常生活の時に流れる曲のアレンジバージョン。
つまり「いつもどおり」なんですよこのシーン。
かかっているのは「けいおん!」サントラの一曲目、「HAVE SOME TEA?」のアレンジ版。いつも部室にいるときに流れている曲、予告の時に流れる曲です。

梓は「もうお別れなんだ」と泣いているけど、周囲はそんなことを誰も思ってない。
なんせ、お別れで泣いている梓の感情よりも、おでこの怪我の方を気にしますからね。すごいよねこの対比。このためにわざわざケガのシーンいれたんじゃないかと思うくらい。
 
でもそのとおりなんですよ。
梓が苦しいのはみんなわかってる。
だから、だからさ。

先輩たちは泣かない。
絶対に私たちの絆はなくならないから、卒業は終わりじゃないから、と梓に伝えなければいけないから。
 

●この涙は宝物だから●


唯が梓に渡した写真には驚きました。
これ、第一期一話の時にとった、あれだ。

第一期一話より。唯がまだギターに触ったことも無いときの写真です。凸。
その写真にさ、梓の写真入れてさ!
これからどころか今までも全部含めて仲間だよとかさ!
かっこよすぎだろう唯!と思ったら案の定突っ込まれていて安心しました。
 
なぜ古い写真に梓をわざわざ貼りつけたのか?
今まで一緒に過ごした写真でもいいじゃない?
いや、違う、違うんだよ。
一緒の思い出はすでにある。これからは、少なくとも同じ部室にはいない。
いないけどつながっているでしょう? なら今までいなかった時間だって、つながっていていいじゃない。
私たち、音を一緒にあわせてきたよね。
私たちが「先輩」ではあるけど、この写真だと梓の方が先輩なんだよ。
だから関係ないよ、私たちは仲間なんだよ、って直感的に伝えるには、これが一番。
桜の花びらの押し花を渡すのもいいですね。

二期一話より。どうでもいいと思っていた桜の花を唯が集めていたのが、ここにつながってきます。
5枚で1つの花。だからなくならないよ。
 
そして最高度に相手に伝えるには、言葉や写真だけじゃ足りない。
私たちが思いを伝える方法ってなんだ?
音楽じゃないか。
 
 
だから彼女たちは歌います。
たった一人の、中野梓という少女のために曲を作り、練習し、歌うんです。
なぜOPで唯が「ギー太を触っていて遅刻したか」がここにつながります。本当にギリギリで作ったんでしょう。
しかし、歌詞はすべて梓のために捧げられたものです。全員が、彼女のために歌います。
 
けいおん!!」は、音楽アニメではないです。高校生の生活を描いたアニメです。
しかし、音楽なしでは成立しません。彼女たちは音楽を通じてつながりました。欠かせない大切な宝もの、絆なんです。
だから、音楽で伝えなければいけない。
作品の、一番大事な伝えるべきところでは必ず音楽が出てきます。3回の学園祭しかり、U&Iの歌詞しかり。まだ未発表の「honey sweet teatime」しかり。
卒業の日に音楽で下級生にメッセージ。
かっこつけ?
いいじゃん。かっこつけようよ!
 
ここで映し出される唯達4人は、本当に優しく、明るく、そして力強く目の前にいました。
梓の不安はそれはもう計り切れないほどではありましたよ。ぼくらだってそうでしょう?梓の気持ちも恐ろしいほど辛いものだし、ぼくらだって「けいおん!!」に終わってほしくない。
でも、こんなに大きく育った唯達を見たらもう、安心していいんです。
唯達と梓の間に、ぼくらと軽音部の間に、立派な絆、あるじゃん。一生忘れない宝物出来たじゃん!
 

梓は幸せな子です。
断言します。彼女は本当に幸せな子です。
大切な先輩に囲まれ、隣には思いやってくれる友がいて、こんなにも楽しい学校生活を送ることが出来た。
しかも過去形じゃないぞ!
ここからだろ?
これからだって仲間だろ!?

明日の入り口に、置いてかなきゃいけないのかな?
でもね、会えたよ! 素敵な天使に!
卒業は終わりじゃない。これからも仲間だから!
一緒の写真達、おそろのキーホルダー
いつまでも輝いてる、ずっとその笑顔ありがとう。

大好きっていうんなら、大大好きってかえすよ!
忘れ物もうないよね、ずっと永遠に一緒だよ!

歌詞より。
そうだよ、これからもっと一緒だよ!
出会ったことは消えないんだよ、大好きっていったら、大大好きって返すよ!
なら、ぼくは大大大好きって返すよ!!
 
この歌は梓のためのものです。
同時に、視聴者のためのものでもあると思います。梓を通して、という経由でです。


だから、もしここを見て泣いたなら、その涙は喪失感ではなくて宝物だと思いたい。
いやまあ、自分なんですが。
泣けるくらいに好きなもの、それは律部長曰く「人生の無駄遣い」なんですが、でも好きでいてくれてありがとうと言ってくれるなら、泣いたっていいじゃない。
ただし! 後悔とか苦しみの涙じゃないからな!


梓は涙をこのあと、写真にこぼします。
しかしその涙をふかないんです。
最初、写真が濡れちゃう!と焦ったんですが、違うんよ。
梓にとってこの涙は宝物だから、いいんだよ!
梓は幸せだった。
これからもっと幸せになる。
絶対だ!
 

梓の真剣な拍手。
彼女がここで泣くのをやめたのは、ふっきったからではないです。仲間を信じることを決めたからです。
だから言います。
「あんまりうまくないですね!」
そう、最後だからお祝いとか言わない、憎まれ口叩いて今まで通りだ!
 
この「あんまりうまくないですね!」は第一期一話の唯のセリフでした。

一期一話より。
このセリフを梓は知りません。
しかしそこでシンクロしたのは、音楽の持つ力、楽しい!と思わせる力と、年齢やなんやかんやのボーダーを突き破るものを感じることができるからでしょう。
唯が「ここの輪に入りたい!」と思ったように、梓も「ここの輪に居続けたい!」と願ったんじゃないかな。

ここにきて、唯の学園祭での迷言放課後ティータイムはいつまでも放課後です!」が生きてきますね。
放課後はいつも夕焼けの中。
ここで過ごした思い出は消えない。
そして、いつまでも仲間なんだ、これからまた別のところで、新しい思い出を作って宝物いっぱい増やすよ、とどまっている暇なんて無いんだから!
 
このへんを番外編で描いてくれると信じつつ、梓の幸運を祈るためにもう一度お百度参りしてきます。
いや、もう、梓は幸せなんだけどね。
 
その3に続く。
大切な幼なじみとの、一つの別れ「けいおん!!」第24話 その3
 
卒業は終わりじゃないよ、はじまりだよ「けいおん!!」第24話 その1
軽音部がみんなにくれたもの「けいおん!!」第24話 その4