たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「百合的作品」で性的にドキドキする瞬間はありますか?

先日、BLでも描写が巧みだと男でも感じることがあるんです、という話を書きました。個人差は大いにありますが、0ではないのですよ。
それに対してWEB拍手より。

百合好きな女ですが、性的に興奮したことはないです。たまごまごさんのオススメがあったら教えて頂きたい。

自分も普通の場合はBLでなかなか興奮はしません。百合でも性的に…というのはマレです。
「百合」はBLに比べてラインが相当曖昧なのではっきり明言できないのですが、実際は百合愛好家男女比率が5:5くらいなんじゃないかと思われるくらい多いです。それに対しての感覚ならば、「百合を見て性的な喚起を受けるか」と「百合を感じて性的な喚起を受けるか」はまた別物になるのではないかと思うのです。
 

●性のない性。●

言うまでもなく、百合・BLはファンタジーです。現実の投影として描かれるものもありますが、それを超えた理想の花園であることをおさえておきます。
そのうえで「百合的な作品」を考えてみると、多くの場合キャラは年齢的には少女が多いです。20代・30代の百合もありますが、かなり希少です。これはBLのキャラが比較的成人男子多目なのと比べてみるとちょっと面白いかもしれません。
 
「少女」はアニメ・マンガ文化において、女性でありながらすでに女性ではない場合がよく見受けられます。特に百合的作品群ではそれらの描かれ方の方向が大きく分かれていると思います。

1、生々しい女性らしさが詰め込まれている。
  その場合、体の感覚、嫉妬や困惑なども描かれることが多い。性的シーンに発展する場合も。
2、理想像的な幻想少女が描かれている。
  男性視点の理想と女性視点の理想でまた細分化されるが、カワイイ・キレイ・ドキドキがメインストリーム。
3、カップリング遊び。
  感覚などは後付け。見た目やキャラの組み合わせを楽しむ、いわば着せ替え的な面白さ。あるいは宝塚的な楽しみ方も。

今ファン層が多いのは2だと思います。3は同人。
マリみて」なんかは時々可南子や乃梨子のような等身大キャラを通じて生々しい女性感覚をも描きますが、志摩子さんや祥子様のような浮世離れしたキャラがいるため、あまりそこにリアルな性的な匂いは感じません。
加えて2のタイプは男が絡まないことが非常に多いのも特徴の一つです。
百合作品に男はいらない、という人は男女とも非常に多いと思います。「絶対いらない」ではなく「できればいなくていい」の方が正確でしょうか。
女性であること、女性同士であることを突き詰めていくと、なぜか性がガラス箱に閉じ込められてしまう不思議な感覚。
タイプ2が男女の憧れとしての「少女性」であるならば、実はそこに「女性の生々しい性」を入れる必要は消えていくのかもしれません。
壊れ物のようなバランスを愛でる感覚と自分は考えています。それがふわふわの羽毛に包まれるもよし、パリンとわれてしまうもよし。なんて素敵にフラジャイル。
これは、少年を描く時も同じですよね。
  

●性描写と百合の合流は、なかなか一般的にならない?●

そして、「百合作品にエロはいらない」という流れも結構多いです。それでも最近は二次創作方面でかなり百合エロものも増えてきましたが、数的にはまだ大した分量にならないと思います。
 
商業で「エロあり」な百合といえば、「少女セクト」「百合姫wildrose(アンソロ)」「花のいろ」「百合色螺旋」、男混じりなら「MAKAMAKA」「チョコレートメランコリー」「ULTRA SWORD」、ちょっと無理やり解釈して「BLUE DROP-天使の僕ら」…といったところでしょうか。エロゲーなら「サフィズムの舷窓」「カタハネ」「処女宮」等々。あとは、エロマンガでの短編ならいっぱいあるでしょうし、カーミラ方面のビアン物になるともう少し増えそうですが、それでも「百合的」な作品全体から見ても、比率的にはかなり少ないのではないかと思います。ふたなりは多いのですが、百合的に微妙な位置でしょうし。
少女セクト (メガストアコミックス) 百合姫Wildrose (IDコミックス 百合姫コミックス) 花のいろ (マンサンコミックス) MAKA-MAKA (Vol.2)
また、これらが「女性同士の感覚を描いているのか」「エロで女が多いほうがいいという理念なのか」でまた異なってきます。
後者は一見男性エロマンガでありそうですが、実はこれが少ない。というのも、男性から見た女性像は快感が分かりにくいため、実際に売れるのはチンコがある方だからです。なかなか描きたくても描けないジャンルのよう。大人の事情ってやつです。
だからこそ前者は非常に繊細な作品が大多数を占めるのですが、百合が今のところ「お互いの距離感をはかっていったりきたりする」部分が一番の魅力である場合が多いです。。なので、最終的にはエロがあってもいいけど、なくてもいい、という人の割合が高い気がします。
むしろ、これは自分の感覚なんですが、女性同士のセックスシーンよりも、指が触れ合うシーンやキスシーンの方が正直キます
「触っちゃった!」のドキドキ感。
このへんどうでしょうね。男性・女性、それぞれそれらのシーンでぐっとくるかどうか。「萌える」をこえて「性的喚起」までいくかどうか。
 

●女性の感覚を描く「百合」が増えたら面白い!●

個人的に大好きなマンガの一つにマルスのキス」があります。
マルスのキス (PIANISSIMO COMICS)
詳しくは別で書きたいのですが、これはばりばり男性が絡みます。男女のエッチも普通にあります。
しかし後半になるにつれて、もう一人の女性に対する視線が「あなたが、あなたの姿こそが」に変化していくのがたまらなくうまいのですよ。
どちらかと言うと壊れ物になっていく切なさを湛えた作品ですが、題名にある「マルスのキス」、そして最後に出てくるキスの美しいこと。

「同級生」は気になっていたのですが絵が余り好みじゃなくて購入保留してました。
が!こちらの考察でえっらい可愛い話だと判ったので購入決定です。感覚で訴えてくる漫画は良いですね〜。
ちなみに、女性でも百合で性的なときめきは得られますね。相手との感情のやり取りや描写力によりますが。「相手に触れるどきどきどき」感を上手く描いている作家さんの描く百合はその辺り大変よろしいです。実際に触れるかは問題じゃなく、その空気さえあればかなりきますね。一番最近では吉富昭仁氏が百合姫で描かれた美術部員と友達でモデルの子のお話は、なんだかエロいなぁとときめきました。
(WEB拍手より)

吉富先生が百合姫Sで描くのは感覚がとても特殊で、非常にエロティックですよね。内臓の話とか!
 
快楽を求め合うばかりがエロスではありません。どちらかというと「たまらなく触れたい」「触れてしまってドキドキしている」そんな感覚の方が、百合やBLにおいては性的な意味合いが強い気がします。そしてそこから発展してエロティックに、心も体も溶け合っていくならそれはもうたまりません。
そんな「触れたい」がストーリーの中で深く追求され、その微細な身体感覚が描かれる百合作品が、読みたいなあ。
だからあれですよ。別におっぱいに触れなくていいんです。
むしろ指先が触れた時にピクってなったら、頬と頬の産毛が触れた時のくすぐったさが描かれていたら。
あるいはそうしたいという二人の思いがぼんやりと描かれていたならば。
自分は鼻血ブーもので興奮するんですがどうですか?
 
その場合、視覚ではない部分を絵で描かないといけないので、相当な筆力がいると思いますが。だからこそ読みたいっ。
 
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〜関連リンク〜
少女セクト、OVA化決定(Light Weight Lo-tek Journal)
きましたなー!で、エロ方向になるのかストーリーメインになるのか、そこが気がかりです。