たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

妄想型肉食系少女と吸血型草食系少年の、エローい恋の物語「限定彼女」

4コマ界屈指の「暴走少女」描き、内村かなめ先生。
右に歩けば妄想で鼻血ブー!左に歩けばハプニングで鼻血ブー!
まさに変態淑女の集いの名がふさわしい作品群を仕上げる作家さんです。
そんな暴走妄想処女少女が、超草食系少年相手に大暴走を繰り広げるのがこの作品、「限定彼女」です。
吸血鬼ネタの話なんですが、二人の間のパワーバランスとエロさの絡め方が絶妙なんだなあこれが。
 

●吸血or「H」●

吸血鬼つーたらこう、貪欲に求めるイメージがあるじゃないですか。はっはっは処女の血をー、みたいな。
最初血を吸われたときは、そんな感じだったのですよ。

吸血か、Hか!
とはいってもこの男の子、異様に幼くかわいく、決してがっついてきません。
それどころか、かよわくキュートで、幼い容姿の吸血鬼広音くんはものっすごく引け腰。ごめんねごめんね、どうしてもそうしなきゃいけないんだ、ごめんね、と下手下手。

草食系男子・・・というより小動物です。
なにげに言ってることは過激なのですが、内村かなめ作品ではむしろそれはご褒美でございます。
暴走少女達にとっての。

んまあ、エロい子っ!エロい子っ!
 
ヒロインちまは、姉の言いつけによって潔癖を守る鉄壁の処女なんですが、そのエロ妄想力は尋常ではありません。
幼なじみでかわいい広音くんをストーキングまがいに無言電話するのはごく最初の一歩として、彼と付き合うようになってからのエロ妄想バリエーションの幅ときたら。
まさにこれは、女の子だけれどもDT力の語がよく似合います。
 
まあこんなわけで「絶対Hはしない」「だけどちまの血しか吸えない理由があるので、恋人関係の中で血は吸う」「そんなの性的興奮がとまらないよハァハァ!」の連鎖連鎖。
「寸止め」ってわけでもないのです。この二人の関係の思春期的エロスは是非読んで確かめてみてください。
 

●吸血とエロスの関係●

考えてみたら、吸血もセックスも、体液の交換という意味では似通っています。実際「精を吸い取る」なんていう悪魔も多いですし。
逆に言えば、吸血行為は擬似的な性行為、と受け取ることもできるわけです。
たとえばこんなシーン。

転んだ血を無駄遣いしないために「なめていいよ」というシーンですが。
これって冷静に考えなくてもめちゃくちゃエロくないですか!
しかも止血のためになめるんじゃないですよ。彼女の体液を体内に吸収するために舐めるんですよ。
しかもひざまづかせて(偶然ですが)。
 
また、ノーマルな(?)吸血シーンでもこんな感じ。

ヘブン状態
言われてみれば確かに、ぷすっと痛い以外はアマガミしているわけです。
恋人の舌がうごめく自分の襟元・・・柔らかい唇・・・。相手の一部になる自分の体。これはエロティック。
デメリットがないからこそ、のよさですね。血を吸われても彼女は吸血鬼になりません。
むしろとある理由でちまが主、広音が従の関係にあります。恋人関係ながらも、「与えるもの」「与えられるもの」と吸血鬼ものの常識をひっくり返しているのがエロさに拍車をかけます。
 

●エロい子、ちま。●

実はちまは、血を吸われると、その後からだが熱くなって(ようは性的に興奮して)また血を吸ってもらうか、Hをしてもらうかしないといけない体になっています。
それが今までの「エロい妄想して悶えてしまう」というちまの性格を加速させていく相互作用が見事。
だってほら、エロいことばっかり考えている変態、って思われずにすむじゃないですか。体質だから!体質だから仕方ないの!なの!

「いざ」という時のために服を脱がされるシチュエーションの予行演習をするちま。
た、体質ですから!仕方ないの!
 
とはいえ、「あー、えっちしたいもうがまんできないぜこんちくしょうめ」とならないのが、この作品のニヤリ度の高いところ。
そりゃもう体質的には盛り上がるし、妄想も暴走するんですが、ちまも広音もびっくりするほど三分の一の純情な感情。
こんなことをしながら「ぎゃー!恥ずかしいー!」と悶えちゃう思春期まっしぐら。
そりゃあ「お姉ちゃんに絶対ダメと言われたから」といういいわけもありますが、彼女と彼はおそらくHは出来ないと思います。まだ精神的にその段階じゃないのです。
恋に恋するお年頃、えっちに妄想するお年頃。
手が触れただけでドキドキして鼻血を吹き出す彼女らがそうそう過激なことができるわけがないっつうわけですよ。
 
そこが安心できるところ、でもあります。どんなにちまが暴走しようが、絶対踏み外さない。
だから、エロい妄想は大爆発。どっかんどっかん。もっと!もっと!さらに高い未知の領域へ!
でも大丈夫、たぶん。
「変態な子」ほど安心できる、というのはある気がしますね、マンガの場合。
まあ、それに乗っかってこの子の妄想度の逸脱っぷりがすさまじいのも、まさにいつもの内村かなめ先生パワー。すばらしいです。
 

●純情なぼくとわたし●

吸血鬼と、血の提供者という主従関係があり、かつエロい気分になったりHの方が効率はいいという設定がきちんとあるため、二人の関係は淫靡なものになりそうなものですが、それを上回るパワーがこの作品全体を覆っています。
何かって?
恋だよ。

恋する男女は、興味津々に決まっているさ!
でも、でも一歩踏み出せない!それもまた、恋・・・。
この「お互い据え膳状態でも動けない」のニヤニヤっぷりがたまりません。本当に若いって、いいわね。
 
とはいえ、恋人同士が一緒にいたらハプニングもあるわけで・・・。


何が起きたかは、本誌で!
 
ものすごい変化球の塊みたいな作品ですが、根底にある正当派ラブコメがものすごーく心地よいです。
そして、ぐっさりくるエロじゃなく、血や妄想を介した「なんだかエロいよ!」というほんのりエロスがこれまたキュート。
自分たちが中学生の時に妄想して転げ回ったあの味がじわじわと思い出されます。
さてはて、最後まで彼女たちはいくのやら。いずれにしても一生一緒にいないといけない依存体同士になったわけですが、うまく距離を取り合えないふたりの不器用さを、ほおづえついてニヤニヤ眺める午後の一時は、極上でございます。

やーい、エロい子め!このやろう!(ひじでつつきながら
 

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ちなみに、その例の「お姉ちゃん」がまたウブでかわいいんだこれが。
普段は敵対、裏でバカップルな友人など、サブキャラの暴走ぶりも面白いです。
 スーパー内村かなめ先生祭り開催中。至福至福。
6月末までに二冊以上かって応募すると、全員プレゼントの小冊子がもらえるそうです。大盤振る舞い。