たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「物体=キャラ」だけが擬人化ではない。「キッチンのスキマ」から見る擬人化のバリエーション

擬人化ネタが結構好きです。
と言ってもそんなアンテナ高くないので、全員男性な擬人化や、全員女の子な擬人化くらいしか見たことありませんでした。
そもそも擬人化って、すごく不思議なジャンルです。男性向け擬人化は比較的、物体をそのまま人間にした付喪神みたいなのが多いわけですが、最近の擬人化や女性向けジャンルでは、そうではない作品の方が増えています。
まあ、擬人化自体が「不思議」といえば不思議なんですが、ちょっとここで「キッチンのスキマ」というマンガを見てみたいと思います。
 

●本体そのものではない擬人化●

このマンガ、全員食べ物の擬人化キャラになっています。
キッチンのスキマ
こちらのサイトを見ると、どうやら読者ページのキャラクターのようですね。
マヨネーズ、ケチャップ、アイス、などなど。ありとあらゆる食べ物が人間として描かれています。
 
と、そうかくと「みかんがそのまま人間に変化した」という状態を想起させますが、そうではありません。
ちょっとややこしいんですが、このコマを見てください。


これはマヨネーズのマヨちゃん。
見ての通り、マヨネーズを擬人化したキャラクターとして作られていますが、実際にこの世界では別にマヨネーズが普通のものとして存在しています。
マヨネーズを見ている、擬人化したマヨネーズ。はて?
 
ようはこれ、付喪神的な存在としての擬人化ではありません。
いわば、物体の観念を擬人化したと言う方が近いかもしれません。
ここでいうと、マヨネーズそのものではなく、「マヨネーズってこんな感じだよね」というイメージです。
また「どんな料理や調味料とあうか」とかの関係性重視でもあります。擬人化というよりは「マヨネーズっぽい女の子」と言う方が感覚的には近いです。
女性向けの擬人化だと結構ある表現だと思うのですが、このへん「物体=人間」な擬人化が多い男性向けとちょっと考え方が違いますね。
 
はて、「なら擬人化じゃいんじゃないの?」と言う疑問もわいてきます。ものを人間にしたわけではないのは、上のコマから見ても分かりますし。
ここがちょっとミソ。その物体(この作品だと食品)がどういう風な立ち位置にあるかを用いることで、ネタとして成立させています。
たとえばこのマヨちゃんの両親なのですが。
 
左が、お母さんのビネガー(お酢)。右がお父さんのエッグ(卵)。
なるほど、お酢と卵でマヨネーズですな。
この二人別居しているんですが、そのへんも確かにお酢と卵に油をうまく入れないと分離することを考えると、なるほど納得。
 

●擬人化である意味●

その他にも、バターとマーガリンがそっくりだけど、バターは原材料が足りずに仕事に来られないとか、細かいところで食べ物ネタを挟んできますが、基本コメディです。マヨネーズっぽい女の子とケチャップっぽい男の子が喧々諤々する、そんなとてもベーシックなラブコメです。
このマンガはキャラありきで作られているので当然擬人化は必須なんですが、そもそもなんで擬人化するか、というのは「擬人化もの」の最大のテーマでもあります。
 
擬人化ネタの面白さは大きく二つあると思います。

1・共通認識されたネタで遊べる。
2・関係性に萌えられる。

特に1は大きいんじゃないかと思います。
「今は擬人化が流行り」とまで言っていいのかどうかは定かではありませんが、少なくともオタク界隈では昔より多く見受けられるようになってきたと思います。
それは同時に「一つのネタでみんなで盛り上がる」という楽しみ方の変化の投影でもあります。
この作品は「食べ物」という誰でも知っているものが擬人化されているので、とにかくキャラに入り込むのがスムーズです。マヨネーズとかケチャップとか、名前覚えるまでもないですものね。
2は、1の一個上のステップでもあります。食べ物同士の関係(合う合わないや、調理での位置づけ)をそのまま人間関係に置き換えたら、ちょっとニヤニヤできるわけですよ。
ケチャップが売れると嫉妬するマヨネーズとか。マヨネーズが同じ油類のバターに惹かれるとか。トマトピューレからケチャップが出来るとか。
そのうち、実生活でケチャップとマヨネーズ混ぜながらニヤニヤ出来るようになったら一人前なんじゃないかと思います。
なんのだ。
 
擬人化ものはやっぱり可愛くないと、というのはスタートラインだと思います。
いやあ、冷静に考えたらそりゃー可愛くないアイテムも世の中にいっぱいあるんですが、そういうのもひっくるめて楽しむための擬人化ですから、男の子にせよ女の子にせよ、擬人化するならかわいくないと。あるいはかっこよくないと。

この作品はマヨを中心に話が進んで行くんですが、圧倒的に男>女な人数比率だというのに、ダントツにマヨがかわいいからすごいです。読者の代表の位置にありながら、きちんとヒロインしています。
割と無口で、かなり天然で、マイペースな上に怪力。何を考えているかわからない瞳は少女の権化状態。うーん、男女共に好かれるキャラなんじゃないかしら。かなりツボなんですが。
 
一応これ一巻完結扱いらしいんですが、さっきも書いたように今もこの作品続いているんですよ
特にバター先生とマヨの関係がどうにもこうにもむずがゆくてなりません。ラブラブ突進型のケチャップが相手にすらされていないのもまた痛快。
話の展開的にはむしろ一巻が終わったところからがスタートラインなんじゃないかと思うくらいです。
 
よし、今晩はマヨネーズとバターを晩飯に使ってニヤニヤしよう!
 

かなり軽快なラブコメ4コマ+ストーリーマンガなので、読みやすいです。絵柄が気になる方は上記にあるリンクで4コマの雰囲気が掴めるので見てみるといいかも。
食べ物を知らない人なんて当然いないので、わかりやすさの面では「擬人化もの」ジャンルの入門編にもなると思います。
現時点では「ラブコメ>擬人化ネタ」という比重なので、個人的にはもっと食べ物らしさを生かした擬人化ならではのネタをうまく使ってニヤニヤさせて欲しいなあと願いたいところです。BLアンソロジーのこのシリーズも面白いです。関係性のみをピックアップしているものが多いため、擬人化というより「物体の関係性描写」に近いんです。
擬人化の画像(2ch)
男性向け擬人化はこういう視覚的なモノが大きい気がします。擬人化キャラにその元アイテムの名残を入れるのも特徴的です。