たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

あの日も、今も、思いっきりこの瞬間をあの人は楽しんでいた。「けいおん!!」番外編第25話 その1

けいおん!!番外編25話見たよー。(週遅れ)
いやー、最高でしたね。

普段とかわらず平常運行な、若王子いちごな!
「私は関係ないけど別にいいんじゃない」
だってさ! だってさ!
ひゃー、いちご様最高。
踏んで!
しかし、この子の性格はほんと最後まで分からずじまいでした。それでも教室に行くたびにいちごと遭遇率が高い二年生チーム。どういうことなの。

 
さて、今回は番外編ということで時間がさかのぼりました。
これをちょっと「今を楽しむ」という観点と、OPの撮影の仕方と絡めながら見てみたいと思います。
 

 

ではネタバレ有りなので収納。

ペロペロ(^ω^)
 
 

●時期特定余裕でした。●

今回は番外編ということで「いつどういうシチュエーションなのか」を解説しないといけないわけですが、まさかあれが伏線になるとは思ってもいませんでした。
じゃん。

一発で分かるじゃん!
そう、ライブが20話、21話で卒業アルバム写真を撮ったときに前髪を誤って切った唯、つまり秋です。
状況説明一切なしで、この前髪だけで一発でどの時期か分かるようにしたテクニックに思わず膝を打ってしまいました。
うまい! やられた!
卒業アルバム写真から前髪が戻っていないということは、それほど時間が経っていないのも分かります。
番外編を生かす見事なテクニックでした。
 
そんな受験を控えた彼女たちが部活動勧誘PVを撮ろうとしているのが今回です。
しかしその前に、もう一本のPVが入ることでもう一つの時期を描いています。
 
梓が入る前、一年生の頃のシーンです。
その時期のPVを撮影している回想シーンがこれなのですが、ちょっと色あせた感じになっています。
ここで興味深いのは、ムギの行動と澪の行動です。
1年生の時期ということは一期の中盤なんですが、まずムギはムギセンサーが反応しているんです。
ムギセンサーとは=女の子同士が仲良くしているとニヤニヤしてしまうセンサーである!
逆に言えば「女の子たちが仲良くしているのを見ている立場」なので、自分がその輪に入っていないんです、まだ。
これは二期で解消され、むしろ自分から率先して飛び込む子になりました。
澪は分かりやすいですね。今となってはしっかり自立できる強い子になりましたが、一年生の頃は自らの意思での拒絶をしきれない、そして常に律に頼ってしまうようなあまり強くない子でした。
このギャップ、今見るとほんと新鮮。
テレビ放送自体が終わるのかー、と、ひとまず淋しい思いをしている人は是非一期の一話見てください。
キャラの関係が今とぜんぜん違って幼く、新鮮なこと間違いなしです。
 
とまあこんな感じで、うまーく時期の調節をし、それを言葉ではなく雰囲気で、見て一発でわかるように描いているのは見事です。
 

●PVをつくろう!●

さて、もう一度OPの「自主制作PV風動画」を思い出しておきます。
あれは確かにアニメの絵の動きとしてはダイナミックさのないものですが、それでも自主制作PVとしてはかなりしっかり見られるように作られています。
逆に言えば、あれが素人としては限界レベルの出来だということです。カメラ動かせないですし。
 
それを踏まえて。
前半は自主制作PVはどんなものにするかを考える会議が行われます。
ノリはいつもの「思いついたらそのまま」という超いきあたりばったり。
しかし一期+二期両方通じてみていると、この行き当たりばったり感を逆に彼女たちが大切にしていることがわかるから面白いです。

この梓の顔なんかを見ていると分かりますね。
梓にしてみたら、来年の軽音部のため、ひいては来年の自分のために「思いついた」というのが嬉しい訳です。
 
人間の脳はあらゆる動物の中でも「未来」を想像する能力に長けています。そのため「未来」を考えることで「不安」「ストレス」が生まれます。杞の国の憂いる人のように分からない未来を不安に思う「杞憂」は、あってもしかたない、むしろ不安定要素があればそうならざるを得ない。
梓は常に不安に怯えているキャラです。でもこれ当たり前ですよね来年を考えると。みんなと別れたくないですし。視聴者が「けいおん!!終わるのかー」と不安になるのと同じ、いやそれ以上。だからある意味、正常です。
上級生も、憂も純もさわ子も、それを分かっています。
じゃあ一緒に憂いていればいいのか、というと全然違う。山田尚子監督も言っていますが、唯達はあまり深く考えていないんです。
深く考えていない=悪いこと、ではない。深く考えていない=「今」を常に楽しんでいるということです。

PVをつくるまでの流れも楽しんでますよね。ノリノリじゃないですか。
悪く言えば「グダグダ」なんですが、よく言えば「思いついたこと全部楽しい」。
今回もさりげなーく梓視点にシフトしているので、「不安の中で未来を計画立てている自分」と「思いつきでバンバン進む先輩たち」のギャップに揺れています。揺れて当然なんですが、先輩たちがテキトーなのは梓にとっては大きな心の支えにもなっているんですよね。あ、この人達なら「だいじょぶだよー」って言ってくれるって。

まあ、迷走しすぎでゴールにつかないのが欠点でしょうか。
 
とはいえ、その「瞬間」を生きている先輩4人に、自分にはないものを見つけて憧れている梓がいるのもまた確かです。
 
コーラの水滴を見て、「やる時はやる」唯の後ろ姿の汗を思い出すこの演出本当にいいですよね。
梓の真面目さ、上級生の瞬間を生きる生き方、どちらが正しいではなくて、双方が違うからこそ惹かれ合い、2年間やってこられたのを再確認させられます。
 

●梓を取り巻く人達●

ここで、梓視点から見た「梓を取り巻く人達」を見てみます。
正直、この番外編の「梓を取り巻く人達」への見方が、事実上の最終話の「番外編26話」になるとは思いもしませんでしたが。
 
このシーン、企画会議で真剣に悩んでいる、と見せかけて実はケーキを選んでいるだけだった、という律たちのシーンです。
梓のあっけに取られつつも、結局選んじゃう顔がいいですね。そういえばこの子はそういう子でした。理性はストップをかける、欲望は割と素で出る。そのへんが「視聴者に近い」とも思うんですが、それをあっさり乗り越えるのが上級生4人チーム。
澪ですら今となってはケーキを選んでいたというのが面白いですよね。梓以上に理性のストッパーがきつい子でしたが、二期前半ですっかりほどけた感があります。
で、ここで面白いのは誰もバナナタルトを選ばなかったというところです。
最終的に梓がバナナタルトを選ぶんですが、そこでニヤッとした人も多いんじゃないでしょうか。

これは二期一話の、3年生になったばっかりの時のワンカットです。
ここで唯、梓はバナナを選ぶだろうから取っておこうと言っています。
つまり、みんな色々本能(食欲)に忠実そうに見えて、実は梓を一番に思って譲っています。
ささいな、どうでもいい、本当にどうでもいいシーンですが、こういう小さな「思い」の積み重ねが積もり積もって「けいおん!!」という作品は出来ているんだなあとしみじみ感じます。
 
友人達も梓に対してすごい思いやりありますよね。

もうなんか、すっかり当たり前の光景になった三人組。
何がスゴイって、三人でいるときに話しているのって、ほとんど軽音部の話だということ。
まー描かれていないだけで普段は他愛も無い話もしてそうですが、クラスでの様子、言動など見ていると軽音部の話が5割以上なのは間違いなさそうです。
無論、梓の先輩であり、憂の姉であり、純の憧れ(澪が)であるという共通の話題だから、というのもありますが、実質純と憂がものすごく梓の今後を案じてくれているのは「受験!」の回で描写済み。
軽音部の先輩4人は「空気は読めるけど、それはそれとして振りきって今を生きている」状態だと思うんですよ。律や澪は特にその傾向強いですよね。
それに対して憂と純は「梓の気持ちを汲みとって色々考え、計画した上で明るい空気を作っている」状態だと思います。

このシーンとか、純が、まあ素の部分もありそうですが、場の雰囲気を盛り上げる道化役を買って出ています。それが重荷なんて当然思っていません。それすら楽しめるのが純。
そして純の戯言と梓の憂いを、ただ笑顔で受け止めて、しかも受け止めることを「楽しみ」として昇華できる子が憂。ほんと「よく出来た妹」というキャラを脱して「相手と苦楽を分かち合える子」になったなあと感じます。
この「あえて明るい空気を作る努力」と「消えにくいモヤモヤ」は、実は上級生4人も経験済みです。二年生の学園祭の前、一期の11話あたりですね。あのいざこざがあったからこそ、三年生になってからは「振りきって今を楽しむ」という姿勢になったんだと思うんです。
つまり梓も今は、二年生の時にモヤモヤしていた律のような過渡期。
これを乗り越えて三年生になったら、自分がいかに幸せなのか、気づいて謳歌すると思います。信じます。
「幸せだった」ではありません。「幸せだ」です。これからずっと現在進行形。

まあ未来のことまで考えてられないから、今は今の幸せを。
このみんなでPVを見ているシーンも「幸せ」ですよね。動画じゃないとわかりづらいですが、唯と律に「うりうりうり!」と挟まれるシーンなんて最高じゃないですか。
 
実際にとったPVにわざわざ出演してくれる憂と純。軽音部の部室入り口踊り場です。
この二人の笑顔は「梓のため」であり、同時に「この状態が楽しい」からでもあります。
二年生三人が笑顔でいてくれればいい。「けいおん!!」のクライマックスは最後の学園祭以降、この一点に向かっているようにすら思えます。
え、最終回のあとの番外編だからあくまでもそれはそれだろうって? うん、その通りです。番外だからあくまでもテーマは別です。
しかし番外編という名目で今回と次の回、足りなかったパズルのピースをきっちり埋めてくれています。
梓のため、そして梓と共に軽音部を楽しんできた視聴者のための、補完編だと思うのです。
思い出をよりあわせるのは慈しむためだけじゃないよ、思い出を見ている今を楽しむためだよと。

 

●だめなさわ子、いいさわ子●

今回もう一つの視点として入っているのが、さわ子視点。

さらっと、彼女たちが録画した素材を「編集してあげるから」といいはなつこの大人の余裕!
さわ子ー!最高ー!
ですが。
ここしばらく二期は割とずーっと「かっこいいさわ子」「素敵なさわ子」でした。映ってないシーンでも、例えばバレンタインの日に受験の準備が忙しくて軽音部にお茶に来るのが遅れて、だけど遠くからワイワイ青春している彼女たちを輪にはいらず見つめるなど、ちょっと距離をおいて最高の先生として描かれているほどに。
だがしかーし。
一期のさわ子は「いい先生」であると同時にちょっとダメな女性だったのを今回改めて思い出しました。
そうだよ! 生徒のクリスマスパーティーのどさくさに紛れ込んで余計なことするような、生徒に自分の好きなコスプレ衣装をさせてニヤニヤするような、だらしなくてちょっとダメな女性だったじゃあないか!
そして、そのダメなところが魅力的だったじゃないか!
そしてそして、ダメなのを表に出しつつきちんと「分かっている」のがすごく惹かれるところじゃあないか。
 
25話では、ダメさわ子が久しぶりに見られた! これは嬉しいところ。
20話でも「みんなに胴上げされるのを夢見るさわ子」がちょろっと入りますが、あちらはみんなの感動を優先するためのクッションとして、さわ子が大人らしく受け入れているので逆にかっこよかったんですが、今回はすねます
 
・ダメポイント1 撮れないものを適当に言うさわ子・
 

PV撮影の話はさわ子からの発案(唯達が一年生当時)で、それ自体はいい案なんですが。
軽音部と関係ない、というのは(いつもどおりなので)よしとしても、こんなん撮れるわけないだろう。
もう、やめてよもう。
こういうパラレル「けいおん!」映画みたくなるじゃん。
特にムギんちゅがかっこよすぎまして。

ジャン・レノ的な。多分30人は殺してる顔だ。
どうしてこうなった。
でもムギならノリノリでやってくれそうなのが眼に浮かぶのがいいですね。
しかしさわ子の中のムギってこんなイメージなのか。あれか、北欧に避暑に行くって話をなんども聞いていたからか。
唯のカンフーシーンの声は必聴。それとギー太邪魔だと思う。

そして、ちゃっかり自分が一番かっこいい役で入っているあたりずるい、さわ子あざとい。
 
・ダメポイント2 限度を知らない・
一年生時のさわ子の持ってきた「澪に着せる衣装」はナース服。普通じゃないけどまだ普通。
しかし今回持ってきたのは完全にアウトでしたね。

ケロの着ているのが新作。
いや、これは……ないだろ。
冗談なのか本気なのかわからないのですが、被服室で本気で篭って作ってきちゃう当たりを考えると割と本気っぽいので困る
このシーンの新衣装のセンスの悪さといい、露出度のアウトさといい(これじゃ澪しゃんのおっぱい隠れないよ!)却下されてすねているあたりといい、本当にダメ。
あー、これこれ。オチ担当のさわ子ってこうだよね。
 
・ダメポイント3 自分ピックアップしすぎ・
さわ子は今かなり貞淑な、裏方に回れる女性としてがんばっていますが、そもそも目立ちたがり屋なのは治っていませんでした。

後でも書きますが、PV中の自分のシーン。
他の子は普通に撮影しただけなのに、自分だけキラキラ効果を入れて輝かせているという無駄なきらめきっぷり。
生徒より目立ってどうするんださわ子!
と突っ込まれるまでがワンセット。
……今回の唯とそっくりですが、芸人体質ですよね、さわ子。これは後述。
 
・ダメポイント4 ……かわいい・
そう、ちょっとダメなところがキュートなのがさわ子なんだよ!
個人的にこのシーンで完全にやられましたね。

あずにゃんかわいいでしょう。
でもその横で、一緒になってクビを傾げているさわ子まじかわいい。
さわ子は一応「ちょっと離れた位置で見守る」孫子あとして描かれていますが、それでも今全力で楽しんでいる人間の一人なんですよね。出来る範囲で。時々はみだすけど。
 
まあ、さわ子が今回いい意味で「ダメ」だったのは、このPV制作もあわせて梓に対して不安をいだいていなかったからだと思います。
だってねー。

これ見たら大人なら、わかっちゃうよね。
もし梓が本当にピンチなら、さわ子ってもっと色々手を尽くせる人だと思うんですよ。もちろん「あなた達がんばりなさい」とは言いつつも、実際に今までも生徒のために全力で動いてきた人ですし。
でもしません。編集以外は余計なことしかしません。
それは梓が大丈夫だと確信しているから。

まあ、これを見ている時点では原作を読んでいたこともあって「梓大丈夫、大丈夫だよ梓!」と視聴者側も思っては見ているんですが、それでもやっぱり不安なわけですよ。原作にあったあれを、あのシーンを早く出して!お願い!と。でも出さない。というか出るわけがない、この段階では。視聴者の不安=梓の不安です。
でもさわ子は似た様な経験何度もしてきたんでしょうね。
今回はさわ子がひどかった(褒め言葉)おかげでものすごくクッションが何重にも出来ていて、安心して笑える回になっていたなーとつくづく思います。
もうちょっと言えば、さわ子と唯、です。他の子達ももちろん最大限まで梓の心の支えなんだけど、さわ子と唯の安定感は異常。そして二人はすごく似ている。
 
その2に続きます。
 
「Utauyo!!MIRACLE」と軽音部勧誘ビデオは、自主制作臭さがいイイよね。「けいおん!!」番外編第25話 その2