たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

毒舌と萌えのメタ視点、「らき☆すた」8巻は加速中

表紙が尼ーずっぽいです。
柊つかさ田村ひより柊つかさ日下部みさお柊つかさが好きな自分としてはとてもよい「らき☆すた」8巻でした。
 
さて、個人的には「らき☆すた」はいわゆる「萌え4コマ」とも「ファミリー向け4コマ」とも「ストーリー4コマ」とも違う、すごい奇妙な位置にいる4コマだと思います。
いうなれば「毒4コマ」というか。いや、それだともっとえぐいのありそうですね。
「萌えの皮を被った毒舌4コマ」だなーと。そこが面白いからあっという間に読めてしまいます。
セリフの量尋常じゃなく長い上に濃すぎて、キャラもめちゃくちゃ多いので、読むのに時間かかるはず、なんですが!
面白いんだよなあ。
 

●こなたと言うなのオタク代表●

気づけばこなた達も大学生です。
とはいっても全然大学のシーンが出てこなくて今まで通りというのが、すげー「らしい」んですよね。
卒業式なんてあんまり関係ないよねー的なノリと、ダラダラ集まってぐうたら生活をするこなた達一同は、とてもオタク的。
いやね、自分も「20超えたらオタクやめないといけないんだろうなあ」とか「大学卒業して働き始めたら」とか「28までには」とか色々考えましたとも。ええ。
でも全然変わんないのよね。
そりゃまあ会う時間は減りますが、結局オタク仲間の家に転がり込んでダラダラしてたり、一緒にアニメショップ行ったり、ネットでチャット長時間やったり。
「ダメな大人だな!」と言われたらそうなんですが、これが楽しいからいいんじゃないカナ。と思うようになりました。
そこまで行ったタイプの20代越えオタクだと、この「らき☆すた」の「何もなさ」+「微妙に人間関係変わっている」感じがすごい生々しいんですよね。
まあ人間関係の話はまたあとでするとして、「オタクなんて卒業しないよ」っぷりを一つ。

なんというドリームなクラブ!
ピュアですねー。すげーピュアです。
というか「ドリーム○ラブ」と「ピュアな紳士」というネタを知っていること前提なのがすごいですね。知らない人置き去り状態。分かる人にはツボ過ぎるんですが。
こなたの性格はほんとにオタクそのもの、しかも隠れオタじゃなくてあっけらかんと自分のオタク趣味を話せて、かつ人付き合いが上手いというポジティブ型オタクなのが痛快です。
このへん高校時代となーんも変わらないですね。
ただし、こなた・みゆき・つかさ(!?)が免許持っていたりするあたり、時間の経過がちゃんと描かれています。微妙に感覚が大人になっています。
 
その分の「若いオタク感覚」を担うのが、高校生居残り組(現在2年生)のパトリシア、田村ひより、そして若瀬いずみになります。
 

隠れオタク、いずみという新主人公●

主役はもちろんこなた達のままなんですが、色々な経験を経て少し「悟り」みたいなものがではじめているんですよね、4人組+αは。かがみは相変わらずオタクであることをツンデレますし、つかさはなんも考えてませんし、みゆきさんは完璧超人ですし、つかさはなんも考えてません。
今までの巻(特に6巻くらいまで)は「消費型オタク代表」こなた「作り手オタク代表」田村ひよりが二本軸になっていました。
そこにハードゲーマーのコウ、あっけらかんと「サイコー!」と言えちゃう外人パトリシア、なんとも「いるいる」なオタクメンツが揃っていました。
立ち位置はバラバラなのですが、
 
そこにカウンターのように入れ替わりで入り、ものすごくでかい存在になったのが隠れオタク代表」の若瀬いずみ

上のコマの左がパトリシア、右がひより、真ん中がいずみ。
パティは楽しんでいます。オタクサイコージャン!と。
ひよりは「隠れオタクの気持ちも分かる」「オープンにしてしまう自分もいる」という中間の立場にいます。
そこに来て、徹底的にオタクである趣味を友達に隠し続け、オタクを明かすことに後ろめたさを感じていて自分を偽っているのがいずみなのです。
この立場もう死ぬほどしんどい。
大げさと思われるかもしれませんが、ほんとしんどい。経験者の自分が言うんだから間違いない。
オタク仲間には「自分はおたくじゃない」と言っていることで「私は違う」的な目線にいることがわかっちゃうので本当に心苦しい。
オタクじゃない友達には自分の趣味嗜好を証せず、偽物の自分を見せているようで申し訳ない。
もう!苦しいし、辛いし、楽しいこと分かち合えないし、バレそうになると心臓止まりそうになるし!
そんな隠れオタクの苦悩を、新しい主人公は描いていきます。これは今までの「らき☆すた」になかった視点なので非常に新鮮。
 
まあ、そんな彼女にひより、パトリシアというオタク友人ができたのは救いでしたね。
そのカウンターのようになるのがこれ。

オタクは自分達の話のゾーンになると、ハッスルするのでつい知らない人を置いてけぼりにするの図。
本当はオタクじゃないゆうちゃん視点がマジョリティなんですが、オタク3人集まると自分たちがマジョリティ状態で話し始めちゃう、というこの状態を「オセロ」と冠したのには思わず笑ってしまいました。
あるわー。
でもその状態を形に出来なくて、何といえばわからなかったので、今後は「オセロ」と呼ぶことにします。
「俺の妹〜」でもこんなシーンありましたなあ。
 

●オタク研究書としての「らき☆すた」●

さて、この明るいオタク(こなた・ひより・パティ・黒井先生)、中間層(いずみ・かがみ)、一般人(ゆうちゃん・みなみ・つかさ・みゆき等)という分類をカチカチと切り替える「らき☆すた」。
つか「一般人」っていい方がオタクだよね。
で、「らき☆すた」はそういう意味において非常に毒っけが強い。
かわいいキャラクター達に隠されて一見わからなくなっていますが、オタクという人種を外から見た場合、内から見た場合両方にがっちりメスを入れています。
 
たとえば今回強烈だったのはここですね。

オタクであるこなたが、「この世界が漫画やゲームなら」「『色んな意味で』物語が終わっちゃうじゃーありませんか!!」と言っている、なんというメタ視点。
これ意味わかりますかね。次のコマ見れば分かるとは思いますが、さらに分かりやすいのはこれでしょう。

「彼氏とかできたらビッチ言われる」
うーわー、あれか、あれとか、あれか! あれのことか!
萌えシーン最前線、まさに弾丸の飛び交う戦場すぎて怖い怖い。
このへんは「オタク内側」から見たこなたの感覚と、「オタク半分外側」にいる理解ある立場のかがみだからできる会話ですね。この二人に言わせることで、なかなかに重たいネタをさらっと笑いに変える自虐っぷり。お見事です。
そして「あーそーだわー」と納得できちゃうのも、こなた達がしゃべっているから。めちゃくちゃバッサリ切っているのに後味悪くありません。「漫画の中の女の子」に言われたら、ぐうの音も出ません。
しかも彼氏の匂いがあるのはひとりだけで、あとは男がこなたの父そうじろうだけ、という潔さ。
これだけ女の子がいてしかもかわいいのに、まったく男を寄せ付けない、近づかない、顔も出ない(セリフだけはある)という徹底っぷり!
うん、「最前線のシビアさ」を知っているから描けるパラダイスですねここは。なかなか毒舌なパラダイスですが。
その他にもオタクあるあるネタをうまく使いながら、予想以上に、「えっ、いいの!?」ってくらいバッサリバサリと切り捨てていく様は爽快。こなたというキャラが、女の子オタクも男の子オタクも、性別無視して両方の視線を跳び回り、うまく笑い飛ばしているのがうまいんだなあ。
 
が、いずみの出現でオタクの中と外の感覚がまた一つ深まるんですよね。

悪気があるわけじゃないけど「オタクな彼女」とアイデンティティのように語って、さりげなく目下に見てしまうこと、うん、なくはない。残念ながらこれは埋められない溝だし「理解しなさい!」というものでもない。
その溝にはさまっちゃったのがいずみなんですよね。特にひよりと仲がよく、かつひよりに苦しみを救われているいずみとしてはなんとか反論したいんですが、それが出来ない自分のスタンスがまた苦しいというスパイラル!
でも「らき☆すた」は、確かに毒っけが強い作品ではありますが、昇華手段もちゃんと持ち合わせています。
前半のこの展開から、ひより・パティと仲をふかめて救われていくいずみの様子は必見。
らき☆すた」らしいちょっとイイ話も交えることで、毒舌を吐きながらも「やっぱりこの作品の中はいいなあ」とホッと出来る。このバランス感覚は非常によく考えられていると思います。
 
自虐できるオタクの毒舌弁論。
苦しい隠れオタクの人間ドラマ。
外側から見たオタクの面白さ。
らき☆すた」はまさに、キャラが増えることで「オタク研究発表書」になりつつあるのではないかと思います。
 

●中和剤、バカの子とアホの子●

そんなモヤモヤを吹っ飛ばすのがお馬鹿の子みさおと、アホの子つかさ。

大学に行っても小学生レベルで後先考えないみさおは本当にウザ可愛いな!
余計なことしかしない、みんなに迷惑かけまくる、だけどなんだか愛しい。最高だってヴァ!
みさおがちょっと照れるシーンは最高に悶絶しましたともええ。
 
そして、次元が一つかけ離れている我らが柊つかさ神。

この前にあるコマを見ても、なぜそうなるのかがさっぱりわからない。
さすがつかさ!未来に生きてるぜ!
しかしこのつかさの顔、あまりに抜けていて使い道大そうなので、AAにならないでしょうかね。
免許の回でつかさがリボン取ったときは衝撃でしたが(アイデンティティが!)そのあとあっさり付けていてなんだか「ホッ」。
にしても出番超絶少ないのに、出てくるだけで空気全部持っていくつかさまじ半端じゃないと思います。
なんなんだこの子は。つかさか!つかさなんだな!
今もぼくの中でつかさがホットです。いろいろな意味で。ブレイカー的な意味で。
つかさラビュー。

今回の巻で、ひよりといずみの株が急上昇中です。
いやあー、ひよりは本当にいい子だよ。今まではちょっと離れて「こなた先輩達」を見ているひよりでしたが、今後はいずみ・パティと組んで主役になってくれそうです。
それにしても「一見打たれ強そうな委員長」なんだけど「割と抜けていてものすごく気が弱い」という「隠れオタク」であるいずみを見ていると胃が痛いけど目が離せませんわ。
面白さの軸が数本あるような、「こうだから面白い」と一言で言えない作品になってきたなあーと思います。モツ鍋と水炊きとキムチ鍋と湯豆腐とマシュマロ豆乳鍋をいっぺんに食べている感じ。