たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ちょっとでも迷ってるなら「ハートキャッチプリキュア!」の映画はスクリーンで思い切って見に行ったほうがいいよ、大人のみんな!

「映画ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー…ですか!?」見てきました。
もうね、プリキュア映画版は一通り全部見てはいますが、今回は今まででトップクラスの出来。
今までは無印5のダークドリーム話がヘヴィで一番好きだったんですが、今回の映画版のガチンコっぷりが半端じゃない。
プリキュア好きな人はもちろん、アニメーションが好きな人に言いたい。
プリキュアの映画を一人で見に行くのは恥ずかしいとか言ってる場合じゃないよ。
これ劇場で見ないともったいないよ!
そして、むしろ子どもがいっぱいいる劇場の方がいい!
 
もちろんこれ、たとえば子どもが「大長編ドラえもん」の難解さを見て理解できなくても心に大人になってから残るように、子供であるがゆえに見て欲しい作品なんです。
加えて大人である人たちの心にダイレクトに訴えかけてくる物語と演出が本当に多く、またアニメーションとしての出来も一級品。羞恥心なんてすぐ吹き飛びます。むしろ周りの目を気にする余裕なく泣きそうになります。
是非、是非見て欲しい。
映画館に大人になってからプリキュア見に行くのが難しいという人が多いのも分かる。
けれど、この作品は、どうしても劇場で見て欲しい!
 
ここから、ネタバレなしレビューします。
自分の周りにはやはり「プリキュア好きだけど映画館行くの恥ずかしいなあ」という人が多いです。
そんな人の手を「いいから見に行こうよ!」と引っ張りたくて記事を書きます。
見て欲しいんです!
 

●ストーリーの複雑さが半端じゃないぞハトプリ!●


宣伝見ていると、パリに行ったら「サラマンダー男爵」なる敵が出てきて、プリキュア4人で戦うよ!という話しに見えるんですが、これがCMだと分からないくらいすげー話が濃い!
このCMうまいわー。子供の心をキャッチしながら、全くネタバレしていないので、一緒に観に行ったパパママがびびるっていう寸法だな!
 
そもそも「ハートキャッチプリキュア」のテーマって、勧善懲悪じゃないわけですよ。人の心をいかに包み込めるか、です。
ある意味勝ち負けよりも面倒くさいし難しいですが、これを日曜の朝に放映し続けてきたわけですから当然映画版でも「町が大パニックだからそいつを倒そう」という結論にはならないんですよ。
 
動画を見ると分かりますが、小さな少年(声は大谷育江さん!)とサラマンダー男爵が今回の新キャラに当たります。
通常であればプリキュア視点でこの二人をどう見るかが描かれるんですが、違うんですよ。この二人側の視点が描かれるんです。
今までのプリキュア映画は基本的に「プリキュア側」の熱い思いが「敵側」の思いを見ることで描かれていたじゃないですか。
ところがハートキャッチプリキュアは相手の気持ちがどう動くかで物語が揺れる作品です。
だからこそ映画版も、この二人の心情にスポットをあえてあてているんです。
 
ここがこの映画が子供向けで終わらない最大の所以なんですが、砂漠の使徒はなぜいるのか、なぜプリキュアがいるのかまで踏み込んだ話しになっているんです。
大人でも一見しただけではちょっと難しくて分かりづらい部分で、いろいろ細かなセリフや設定を見ることで浮かび上がるものがあるのは見逃せません。
この部分がどうして「人の心」にやたらこだわるか、にもつながっていきます。
敵が世界の「異物」であれば、プリキュアもまた誰かにとっては「異物」たりえるのではないか……?
敵役であるサラマンダー男爵と、少年の動向は本当に丁寧に作られています。
サラマンダー男爵と少年の演技力がもう半端じゃないので、目だけじゃなくて耳も凝らしてください。あまりにも魂の叫び過ぎて、心の中の鐘をガンガン鳴らしやがります。
 

●リーダーのいないプリキュアはオーケストラ●

さて、パリに行ったのはメインキャラほぼ全員。来海家全員と、つぼみ、いつき、ゆりさん。
というわけで4人のプリキュアがそろった状態です。
ここは注意点なんですが、物語のスタート地点が、アニメの最新話を見ている状態からになっているので、できるだけ最新話までチェックしてから行ったほうが倍楽しめます。
つまり。
・えりかはコンプレックスを持っていたが今は自分の選択肢を選んで進んでいる(ハトプリ初期)
・いつきは男の子であろうとしすぎず、好きなものをきちんと選べるようになった(ハトプリ中盤)
・ゆりさんが自らの心を見つめ直すことでトラウマを克服し強くなっている(ハトプリ中盤)
・つぼみが「変わりたい」という思いと「認める」思いをきちんと理解して一歩前に進めている(現時点)
この状態でのスタートなので、4人とも器がものっすごいでかいんですよ。
 
主人公たちの成長を描く物語、というのが子供向け作品の基本ですし、ハトプリもそうなんですが、映画版に関しては違います。もうすでに成長しているところからなんです。
だからこの作品第三者視点が入ります。それが例の新キャラの男の子ですね。
彼女たちはなぜつながっているんだろうか、なぜ胸をはって生きているのだろうか、なぜうれしそうに笑うのだろうか。
映画版でしか見られない全く別視点で徹底して描かれます。
 
この4人って、今までのプリキュアと違っていわゆるリーダー格がいないんですよね。
一応つぼみがそのポジションぽくなってはいますが、MHのなぎさ、SSの咲、5ののぞみ、フレッシュのラブのような中心軸、先頭ではありません。
いわば「輪」です。えりかがつぼみを後押しし、つぼみがいつきを支え、いつきがゆりさんを守り、ゆりさんがえりかを前に進め……。全員が全員を補助しながら動いているので、号令をかける人が基本的に存在しないんですよね。号令がなくてもみんな同じことを考えているから、同じ結論に達するじゃないかと。
この複雑な人間同士の信頼関係の構図をきっちり映画版の中で描いているのがものすごい眩しいんですよ。
少年が本当に眩しそうに彼女たちを見るんですよ。
誰かが特に目立つんじゃなく、きちんと全員が目立ちます。均等配分です。
 
オーケストラって、誰かが目立つものじゃなくみんなで奏でるもの。
ハートキャッチプリキュアの合体技が「オーケストラ」なのは、誰かが目立つんじゃなくてみんなが手を取り合って前に進むから。大事なのはハーモニー。
映画版は徹頭徹尾この思いで貫かれているから、観終わったあとの充実感が半端じゃないです。
 

●アクションとセンスは大スクリーンで!●

これだけ書くとなんか地味な心情物語みたいに見えるので、いかにアクションとセンスがよいか書いておきましょう。
プリキュア映画版は毎回格闘シーンが非常に凝っています。いわゆる連打技じゃないんですよね、パンチからキックに流れて足払いへ、のような連携技をこまめに使っています。
これ描くのすげー大変だと思います。ようはアクションそのもの、格闘戦そのものがキャラクターの心情描写なんです。特にムーンライト、彼女がなぜ拳を叩き込むのかにはちゃんと意味があるんです。だから手抜きするわけにいかない。
5のダークプリキュア戦なんかもそうでしたが、格闘技マニアなら「あの技は○○!」的な楽しみ方が出来るほどきっちり作れらています。プリキュア独特の、ちょっと離れた視線から見る格闘戦は相変わらずの大迫力。アップじゃないのに迫力あるっていうことは、絵の動きに重みがあるということなんですよ。映画版の妥協の無さの産物です。
えりかがマリンインパクトをやたら使いたがるのも面白いところ。えりかのアクションは本当に一つ一つが他のキャラ達よりもおおげさで面白いので見ていて爽快! 普段の三倍増しでニヤニヤできる見事なキャラになっています。多分プリキュア史上もっともおおげさなアクションと顔芸を持ったキャラじゃないかと。
そして、新キャラの少年のデザインとアクション性は本当に洗練されまくっています。この格好であの動き、そりゃほれるよ!ものっすごくかっこよく、かつかわいいので必見!
 
日常描写も巧みです。パリに行くという非日常なのに、へたしたら本編の町よりも生々しくリアルに人々が描かれています。少年と男爵以外には言葉が通じないというご都合主義の無さも見事。なぜ少年と男爵には日本語が通じるかって?それは……おっと!もごもご!
ここは個人的にも後から気づいて感心したシーンでした。
 
で、各地で話題になっていますがつぼみがマジ天使です。多分今までで一番かわいくて仕方ない。これ映画みてつぼみに転ぶ人続出かもしれません。
個人的に面白いなあと思ったのはやっぱりえりかでした。彼女は本当に日常描写でいい味出してくれます。
はたからみたらすげーウザくてマイペースなのは変わらないんですよ。ただ「つぼみのような子にはこういう器のでかい子が必須」なのがものすごくしっかり描かれています。KYなんじゃなくてAKY、あえて空気読まないで自分のペースに相手を引き込める天才なんですよねえりか。今回の映画版でその一挙一動が意味がなさそうなのに意味があるのを浮き彫りにしているのが素晴らしい!
のぞみさんが「相手の手を引っ張ってぐんぐん前に進む子」なら、えりかは「人の家に勝手にあがりこんで背中をバンバンたたきながら励ましてくれる子」というか。今までにないキャラである彼女を、映画版では最大限まで見事に描いています。これは今までのハトプリをしらなくてもぐっとくる描写だと思います。見事なまでにしっかりしたこんな子の描写を見られる今の子は、幸せだなあほんと。
 
そして、あえてパリに行っているだけあってセンスの良さは抜群!OPで割とびびると思います。
OPもEDも完全映画版アレンジモード。これを見るだけでも映画の価値はあると言えますが、本編の重みが尋常じゃないので価値が計算できない。
ファッションにやたらこだわる理由もここで明かされます。本編でも言っていたかもしれないですが、ここまでがっちり描写しているのは貴重かもしれません。
かなりデフォルメの効いた絵柄ではありますが、そんな子たちがアクションはもちろん、日常生活まできっちりリアルに描かれているのは本当に必見。アニメ好きなら作画とアニメーションのレベルの高さと丁寧さだけで涙すると思います。90分アニメファンであるほど息が抜けない。
 
そして演出の妙。心の動きにあわせたこまめな演出が入るので、スクリーンへの感情移入度が強烈です。大人一人で見に行くの恥ずかしいなあという人多いと思いますが、ぶっちゃけはじまって5分で余裕でスクリーンに引き込まれます。
コミカルな部分も、シリアスな部分も、希望も絶望も、余す所無く完全に詰め込んでいる。
本編が「重い」と書いているのはストーリーだけのことではなく、動きや設定や感情描写の濃度が濃いから、密度が重いというのもあるんです。しかも全部のシーンが重要で、つじつまもあっているという几帳面さ。職人技です。
 

                                                                                                                                          • -

 
ネタバレ無しの感想も、ネタバレなしだとここらが限界よ!
少年について、えりかとつぼみについて、いつきとゆりさんについて、書きたいこと本当にいっぱいあるんですが書けない! 書いたら本当にネタバレになるくらい強烈に緻密!なので今回はじっと我慢の子です。
EDの最後の最後まで、ここまでぎっちりと人間の生き方を様々な角度から詰め込んだ作品、大人向けアニメでもそうそうないです。なのに押し付けがましくなく観客の心をハートキャッチするのは、やはり動き一つ一つが本当に丁寧に作られていて、表情のすべてに無駄がないからだと思います。すごく視点が多様なのを詰め込んでいるのに、一本の芯から全くぶれていない作りなので、ものっすごい心に入り込もうとしてくるんですよ。
それらが絶叫にも近いキャラたちのセリフと演技によって補完され、涙腺の蛇口をひねりやがるから困る。女児に囲まれながらも余裕で泣けます。これはとても素晴らしい罠ですね! こんな罠なら体験しておかないと損だよ!
 
毎回恒例のライトがまたキレイでねえ……。今回は説明一切なしですし、物語も複雑なので子供が理解しきれていない可能性もあるんですが使うべき瞬間が本当に分かるんですよ、強烈なほどに。むしろ大人のぼくらも「ここは、ここだけは、応援しないわけにいかない!」という部分がはっきりと浮き彫りになっています。これはもう演出が見事としか言いようがない。
そんな思いを代弁してくれるのが子供たちのライトなので、多少恥ずかしいかもしれないけれども、子供の多い日に上の方の席で見ることを本気でおすすめします。
自分が見た会はほんと席びっしりだったんですが、子供たち説明がそこまで多くなくても分かるんですよね、使うべき大切なシーンが。
劇場内で輝くライトは、本当に面白い体験なので何度でも味わいたいです。
 
長々と書きつつも肝心なところがかけていないのが歯がゆいですが、もう一度書いておきます。アニメが、プリキュアが好きならこれは映画館で見ておかないと本当にもったいないので、恥ずかしがってる場合じゃないです、見に行ってください。
見ないでする後悔より、見てからする後悔(照れとか)の方がいいです。
是非! もちろんお子さんたちの邪魔にならない感じで!
 
 
 
うーん。これを見た子供たち、多分全部を理解出来る子はいないだろうなあーと思いつつも、大人になってから「あの映画すごかったんだよなあ」という原体験になって思い出してくれたら本当にいいなあ。
ぼくらがドラえもんの鉄人兵団や魔界大冒険で見た強烈なトラウマ級のゾクゾク感を、最高の素材と最高のキャラで体感出来る時代だというのが嬉しくて仕方ない。