たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

11話放映前にチェック。「まどか☆マギカ」関連各種雑誌記事を読んでみる。


やあ! ぼくキュゥべえ! ぼくと契約して魔法sy
(爆殺)
キュゥべえは全部で何体いるんでしょうね。宇宙人みたいなものなのか、群体なのか、ファンネル飛ばしてるみたいなものなのか。
 
魔法少女まどか☆マギカ」11話までしばらく間がある今日この頃。早く続きみたいですが、10話がすごすぎたのでしばらく余韻で心のなかを整理して待機です。
さて、その間に「まどか☆マギカ」関連の記事の載った雑誌も幾つか出ました。
そのなかから「これはいいなあ」と思った三冊をピックアップしていきます。
 

●アニメでしかできない空間を。新房監督インタビュー「季刊S」●

季刊エスの4月号「変身」では、新房監督のインタビューが載っています。
一番焦点が当たっていたのはアニメーションで何が出来るか?という新房監督の考え方です。
まどか☆マギカ」のもう一つの主役といえば背景。虚淵玄氏ですら度肝を抜かれた「ありえない世界観」が自然に見えているポイントに付いて語られていました。
 
例えばこのへんなんかを実写でやろうとすると、すっげえお金かかるんですよね。しかもそれだけの費用に見合った意味を持ち合わせない。
インタビューでも語られていますが、ガラス張り教室の机は普段は床に収納されている仕組み(これは作中でも出てきている)。
ホワイトボードも実はペンタブみたいなもので、書くたびにスクロールしていく。非常に便利ですし合理的。今後こうなるんじゃないか、という可能性は十二分に考えられます。
むしろインタビュー内で「子どもが学校に来てカードを通すと、親にメールで連絡がいく」というのがリアルで今存在している事に驚き。そんなことになってるの学校!?
 
右側のカットは物理的に「おかしい」カットです。どうやってもこの展望台に入れないし、降りられない。しかもこれ何のためにあるのか分からない。
というツッコミが出来るカットが山ほどあるのが「まどか☆マギカ」なんですが、じつはこういうのも意図的に配置されているのがインタビューからわかります。

−アニメの方が自由に面白い空間を演出できますね。
新房「本来はそうですよね。でも見ている人に『おかしい』とか言われてしまうと、それはもうしょうがない。空間としての面白さを少し取り入れただけなんですが、それを見て『面白い』と思ってくれる人もいれば、『これはダメだ』と思ってテレビを消される場合もありますから、そこは分からない。見る人が何を求めているのかは、難しいですね。でもドラマでは、そういった演出を取り入れているので、これだとアニメがまた遅れていくなあと感じます。」
季刊エス4月号より)

まどかの家の洗面所や、ほむらの部屋なんてもうわけがわかりません。わかりませんが「そういうもんなんだ」と無理やり説得させるのではなく「あ、面白い」と感じさせるテクニック。実際成功していると思います。
 
もう一つ面白いのは、五話でまどかとほむらが向い合って話しているのに、ほむらは振り向いて話すカットが挿入されている件について。
どこ向いてるんだよって話ですよね。しかし妙に説得力がある。かっこいい。なぜだ?

新房「正面を見て向い合って話しているけれど『このセリフは振り向いて言わせたい』という思いがあって。振り向いちゃってもいいかなと(笑)。最初の頃だとそういう演出も出来なかったんですが、今はもういいやって思うんですよ」
−振り向くカットが挟まれていると、その後のセリフに余韻が残って印象的に響きますね。
新房「そうなんです。なので、理屈は気にせずに『もう振り向かせて喋らせよう』と、ある時期から決めました。理屈としては変であっても、今は自分の思いを優先しています」
季刊エス4月号より)

安心の「シャフト向き」ですね。キャラが振り返りざまにしゃべると「ああーシャフトだなー」とほっとします。
これも「シャフトだから」「新房監督だから」という安心感があります。看板とかに無意味にイヌカレー絵が描かれていても、「シャフトにはよくあること」という認識があるので気になりません。というか気になる人は脱落しているかもしれません。このへんのふるいのかけっぷりは相当悩んでいるようです。
 
季刊エスのインタビューは、新房監督のスタンスが非常に分かりやすい、というか、「月詠」や「ぱにぽにだっしゅ」の頃から今に向かってどういう風に変遷してきているかを知ることもできるので、ファンなら読んでおいて損はないと思います。
まどか☆マギカ」の主人公が「キャラクター」「イヌカレー空間」「背景」という三本立てで、バラバラなのにまとまっているのはなぜなのかを読み解く鍵があります。
 

●まだ全話見られていない人にはもってこい!「メガミマガジン」●

最速ネタバレになってしまうのではないか、と言われていたメガミマガジンですが、ぎりぎりのところで虚淵玄氏の要望により11・12話についてはカットされました。お見事。
スペシャルブックとして単体のふろく読本がついているのですが、これ以外にメガミマガジン本誌にはまどか☆マギカ情報はありません。
また、内容自体も特に目新しい情報や解説はないので、そういうのを求めている人向きではないです。
ただ、各話の総まとめを、ネタバレを最低限におさえて、豊富な図入りで掲載しているので、まどか☆マギカはそこそこ知っているけどまだ全話見られていない人に一番オススメします。もちろんネタバレ自体はないわけにはいかないのでそこそこありますが、かなり最低限に絞り込んでいるのは見事。ライターさんの苦労が見られます。
魔女図鑑はネットに乗っているものと同じ。ですがゆっくり本で見たい人には良いと思います。
魔法少女アイテムや杏子の家族や幼少期のさやかなど、本編ではあまりじっくり見られなかった設定資料もたくさん載っているので、参考資料的な価値もありです。
繰り返しになりますが、新情報のネタバレはないので安心して買って読んで大丈夫です。
ちなみに付録の大型ポスターのキュゥべえの扱いに大笑いしました。見て確かめてみてください。あれは「願望」なんじゃないかしら。
 

●アニメとゲームのシナリオの違い「キャラ☆メル」●

個人的に「まどか☆マギカ」の最新情報や、作家虚淵玄を読みたいならこれが一番オススメ。
また「まどか☆マギカ」に興味はなくても「ゲームシナリオとアニメの差ってなんだろう?」という点に興味がある人には是非読んでほしいところです。
というのも、これ虚淵玄氏インタビューではなく、虚淵玄高橋龍也(「痕」「ToHeart」など)、高山箕犀(「キミキス」「アマガミ」など)三氏の対談というとんでもないものだからです。すげえ、よくそろったなあ!?
 
読んでいて一番印象に残りまくったのは……「まどか☆マギカ」ネタではなくキミキス」アニメの進行状況の破綻っぷりの恐ろしさでした。

高山「これはダメだから他の台本出してって言うと、『いや、すいません、もう間に合わなくて動画に入っちゃってるんです』とか。そうなると監修する意味がないってなりますよね。そんなわけで、後は皆さんの知る結果になったわけです」
キャラ☆メルFebri 5号より)

読んでいて、背筋がゾッとする高山氏の発言連発。アニメ業界マジ怖い。色々なミスがそれぞれ逆の意味で奇跡的に重なってしまった話が載っています。

虚淵「そういうおっかない話ばっかり聞いていたので、絶対アニメに関わるのはやめよって思っていましたね」
一同(笑)

ダヨネ。
 
さて、「まどか☆マギカ」絡みの話で言うと、一番ずっこけたのはやっぱりここでしょうか。

虚淵「あれをつくったのはシャフトだからね! 俺は知らないからね! 俺は上がってきたコンテ見て笑ってただけだからね、『この黒猫何?』とか言いながら(笑)」
高山「あれ、黒猫は何か関係あるとかと思っていたんですけど、関係ないんですか?」
虚淵「ないですね(笑)」
キャラ☆メルFebri 5号より)

ズコー。
あんなにいっぱいでてきてるのに! 意味ありげなのに!
黒猫、なんにも関係ないのか!
いやあ、面白いですねえ。ほんとそれぞれがめちゃくちゃに好き勝手やってる。

虚淵「この好き放題っていうのが自分ひとりだけの話じゃないらしく、聞いてみたら蒼樹さんもやりたい放題、イヌカレーさんも好き放題やっちゃったらしく……。普通だったら歩幅合わせて2人3脚で挑んでいるところを、脚を縛らずに挑むようなもんですよ。ズルじゃんって(笑)。そんなふうにみんな勝手に走っていっちゃったんだけど、何故か歩幅が揃っていたんです」
−理想的ですけど、普通はそうはならないですよね。
虚淵「一体これは何かの奇跡だろうっていう感じはしますが、そういう意味では全部をうまくまとめてしまった新房監督が一番すごいのかもしれないですけどね」
キャラ☆メルFebri 5号より)

そしてここから、季刊エスの新房監督インタビューを読むと味わい深いものがあります。
もちろん新房監督も「あわせればいいや」と居座っていたわけではなく、みんなのはちゃめちゃな個性をむしろリミックスすることで面白いものができるという計算の上で作っているのが浮かび上がってきます。
同時に虚淵氏の本気を最大限まで引き出していることも、「キャラ☆メル」の対談を読んでいるとわかります。
そして、虚淵氏も「どこまでが許されるのか」「どこまでやっていいのか」を相当悩みながら突き詰めている、現在進行形で物語作りに悩んでいる様子も見て取れます。
 
キャラ☆メル」の対談はネタバレに関しては、11・12話の予告編的な会話がちょっとあります、とだけ言っておきます。とはいえ致命的なネタバレはない(おそらく調整されている?)ので、安心していいと思います。こんなことが起きるのかな、というのがちょっとだけ垣間見える感じですが、予想させる範疇でとどまっています。
 

●全体を読んでみての感想●

三つを読んでみての雑感です。
 
まず印象に残ったのはネットとオリジナルアニメのあり方です。
原作付きだと当然ラストを知っている人がいるので、ネタバレが必ずある。
しかしオリジナルアニメはそれがない。そこに対してのネットの反応(主に2ちゃんやtwitter)の論議や予想の面白さは久しぶりだなあ、という意見に心から同意。次の展開がどうなるか、他の伏線めいたものを隅々まで探して考える楽しさをリアルタイムで味わっていると思います。
ただし、新房監督も虚淵氏も言っていますが「物語が進んでいけば、起こりうる出来事は絞られていくので、ネットの予想の中で的中するものは当然出てくる」というのは面白い点。確かに広げられた風呂敷がたたまれている段階に来ていますから、選択肢は減っていきます。
虚淵氏は特にネットの反応をよく見ているようで、「こっちのほうが面白いじゃねーか!」みたいな話をされていてユニークでした。ある意味21世紀型のやりとりですね。
 
次に面白かったのは、蒼樹うめ先生絵と、虚淵脚本のギャップの話。
これは発表当初から「どういう組み合わせだ!?」とネット中騒然としましたが、作っている側もそうだったようです。
虚淵氏は特に「おれ、本当にこの子たちの脚本を書いちゃっていいのかな?こんな世界嫌だよな?」と素直に語っていました。そこでスパイスになっているのが劇団イヌカレーこれがあったおかげで開き直れた、と虚淵氏は語ります。
逆に新房監督は、最初からこのギャップはわかってつくっています。「お話はお話、キャラはキャラ」として考えている監督が重要視していたのは、やっぱり劇団イヌカレー
いやあ、イヌカレーあってこそのまどか☆マギカですねほんと。
 
そして、「まどか2」を日常物でやりたい、という新房監督と、「この1クールで完全に風呂敷を畳んでしまうので、続けるのは難しい」と語る虚淵氏の差。個人的には日常キャラ物の「まどか☆マギカ」は見てみたいですが、それは虚淵脚本ではなく、まさに「魔法少女ひだまりスケッチ」というノリになるんでしょうか。さやかと杏子がキャッキャウフフするのは超みたいですけどね。
なんにせよ、ゲームシナリオでもきっちり終わらせる虚淵氏です、11・12話で作品そのものにけりをつけるのは間違いなさそうです。
 

●最後に。●

ちょっと自分が感動した虚淵玄氏のコメントを「メガミマガジン」の小冊子から抜粋してみます。

虚淵「申しわけありません。本当は最終話まで全話の放映を終えた後で、すべてを語り尽す記事内容にできるはずだったのですが、憎き大震災の影響でメガミマガジン発売日までに物語の全容を皆様にお届けできませんでした……。ここで明かせなかった数々の秘密は、いずれまた改めて読者の皆様にお伝えできればと思っています。今は被災地の1日も早い復興を願いつつ、このアニメが明日の日本を元気づける一端を担ってくれれば、と思います」

最終回が公開された後、『魔法少女まどか☆マギカ』のすべてを虚淵玄氏に語っていただきます。
メガミマガジン 魔法少女まどか☆マギカスペシャルブックより)

本当にこの人は物語に対してプロだなと。物語を出すために、真剣に挑んでいるんだなと。
今回で終わりじゃ無くて、この後また語るというのもすごいじゃないですか。
実際のところ、メガミマガジンでは震災がなかったら12話までこの小冊子に載る予定だったわけですが、それを虚淵玄氏がストップをかけてネタバレがなくなった、という顛末もあるようです。
 
この一文もいいなあと。

虚淵「どちらかというと今の自分は広報的な扱いなのかなと。社外(注・ニトロプラス外ということ)プロモーションの一環で別業種でいろいろやらせてもらってる、という位置づけではあるので」
キャラ☆メルFebri 5号より)

ずいぶん虚淵氏はあちこちで「まどか☆マギカ」についてしゃべっていて、特にtwitterなどでは場を引っ掻き回すかのような発言も多くて、変わっているなあーと思ってみていたんですが、あれ意図的に広報になろうと必死にやってたんですね。
そう考えると、本当に「最大限までニトロプラスのため、まどか☆マギカのために頑張っている」人なんだなあと誠実さが感じられます。
虚淵氏ベタ褒めになっちゃいましたが、謙遜で真摯な姿勢に心打たれたのはほんとです。
「元気づける」作品なのか一瞬首を傾げそうになりますが、10話を見てやっぱり思います。絶対に諦めないパワーのある作品だと。
まどか☆マギカ」を見て、元気づけられた人、あるいは心の色々なスイッチが入った人は多いはず。ぼくとか。
11話までの心の準備実はまだできてないのですが、全力で受け止めようと思う次第です。
 

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