たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

積みゲーが残っているという未来の幸せ。「ちいさいお姉さん」2巻

「ちいさいお姉さん」は、ちいさいお姉さんが主人公の、僕の理想の最高のお姉さん漫画です。
今「どんなお姉さんが好み?」っていわれたら「ちいさいお姉さん!」って答えますね。
オレの姉さんがかわいくないわけがない。「ちいさいお姉さん」はミニコン必読。

見てこれ!
ほらきた!
ソーキュート!
 
あらすじは上のリンクでも書いてますが、とにかく小さくてちょろちょろ走りまわって酒癖の悪いヘビーゲーマーなお姉さん、灯(あかり)がかわいい、という話です。
とにかくとにかく「ちいさいお姉さんってかわいいよね!」を描くための漫画です。
一巻はその「ちいさいお姉さん最高!」で終始していたのですが、後半から由季という世界レベルのモデルの女の子が登場。この子がまたものっすごく灯に依存しており、ただ「かわいいねーいいよねー」で終わらなくなっております。
で、この二巻は由季がパリに仕事に行かざるを得なくなって、灯と一時的におわかれせざるを得なくなります。
そこに入るのがこのシーン。

二人はPS3のヘビーユーザーなので(注・この漫画は電撃プレイステーション連載なのです)パソコンを使わずにPS3でパリと日本でチャットできるから、寂しくないよね、と言う会話をしているわけですよ。
いやあほのぼのいい会話ですねえ。これで寂しくないよね。
……。
…。
今寂しくて由季さんやばいんじゃないか!?
PSN復帰、は、早めにお願いします、この二人のために!
 

●お姉さんの幸せ●


まあ、二巻でも「ちいさいお姉さんって本当にかわいいよね!」という結論で問題はないと思います。
ミニマムサイズのお姉さん好きな方、ミニコンな方(例・WORKING!!のぽぷら好きな人)は必見です。
またねー、20超えてるからお酒飲めるってのがいいんですよね。お姉さんの酔っ払い率ハンパじゃないです。
作中では「色気がない」と言われ続けていますが、酔っ払って絡みまくるシーンや、弟や友人をいじくりまわすシーンはちいさいがゆえの色気満載すぎますがな。
ロリコンだから、ってのはあるんですが、違うんだよ、それだけじゃないんだよ、すごいんだよ灯さんは!
 
さて、この姉弟、現在二人暮らしです。
この家に色々な友人が出入りして、ゲームして、物語は進んでいくわけです。
んで、お姉さんは現在の環境(仕事して、家事を弟とやって、ゲームして、二人暮らし)をまったく不満に感じていないどころか、幸せそうに過ごしています。
で、それがちょっとポイントなんですよ。このコマを見てください。

「し、幸せすぎる!」
この顔を見て幸せになれますね。
 
ここで注目したいのは、「積みゲー」という言葉です。
ゲーマーならよく使う言葉。ようするに「買ったはいいけど実際にはプレイ・クリアしていないゲーム」のことです。
この4コマのタイトルは「積みは罪」。はい、そのとおりですね。
積みゲーは別に褒められた行為ではないです。作った人にしてみたら、血と汗と涙の結晶なわけで、「プレイしてよ!」ってなりますよね。それは作者も灯さんも分かってるんです。
でも、それを踏まえた上で、あえて言うんです。
「し、幸せすぎる!」って。
 
積みゲー」の幸せ、って存在すると思います。
ゲーム自体は遊ぶことが幸せなので「積んでいて何が幸せなんだろう?」となるのが普通だと思うんですが、ハードゲーマーの中にはこう感じる人もいると思うんです。
これからやるゲームがいっぱいあるって。
一つのゲームを延々とやるのも楽しいですが、これからできるゲームがたくさん家で待っている、というのは何者にも代えがたい幸せになること、あるんです。
もうちょっと言い換えましょう。
家に積んであるゲームをやる「未来」がある、というのを実感できるんです。
お姉さんは忙しくて積みゲーしてしまわざるをえない部分があるので、それは社会人の悲しみでもあるんですが、一向に悲しみません。休日があればあった分だけ、ゲームを消化して幸せを享受します。
まあゲーム雑誌の4コマなので、当然読んでいるのはゲーマーなわけです。「家に何日もこもってゲームするのは幸せなのか?」と聞かれたら「幸せといえる」というのが前提。
甘いもの好きな人なら、スイーツが冷蔵庫いっぱいに入っているのを想像するといいかと。
 
クリアしてから次のゲームを買うのが幸せ、というゲーマーもいると思うので、このへん一概に「これが正解」とは言えません。
しかし、お姉さんにとっては「積みゲーがあること」が幸せなんです。
逆に彼女の生活について弟が「身体に良くないよ」というと、彼女はこう言います。
「だって! 積みゲーがたくさんあるんだも!」
幸せのために積みゲーを作るほど買い込む。積みゲーによって彼女の行動原理が決まる。行動原理をこなして彼女は幸せになる。
根底にあるのは「ゲーム楽しい!」なんですが、それ以上に「未来があること」は大きなウェイトを占めています。なぜ彼女は積みゲーにこだわるんだろう。
 

●お姉さんの憂鬱●

実はこの巻、結構ヘヴィなところも描かれています。
そもそもなぜ姉弟の二人暮らしなのか?
それは母が他界、父が単身赴任しているためです。
普段はとても笑顔ですごしている彼女ですが、実はめちゃくちゃプレッシャーや憂鬱を背負ってきていました。
今は社会人として働いている分心にも余裕があるお姉さんですが、彼女だって学生時代があったわけです。その過去話が今回描きこまれています。

周囲からしたら、ほんのささいなことかもしれません。
でもお姉さんも学校の他の生徒のことを「クズ」と呼んでいたことがあります。心に余裕がないところに、冷淡に吐きかけられる言葉にお姉ちゃんは爆発してしまいます。
今の姉はだらしないけれども、優しくてゆるい人です。だけど、お姉さんの心の中に淀みたまったヘドロが飛び散った瞬間がありました。
内容は実際に読んでいただくのがいいと思いますが、正直お姉さん視点で言うとめちゃくちゃ理不尽な展開もあります。 カタルシスにあたるような、お姉さん曰く学校の「クズ」がどうこうされるシーンはありません。
お姉さんは停学を言い渡され、憂鬱に苛立ちながら部屋にこもって何も食べない日々を過ごすのです。
 
今、弟は非常にしっかりした立派な青年として描かれています。
しかし過去編で、彼めちゃくちゃ泣き虫なんですよ。
お母さんが死んで、お姉さんが問題起こして停学にあって、「やだよやだよやだよ」って泣くんです。
 
そう、この時、姉にも弟にも未来の幸せなんて見えませんでした。
お母さんが死んだことで、「明日、死ぬかもしれない」という恐怖に責めさいなまれるんです。
生きて行くのも精一杯。お父さんは葬式終わってすぐに仕事に戻ってしまい、信頼できない。学生ですもの、そうもなります。
絶望ですよ。未来なんて考える余裕ないですよ。
でも泣き続ける弟をみて、お姉さんは言うんです。

「きっとコウもこれから、お母さんがいないから、お父さんが単身赴任だからとかイロイロ言われると思う。世間的には良い子にならないとお母さんが悪いって言われるかも」
「お母さんは悪くない」
「そうよ悪くない。お父さんは…よくわからないけど、お母さんを悪く言われるのはあたしもやだ。」

未来が見えないなら、作ればいい。
お姉さんの戦略が始まります。

「テーマは、『望月さんのところはお母さんが亡くなって、お父さんも単身赴任で家を空けてるのに、姉弟で力を合わせて頑張ってて偉いわね』…だっ!」

「大事なのは勉強と部活かな… あたしは運動神経はイマイチだから勉強する。コウは勉強もそこそこだし、運動も良い感じなんだから、両方頑張るのよ。ゲームはごほうびね。頑張って何か良い成績をゲットしたら買ってあげる。頑張るのよ!」

ここで面白いのは、世間体を保つためにゲームやマンガを「表に出さない」という手段を取ったことです。
もちろん大好きなんですよ。ただ現在ほどではないでしょう。なんとなく好き、位だったんじゃないかと思います。

・ゲームやマンガばかりだと、部屋でじっとしているように見られるので、あえて隠す。
・でも、好きなモノは「頑張ったごほうび」として必ず手に入れる。

複雑ですよね。本当は隠す物じゃないんですが、お姉さんと弟の二人は親が死んだことをバカにされて逆上したり、精神的に不安定だったりしたのもあって、一旦とりあえず「形式のいい子」のふりをしようと決めるんです。
学校で勉強がんばってますよ、運動もがんばってますよアピール。
本当にきちんと頑張ったら、ゲームやマンガを買ってあげる。
つまり二人にとってのゲームは、悪いものでもなんでもありません。むしろ頑張った後に手に入る、ご褒美という名のとっておきの「明るい未来」なんです。
 
お姉さんはここを境目に、ずぶずぶとゲーマー地獄にはまっていくようですが、ゲームをしているときは常に笑顔です。
たかがゲームかもしれません。
でも、もし死んだら、病気で倒れたら、ゲームをする未来はありません。
ゲームの続きができる「明日」があるって、本当に幸せなことだって、分かってるんです。
積みゲー推奨はしませんが、ゲーム雑誌でこの4コマが載っていることにちょっと感銘を覚えました。
ゲームがつなぐ希望や人間関係って、あるんだよ。
 

電撃4コマは「ゲームを通じてできる人間関係」がテーマの作品ぞろい。
放課後プレイ」や「家族ゲーム」が有名ですが、最近だと「ふーふ」が超おすすめ。たかがゲーム、されどゲーム。
できればゲームを通じて、人生の幸せを覗いてみたい。