たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

『名探偵マーニー』が面白いけどこのまま続いたらどうなるのかわからない件

名探偵マーニー 1 (少年チャンピオン・コミックス)
今チャンピオンを毎週読む度に、ベスト3くらいの勢いで楽しみにしている『名探偵マーニー』。
ほかはほら、『バチバチ』とか『囚人リク』とか。『空が灰色だから』は楽しみというより、毎週の予防接種。
 
一言で言うと探偵マンガ。
でも「推理作品」に含めるかというと……含めるんだけど、突飛すぎて含めづらい!
ロイド探偵事務所の一人娘マーニー。
ぼさぼさ髪の毛で考え始めると夢中になってしまう彼女もまた、私立探偵をやっています。
ちなみに部隊はガチ日本です。
 
でだ。普通ならマンガ的にはここで、彼女がすごい推理力の持ち主とか、特殊な能力を持っているとか、になるんですが。違う。
じゃあ推理小説の名作のように、見事なトリックで内容を描いているか、というと、半分はあってる。確かに見事。
でもこのマンガの本質はマーニーがどうだとか、事件の結果がどうだとかじゃないです。
人間って変だよって話なんです。
 
4話で明らかになる、マーニーの親友のゆりかちゃんの話。
彼女は流行りモノに飛びついたり、人に適当なこと言ったりするお調子者ですが、運命の人に出会います。
運命というのも、各所でその男性に出会うという、偶然としては出来過ぎた状態だから。
じゃあなぜそんな偶然に会うのか? そもそもその男性は誰なのか?
ここに推理が入ってくるのですが、まー結論がびっくり。
推理モノなのでここではいえないですが、「そこかよ!」「そんなことあるのかよ!」と突っ込みたくなる。
確かにそれはトリックというか、あってるけどさー。人間の心理のすんごい妙な部分を形にしたもんだな、と言わざるをえない。
ちなみにゆかりちゃんの正体は、毎回チャンピオンの柱のキャラ紹介に載ってます。定期的に晒されるというね。
 
人間って心にいろいろなものを抱えているわけですよ。
それが嫉妬だったり妬みだったり恨みだったりすると殺人や暴行に発展したり、欲望だったら強盗や強姦に発展したりするかもしれません。
でも違う、『マーニー』にはそういうのはない。無くはないけど、少なくとも怒りや悲しみはメインじゃない。
どちらかというと嗜好だったり趣味だったり友愛だったりだったり笑いだったりと、負じゃなく正の側面からくる「事件」ばっかり。
負の感情は確かに動機として、問題を起こしやすいです。
けれども、プラスの感情が事件の引き金になること、あるいは奇行に走らせることだって、当然あるわけです。
もうちょっと言えば、今を維持したいというだけの平坦な感情でも。
 
親友のゆかりちゃんをはじめ、周囲の人はとにかくアクが強い。
キャラが怒りの感情で行動することも確かにあるんです。それってわかりやすく「犯罪」ですよね。
けど、キャラがおだやかな気持ちの趣味で行動したことが道理から外れていたら、それってなんだろう?
「奇行」としか言えないし、裁くのも難しくなります。
『マーニー』はそういう奇行や、人間の心理の隅を描いた作品です。
父の声の幻聴の話とか好きです。あれは確かに推理トリックであり、人間の心理の不思議なところを突いてる。しかもマイナスの感情がどこにもない。
 
んでなにが気になるかって。
これ毎週やってるわけですよ。オムニバスで。
毎週毎週こんなややこしいネタを、毎回びっくりする方法で出し続けて、実に今週で24回め。
ネタ、なんでこんなにでるの!? 木々津克久先生!?
 
木々津先生といえば、チャンピオン読者にはお馴染み『フランケン・ふらん』の作者。
フランケン・ふらん 1 (チャンピオンREDコミックス)
これは最初読んだ時強烈だったなあ。
なんせ刻もうがくっつけようが自由自在なヒロインによる、肉体改造なんでもありのマンガでしたもの。
流れはマーニーと同じなんですよね。何か困ったことがある、それを解決する。
けど『フランケン・ふらん』は割りとはっきりと負の感情も描かれていましたし、負の感情を持ったものに対しては因果応報的な罰が下る流れも強かったです。
うわー絶望的だー、って話でも、本人が自爆することばっかりなのでそんなに後味悪くない。
だから割りと気持ちいいんですよ、グロ描写も含めてざっくりしてる。
ただ、ブラックな要素はかなり強いです。さすが月刊誌というか、核実験場と呼ばれていた頃の『チャンピオンRED』作品。
ヴェロニカはエロかった。
 
一点して、真っ白なのが『ヘレンesp』。
ヘレンesp 1 (少年チャンピオン・コミックス)
真っ白でしたねえ……。
連載当時、真っ白すぎて逆に不安になりました。
えっ、『フランケン・ふらん』の作者だよ、この子どうなっちゃうの、みたいな。
いえもう、きれいでしたよ。
逆にこっち読んでからふらん読んだらびびるだろうなあ。
 
真っ黒と真っ白を通った後に出てきた『名探偵マーニー』。
色で言うとグレー、だと僕は思います。
グレーだからこそ、人間の心理のいい部分悪い部分両方を描けていると思います。
今やっていて好きだからという加点はありますが、木々津作品では最高傑作レベルなんじゃないかとすら。表向きのギミックだけに頼らずに心理を描きながら、人のきれいな部分も歪んだ部分も、色眼鏡なしに見せている。
人間を描くというテーマと、面白さのバランスも絶妙。
あとマーニーがかわいい。
木々津先生の中でカチっとはまるものがあったかのようにすら感じます。
 
毎週という過酷なネタ出しの中、最近だと『マーニー』でも、得も言われぬ後味の作品も増えて来ました。
やっぱり今も、比較的みんな善意で動いているし、それゆえの奇行も繰り返され続けている。
マーニー自体は特に手を出さず、狂言回しの位置にうまくはまってそれ以上にならない。
周囲のキャラ達の心理次第で色々変化していくのが面白いんですが、これほんと長く続いたらどうなるんだろう??
フランケン・ふらん』も、月刊であの質量でしたが、同じだけのものを毎週出してくるから、まあ密度高い高い。

はたしてこのまま平和が続くものか、
それとも殺人犯が跋扈しだすか
それは私もわかりませんが
これからしばらくマーニーに
付き合ってもらえれば幸いです。
(作者あとがき)

殺人犯が跋扈するマーニーも確かにちょっと見たいです。
逆に日常回みたいなネタも見てみたいです。マーニーかわいいし。
でもぼくが一番見たいのは、現時点では今のまま人間と奇行と情を描く『マーニー』なんです。
それを続けるのは相当大変だと思いますが、さてはてどうなることやら……木々津先生、がんばって!!
それにしてもマーニーはかわいいです。
 
マーニーといい秋山殿といい、ボサ髪ブームきたか?!