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「サクラクエスト」24話 お祭りは宣伝じゃない、地元の人のためのものだ

 

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(公式サイトより)


20歳女子の木春由乃。ド田舎の間野山観光協会に呼ばれて、50年前のお祭りを大復活。
アニメ『サクラクエスト』24話。Amazonプライムビデオでは、テレビ放送後すぐに配信されています。

 

 
『アオシマ書店』からレビューお引っ越しです。今までの一覧は下記に。

 


●24話「悠久のオベリスク
間野山市が合併吸収されるかもしれない、という話が出て、動揺する一同。
そこにテレビ局の人間がやってきて、みずち祭りの芝居に自社のアイドルをねじ込みたいと言い出した。由乃は譲歩案を考えるも、丑松観光協会会長は断固として拒否、追い返す。

皆は、落ち込んでいるヒマはないとみずち祭りの準備をモリモリ進めた。
すると町の住民たちも、自主的に宣伝をしたり、活動の支援に入ったり、協賛金を出したりと、今までになく盛り上がり始める。
当日、祭りは町の人の活気であふれた。そんな中、丑松はサンダルさんの祖先が書かれた石碑を見て、間野山存続のために姉妹都市提携ができないかと発案する。

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 (公式サイトより)

 

●祭りは地味だった
サクラクエスト』では今まで何回かイベントを行ってきた。建国祭に、そうめん博覧会。いずれも大規模で、間野山の外側の人へのアピールとしての取り組みだ。
しかし今回は違う。ぶっちゃけ地味だ。おそらく参加者は、町の人だけ。
出店もずらっと並んでいたけど、建国祭の時と比較にならないほど、人はまばらだ。
だが、みんな笑顔だった。

1クール目の『サクラクエスト』は、観光として外にどう発信するかを考えるのがテーマだった。だから派手じゃないといけなかった
この段階では、成功してもなかなか町の人との連携は取れなかった。

しかし2クール目はほとんど外部向けの「観光」に目を向けていない。

由乃たちの視線は「町おこし」に向いていた。

出店に、太鼓に、劇に、お神輿。
ものっすごく普通だ。
でもその「普通」が出来ず、町では50年間放置されたままだった。
50年ぶりに復活させ、町のみんなが集まって、祭りに協力していく、という過程は、全く普通ではない。みんなの努力あってのもの。

ここが、由乃の主張につながっていく。
彼女はもともとは、東京で「普通じゃない」仕事につこうとしていた。

「普通じゃない仕事も、それが毎日続けば普通になるし、普通の仕事だって、そこに刺激を見つけられれば普通じゃなくなるからね」
「どんな仕事だって、その中に自分で刺激を見つけて、どんどん面白くしていけばいい。今はそう思う」

外から見たら普通で、わざわざ観光にはこないようなお祭りも、町の人には刺激的で、面白くしようと自らが考え始めるきっかけになった。
それは、普通じゃない。

 

●「若者・ばか者・よそ者」理論
町おこしの3つのポイント「若者・ばか者・よそ者」は、アニメ序盤から言われていた題材。
活気づける若者、どんどん突き進めるばか者、新しい視点を持つよそ者が、町おこしのカギになる。
最もこれが全てではない(町ごとに異なるから)けれども。少なくとも煮詰まった時のヒントにはなる。

 

この『サクラクエスト』は、由乃という3拍子そろった子の話であると同時に、丑松会長の50年の物語でもある。
丑松は根っからの間野山っ子。50年前にそれが暴走して、祭りを壊してしまった。
今は、なんとか間野山を活気づけたいと願い続けるも、迷走が多くて失敗続き。

割と「外向けアピールは大事」という丑松が、今回ははっきりと、テレビ局の人間に言った。
「こりゃわしら地元の祭りの復活じゃ! 地元の人間が望む形でやってこそ意味がある! みずち祭りは間野山のものじゃ!」
ここまで町のために拒絶をしたのは、多分はじめて。
主張がふらつかずはっきりしている。とても気持ちのいいシーンだ。

 

序盤の由乃は、かなりのばか者だった。町に一切視線を向けられないまま、暴走していた。
しかし現在の由乃は、下手したら誰よりも慎重だ。何か思いついても、それは町の人にとっていいのかを考える。もう「ばか者」ではない。
なので由乃の担当は「若者(エネルギーで先頭に立つ役割)」「よそ者(客観的な意見をいいながら、町の人への感謝を伝えられる人物)」
後先考えない「ばか者」担当は、丑松にあたる。
だから、祭りの最中に兼六園に行っちゃう丑松の行動を、由乃は信じると言い切ったんだろう。

にしても、丑松が謝ってから、千登勢との仲が異様によくなっているのがちょっと面白いですね。

まあ元々ケンカ友達みたいな意地の張り合いだったから……とはいえまるで夫婦状態。
正直千登勢さんの器のでかさが半端じゃない+根は50年前と変わってないというのが大きいので、丑松は「ばか者」でい続けられるところはある。

二人が竜の唄の演劇に真剣に打ち込んでいるのは、アニメ序盤では想像できなかったシーンだ。

 

●合併吸収はそこまで悪ではない
95年から05年の「平成の大合併」で、多くの市町村が合併、名前を変えた。00年の「さいたま市」とかですね。
これについては数多くの問題が起こったのは事実だが、いい話もそこそこあったようだ。


借金のある町は、合併によって安定する。過疎が進みすぎて、首が回らず破綻する行政も実際あるので、どうしようもなくて合併することは今でも多々ある。学校が過疎で廃校になるほどの間野山なら、まあ有り得る話。

 

デメリットは、感情的な部分だ。
まず、地方行政としての間野山がなくなる。
自由に動くことがしづらくなるので、今まで由乃たちが積み重ねてきた「町の人のための町おこし」がリセットされる可能性は大。
間野山独自の文化を保護する動きも、意見が通らなければ難しくなる。
なにより、復活させるつもりのみずち祭り存続の、大きな壁になる。

 

ハードなテーマなのでどうなるかと思いきや、由乃たちは「それはそれとして、今はみずち祭りの準備をしよう」という方向に舵を切った。
できないことはしない、できることをする、というのが見られただけでも、グッと来る。育ったなあ由乃

 

今回のみずち祭り、限界集落の独居老人たちが大活躍していたのが本当によかった。
まずみずち祭りの宣伝と称して、早苗の作ったネットワーク「間野山ちゃんねる」を駆使。老人たちが出来る限りの知恵を使って、カウントダウン動画を作るというワクワクする展開になった。これには若者も参加しているので、町のコミュニティとしてはとても賑やかだ。
祭りの当日、みこしを担いでいたのは全員独居老人だった。普通なら運べるわけもないので、ドクのパワーアシストスーツを全員が身につける、という裏技を使用。
ここらへんが『サクラクエスト』のファンタジーなところ、リアリティラインのぎりぎり上限なところ。

普段山奥で、町に降りることもままならず、静かに暮らしている老人たちが、懐かしの(学生時代は知っているはず!)みずち祭りに参加して先頭に立てるなんて、最高の思い出じゃないですか。町の人から見ても、老人たちのみこしは面白いったらない。よくぞ考えた。

こういうのを見ると、合併吸収はちょっとさみしいかな、と感じてしまう。
合併したからって、みずち祭りが無くなるとは限らない。
でもこういうアットホームな、町のみんなが幸せな環境に、他の声が入ってしまうのはもったいなさすぎる。
丑松が異常に合併反対にこだわるのは、こういう間野山を愛しているからだ。

 

●ラストに向けての期待
後半立て続けに、民泊受け入れ、限界集落、廃校、シャッター商店街、吸収合併と難題が続きまくった『サクラクエスト』も、あと一話。さみしい。
基本5人行動ではあるけど、自然に由乃にスポットが当たる構図になって、彼女の成長が明確に見えている。今一話見ると、へらへらしていて不安定極まりないです。

展開として考えられるのは、
由乃が町を去って地元に戻る
・間野山に由乃が残って、5人で続投
・凛々子が間野山を出て、他の4人はそれぞれの仕事を作る
などなど。

個人的には、2が嬉しいけど、ぶっちゃけどれでもいいと思う。
例えば早苗なんかは、すでに町のために根をおろし、人のためにできる全力を尽くす覚悟ができている。もうひとりでも動ける。

 

もうひとつ、アニメ的には今まで出てきたキャラ全員がなんらかの形で力を貸してくれる、という展開も有り得るんだけど……『サクラクエスト』ではそれはやらない気がする。それぞれのサブキャラクターに思想があって、都合のいい流れに乗っかることをしないからだ。
それに今回の由乃の誕生日で、十分そこは果たした気もする。和菓子のケーキよかったなあ。由乃が実は自分の誕生日のこと黙って作業していたのも、素敵だった。

幸せになってくれる、というのは信じています。

幸せの形は、1つじゃない。

 

サクラクエスト (3) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

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