たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「笑って!外村さん」が勘違いコメディかと思ったらよい百合物件だった……気がするんですが!

笑って!外村さん(1) (まんがタイムコミックス)
表紙が体を語るのがファミリー向け4コマのいいところ。
水森みなも先生の「笑って!外村さん」はそういう意味で非常に良いバランスのとれた、万人におすすめできるいいギャグ4コマです。
が!
どうもこの作品……読めば読むほど女の子の友情物語……あるいは限りなく百合に近い何かに見えるぞ!
いやまあ、ぼくが百合脳なので仕方ないんですが、それを差し置いてもこれは、いい! いいぞ!
フル主観で今回は感想を書きますよ!
 

●嗚呼、勘違い●

外村さんには友達がいません。
表紙の通りの、レトロスケバンルック。いつもイライラしていそうな目付き、言葉の悪さ。
不良っぽすぎてみんな怖くて近寄れないのです。
ところがどっこい、実は彼女超絶内気。人と接するのが怖くて不良ばってみたものの、根っこが真面目で寂しがり屋なので少し人と距離を縮めたい、と頑張り始めているところなのです。
なのですが。

うん、相手をよく見て、口元を開いて、少し目を細めて……あってる、あってるけどそれ間違ってるから。
 
ファミリー4コマはどこから読んでも分かりやすいように、キャラに一定の特徴があることと、パターン芸が重要なんですが、そのへんこの作品はうまく利用しています。
外村さんは怖がられている、でも外村さんは仲良くしたいと一生懸命なつもり。この勘違い芸が非常にリズミカルです。

<注・二コマ目は笑顔です。>
もうほんと不器用なんですよ。とにかく笑顔ができない。優しい喋り方が分からない。
頑張れば頑張るほどうまくいかない。つうかそりゃ勘違いもしますわ。
また、こんなことも。

意味深ですね。しゃべりかたが荒々しいので「大事件でもあったんだろうか……」と近寄り難いのも確か。
しかし実のところは種明かしすると。

ちょ、ま、かわいいじゃん!
なぜそれを表に出さない!……ですよね、そういえばこの子極度の内気でした。
こうして勘違いが勘違いを読んで津波になり、なかなか友達が出来ません。この漫画の1話段階では0人。
これが毎回入っているのでゲラゲラ笑えます。いわば女版「エンジェル伝説」といったところでしょうか。
 

●孤独な悲しみと、初めての友達●

しかし、途中から笑いと同時に切なさが押し寄せてくるんですよ。
勘違いされて敬遠されるのは、それはもう面白い状態すぎるんですが、彼女本当に寂しがり屋なんです。
周りが離れていくにつれて、彼女の寂しさは加速するばかり。回を重ねるごとに彼女の切なさは波になります。
これは笑えない。悲しくなる。なかなかどうして「勘違いされる側」の気持ちが描写されているのでなかなかギュっと胸に来るものがあります。
だよね、人間、「こうだったらどうしよう」「嫌われたら嫌だな」「誰かと接したい、頑張りたい」と思って生きている部分ありますもの。
 
けれどこの作品笑えます。
それは初めての友人春野さんの存在があるからです。

この会話のズレっぷりがいいですね。
春野さんは唯一(!)外村さんの本質を知っている子です。笑顔が苦手な子、かわいいものが好きな子、無理しない自然体なら優しい笑顔が出来る子、誰よりも真面目で一生懸命な子。そんな外村さんを知っているんです。
外村さんにとってこの春野さんの存在はものっすごいでかいんですよ。
 
外村さんは本当に内気なんですが、ポジティブな内気なんです。
だから必死になって、失敗ばかりですがクラスの人に話しかけようと努力します。
それが逆効果なのを教えてくれるのは春野さん。だから春野さんの言う事に対して絶対的な信頼を寄せています。
同時に春野さんも離れてしまわないかと不安にもなるし、もっと自然に仲良くしたいとも感じます。
外村さんは春野さんと仲良くなりたいんです。まだそれすら発展途中。
春野さんは全然そんなことなくて、外村さんを友人だと思っているんですけどね。

春野さんの「楽しかったよ」は本音なんです。
外村さんが「退屈じゃなかったか?」と聞いちゃうのは不安だからなんです。
この二人の関係、お互い距離を詰めたり離したりする、どのくらいの位置をお互いとればいいか、自分を明かせばいいか分からない外村さんの気持ち。すごいクるものがあります。
 

●いつか笑えますように●

最初に百合的と書きましたが、まあガールズラブな話ではないです、冷静な所。
しかしこの「どうやってお互いの距離を詰めればいいかわからず戸惑ってしまう」という描写ものすごい百合作品と似ているんですよ。だからぼくの百合レーダーが反応しました。
外村さんは誰とでも仲良くしたい子なんです。
でもね、でもだよ。
春野さんとはやっぱり特別に仲良くしたいんですよ。
最初の友人だから、ではない。やっぱり大好きなんです。

こんな彼女の思い。誰が笑えようか。
いつか、彼女が自然に笑えますように。
 

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普段は何も考えていなければこうやって自然に笑えるんですけどね。
外村さんは毎回タイトルでは、ナチュラルな微笑みを浮かべて楽しそうにしています。
本編では険しい顔(注・笑顔のつもり)をしていますが。
彼女の勘違い芸と、切なさと、春野さんとの関係性がうまくバランスをとっているため、非常に読後爽やかになれるいい作品です。
この「パターン化」をネタにするのは、萌え4コマではなかなかできない、ファミリー4コマならではのテクだと思います。逆に言えば制約でもあるんですが、うまく昇華したなあ。
ちなみになぜ彼女の話し方がぶっきらぼうなのかとか、一昔前のスケバンルックなのかもちゃんと解答が載っていますので読んでみてください。
まあ、ネタ的に一番やばいのは、外村さんに助けてもらったあと惚れちゃって、ストーカー状態の天パの子ですが……。
そのへんの絡みも含めて今後楽しみです。