たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

背景の解読するのが楽しい作品と、解読しないのが楽しい作品と。

ワンピース最強考察
ワンピース最強考察
posted with amazlet at 11.01.20
ワンピ漫研
晋遊舎
売り上げランキング: 60
ワンピースの考察本をヤマカムさんが出していると聞いて驚き。
しかも某氏のtwitterのつぶやきによると本当に中学生をもうならせるほどとのことで、これは素直に尊敬せざるを得ません。
ワンピは自分もちょいちょい読んでますが、考察を見て「そういうことなの!?」ってなることが多い漫画ですね。そしてそこが面白い。
ある意味、読者が解読・考察するのが前提にあるような作品です。考察しなくても楽しめる、ってのがさらにすごいんですよねえ。
 

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さて、同じタイミングで友人と話してました。
「『よつばと!』って謎回収されないこと多いよね」と。
うん、確かに間違いない。

たとえばですが、ちょっと不明部分挙げてみましょうか。
 

・なぜよつばの髪の毛は緑色なのか
・よつばは正確にはどこから来たのか
・とーちゃんとはなぜ一緒にいるのか
・とーちゃんの仕事はどういう翻訳家で、なにを出しているのか。
・ジャンボ、ヤンダとはとーちゃんはどういう先輩後輩友人なのか。
・とーちゃんの過去に何かあったのか

風香の家は割と分かりやすいんですよね。それぞれなにしているかまるわかりです。
しかし主役級であるよつば、とーちゃんについては全くと言っていいほどわかりません。
それこそ、こんにゃくやさん(?)だってことくらいじゃないでしょうか。
 
まあたとえば「ヤンダ」に関しては、「ヤンダってなんだよ!」というもやもやがあったので、そこはうまく昇華されてほっとしましたが、ヤンダが結局どういうつながりで何をしているのかさっぱりわかりません。
伏線探しもしようと思えば背景などから推測はできそうですが、あくまでも推測の域をでません。
(もしかしたら解答隠されているかもしれません!)
 
では「よつばと!」を読解して解き明かしていきたいかというと、これが微妙。
ワンピは分かるとすごい楽しいんですよ。つながったー!!!という驚き、ワクワク、興奮。
しかし「よつばと!」の場合「へー!」とはなるけどそれ以上にならないよねえ、と友人と話していました。
 
ここには大きな溝があります。
よつばと!」という作品、実はとーちゃんや風香視点で「よつば」を見る、という視点から、今は「よつばが世界を見る」という視点にシフトしています。
転機になったのはジュラルミンにはじめて出会ったシーン。
よつばがぬいぐるみの山をあさっているときに運命の出会いをするシーンですね。

「よつばと!」に描かれる、よつばがいる景色と、よつばが見た景色。 - たまごまごごはん
保護される側だったよつばが、保護する側に回った、というのもでかい。
(その割に落としてるけどね)
 
この作品、子育てマンガとして見ることが出来るんですが、それはとーちゃんや風香から見たよつばがメインに描かれていたからです。
しかし特に9巻あたりから、がらっと様変わりします。やってることは同じですが、よつばの中で成長がはじまっているんです。
そして「よつばがいかに世界を見ているか」が描かれ始めます。
例えば10巻の、嘘をつくシーン。あれはとーちゃん視点で描くこともできますが、よつばがとーちゃんにしつけされる時の恐怖感を描くことで、よつばから見た「嘘」の過ちが明確に描かれています。
 

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こういう「視点の移動」「世界の見え方」について考える余地はものすごくある作品なんですが、じゃあ「よつばが何者か」「とーちゃんは何者か」を理解しても、それほど物語の見え方に変化が起きないんですよね。
というのも、この物語がよつばが見ている世界の話だからです。
子供にとってとーちゃんはとーちゃんであり、自分は自分なんですよ。
だからとーちゃんが例えばすごい学者だろうが、宇宙人だろうが、単なる職員だろうが、なんでもいいんです。
大事なのは「とーちゃんが大好き」ということだからです。
同じように、とーちゃんにとってよつばが何者でも構わないんです。
まあとーちゃんはよつばの色々を知って養っているのは間違いないですが、そこじゃないでしょう。子供を育てる時「この子は何者なのか」なんて考えないでしょう。だって子供ですよ。かけがえのない家族、それ以外の何者でもない。
 
ヤンダやジャンボがどういうつながりなのかは徐々に見えてくる部分はあるかもしれません、よつばの目や風香の目を通して。
実際ジャンボの家の職業、ジャンボの父さんなども出てきてますしね。
ヤンダの仕事風景なんかも見えてくるかもしれません。
でもヤンダはあくまでも「よつばの天敵」という立場なので、よつばにとってはヤンダがやり手職員だろうがサボり魔だろうがどっちでもいいでしょうね。
 
よつばと!」を読解する場合、物語を読解したりマンガとしての視点を読解するのは本当に面白い作品です。
しかし伏線や裏設定はさほど重要じゃない作品なんじゃないかと思ったりします。
もちろん今後の展開でよつばが何者か明らかになる日も来るかもですが、それよりも「今こんなに楽しい」「明日は何が見えるんだろう」の方がこの作品にとっては重要な気がするんです。
 

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まあ、「よつばと!の謎」みたいな本でたら買いそうなぼくではありますけどね。
(もうあったりして)
でもどうせなら「よつばと!の視点誘導とコマ割りを読む」みたいな本の方が自分は読んでみたいです。