たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

コミック版「電脳コイル」に見る、少女達の身体感覚。

●ちゃおを買ったら店員さんが付録のカード渡すべきかどうか悩んでいたよスイマセン●


ちゃお8月号に電脳コイルのコミックスが別冊でまるまる1冊つくというとんでもない事態が起きていました。
きなこ餅コミックさんのところで知って、あわててちゃお買いに行ったのですが、90P超くらいのかなりのボリュームな上に、少女漫画としても、電脳コイルアナザーワールドとしても、大人が楽しむマンガとしてもしっかりしているという、個人的に理想的な出来になっています。
逆に言えば90P内で、これだけ多くのごちゃごちゃした人間関係をどう描くんだろう?と不思議だったのですが、そのへんもヤサコ・イサコを中心に、フミエやハラケンの大事なツボをおさえられています。京子もセリフほとんどないながらも、コマ内でこちょこちょ走り回っているので存在感があり、ちゃっかりハラケンになついていたりと繊細。ダイチはアホ全開フルスロットルでした。よく混乱させずに詰め込んだものです。
やはり少女マンガの大切なところはしっかりおさえられていて、とても安心して、かつコイラーですら新たな世界にワクワクしながら読める軽快な展開。非常に面白いです。一応11月にはこれをも収録したコミックスが出るそうですが、今アニメで謎が出回る中で読むのも粋なものです。
もちろん、「電脳コイル」を知らない方でもここから楽しめるという親切なつくりになっています。ただしアニメの世界観とはちょっとだけ違いますので、混同しないように注意。
逆に、世界観がちょっと違うので、比較しながら見ると双方の世界が楽しめる仕組みになっています。
自分はアニメは男の子視点で見ているのですが、コミックスの方は「少女視点」について、じんわり感じさせられるところが多々ある作品でした。
 

●ふわふわとしたヤサコ●

コミック版最大の面白さは、多彩な電脳アイテムやグッズの数々。アニメはまだ小出しですしね。ガチャギリのペットの「ダサパンダ」が超かわいいです。

中でも、今後もしアニメに出たら絶対カギを握りそうなほど便利すぎるアイテム「リンクス」。もっとも「ワープできる」という、電脳と人体の境界線を越えたアイテムなので、どうなるのかは不明。
それはさておき、このヒロイン、ヤサコのデザインに注目してほしいのですよ。
この作品ではヤサコとイサコが大きな軸になって、対比として描かれているのですが、特にヤサコの方のフワフワっぷりが尋常ではありません。小説版では「マシュマロのくせに」とイサコに思われていた彼女ですが、なかなかイメージできずにいました。アニメでもヤサコに関しては焦らし感が強く、あまりインパクトに残ってない感じです(後半すごいんだろうけど!)
そのへんのイメージを絵にすると、確かにこうなるんでは!というフワフワしていてさわったら柔らかそうなイメージのヤサコ。こまごまとした仕草のしなやかさも少女マンガ度高し。
 
ヤサコは昔ながらの少女マンガヒロイン的で、あたふたしつつも体を置く半径が小さいのをキープしているので、すっごく繊細でやわらかそうに動いてくれます。
すごくほっそりとしていて、筋肉のついてなさそうな彼女の絵柄。これはほんと、少女マンガのジャンルで見られてよかったなあとつくづく思いました。もちろん少年マンガのヒロインチックなヤサコも見てみたいのですが、心理面に重点を置くという意味では、ふんわりしたヤサコのデザインにその感覚が象徴されている気がします。
 

●やわらかな少女たちの動き●

「やわらかさを感じさせる少女の描き方」のベクトルって色々あると思いますが、この作品だけでちょっと考えてみるとうまい具合に分担されているんですよ。

ヤサコ…しなを作っているような動作と、あまり体を広げない小さな空間での動きでコンパクト。
フミエ…ダイナミックに全身を振り回し、オーバーアクション。身振り手振りも多い。
イサコ…動きに無駄がなく、スピード感のある洗練された動き。

ヤサコは先ほども書いたとおり、こじんまりした動きが魅力です。
それに対してフミエは縦横無尽にバタバタ駆け回るのがかわいらしい!走る時に両腕を思いっきりふるタイプです。
しかも今回はとてつもないツンデレを準備してきてくれました。

ツン。

デレ。
オヤジに(オヤジがなにかわからない人は今すぐアニメを見よう。おしりがキュート。)。
これ全然離れたページを二個並べたのですが、この見せ方の対比がうまいですよね。こんな感じでフミエの描かれるコマは、常に全力疾走で目の前を駆け抜けていってくれます。その脚の動きのしなやさかは小動物のよう。意識的に「小さくてよく動く」というのが強調されているのもまたかわいらしんだな。アニメとくらべてキュート度が一番アップしたのはフミエだと思います。
 

●ああっイサコ様●

一方、きりりとした瞳と尊大なポーズが印象的なイサコ様は、やっぱりイサコ様なのでした。

うわー。こんな汚いものを見るような瞳でののしられるだなんて。やってくれるぜイサコ様。
とにかく腕を組むシーンが多い彼女。イサコがイサコである象徴だと思います。
彼女の動きは非常に「訓練されたそれ」になっているのでムダがありません。動き回る時も目標に向かって一直線です。かといって筋肉ムキムキかというとそんなことは決してなく、また全身ひょろひょろしている感じで描かれています。

あくまでも女の子。スラリとした彼女は非常に繊細な細さで描かれています。確かに性格的には男の子顔負けではあるんだけれども、女の子らしさは強く描写されているんです。
が。

まあ、イサコ様はイサコ様なのでした。
踏んでください。
 

●少女達の、自分に対する意識と身体感覚●


一同が会す貴重なシーン。ヤサコのやわらかさ、フミエのリアクション、イサコの繊細さがうまくならんでいる気がします。
イサコがここで、ジージャンを脱いでいるのがまたいいじゃないですか。この細い腕と指!胸も皆無でカリカリな感じの体つき。ヤサコ・フミエは細いけれどそれなりに成長期なぷにぷに感があるのですが、イサコは身長やポーズのせいもあってすごくやせている感じがします。
 
このへん、多分意味がありそう。
実際にこの3人がそういう体つきである、というのは一番の理由なんですが、それに加えてそれぞれが自分に対して持っているイメージ・相手に対して持っているイメージが描かれているんだろうなと思うのです。
イサコに対しての、周囲と自分のイメージを考えて見ます。

・周囲から→尊大、大人びていてムダがなくスラっとしたイメージ。でもちょっと何かに怯え必死な感じ。
・自分自身→自分は自分。信頼できるものはそんなにないと感じている。ムダなくスマートに生きている感覚。

両方あわせると、大人っぽいだけじゃだめだし、クールなアクションを決めるだけなほどかっこいいわけでもない、心理的な葛藤や心のカベが、腕を組む仕草や細い体に表現されている気がするのです。
 
面白いのは、前半は割りと自然に腕を組んで話してくるのですが、後半は腕を組まなくなるんですよ。

ちょうどその過渡期のような部分のシーン。
ヤサコとのぶつかりあいで、ヤサコ自身も、イサコ自身も心の中で色々な価値観の変化が生まれてきますが、それが目つきやポーズに現れているのが読んでいるこちらをニヤニヤさせてくれます。特にイサコの目の変化はなかなかカタルシスに満ちています。
自分の感情に気づいた時、その自分の身体の感覚もまた変化していきます。マンガではイサコとヤサコの間の感情がダイレクトに表現されていて、それがまたいい具合にクライマックスへ高まっていきます。ラストシーンの二人の仕草と表情と来たらもう!
 
アニメもそのへんかなり繊細に描かれていますが、少女マンガとしてその部分をうまく表現し、しかも分かりやすく爽快にまとめているこの作品。もっともっと続きが読みたいのですが!
 

にしてデンスケとオヤジのキモカワイさはシャープすぎる。このぬいぐるみほしいなあ。
 
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〜関連リンク〜
イサコ様に吸い込まれ隊、結合し隊『電脳コイル』&『ちゃお電脳コイル』(きなこ餅コミック)
 
ちゃお 2007年 08月号 [雑誌]
電脳コイル 第1巻 限定版 [DVD] 電脳コイル (2) 限定版 [DVD] 電脳コイル〈1〉 (トクマ・ノベルズedge)
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