たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「マリア様がみてる」という名の、皮をかぶったミステリー

マリア様がみてる―キラキラまわる (コバルト文庫)
飛行機の中で、マリみての新刊読破だよ!
まだ感想書くには早すぎるので1週間くらいおいてから書こうと思いますが、今野先生のサービス精神に感服な一冊でした。
 
はて、後書きにもあったのですが、マリみてのことを「ミステリー」と呼ぶ人がいます。
百合百合と言っていた自分からしたら、この視点は目からうろこ。
なるほど、確かに色々な方向へのネタのばらまきをしつつ、じっくり考えさせた上でばっと解答を見せて視界を開いてくれるつくりになっているなあ。
 

●ヒントをばらまき、謎を小出しに●

この話を書こうとするとネタバレだらけになってしまってよろしくないので、かなり初期の話を一個出してみます。
今となっては傍若無人の代名詞ともいえる、鬼の島津由乃さん。「いつもいけいけ青信号」とはいい表現であります。新刊でもえらいことになってました。まさか、あれをああするとは。秩序ブレイカーであると同時に、停滞したエンジンを回転させるほどの暴れムードメーカーとしてのイメージが定着しつつあります。
そんな由乃さんですが、1巻、2巻のころは病弱可憐な乙女状態でした。懐かしいなあ、手術(別名・改造)前の、祐巳視点で見た弱弱しさが。
 
しかし、ちょっとずつヒントが出されて、あれ、おかしいぞ?となりはじめたところで一気に答えがドーンと出されます。
由乃さんと令ちゃんでいうと、アンケートの好きな小説が少女小説と剣客物だったというちぐはぐさのおかしさがヒントになっていました。
もっとも、「謎」というほど複雑ではなく、「こっちに答えがあるよ」という極めてわかりやすいものですが、この「ヒント小出し」効果はマリみてという作品が、なぜここまで長い間、次の巻を楽しみにさせるかという魅力のひとつでもあります。
丁寧にばらまかれたヒントによって、だいたいの答えがぼんやりわかっているからこそ、「確かめたい!」と思っちゃうんですよねえ。もちろん本格ミステリー好きには物足りないかもしれませんが、そこはあくまでもファンタジーな女子校を描くと言う第一目的がありますから。
 

●少女の薔薇園+ちょっとしたなぞなぞ=愛しいキャラクター●

マリみては、基本的には祐巳視点です。それがさらにサブ主人公扱いになる乃梨子由乃視点に切り替わって、エンジンがまわります。
その際、彼女たちの間には、漠然とした不安や悩みや謎がわだかまっていることが非常に多いわけですよ。
これってなんだろう、何か私のわかり得ないことが周りの人の間に生まれているんじゃないだろうか?
そんなはがゆさが彼女たちを動かし、時には成長させていくことで、濃霧状態を一気に晴らしていきます。ところどころ電灯のように配置されたヒント(例・出会ったばかりの頃の瞳子の言動、聖様との会話、などなど)が積み重なって、ひとつの巻の中で謎が晴らされていく快感たるや。
 
もっともその謎も、でかいものからどうでもいいものまでさまざまです。でもどんな小さなことでも解答を出す過程を一冊の中に入れてくれるのは、読者としてはたまらなく面白いじゃないですか。
そうすることで、謎をかかえていた主人公たちとシンクロして、彼女たちをいっそう好きになります。また、謎をかかえていたキャラ達の本音を見るような感覚を受け、さらに脇役達を好きになります。
このトリックで瞳子や可南子にオちた人は多いのではないでしょうか。つうか自分です。可南子のバスケットの話は本気で持ってかれましたよ、魂が。
 
マリみては一冊の間にそれを詰め込んだ、少女達の小さなミステリー活劇、として読むのも楽しいです。あれやこれやと余計な詮索をいっぱいいっぱいしながら、少女達のむずがゆい関係を考えるとき、それぞれのキャラが全員愛されていることに気づくはず。
そして、大きな問題の場合はその謎解きが、巻を飛び越えてじっくり描かれます。早く次を!とのどから手が出るってもんです。
 
本質は、少女達の心理の動きとキャラクターの瑞々しい情感にあると思います。それがほこほこの白米だとしたら、ぷちミステリーはおかずやふりかけ。おかずが変われば、ごはんもまたおいしくなります。両方あわせておいしくいただきましょう。
 
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んで、ここからがほんとに言いたかったことかもしれないんですが。
今野先生って、キャラのセリフで、妄想かきたてられないわけがないようなセリフ、わざと混ぜますよね。一巻に最低一回は。
名言というか、迷言というか。
「おにいさま、おしっこ」とか。今回もあれやこれや。あんなカップリングとか。しかし、直接それを描くわけじゃない。あくまでも妄想させる止まり。
それが毎回楽しみなのは自分だけでしょうか。

DJCD「マリア様がみてる」3マリア様がみてる OVA ファンディスク 第1巻 [DVD]
OVA版のファンディスク出るようですね。
マリみてOVAのノリのよさは、ファンなら「うふふ」と楽しめるので必見だと思います。だが!運動会のシーンは最高によかったのですが、もう少し入れてほしかったシーンが!棒ひきはいれてほしかった!