たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「けいおん!」第二話の、楽器初心者のためのささやかな思いやり。

けいおん!」第二話見たヨー。
原作の持ち味を生かしながら、より一層「初めてのバンド」を丁寧に描いていて、好感がもてます。いやあほんと、音楽ネタといい、キャラの心情といい、一つ一つの話の積み重ねが繊細なアニメです。脚本の人すごいなあ。
 

●ギターの値段●

原作のギターの値段は15万円でした。

現品限り148000円。
 
唯がアニメで使っているのはギブソンレスポールだと思われます。漫画のははっきりとしたところまではわからないですが、表紙からして同じ物かと思います。
ギブソン・レスポール - Wikipedia
お値段はリアルだとこんな感じ。
Gibson(ギブソン) ギター / 【石橋楽器店】
新品で25万から40万、中古で15万から25万ってとこでしょうか。
といってもこの値段、時期によって変動が激しいらしいので、はっきりと「このギターはいくら」という確定額はないようです。1、2年で変わることもしばしば。
まあ、原作時に15万という表記だったのも、アニメ版で25万と今の現実的な額になったのも、二次元的には「あり」な範囲だと思います。
もう一つ値段が変わっていた部分がありました。

原作では3万と言っています。実際楽器として音の歪みなどがなく成立しているのは3万以上かなー、とは思います*1
アニメではここを「5万」と言っています。
自分はギター・ベースはあまり詳しくないですが、本当の初心者ならギリギリに安いのを買うより、5万前後を買う方が正解な気がします。音のバランス、メンテナンスなどの楽さも含めて。
そういう意味でも澪の発言自体が「これからギターを買う人」向けのアドバイスにもなっているのではないかと思います。
 

●紬がギターを値切るまで●

んで、このあとこのギターを唯は、紬が人脈力を使って値切り、5万円で入手することになります。
25万のレスポールが5万とかないよ!というつっこみをしたくなりますが、うん、実際ないです。ありえない。ありえないけど物語的にはかなりバランスが取れていたのではないかと。
 
原作は4コマ漫画なので、リアルを追求しても仕方ありません。むしろ「そんな無茶な」くらいな方が面白いわけです。ギャグですから。紬がいかにすげーお嬢様かよく分かるシーンなので、「15万を5万に!」という値切りを理由もなく描いても何ら問題ないです。つかこの時の紬には恐るべき事にまだたくあん…眉毛がないですし!
 
しかしアニメは原作を読んでいない人も、新規でたくさん見るわけです。加えて「『けいおん!』面白いからバンドやってみたいなあ…」という層がいることも考えなくてはいけません。だとしたらさすがに、その場で「25万のギターを5万でいいよー、ぽん」とはなりません。苦労しないで手に入れた楽器は、なんというかその…あかんのよ。
以前ブクマコメントですごいいいこと言うなあというのがあったので、抜粋。

バイトして楽器買うのも含めて音楽活動です

まったくもってその通りだと思うんです。
 
さすがにアニメ化で「じゃあレスポールやめて5万のにしましょう」とはならないので、なんとかして唯が5万でレスポールを手に入れる流れの描写が必要なのですが、そこで「みんなでバイト」というオリジナルの流れが挿入されたことに敬意を表したいです。
 
もちろん紬自体は権力を持っているので、その場で「25万を5万に、いっそ5千円に」くらいは出来ると思うんですが、違うんですよ。
紬ってお嬢様で、一般的な人の価値感覚を知らないというキャラ付けです。しかしピアノを長年やっているから、楽器の「価値」は分かっているはずです。
唯はまったく値段を知らず「5千円くらいで買えるよね?」と言っちゃう子です。「部費で落ちませんか?」と言うほどです。
もし仮に唯が無料だったり5千円程度だったりで手に入れて、果たしてその楽器への愛着を持つんだろうか、というのを紬が一番分かっている、とアニメ版は解釈したのでしょう。
だから、最初に値切ることを言わずに、あえてバイトでお金を稼ぐ作業に入ります。
これは紬が、唯を泳がせた、というわけでもありません。紬はみんなと一緒にバイトをしたりバンドを組んだり、という経験全てが新鮮なわけですから、彼女もやりたかった、と見ていいと思います。
 
唯は相当頭のねじが抜けている子ではありますが、「みんなで稼いだお金」を一人でギターに当てることをしなかったわけですよ。働いたことの価値を考えて、みんなに返金します。
原作にはないエピソードですが、この一連の流れが「みんなで音楽をやる」という心構えの準備段階を作っていくのが巧み。そういうお互いの思いやりや、一緒にいる時間そのものが音楽になっていきます。
結果は、所詮アニメですから「無茶だ!」でもいいと思います。大事なのはそこまでにたどり着く過程で、人間がどう変化していくか、ですよね。
 
あと、値切ったあとに唯が「残りはちゃんと返すから」というフォローを入れたのもよかったんですよ!
これも原作にない流れですが、あくまでも「値切った」という無茶な流れをあくまでも「紬に前借りした」と言葉の裏で表現しているわけです。
返せる気はしないけども、念のため。ね。
 

●自分の楽器!●

「楽器は自分のものを持った方がいい」というのはブラバンにしろ軽音楽にしろ、数多くの人が先生に言われていると思いますが、実際そうだと思います。ドラムやグランドピアノみたいな無理な楽器もありますが、自分でお金を稼いで自分で買う楽器は、宝物です。身近に有る方が練習もしますし、何より愛着がわきます。
「初めてのボーナスであのギターを買ったよ!」
「あのベース欲しくてバイトはじめました」
「ドラム買うため、体力づくりも兼ねたバイトしてます」
そんな人は多いんじゃないかと思います。
欲しい物のために頑張り、手に入れて幸せを噛みしめる。
仮にそれがそんなに高くないもので、絶対的な楽器としての価値観まではわからないとしても、自分にとってはそれは宝物。
先ほどの「バイトして楽器買うのも含めて音楽活動です」の語がぴったりだと思います。
 
余談ですが、もう一つ原作にはない流れとして、紬が「値切る」という庶民的(?)行為自体を楽しんでいる、という描写がアニメにはあります。(原作は無茶値切りをしてます。最近では眼力でびびらせてメンテ代をただにする描写も。)
原作の「紬のすげーお嬢様パワー」の面白さを生かしながら、彼女もまた一高校生として成長している様がきちんと描かれている丁寧さ。いいですね。
 

●楽器の選び方人それぞれ。●

楽器を買う時って…

・直感で選んで買う(唯・律タイプ
・詳しい人に聞いたり、ネットなどで情報を収集して買う
・楽器屋を何往復もして選ぶ
・欲しい楽器を見つけてからものすごく悩んだ末に買う(澪タイプ
・安いのを買う

などがあると思います。
もちろん一番いいのは、詳しい人に聞いて買うことなんですが…楽器屋さんで恋に落ちることって、やっぱりあります。音にせよ、見た目にせよ。
それで買うのも、「音楽の楽しさ」の一つなのでありかなーと。
つか、調べて買いに行っても楽器屋でテンションおかしくなって、頭の中がぽわー!っとして迷いまくるのは自分だけでしょうか。んで意味もなく普段と違うスティックとかリード買って帰ってきて「自分は何をしに行ったんだっけ?」となったり。いや、楽しいですがー。
 
〜関連リンク〜
『けいおん!』#2で、ギターを25万→5万に値切る話が不満なら、どうやって買っていれば良かった?(2ch)
けいおん!の秋山澪はしまむらーだった(2ch)
アニメの「奔放さ」と「青春の現実味」がいいバランス取れていたんじゃないかなーと思います。
あと値切る律が幼かったり、律や澪の服装がしまむらだったりと、やたら「高校生」らしくてちょっとイイ。ものすごくそういう点において、丁寧なんだよなあこれ。あとどうでもいいですが、唯のTシャツのセンスの悪さはよつばとの風香レベル。
『けいおん!』店の中に並んでるギターの種類、ボディー見ただけで全部わかる?(2ch)
音楽オタがニヤニヤできるアニメ、ってステキ。にしてもよくわかるなあ…。

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ポニーキャニオン (2009-07-29)
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*1:ものによります。ただ1万だと音がほんとに合わないのが存在するから怖いです