たまごまごごはん

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掘骨砕三ワールドが、「COMIC RIN」に到来だ! 〜快楽とおちんちんと「幸せ」の世界〜

今月のRINに驚いたですよ。
まさか掘骨砕三先生が掲載されているとは思わなんだ。
新単行本に合わせての掲載だと思いますが…。いやあ、自分の中に「RIN=萌え雑誌」「掘骨砕三先生=サブカル系」という色眼鏡があったんでしょうね、掘骨砕三先生どのエロマンガ雑誌に復帰するのかな、やっぱり三和出版系かな、と思いきやRINでした。雑誌のカラーにもマッチしていて、いやあよくぞ掲載してくれたなあと。RINは「ふたなりっ娘LOVE」のつながりで、以前も上連雀三平先生も連載してましたしね。
調べてみたところ、間違いなく初掲載でした。なるほど、秋葉原ダンジョンブックスでサイン会が行われるわけだあ。すごい行きたい、でも行けない。くぅ。
 
以下エロマンガの話なので収納。
グロエロな話もあるので注意。
 
 
とはいえやっぱり、TENMA COMICSの表紙は過激すぎて。モザイクばりばり入ってました。主におちんちんの部分。広告ではモザイク無かったんですが、うーん仕方ないのかしら。ビビットなアクリル絵の具の厚塗りが魅力的です。絵の質的に、ものっすごい本屋さんで目立ちまくってます。
基本的にこの本は「ふたなりっ娘LOVE」掲載分が大半なので、おちんちん祭り状態の少年少女(この点詳しくは後で)で占められています。とはいえ「マガジンウォーゼット」というコンビニ売りの雑誌の掲載分も入っているので、内容は今までの掘骨砕三先生のマンガとしては極めてソフト。あくまでも比較的。
掘骨砕三先生と言えば、畸形・人外・下水などという他に類のない路線をひた走ってきた作家さん。扱うテーマがかなり特異な上、グロテスクな描写が少なからずあるためサブカル作家の代表選手としても挙げられることがあります。
しかしそこにある「グロテスク」は、決して世の中を斜に構えて見ているサブカル視線ではありません。人間の最大の欲求幸福でありたいという思いを描く手段の一つとして描写されています。
グロテスクを用いてエロスを描写するこの作家さんの生み出す多幸感は、ある程度エロマンガ慣れしている人なら必見だと思います。しかし、慣れてない人はいきなり興味本位で最初に読む本ではないとも思います。グロテスクなのは間違いないし、スカトロ描写なども多いため決して万人に薦めようとは思いません。かなりキツい描写の方が多いのは事実です。
それでもなお「魅力的だ」と言い切れるのは、中に描かれているキャラクター達が皆ありふれんばかりの幸福感に満ち満ちているから。泣きたくなるくらいの「幸せ」なんですよ。
今回のRINの掲載作はエロマンガとしては比較的ノーマルなので、興味がある人の入門編向きとしては最高かもしれません。
「ノーマルだったらグロテスクな世界の幸福が見られないじゃないか?」と言われたら、うん確かに。でも基本理念は残っています。
おちんちんのグロテスクさ、という手段で。
 

●グロテスクなおちんちんと、かわいらしい少女●


今回RINに初めて掲載された掘骨砕三先生の作品はこの「秘密の冒険」という作品。
80年代を彷彿とさせる少しレトロなスタイルの服装や世界観は、掘骨ワールドの第一歩でもあります。
あくまでも第一歩。
 
見て頂くと分かると思いますが、掘骨砕三先生の描く女の子はすこぶるかわいいです。
楽しさ幸せさに満ちた柔らかい垂れ目、乳歯のように小さく生えそろったきれいな歯、しっとり汗ばんだ顔や体。
そしてなにより肉の集合体として意識された身体の描き方。普通は描かないような腰の上の肉の溜まりや、おなかの上の肉のたるみもしっかり描きます。だって付いているもの。
そう、肉なんです。ぼくたち・わたしたちの体は、たんぱく質で出来た肉で構成されているじゃないですか。
肉が喜びと感動を求めるのは至極当然。快楽を満たし満たされながら、脳に快感が走るのは必然。
なら「快楽=幸せ」? ううん、そこはちょっと違う。
 
この作品でも「快楽」や「幸せ」の表象として出てくるのは、おちんちんです。
少女が「おちんちんが見たいから男子トイレに忍び込む」という設定自体でドキドキしてなりません。いやあもう、かわいすぎですよ。
基本的に難しいことは考えないんです。「なぜ?」って思ったって、「見たいから」ですよ。見たいんですよ。十分じゃないですか。

そんな少女から見たおちんちんは、異物です。
性欲といえばそうなんですが、どちらかというと好奇心を含んだワクワクを誘発する未知との遭遇なんです。「おちんちん」は自分についていない異世界そのものなんです。
これって、視点を変えたらいわば人間に触覚生えていたり、脚が節足類なのと同じようなものですよね。自分にないもの、ですもん。あとはそれを見てドキドキできるかどうかの違いくらいです。
 
もっとも彼女が興味を持っているのは身体的な未知への好奇心です。
相手の人格とか、恋愛感情とかは一切描かれていません。必要ないんです。

だけど彼女はひたすらに幸福そうなんだなあ。
自分の快楽に正直、と言い切るにはもっと無邪気。掛け値とか損得とかないんですよ。ただ単純に「見たい」。ただ単純に「興味がある」。ちょっとなんだかキモチイイ。それが満たされるから「幸せ」。
女の一生を考えて、それでも幸せなのか?と問うのは無粋でしょう。「これが幸せ」でいいんです。
 

●「幸せ」の状況●

掘骨作品は様々な形式で「幸福」を描きます。

下水街   SANWA COMICS
下水街 SANWA COMICS
posted with amazlet at 09.11.25
ほりほね さいぞう
三和出版

「下水街」なんかはその最高傑作だと思います。
確かにグロテスクです。確かに将来を考えると幸せに見えないかもしれません。
でもそこにいる住人達は間違いなく幸福なんですよ。虫のような体をして、人にあらざる姿形をしていつつも、多幸感であふれかえっています。幸せに生きようとしています。
 
人間がストレスを感じるのは、一説によると未来を感知する能力があるからだそうです。
これからのことを考えて、不安になる気持ちが溜まってしまうからストレスになる。
「結局人間は杞憂ばっかりだ」ってことでしょうか。まあ、うん。そうですね。
つまり未来を考えない、今の幸せを充足させるためだけに生きていれば、それはとても「幸せ」なのです。
極めて動物的ではありますが、人間の失った「幸せ」の考え方はそこに眠っているのではないか?と掘骨作品は問いかけてきます。

「はんぶん娘」収録の「ふすまの怪」より。比較的おとなしい作品集ですが、一番最近の作品でもしっかりこういう血筋は健在なのでファンとしては感涙です。
多くの人間だったり人間じゃなかったりする物同士が、本能のままに今の幸せを貪って、セックスして、誰かと共にいる幸せを享受しているのです。一見めちゃくちゃに見えるかもしれません。実際めちゃくちゃかもしれません。でも自分の体が満たされて、誰かの体も満たされて、そして孤独じゃないこの世界はとても温かいんです。
作品ごとによって異なりますが、時にはセックス相手の人格を一切排除している場合があります。
もちろん信頼しあっている相手と触れあう方が幸せです。しかしそのポイントは通過点でしかないんです。超越してさらにもっと明解な快楽と幸せの融合点に向かってどんどん突き進んでいきます。「たまたまそこにいた相手」でも、お互いが幸せになれればそれでいい。ただし自分勝手な快楽ではない、「誰か」といることで満たされる「幸せ」なのです。
妊娠とかをしないわけでもありません。します。それをも含めてただ単純に「幸せ」なんです。

 
この作品集はふたなり作品が多いため当然ではあるのですが、幸せの象徴がおちんちんです。
最初にも書いたように、おちんちんというのは異物です。特に掘骨作品で描かれるおちんちんのサイズはともすればグロテスクで、異形の物に近いです。触手やサイボーグや人体改造してくっつけた装置とほぼ同じような状態なのです。
ただひたすらに快楽を与えて受ける、完全体のアイテム、それがこれらの作品のおちんちんです。
だから取れることもあるし*1、生えてくることもあります。存在は大事ですが、扱いはかなりアバウトです。
描写されている身体感覚的にも、体の一部というよりは「便利な物がついている」という感じがします。ちんこだけ体のパーツとして別物。

「ないしょ!」より。
ふたなりというと女の子にチンコが生えてくる物が圧倒的に多数ですが、この作品では男性に女性器が出来ます。穴が開く、んです。かなり珍しいです。
また女の子のほうのふたなりも、きちんと睾丸が付いています。これも珍しい。
ようは「睾丸」も「おちんちん」も、快楽を得るための装置。「膣」も「クリトリス」も「おっぱい」も「肛門」快楽を得るための装置なんです。だから全部必要。どれかに特化するより全部あったほうがキモチイイのです。
全部がくっついた完全体な姿は、かつて描かれていた人体改造や異形となんら変わりません。
しかし、全身で「幸せ」を受け止める彼ら・彼女らの姿は、見ているこちらの脳を空にしてくれます。温泉に浸かっているような心地よさで満ちています。
実は、ふたなりですが縮んだ状態のおちんちんも描かれます。これは勃起状態が基本のふたなり作品としてはとても珍しいです。快楽装置であるおちんちんが自然な形で、一つの生物のようにはりついているこの情景すらも、安らかに何もかもが許され、臨戦態勢ではなくてもいい安心感に満ちています。
 
もちろんこれらの作品はファンタジーです。絶対に人間社会に適用されることはありません。無理に適用したらきっと人類補完計画でどろどろに溶けたLCLみたいになると思います。
ファンタジーだからこそ、このドロドロに溶け合って、明日を考えずにまぐわいあうキャラクター達を愛さずにいられません。そこに込められている幸せは、人間が根源的に持っている幸せへの欲求の一部だからです。
 

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最新単行本は比較的今までの中ではソフトですが、最後に載っている作品(96年作品!)はPOPな絵柄ながらもバリバリの人体改造物なので注意。
個人的には「ジュンコ」という作品の、小さい体の風俗嬢のささやかな日常生活にジンと来てしまいました。この子の「幸せを感じられる思考」は、なんだか自分は失ってしまいがちな気がして。

興味はあるけどエログロはちょっと…という人は、一般誌に掲載された作品の方をオススメしたいです。
一般誌作品ではありますが、びっくりするほど奇想天外な世界と異形の息づかいが詰まっているので、掘骨ワールドは存分に味わえます。
にしても、RINは受け皿が大きくて嬉しいなあ…さすがにRINで畸形ものは出来ないかも知れませんが、掘骨先生のエロマンガがまた読めるというだけで、幸せ。
昔ながらの畸形や異形の中に広がる幸せの姿は、同人の方で読めるので、そちらは是非、是非とも。
 
関連・日本宇宙旅行協会代理店 - livedoor Blog(ブログ)
掘骨先生の友人の方が、掘骨先生の現状を記す、というブログ。

次のお仕事は年明けになるらしいのだが…
『男の子』
ふたなり
『スカトロ』
の三作品だそうな…

ど、どこの雑誌だろう…。

 

*1:「おにくやさん」収録「ちんこむし」より。