たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

女子高生4人でゴシゴシこするよ!…え?「Sweep!!」

●Q、田舎の女子高生の魅力を述べよ●

最近「田舎の少年少女の夏」を描く作品多いですね。「サマーウォーズ」とか「スウィングガールズ」とか。
特に夏の田舎女子高生の破壊力は半端じゃないと宣言します。
夏+田舎+高校生という単語だけで確かに爆発力はあると思うんですが、もうちょっときちんと考えるならば。
女子高生の夏、ましてや2年生くらいの夏休みって、のびのびと遊べる最後の時期なわけですよ。受験勉強とかあんまり気にしないで(いや気にした方がいいけど)のびのびと全力を何かに費やせるチャンスなわけです。
ましてや1年生の時と違って、2年生ならそれぞれ女の子ごとにコミュニティがあって、人間関係がある程度構築され済みです。
高校二年の夏に、少女達は何をするか…
一生に一度しかないその時間に惹かれないわけにはいきません。
 
じゃあ田舎は?と言われると、そこは「田舎だからしか見えない光景がある」という点につきます。
都会に憧れながらも、自分には田舎の素朴な生活が染みついている。女の子達も気取って背伸びするけど、田舎の町がなんだかんだでそんなに嫌いじゃない。
ましてや田舎だとほとんどが幼馴染な環境。
高校二年の夏は、田舎の少女達は何か手を伸ばして変わる、しかし変わらず純粋なものが磨かれる、そんな類い希な瞬間でもあるのです。
 

●田舎娘in温泉街●

とこう書くとものすごい熱い青春ものの話をしそうですが、今回話したいのは小橋ちず先生の「Sweep!!」というゆるーいカーリングマンガ。
カーリングは真剣にやると、本当に体力・精神力・戦略性を要求されるものすごいスポーツなのですが、舞台はひなびすぎてしなびている温泉街。ヒロインの子たち田舎の町でそんなこと見たことあるはずもありません。
 
事の発端のあたりは話さないで実際に読んでもらった方が面白いと思うのでここには書きません。
面白いのはここ。

地元が温泉なので、風呂上がりな3人です。
左はあゆみ。都会に憧れるギャルギャルしい、ある意味女子高生らしい女子高生です。といってもどうも憧れが先走って背伸びしている感が否めません。そこがめんこい。

真ん中はヒロインにあたる里子。「○○しちょる」「○○じゃねー」と訛りがガッチリ入った正真正銘の田舎娘で、風呂屋の娘。囲碁の達人でお茶が好き…というか田舎娘にしてもあまりにもノンキすぎる上に、ほとんど性格や趣味はおばあちゃんレベル。おばあちゃんぽい女子高生…これはいい。見ての通り、椅子の上に正座で座るくせがあります。見ていてとにかくほっとさせられるすごい子です。

右端はまつり。田舎商店の頑固な父の娘で、このメンツでは一番まともというか良識人です。そこそこ高校生らしい浮かれっぷりも持ち合わせつつ、豪快な田舎娘らしさを持ち合わせたかわいい子です。かわいいと書いているのは自分がまつりが大の好みだからです。
 
で、この子たちまつりの父さんに床磨き命じられてやってるんですが…驚くべき事に。
その父さんが言ったとおりにすんなりバスタオル姿で風呂にやってくるんですよ!
何にも別に説明のないページなんですが……異常だよね、ないよね? 普通しないよね?
田舎の子だからする、とは決して言いませんが……この子らのテンポとか性格、見えないところですっごい素朴も素朴、素朴ESTなんですよ。
まあ里子は「すっぽんぽんでこい」って言ったら「おう」とか言っちゃいそうなくらいなので別格として。特にギャルギャルしているあゆみが、知り合いの父さんが言ったからってバスタオル一丁で風呂に来て床磨きするたあ思わなんだ。
 
どうしてもこういう図を見るとやましいことを考えてしまうだめな自分がいますが、そうじゃないんですよね。地域ぐるみで子供達を小さい頃から育て、もう町そのものが大きな家族になっている。
さりげなくそれを描いているから、見ていてものすごくほっとする作品に仕上がっています。
 
…あれ?カーリングは?
 

●4人目。●

この3人は幼馴染的な関係で、アホ三人組といった有様の仲良しです。おばあちゃんみたいな里子を中心に、うまくつながっている感じと言っていいです。
ところが彼女たちカーリングしりませんし、カーリングってそもそも4人以上のスポーツなわけですよ。
カーリング - Wikipedia
3人以下でも出来なくはないですが、4人から5人がベスト。となると一人足りない。
そこで出てくるのが、彼女たちのコミュニティの外の人間になります。
 
この作品、先に言ってしまうとスポ根ものじゃないです。
カーリングはあくまでも目標として4人の少女をつなぐためのポイントです。もちろん今後重要な位置を占めることになるでしょうが、一番に描かれるのは少女達が「高校二年の夏休みに何をするか」と「女の子達の人間関係の変化」です。
まー温泉街で風呂入ってのったりしているくらいおおらかなキャラがメインなので、テンポはまったりしています。しかしそのまったりテンポの中でがっちりとリアルな人間関係像を描いているのが面白いんです。
 
4人目になるのは、英子というちょっと異質な少女です。

上ののんべんだらりとしている3人と比べてみて分かると思うんですが、すごく凛と張り詰めた空気の持ち主です。
見た目的にものすごい美人。成績優秀の優等生。寡黙。
悪く言えばとても近づきづらい子として表現されています。
セリフを見ても分かるように、みんなちょっと気を遣っちゃうんです。この子は優等生だから、この子は引っ越してきた子だから、この子は近づきづらいから。みんなが英子と距離を置いて、腫れ物に触るように接しています。
 
はて、近づきづらい子がみんな人嫌いなのかと言われると当然そんなことはありません。
英子は実際はどうなの?

英子と接しているのは里子だけです。
おばあちゃんが知らない人にどんどん話しかける姿をイメージすると分かると思います。里子は相手が子供だろうが老人だろうが転校してきた優等生だろうが、全く物怖じをしません。かといって特別扱いもしません。みんな同列に扱います。
英子はそんな里子を見てどう感じているか。それはこの二コマからも見て取れると思いますが、細かな機微は実際に読んでみて下さい。
周りに「優等生だから」と逆レッテルを貼られて人付き合いが苦手になってしまった英子にも、高校二年目の夏がやってきます。
 

●わしらはなにをしとるんじゃろ●

4人が4人とも、それぞれ高校2年生です。
里子はちょっとテンポが特別ではありますが、高校2年生の少女であることには何ら変わりありません。完璧な悟った超人じゃないです。悩みもするし迷いもする少女なのです。

どうしても英子が目立つのでそちらに目がいきますが、明るくておおらかな里子もまた、色々な思いに迷い、戸惑います。
戸惑うけども前向きに解決しようとする勢いもあります。
 
カーリング」というのはほんとただのきっかけ。
わしはこの夏になにをするんじゃろ?
わしらは一体なんなんじゃろう?
友達がいて、楽しいけれども、確かにゆらゆら面白い日々を送っているけど、なんじゃろ、このぽっかり空いた穴は。
 
1巻時点では、彼女たちの人間関係には大きな転機は訪れますが、スポーツ的にはたいした進歩はしません。
しかし、恐らくこの子たち一緒に何かをやるのは初めてなんでしょう。ましてや今まで里子以外は会話すらしたことのない英子もいる。
「じゃあ意地でも勝つ!」となるか。「この夏を燃やすぞ!」となるか。

ならない。
こんなもんです。でも突然高2の夏にカーリングはじめたら、まあこんなもんですよね。そのへんがなかなかにリアル。熱血ではないんです。
でも、それでもやろうと前に進む彼女たち。
それぞれの思惑はバラバラです。里子は何か考えていますが、他の3人はまだその段階ではないです。
しかし「やる」という事に意義があるのもまた事実。
わりとのんきで「おいおい?」という感じのちぐはぐな4人組ですが、なんだか田舎のとーちゃんになって、田舎の娘っこらを見て「おーがんばれよー」「おう、がんばっちょるよ!」みたいな会話を交わした後のような気持ちよさに包まれる作品なのです。
 
あ、「萌え」っぽくはないかもしれませんが、読んでいたら十分すぎるほど萌えますよ。

特におばあちゃん風味な里子のキャラがあまりにも光っているので、方言っ子好きにはたまらんのではないかと!
あと英子ですね…いやこのビジュアルと性格のよさはずるい。ほ、ほれてまうやろ…。
個人的にはまつりが一番。属性「普通」に弱いのです。というか他3人がボケなので明らかにツッコミ役に廻らざるを得ないという、そんな役回りもまたツボりました。
 

女子高生4人の夏休み、と聞いて「てぃん!」と来たら迷わずオススメします。
で、この表紙がまたよくてですね!
温泉が裏まで続いているんですが、裏面には元気なまつり、惚けているあゆみがいて、そのさらに折り込んだ裏の隅っこの隅っこに英子がいるんですよ。
人間関係を大事にした作品で、人間関係そのまま表れているナイス表紙!
 
追記・方言は詳しくないのですが、地元の方に聞いたら広島・岡山・山口県あたりの方言っぽいですね。「わし○○じゃからのう」とかいう女子高生、いいですわ…。映画の「マイマイ新子」のセリフの方言とよく似てもいますね。