たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「けいおん!!」には「スイッチ」がいっぱいある

ちょっとコメント欄からなんですが、うわー!と目ウロコな意見があったので紹介。

なつき
けいおんは一期でも“情感”のあるシーンやシチュエーションが多くて、個人的にはそこに毎回グッときていたんですが、どうやらこの分だと二期もすごく空気の密度が高そうですね。バンド、高校生活、あっという間に過ぎる時間。キャラクターの変化がしっかりと描かれているからこそ、過ぎ去る時間=終わりをどこかで意識してしまう…。
何ていうか大げさに言うと、人生における青春期そのものの、えもいわれぬ浮遊感とか寂莫感(さわちゃん視点があるので、この「時間」のものさしを出さざるを得ません。さわちゃんの存在は、揺れる主人公達を俯瞰で見つめる常識と良識による作品そのものへの安心感と、逆に“今この一瞬”の切なさをバーストさせる効果も出していると思います。すごい上手い。なので…)そういう獏とした不安感と表裏一体の、限りある今への強い愛おしさが滲み出ているように感じました。
それにこの作品は細部も含めてワンシーンの情報量も多いしテンポもいいので、ひょっとするとより集中して見てる人や多感な人ほど、圧倒的“情感”の洪水の中で、気持ちの方がある種のオーバーヒートを起こしてしまうのかもしれません。
そもそも漫画やアニメの世界では、キャラクターに“変化が無い”ことも、大切な安心感や魅力の一つですよね。
でも『けいおん!!』では、たとえ残酷でも少しづつ転がり続ける日々を丁寧に描く=それがバンドという主題と相まって、キャラクターがより強く輝きを増しているような気がします。』

あーなるほど!
 
けいおん!」を見て「何にも起伏のないつまらないアニメ」と評する人がいますが、実はそれは間違いではないと思います。
実際何も起きていない。人も死なないし変身もしないしロボットも出ないし事件も起きない。音楽弾いてお茶しているだけ。つまらないと思う人に「面白いから!」って無理に押し付けても無理なものは無理なんですよね。
 
ところが、多感な人のアンテナに働きかける仕掛けがあっちこっちにこまごまと入っていることに気づくと、とたんにビンビンにセンサーが反応するアニメなんだもんなあ。
たとえば。
「ただお茶をしている」しかしそのケーキのチョイスをよく見てみると・・・。
「ただ演奏をしている」しかし以前と今回とで彼女たちになにやら変化したよね・・・。
「ギターケースかついでるだけ」しかしそのギターケースに貼っているシールは・・・。
 
そういう、説明のない、しかし確実に「時間が重ねられている」証拠に気づくと「うわあ!」って人の心を飲み込む作品だと改めて気づきました。
 
以前友人と「ライブハウス!」の回を見た後チャットしたことあるんですよ。「面白かったね会議」を。
その時に驚いたのが、ライブ後の唯の家での年越し鍋の話。ライブに夢中ですっかり分からなかったのですが、よーく見ると「これって例のマシュマロ豆乳鍋とチョコカレー鍋のハーフだよね」って解説してくれて、改めて見たときびっくり。うわっほんとだ!!!
唯と憂は番外編(7巻収録13話)の重い空気の中で話していた出来事を覚えていて、年末に解消するかのごとくここで持ってきたのか!
なぜ彼女たちがあえてみんなが集まったこのタイミングで作ったのか。そう考えると……もうじわじわくるじゃないか!
 

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なので「けいおん!!」が「絶対面白い」とか「面白くない」とか簡単に言えないんだなーと再認識。
ようは、ストーリーもさることながら、その敷き詰められた大量の情報の中で反応するものがあれば、「その人」にとってかけがえの無い作品になる、と言うことなんだなーと感じいりました。
人によっては自分の感覚や体験と重ならず、全く反応しない人もいるはずです。つまらないと思っている人はいてしかるべき。
また逆に、すげーどうでもいいところでスイッチ入っちゃって、泣いて止まらなくなった人もいるはずです。自分とか。
 
「自分の中の何かのスイッチ」を入れる仕掛けは山のようにあって、それが琴線に触れたとき、キャラは記号ではなく魂をもってその人の中に産まれていく。だからちょっと「特別」感が強くなると思うんです。与えられたキャラというよりも、自分の中で見つけて、育っていくから。子供みたいな感じですね。
同時に、スイッチが入らない人、感性の合わない人が「これは基礎知識として見ておいた方がいい」という思考で無理して見るアニメというわけでもないのにも気づきました。
 
たまに「ガンダムエヴァと並ぶか?」という論議があがることがありますが、「ブーム的には確かに、だが・・・」首を傾げる人が多いのはその点だと思いました。人によって「けいおん!!」は、スイッチが入ったかどうかで価値があまりにも違いすぎるんだもの。
スイッチが入った人は自分の中における体験や感性と一体化して追体験をしているリアルタイムです、そりゃ「生きがい」どころか「自分の一部」にもなりますよ。
「演奏してみた」なんかも出来ます。そしたら追体験ではなく実体験化します。
なかなか「実体験でキャラと通じ合えるアニメ」って珍しいですしね。
それが共感しあえれば最高だけど、逆に通じ合わない人なら温度差はすごいだろうなーとも思いました。
 
ある人が「エヴァみたいに『すごいセンセーショナルな何か』が無いのに、ここまで売れまくって、経済効果もあり、現象状態になるのは何故なんだろう?」と言っていたヒントが見えてきました。
ってか「けいおん!!」というより京アニテクかもしれません、ハルヒの「サムデイインザレイン」での、あの何もセリフの無い部室のシーンが妙に味があったり、「らき☆すた」が萌えアニメにとどまらずみんなの共通言語として成立したり。
それでいてネタにしやすい記号性(例・つかさのシュールさ、唯の無敵マイペースさ)も用意しているんだもんなあ。
この感覚は面白いなー。
 

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もう一つコメントから。ありがとうございます。

mso
『完成度の高い作品はたいてい過去のもの。リアルタイムにはないものという経験が刷り込まれているから。
でも、けいおん!!は今だよ、みんなと共有できるんだよ、現在進行形だよ。下手したら最終回はまだできてないよ。ユーフォニアムもモブで出るかもよ、なんて期待が膨らんでパンパンです。
目の前に大好きなものがある。伝説が生きているなんて、本当に嬉しいものです。精一杯楽しみましょう、せっかくの第二期です。「今」はあっという間に過去になるから、精一杯楽しみましょう。斜めに構えて「ブルーレイまで待つよ」なんて意見はなしです!刹那を楽しみましょう。』

この感覚も面白い! でもさすがにデビちゃんは無いと思うよ!……た、多分(京アニだから分からない気がしてきた
なるほど、特にネット文化の普及もあいまって、現在進行形でみんなで楽しめている、地域差があるとは言え少なくともほとんどの地域で見られる、これはでかいですね。
もちろん「リアルタイム共感」という面では常に何かしら楽しませていただいているんですが(例・プリキュア青い花など)特に「けいおん!!」は時間経過がものすごく生々しいのでその感覚が尖りやすいのかもしれません。
過ぎ去った人のノスタルジックにとどまらず「俺たちの青春はこれからだ!いや今だ!」と感じるスイッチ、それが随所に織り込まれているのがこの作品の面白さなんだろうなあ。
 

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私感。読み飛ばしちゃってくださいな。
やっぱり「けいおん!」に異常に入れ込んでいるのは、自分がバンド経験があるから、というのが一番の入り口です。
あとは原作を最初から読んでいたこともモチロン引き金のひとつ。
そして律という自分にとってかけがえの無いキャラに出会えたことも一つ。律は僕の中のスイッチを押しまくりました。
そこに自分の中の「少女達の空間」への憧れが重なります。
そのさらに上に「女の子同士の距離感」の描写が、百合オタな自分のスイッチを順番に入れていきました。
最初は「うんうんそんなんだよね」と上から目線で見ていたおっさん。気がついたら彼女たちは自分より遥か先へと駆け抜けていきました。楽器の技術的にも、精神的にも。
ああ、息子や娘が育って越えていく時の感覚ってこんな感じなのかな。
だけどそんな「娘たち」と自分が同じ目線に立てる、いつかは終わるかもしれない、少なくとも卒業はある、と分かっている空間でのこの一瞬を大事にしたいという気持ちを彼女たちと共感できる、追体験出来る。
スイッチ全ONですね。
 
さわ子先生の一言がのしかかります。
「あなたたち、一年って短いわよ」
でもさわちゃんは別の時に「担任をやってるのよ」とあたたかい視線で彼女たちを見つめました。
彼女たちのように青春時代を一緒に体験出来る。そして大人の視点として「こんなに輝いていた時間が現在進行形である」というのを見つめられる。
だから。
けいおん!」が好きです。
おしまい。
 
担当編集に質問状:「けいおん!」 キャラの魅力と「一緒にいるのが楽しい」空気感を - MANTANWEB(まんたんウェブ)

音楽の知識がなくても楽しんでいただけるよう、部活の内容そのものよりもキャラひとりひとりの魅力と「みんなと一緒にいるのが楽しい」という空気感を作品の中心にすえています。

 

ファッションの話や、「高校生から見たらどう見えるの?」という話も幾つか教えていただきました。ありがとうございます!
いずれ紹介出来ればと思います。
もちろん「今の高校生はどう見ているか」は興味があるので、ご本人さん、または息子・娘さんがいらっしゃる方がいたらこっそり教えていただけたらうれしいです。
 
あ!高校生の人はうちのサイトのエッチなのは読んだらだめですよ!(予防線