たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「暗殺の天使」シャルロット・コルデーについてしらべてみた

札幌の中心街で水道管が破裂してえらいことになってたみたいですね。たまごまごです。いやー、今年は札幌もかなーり日中蒸し暑い日がつづいているので、涼しげだなあなんて思った自分はひどいヤツです。しかし、近所のかなりの世帯は、水道水がにごって大変みたいです。この夏日の中で水も飲めないて・・・恐ろしい。

  • 生前も死後も孤独な、暗殺娘のお話。

おおげさな書き方ですが、このキャッチフレーズかっこすぎなので、あえて。
以前マンガ「ナポレオン〜獅子の時代〜」「大ナポレオン展」を見て、フランス革命前後のお話に夢中ですワタシ。その「漢」度激高な中で自分の心をキャッチしたのが、シャルロット・コルデーという一人の女性。
だって、「清純な暗殺者」「ギロチン台でほれる人続出」「電波田舎娘」と、ネタだらけなんですヨ!こんな不可思議人物なかなかいないですヨ。
とりあえず、どんな人なのかしらべていたのですが、面白すぎるのでちょっと書き出してみます。
 

ダヴィッド画「マラーの死」
革命の指導者、マラー。彼はアトピーみたいな皮膚炎持ちでした。もう日々かゆい人生。
というわけで薬草入りの風呂に浸るのが日課でした。
そこに飛び込んできた謎の娘シャルロット・コルデー
髪を白いスカーフに包み、白いローブを身につけ。悲しげでやさしく美しい顔立ち。
男の人なら、めろめろっすね。声優さんのイメージは能登麻美子でお願いします。
 

(Jean Jacques Hauerによるデッサン)
マリ・アンヌ・シャルロット・コルデー・ダルモン
一応貴族の生まれだったそうですね。ノルマンディ半島のカーンという小さな町に住んでいた田舎娘です。貴族の生まれとはいっても、貧しい家庭でくらしていました。革命にも賛成していたようです。
 
フランス革命の女闘士 シャルロットコルデー(女のエピソード)
マラーの暗殺の様子

フランスはこのころ混乱を極めていました。ちょっとなんかチクられたら、ギロチンですぐ首ちょんぱの恐怖時代。力には力には力には力の悪循環。
コルデーは田舎の貧しい娘であるにもかかわらず、革命についてよく調べていました。フランス革命が掲げていた、自由・平等・博愛の精神に、心酔していました。そうでありたいと心から願っていました。
その情熱っぷりから、「カーンの処女」とすら呼ばれています。ジャンヌ・ダルクみたいですネ。

さて、革命前後は、何がよくて何が悪いかなんて、誰にもわからない日々が続いていました。そりゃね、人も死にますよ。革命になるくらいですから。しかし、やたらとポンポン首をはねすぎていたんだな、革命をすすめていた人たちは。不思議の国のアリスの女王さま並の数を、本当に首を切っていたのだから、むちゃくちゃです。
ロベスピエールのような、「ジャコバン派」と呼ばれる革命を力づくですすめるんだからね派について聞こえてくるうわさは、いつも残忍極悪残虐殺し合いの話ばかり。
 
そんな悪いうわさばっかり聞いているうちに、彼女の中に一つの感情が芽生えます。
もっとも正直、正しい情報がなにかもようわからんで、その中の悪いうわさだけピックアップしちゃって、彼女の中の「革命派、・・・ほんとにわるいやつらネ!」という思いが先走ってる感はいなめません。
しかし、雨を降らすように首を切りまくっていたのは事実。
 
「こんなの私の求めていた、革命じゃない!」
熱血漢の彼女のこと、すぐに飛び出します。
「特にマラーのやつときたら、人間じゃない!!!」
 
だんだん電波入ってきました。もっとも、人間じゃないくらいギロチンの刃にかけまくっていたいんですけどね。
まんまとマラーの部屋に入ったシャルロット、裏切り者がいるという偽情報を流したところ、「そっかー、そんなやつらみんな、ギロチンにかけてやるゼ」と言われます。
それを聞いたシャルロット、包丁を突きたてたわけです。そりゃね、そんなこと言われたらキレもしますよ。もっともその真偽は、マラーがそのときすでに死んでしまっているので、確かめようはありません。

「なぜわざわざ会ってくれるほど優しく、みんなに愛されていたマラーを殺したのですか?」
「私に優しくても何だというのでしょうか。他の方々にとっては悪魔のような奴だったではありませんか」

ところで、この包丁、ためらいなく、急所をまっすぐ貫いています。一撃で死んでいたんですよ、マラー。その正確な殺し方は物議をかもしました。
シャルロットの死刑について
「ちょっと手慣れすぎてないか、この殺し方。何人も殺したんでしょ?」
裁判中冷静沈着だったシャルロット。しかし心無い裁判官の言葉に、さすがの彼女もキレます。
 
ここまできて、ふっと思いました。
走れメロスに似てない?
絶対の正義感と激しい思い込みの彼女、「シャルロットは激怒した」と書き換えても通じますよネ。メロスと違うのは、その暗殺が成功したことと、話題になるほど美しかったこと。後者がポイントで、話題が話題をよび、一躍有名人になります。それが「LOVE」な人もいれば「HATE」な人もいたことをふくめて。
 
その後彼女はギロチンにかけられるわけですが、死ぬ間際にすら壮絶なエピソードを残すことになります。
シャルロット・コルデーの首
長谷川哲也のマンガ「ナポレオン−獅子の時代−」より。処刑人ビクトルはシャルロット・コルデー首をビンタして調子にのる、というシーンがあります。一見するとマンガならではのむちゃくちゃなシーンなんですが、実はこれも本当にあった話。それだけみんなの注目の的であった、ということでしょうね。しかし、首にビンタするのをみて、さすがに観衆も大騒動になります。やーりーすーぎー。ビンタした人は殴り飛ばされてクビです。
コルデーの首へのビンタと、怒りの首
最後までキリリとしていたシャルロット、首を落とされてビンタされた後、その首は顔を赤くして怒りの表情を向けたといいます。
ないだろ?って思う話ですが、死後硬直でありうることが科学的に解明されているみたいですね。しかし、ここまで思い込みの強かった彼女のことです、死んでも怒りをもっていたと思うほうがなんかしっくりいきます。
 
彼女の気の強さのエピソードの一つとてして、肖像画の話があげられます。たいていの場合、死刑前はざんげを受けるのですが、彼女は絵を描いてもらうことを選びました。
シャルロット・コルデーの肖像画
シャルロットの「美しき暗殺娘」というのは、人々の心をわしづかみにします。たとえば自分とか。
その時代の男性でも、処刑を見て「おれホレたよ、8日は恋に落ちたね」という人がでる始末。クビ見て恋におちるて。しかも8日って半端なw
ここから、実際かどうかわからないけどステキすぎる、シャルロット・コルデー神格化伝説がはじまります。
 
神格化のはじめは、詩人ラマルティーヌによるあだ名。清楚な美しさに感動した彼が、彼女を「暗殺の天使」と名づけました。暗殺してるのに天使かヨ。矛盾してますが、いやはやなんともひかれる的な名前じゃないですか!ビジュアル系にこういう名前ありそうです。
美しさと正義感が「善」、殺害してしまう「悪」、というわかりやすいアンバランさの魅力が、さまざまな画家や作家に影響を与えます。


Paul Baudry "Charlotte Corday" (1858)
愛国者としての美しいシャルロットコルデー。彼女の行動は「国を愛する正義の心」で、フランスのためになった!という見方で描かれたものみたい。

J. J. Wiertz "The Assassination of Marat By Charlotte Corday" (1880)
逆にフランス中からせめたてられるシャルロット・コルデー。あくまでも暗殺者は暗殺者。
 
もうひとつのシャルロット・コルデー(ムンク作)(ふらんす*にちようざっか)
ムンクにしてはやさしげなこの絵。自分の恋愛とシャルロットを重ね合わせているみたいです。ドラマティックなマドンナ的な感じすらします。
 
なんと、あのピカソまで描いてます。
いかに抽象画家のピカソといえども、美しい女性を描くとなれば美人らしく描いているでしょうね。
というわけでみてみます。

なんやねんこれ。
芸術ってむずかしいネ。ちなみにピカソは彼女が嫌いだったようです。
 
暗殺者フランソワ・ラバイヤックとシャルロット・コルデーを結婚させてみた「祝婚歌」 (pdf)
アンリ4世を殺したラバイヤック。その人とシャルロットの暗殺は、同じような魂のつながりがあるよ!というロマンティックなお話。
暗殺の美学と、その心理を賞賛するつくり。たしかに殺人者だけど人気ありますよね。その根底には、専制政治への批判も含まれています。シンボルとしてもとらえやすいんだもん、この人。
 
トータルして冷静に見ると、彼女は思い込み電波に動かされた、むちゃくちゃな人物だったようです。こうやって殺してしまったことで、革命が反動で激しくなったくらい。しかも彼女がマラーに会うために手伝った人は、みんな何もしらないのにギロチン行きになるという、オマケまでついてます。迷惑だな!
聖女扱いするのは早計のようですネ。ジャンヌ・ダルクしかり、天草四郎しかり。絵面だけで現実は語れないようです。
 
しかし、モチーフとしては、面白すぎるじゃーないですか。そんなわけで小説などでも彼女が登場しはじめます。
「アダム・ルックスが遺書」(1925)
シャルロット・コルデーに心酔した人が銅像を作ろうとしてギロチンにかけられた小説。
遠藤周作「王妃マリーアントワネット」
登場人物「アニエス」のモチーフが、シャルロット・コルデーのようです。
 
正義を信じ、命がけで暗殺し、最期まで毅然とたちむかった、清純な田舎娘。こんなステキキャラ、ホレもしますよ、みんな。自分とか。
時代の真実さを知った上で、こんなステキなエピソードを現在風にアレンジして、吸収していくのもいいなー、と思いました。
彼女を題材にした小説やマンガや映画、見てみたいですよね。あるいは彼女をモチーフとしたキャラクターの話とか。一つの形式として、こういう思い込み正義に殉じる女性って、完成している気がします。
できれば、「ナポレオン」ゲームを作って、その中で包丁で単身戦いに乗り込むシャルロットをプレイヤーにしたいくらい。どこかで作らないかなあ。あるいは天誅シャルロット版とか。やりすぎか。
 
オマケ
シャルロット・コルデー解説
フランス語。よめまーせん。
マラーを殺した女―暗殺の天使シャルロット・コルデ
歴史的に深く調べられた本みたいです。
コルデーのいたジロンド派 wiki
いた、と言っていいのかどうか。ジロンド派も山あり谷ありのグループみたいです。
処刑したのは、死刑執行人サンソン
執行人というと、血なまぐさい人間のようなイメージのありますが、この処刑人、死刑囚に対しても気を使うエピソードが多くあり、「人道的な首切り人」という称号をもらっているそうです。この人もいろいろ面白いエピソード多そうですネ。