たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

少女は見えない瞳で乱世を見る。「姫武将政宗伝ぼんたん!!」

●オタクコメディの大御所が飛び出した。●

うちでも何度も紹介している4コママンガに、辣韮の皮という作品があります。
辣韮の皮―萌えろ!杜の宮高校漫画研究部 (1) (Gum comics)
阿部川キネコ先生の作品で、オタクの痛々しさを愛をこめて描いた快作です。オタクであればあるほど面白いという、ちょっと変化球な作品で、今の「オタク文化マンガブーム」の大黒柱の一つだと思います。オタク経験者には激ススメ、そうでない人にはすすめずらい。けどすぐ慣れるヨ。多分。他にも、「お菓子な片想い」「WAKIWAKIタダシさん」「ビジュアル探偵明智クン!!」など、4コマで活躍されている作家さんです。
 
さて、4コマの大家阿部川先生が、今回はストーリーマンガを描きました。戦国武将物、それも伊達政宗、それも、なんと幼女。
そりゃー、読むしかないじゃないですか。
毒の中に愛を盛り込むのが得意技の阿部川先生、今回も惜しげもなくキャラクターに愛を注いでいるのを強く感じる作品になっています。
帯にもあるのですが、…とかく二人のキャラが愛しい!しかもその愛しさをおさえながら、ギャグもシリアスも非常にバランスがとれた歴史ファンタジー快作です。
 

●姫が息子になった日●


萩姫、5歳。
なんと聡明な幼女でしょう。阿部川先生はこういう、童顔なんだけど色っぽい目を描いたら、本当にうまいですよね。
もし自分にこんな娘がいたらどうしますか。そりゃあもうねえ。

バカにもなるってもんです。このテンションの上下っぷりが、なんとも阿部川先生らしいです。
荻姫が、女の子のままでいるシーンはものすごい短いんですよ。ほんの10ページくらい。しかし、この最初の荻姫のシーンがあることで、いかに彼女が自由奔放で、かつ賢い子かしっかり描かれています。だからこそ、このあとの梵天丸が、引き立つんですヨね。
彼女のかわいらしさは、確かに昔風の子供らしい空気も持ち合わせていますが、今風の、女の子からみてもかわいらしく憎めないキュートさがあります。

疱瘡で右目の視力を失い、男の子として育てられるようになった梵天丸。その後の伊達政宗です。
政宗が右目を失ったくだりは、わりと史実のようです。しかしもちろん、女の子というのはこのマンガならでは。
こうして誕生した一人のりりしい少年は、誰よりも男らしく、たくましく、そして子供らしくイキイキと成長していきます。
つってもね。最初のシーンの荻姫モードがかわいらしすぎるんですよ。だから、梵天丸がいかにムチャをやって、周りの人間が男だと思い込んでいても。読者の目から見るとそれはキュートな少女の背伸びに見えて仕方ありません。そのへんがこの作品のキモになってくると思います。
 

●乳首でGO!●


というわけで、男の子として育てられるわけですが、当然上半身裸になろうと誰も気にしません。男ですから。しかし読者は知っている。これが女の子だってことを。
というわけで、7歳乳首であります。
ときめいたら負け。いや勝ち。
何人かは事実を知っているわけですが、知らない人もいるというこの状況が面白いです。梵天丸も、自分は男の子だ、と思わされて育っているので何も疑っていないのがいいんですよ。いや、もしかしたら分かってあえて選んでいるのかもしれないけれど、どちらかというと「そんなのはどうでもいい、自分は梵天丸だ」という強い意志が宿っています。まだ7歳なのに。
 

●まじめくん、片倉小十郎に萌える。●

はて、伊達政宗と共に生きた男といえば、伊達の三傑の一人、片倉小十郎景綱です。
政宗が幼い頃から仕えていた一人です。逸話によると、失明した梵天丸の右目を彼が抉り取ったという話すらあります。まあ、このマンガにはそのシーンはないですが、そのくらい幼い頃から仕えていたんですネ。後に知略にたけ、武功の名高い武将になるようですが、それは別のお話。
 
このマンガの中で、片倉は非常にきまじめで、まっすぐな男として描かれています。もちろん、梵天丸をも、一人の男性として子供であろうがびしびししつけます。
だがしかし。…阿部川先生がそれだけで許すわけがない。

キャー!(小十郎の方が)
そりゃすっぽんぽんになればいやでも女と分かります。それを見てびっくりするのは普通ですが、彼の驚きっぷり照れっぷりは異常なほどです。
というか。女だから手を抜く、というのはまあわかるとして、なぜ7歳の裸を見て照れますか小十郎。いや、まあ、わからんではないけど。

小十郎は、本当にいい男なんですよ。まじめで体当たりで、梵天丸を守ろうと心から尽力しているんですよ。しかし、やっぱり「女の子」というのはでかすぎですよね。どう接すればいいのやら。
それに対して、梵天丸は結論を出すのですが、そのシーンが非常によいので、是非見ていただきたいです。かわいくもあり、凛々しくもあり、そしてただものではない目をしている梵天丸を。
 
しかし、梵天丸のキャラクターのひきたち具合に反比例して、小十郎のまじめさはかわいさへと変化していくのが面白い。

男版ツンデレモードというノリ。もう、一挙一動がかわいいんだ、小十郎ときたら!まじめなゆえに。
彼が困惑したり悩んだりするのには、ちょっとした理由もあるのです。

幼児に童貞イズムを指摘されてへこむ小十郎。
きまじめすぎるゆえに、女性耐性がなくひたすら愚直な彼。間違いなくこの作品で一番の萌えキャラで、作者に愛されまくっていると思います。いやほんと。こんな小十郎が、今後育っていく梵天丸と行動を共にすると思うだけで、ときめいてしまいます。二人の間にどんな感情が生まれるんだ!(いや、生まれないかもしれない)。
 

●キャラ達の眼光の違い●

  
他にも一癖二癖あるキャラがいっぱい出てきますが、どのキャラも愛されています。
ここで注目すべきは、キャラ達の眼の違いでしょうか。
いずれのキャラも、それぞれ思想や理念を持って行動していますが、その目的はバラバラ。それにあわせて、眼光もバラバラです。
そこで改めて梵天丸の眼光を見てみると。


無い目で、確かに何かを見ています。そして見えている左目は、幼いながらも常に世の中を、人を見抜いているかのようです。
不動明王を見て不敵に微笑み、にらめっこすらしてしまう梵天丸の右目。左目の眼光も非常に鋭いのですが、視力は失っている右目は、何かを常に見ているかのように描かれています。性別を隠し、見えない右目を隠している彼女。しかし誰よりも強い意志と心を持ち、それをあらわにしているのも彼女なのです。
 
この作品、確かに政宗の歴史や大河ドラマを知っていると何倍にも楽しめると思います。しかし、政宗を全然知らなくても、歴史に興味なくても十分面白いと思います。ギャグのテンポのよさのせいもあるのですが、梵天丸が何よりもどんどん前向きに進んでくれそうだからです。安心してみていられるんですよネ。
1P目で11歳になっているので、そのくらいまで描いていくのだろうな、と思います。願わくば、武将になってからの活躍も見たいところ。そしてそして、小十郎との、家臣との関係のような、友情に近いような、あるいはそれ以上のような微妙な関係を見てみたい!と表紙を見て思わざるをえない!
阿部川センセイ、ほんとお願いします、是非とも小十郎との微妙な関係を描いてくださいお願いします。妄想ばかりが先走ってとまりません。
 

〜関連リンク〜
WEBコミック 幻蔵
連載はこちら。
伊達政宗(wikipedia)
天下の独眼竜 伊達政宗
エピソードか細かくて面白いです。オススメ。