たまごまごごはん

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「萌え系マンガ雑誌」が向かっていく先を「チャンピオンREDいちご」から考えて見る

チャンピオン RED (レッド) いちご 2007年 07月号 [雑誌]
やっとチャンピオンREDいちごを買いました。
知らない人も結構いると思うので簡単にコンセプトを説明しておくと、「ヒロインが全員15歳以下のマンガ雑誌です。
すごい時代だよね。
これだけ書くと、ものすごい「萌え」寄りな本かと思いそうですが、…9割型萌え寄りな本です。
いや、そんなことを言いたいんじゃないデス。
この本のラインナップの紆余曲折っぷりがすごいのですよ。残りの1割の。
 

●気に入ってるマンガピックアップ●

例えば、「舞-乙HiME Zwei」4コマが載っているのですが、描いているのは目黒三吉先生。そう、「低俗霊DAYDREAM」でホラーと下ネタを見事に調和させたり、エロマンガ時代にはエロだかなんだかよくわからないシュールマンガを描いていたあの人。当然4コマも暴走力満点。舞-乙HiMEがそういうハードなネタにも対応できる器を持っているのも確かですが、この人選はすごいなあ。(舞-HiME時代の小説のイラストを手がけていたのもあるみたいですが)。
 
キワモノ二つ目は、高遠るい先生の「カタナちゃん斬鬼傳」。バキをインスパイアしながら少女達の暴力を描いた「CYNTHIA THE_MISSION」の作者です。先生の描く女の子は確かにものすごくかわいいのだけど、常に暴力の匂いを身にまとっています。当然今回も「萌え」とはなにかが一線を画しているネタでした。めっちゃこの本の中で、異彩を放つページを大ゴマで描いているあたり、惚れ惚れしてしまいます。
  
今年イチオシのマイブーム作家、吉富昭仁先生の「BLUE DROP〜天使の悪戯〜」も素晴らしいです。自分にとって吉富先生のマンガの一番の魅力は少女の百合脚なんですが、惜しげもなくそれが前面に出されているマンガになっています。相変わらず、世界は黄昏に向かっているのがまた魅力的。チャンピオンREDの本編に比べると性の歪み度は低く、少女の美しさメインに描いているのですが、そこにあるのは「萌え」じゃなくて「美学」な気がします。その違いはなにかっていうと…自分もよくわからないのですが、見ていただければわかるかと。
 
「アマミにおまかせっ」も燦然と輝いていました。作者は「サイカチ」や「ベクターケースファイル」の藤見泰高先生&カミムラ晋作生コン。萌え雑誌であろうと、虫です。確かにこの漫画家の絵はすごいかわいいんだ!キャラもめっちゃ萌えるんだ!けれど、中身はガチの虫話。本当に虫愛を感じます。萌えは飾りなのです。虫がメインです。
 
そういう点で言うと「セーラー服と重戦車」の野上武志先生のマンガも相変わらずの飛ばしっぷり。戦車に乗って駄菓子屋に寄る女子高生。萌えますね。女の子と重戦車の組み合わせってなんでこんなに萌えるんだろう?と考えたときに、「萌え」の意味はちょっといろいろな角度から変わって見えてくるかもしれません。野上先生のイラストやマンガって、全般的に鉄と油のフェチズムと女の子のフェチズムの融合点にいますよね。今回は特にこの雑誌の看板マンガであるあたり、秋田書店の狙いが垣間見れて面白いです。
 

●「萌え」は、違った角度から狙って撃つ時、味が出る。●

確かに、9割は萌えマンガなんですよ、この雑誌。萌えの探求者の称号を持つみづきたけひと先生のマンガもかわいらしいし、おりもとみまな先生女装男子萌えっぷりもステキ。松山せいじ先生のエロっぷりも相変わらずだし、全般的に普通に萌えを楽しめると思います。
が、やはり先ほどあげたような、直球「萌え」から一歩離れたトコロから見ているマンガ群があるから、ぐっと全体がひきしまる気がしてなりません。このへん、ただの「萌えで売る雑誌」と何か違う感じがプンプンします。
おそらく、その斜め視点がアイスクリームのウエハースみたいに、リセットする働きを持ってるんでしょうネ。加えて、本当の意味で「萌え」を読みたいと思う人たちが、実は斜め視点を愛好していることをよく知っている作りなんじゃないかとも思えます。
 
自分なんかがそうなんですが、直球の「萌え」って、…ちょっと気恥ずかしくなっちゃって。
いや、好きなんですよ。だけどほら、なんていうか、うがった見方をしてみちゃうじゃないですか。「自分はこんなの興味ないもんね」とか言いながら。それなんて中2病。でもそう反応しちゃうんだから仕方ない。
そんなときに、斜め視点で一風変わった角度から攻めるマンガが載っていると、意気揚々とそこを狙って、やれ萌えとはなんだ、と語りだすわけです。このエントリみたいに。恥ずかしいね。
でも、「萌え」を自己解釈した、距離をおいた視点のマンガがあることは、読むハードルをぐっと引き下げますし、同時に「萌えってなんだろう」と自問自答しながらマンガを楽しむきっかけにもなり、最終的に「萌え」の意味を高めることにもつながる気がします。例えば野上先生のマンガ。ストーリーも面白いのですが、少女と銃器の関係やバランスを考え始めるだけで、なかなかそのサブカル思考自体が楽しいものがあります。これもまた、「萌え系マンガ」の楽しみ方の一つの方向性かもしれません。
 
そういう意味でいうと、例えば電撃大王の「百合星人ナオコさん」や、コミックハイの「みーたん」なんかはそういうエッセンス感じますよね。ただ、チャンピオンREDいちごのキモは、その1割の斜め撃ちマンガ達が、なかなかに実験的なところ。
今後、これが理科の実験程度になるのか、核実験になるのか、それはわかりませんが、何か強烈なものをかましてくれるのではないかと感じてなりません。勝手に期待してしまいます。
正しい楽しみ方ではないんでしょうけどね。萌えオタも深みにはまると時には側溝に落っこちて斜めに見上げてしまうことも、あるんです。
 
余談ですが、できれば第1号で描いていた石黒正数先生は復活してほしいなー、と思いました。めいどっ!
 

●オマケ。今回輝いていた巻末コメント。●

高遠るい先生の、今回のコメント。

人の写真を見ていて唐突に「なんかXX食ってそうだな」と思うことがあります。

この人は本当に、色々な点ですごいなあ。多分自分の想像の及ばない世界を見ているんだと思います。
 
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