たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

エロマンガ、ハッピーエンドとバッドエンドどちらがお好き?

今までも何度も話題になっていて、そのたびに何か書こうと思いつつうまくまとめられなかったのですが、せっかくの面白そうな話題なので書きながら色々ちょっとまとめてみようと思います。 
以下、18禁的な要素を含みます。
 
 
発端はゴルゴ31さんがやっていたネットラジオかなにかの話題。単純な好みの問題として「エロマンガはハッピーエンドとバッドエンドどっちが好きだい」という話でした。
もちろんこれは解答なんてあるわけがなくて、完全に個人の趣味嗜好の問題なんですが、この話題を入り口に「エロマンガ」という独自すぎる世界について踏み込んでいくのも面白いんじゃないかなあ?と思ったわけですよ。
 

●そもそも、エロマンガって買います?●

はて、うちのサイトでは結構エロマンガも普通のマンガと同じように「面白かったよ!」と書くようにしているのですが、読んでくださっている人の中で、どのくらいの方がエロマンガを読んでいるのでしょうか。
というのは別に統計をとるわけじゃないです(取ってみたいけれども)。
そのくらい、エロマンガって特殊な位置にある気がするんですよ。


・えっちなのはいけないとおもいます!(そういう人もいるので無理強いはできません)
・値段が格段に高い(基本1000円前後。安い小さいサイズのは消しがでかくて。)
・普通の書店ではまず並んでいない(専門店にでも行かない限り、新刊すら手に入らない)
・意外とエロゲファンとかぶらない(もちろん両方楽しんでいる人もいますが案外かぶらないです。だからというわけじゃないけど、ファン内の話題として大きくなりずらい部分もちょっとある。)
・部屋に置くと場所をとる(大きくて、派手なので目立つ上にかさばる。そこがいいんだけどネ)
・新刊が出るまでが長すぎる(雑誌に載ったものの、単行本は出ないまま、というのはざら。)

いやあ、実にハードルが高いですね。
正直、エロマンガほどカバー買いして失敗したときのショックがでかいマンガもないと思います。それは値段のこともありますが、自分の趣味にあいそうな表紙だと思ったら、お前裏切ったな!みたいな気持ちの反動が強烈だからです。
そんなわけで、エロマンガは嫌いじゃないけど買えないよ!という人の方が多いのではないかとおもいます。
となると、有名で安全な作品or中身が見られる作品を吟味したい、というのが人情ってのものです。あるいは読まないなら一切そのジャンルには触れない、という人もいらっしゃるのではないでしょうか。
 

エロマンガの一番の売り●

エロゲは声が出て絵がきれいです。エロ本は手軽で生々しい写真が見られます。んじゃなんであえて白黒で不便度も高いエロマンガなんですか?という話になります。
なんかぐちゃぐちゃした細かい点でのこだわりは自分の中にもあるのですが、それを書くのは別の機会として、単純に一番の売りはなんだよと言われたら、「エロいこと」なわけです。どんなにかっこつけても、エロゲの「泣きゲー」とかとは違って、明らかにエロが研ぎ澄まされるジャンルがこの「エロマンガ」文化です。
 
まず、短編(4ページから40ページ程度まで)の中で、いかにエロくあるかは大きなポイントです。
これってものすごいことですよ。
だって、すごく単純な「セックス」というものを、ありとあらゆる角度から、多種多様なテクニックを用いてその短いページ数の中で、読者の本能くすぐる世界をピックアップするわけですよ。また、読者にただ媚びるのではなく、自分のこだわりもその限られた空間で描き、繰り返し突き詰めていくわけです。これは他のマンガではできないことだと思います。
エロもよく見てみると面白いもので、完全に男性の性器感覚をいかに描くかに特化してその気持ちよさを描く人もいれば、女性側の感覚をも掘り下げて双方の感覚を心地よく描く人もいます。注意してみれば、作家さんのそのへんの個性は意外と気づくと思いますし、自分がどっちが好きなのかもわかるのではないかと思います。
性器などでその感覚を刺激する作者もいれば、直接描写を排除して雰囲気で描く作者もいます。
 
いかに人間の中のエロティックな感覚を刺激するか。そしてそれを細分化していくか。
そんな細かい構想が練り上げられているこのジャンルは、本当にすごい。「実用的」とか言うと照れて笑う人もいるかもしれませんが、人を泣かせるのや笑わせるのと同じくらい、「興奮させる」のは緻密な計算のいる作業だと思うのです。それが白黒で、マンガでしか描けない世界だからなおのこと。
 

●18禁がもたらす、リミッターの解除●

もっとも、エロマンガ慣れするとそのへんはしっかりおさえつつ、18禁というジャンルだからこそ描ける、作家の個性にひかれるようにもなると思います。逆に言えばそこからエロマンガをチョイスした人は、…親友になってください。
ピンとくるこのへんの神様みたいな人は、町田ひらく先生でしょうか。

確かにエロティックなマンガなんだけれども、18禁であることを利用して、少女美学や男性の業のようなものをがっちり描きこむ作家さんです。読んだことない人はぜひ!と言いたいところですが、陰鬱の塊で、果てしなく厭世的なのもあるのでなかなか薦めずらい作家さんでもあります。興味ある人は読んで損なし。外人物(「ANNE FRIENDS」など)もかなりよいですが、できれば「きんしされたあそび」など初期作品から是非。文学的と評されることも多く、全くそのとおりだと思いますが、あえていえば「町田ひらく的」。
 
あと自分が崇拝しているのが海野螢先生。エロマンガが特に好きじゃない人でも、SF好きな人は是非よんでいただきたい作家さんです。こちらも18禁でエロあり、と言うのをエッセンスにして、SF的な思考や感覚の捕らえ方を描きこんで、今知覚している世界は、セックスの感覚はどのようなものなのだろうか?と言うのを表現する作家です。

関連・エロマンガ家海野螢の描くSF思考世界で、ショートカット娘と戯れよう
 
一方加賀美ふみを先生などのように、エロを完全に「愛情表現の一環」として描き、恋愛描写に徹する作家さんもいます。ものすごくエロいんだけれども、果てしなくエロくないのがいいです。恋愛の一部なんですよねえ。確かにこれはエロがあるからイイ。*1
 

●さて、ハッピーエンドとバッドエンドだが?●

こうしてみると、性行為のマンガ化というのが、特殊な前提に基づき、様々な感情をこめられて描かれる行動なことがわかります。淡々ほわほわ終わる作品だとしても、そこには恋愛やキャラの興奮がなしでは描けません。読者の感情をゆさぶる要素もなんらか含まれないわけにはいきません。
そうすると、「ハッピーエンド」「バッドエンド」が非常に重要なのもうなづけます。
結論から言うと、自分はどっちも好きです。
持っているマンガの偏り方を見ると、間違いなくハッピーエンドが多いです。これは「読みやすいから」「単純にエロいのが見たいから」「寝る前に読むとほっとするから」です。そりゃもうねえ、脳みそ空っぽにしてトンデモ展開を見たり、ニヤニヤしながら「こいつら…幸せ死にしろ!」とか思うのが楽しいじゃないですか。
しかし、落ち着いて陰鬱なものを見ないと落ち着かない日もあります。別に落ち込みたいわけじゃなくて、見ることで落ち着くのですよ。詳しくは別のエントリのほうで。だから、バッドエンドエロマンガもすきなのです。ただ、いわゆる「実用的」とはちょっと違うかもしれません。ちょうど「劇場版エヴァンゲリオン」でシンジ君がアスカで射精して、これ以上ないくらいイヤな気分にさせられたのと似ていると思います。
ちなみに超越すると、それがよくなると思います。業が深いですがそれこそがある種のエロマンガのみが持ちうる魅力でもあります。
 
作家さんを具体例にあげていけばいいのですが、そのへんは時間かけて一つずつ書くべきだと思うのでここでは割愛。
でも旬な漫画家さんが一人いるので、これだけはあげときます。
 

鳴子ハナハルワールド。●

ここで、最近豪華すぎるカラー特集が組まれた鳴子ハナハル先生を紹介しておきます。
エロマンガを読まない人でも、「かみちゅ!」コミカライズの際の天才的な描写力はご存知の方も多いのではないでしょうか。

この表紙を見たら、ファンなら買いです。
鳴子ハナハル先生の作品はいまだ単行本にならないのですが、なぜこんなにカリスマ的な人気があるのか、見ていただければ一発で分かると思います。あ、嗜好があうかどうかは別の問題として、です。漫画家の描写力としてです。
緻密すぎる絵、やわらかすぎる女の子、官能的な半目など、いい点をあげていけばキリがないのですが、ちょっとシメ方にも特徴があります。

これはどちらかをいえば鬼畜系な話なのですが、なんだかんだで一気に最後にハッピーエンドになるのですよ。どの話もそういう傾向があります。2から8ページという短いページ数で、超短距離ダッシュのエロを濃厚に描いた後に、ストーンとハッピーエンドで締める。その手法、天才的です。同時にそれが分かっているから、安心してそのエロティックな表現を、本能の部分をゆだねて堪能できるんですよね。フェティッシュもあわせて。
 
もちろん鳴子ハナハル先生のバッドエンド物も見てみたいっちゃ見てみたいんですが、今はこの形式の方が安心して見られるなあというのが素直なところです。他にもCuvie先生なんかも昔はバッドエンドよく描いてましたが、最近はポジティブなハッピーエンド多くてほっとします。あ、ちなみにどちらも死ぬほど面白いです。
 
うーん、消化不足ですね。SMとかフェティッシュとかまったく書けてないです。…このへんやっぱり作品ごとに書くべきだと思うので、ここまで。思いつき次第書いていきます。
一つだけまとめとして書いておくとしたら、事前情報をおさえてから読むとエロマンガはハードルが下がりまくる上に、存分に楽しめると思います。それはネットという便利なものがあるので、それをフル活用してレッツトライ。嗜好にあった、最高の作品に出会えますように。
 
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絶望が気持ちいいんじゃない、絶望を見ないと耐えられないんだ。
 
〜関連リンク〜
ちょwwwこのエロマンガなんだwwwwww(2ch)
せっかくのエロマンガです。とことんまで普通出来ないことをしてほしいと思います。あと作家さんのこだわりがあるほうが好きです。
ロリ漫画を淡々と評価するブログ
ロリ以外のエロ漫画も淡々と評価するブログ
エロマンガの水先案内人のような、客観的に淡々と書かれたブログ。とても参考になります。
  
 
本当にこの漫画家さんの描くショートカットといい貧乳といいSFといい毛といい、こだわりがすばらしすぎます。エロに興味ない人でも是非読んで!
 エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門
エロマンガスタディーズはかなり勉強になる、サブカルチャー分析本。エロマンガ読む水先案内人としても、娯楽読み物としても通用する名著です。
 かみちゅ! 1 (電撃コミックス)
雑誌の方はまだ残ってるのかな…

*1:この作家さんのエロがない方のマンガも、ラブラブでかなりよいですが、個人的にはエロありのほうが好き!