たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「苺ましまろ」のシュール肯定空間と、そこで踊るぼくら。

海外アニメファンの疑問「なぜ苺ましまろのアナ=コッポラは自分の名前を気にする?」 (お茶妖精)
これ面白いですねえ。各地で「そういやなんでだろう」という話題が出ているのがたまりません。
「コッポラ」で一喜一憂する世界のオタク。すばらしい。
 
んで、「じゃあコッポラのどのへんが面白いの?」と言われるとやはり言葉に窮します。
このへんのバランスが「苺ましまろ」は絶妙にうまく、逆に言えば見事に僕らは踊らされている部分だと思うので、ちょっとメモしてみます。
 

●ナンセンスさ●

苺ましまろ」を代表するシーンの一つがこれ。

とにかく美羽の行動は「意味がわからない」
基本は千佳とのやりとりで「ぼけと突っ込み」の形式は保っていますが、いかんせん美羽のボケがどこまでどういうネタなのかが分からないことが、面白みの一つ。
連想させてギャグに持って行く形式と反して、「絶対だれも連想しないこと」をポンと出されたときの破壊力が、世界中のファンに受けました。
正直まだ単行本になっていない「突っ込まれない美羽」のシーンは書店で吹きました。迷惑な客だねほんと。だって自分が千佳とシンクロして、突っ込まずにいられないんだもの。
 
ナンセンスギャグって非常に難しいと思います。ファンはどこまでが笑いか見極めねばなりませんし、作者はどこまでぎりぎりに迫れるか脳をフル回転です。すれ違うと「なんだかわからない」になってしまいます。
苺ましまろ」がすごいのは、「女の子がかわいい」「かわいいは正義」でそれを昇華させたこと。そして恐ろしいバランスで綱渡りを渡りきっていること。
だって、「萌え」って難しいよ。かわいい女の子出せばいいってものじゃないよう。それを作品の「世界」として「ここは『かわいい』の空間です。」と積み上げるんだもの。あの空間のキャラの中で「面白い」と思ったことが、こちらにも「面白い」と巻き込むんだもの。
かわいいは正義」というのは、実は「計算された『かわいいこと』で、多少の無茶すらも肯定される空間が、この作品中にはできている」ということなのかもしれません。ん、なんかおおげさっぽいなあ。
 

●別に「コッポラ」じゃなくてもいいんだけど●


はて、問題の「コッポラ」ですが、どこが面白いかと言われると、やっぱり分かりません。
比較対象として「面白い名前」で思い浮かぶのは、先ほどの記事にも出ていた「ペッペッペ・ソーランアレマ」。こちらは「少年アシベ」のキャラですね。
ソーランアレマはむしろ「明らかにおかしい」というのを狙っていますし、そこが笑いどころなのがわかりやすいのですが、別にコッポラという名前自体は面白くもなんともないです。
そこがいいんですよ。
 
まず大前提として、「アナちゃん=かわいい子」という描写があります。作者もそれを意図して描いています。
そのアナちゃんが恥ずかしがる顔を見たい
だから、なんらかのコンプレックスがほしい。
そこで名前コンプレックスが出てくるんですが、そもそも「アナ・ソーランアレマ」とかだとやりすぎになっちゃうんだと思うんですよ。だって、名前が「狙って変」ですもん。
重要なのは名前が面白いところではなくて、恥ずかしがって素になるアナです。
だから、名前は少し違和感があるくらいでちょうどよかったのだと思います。逆に言えば「コッポラ」じゃなくてもよかったのかも。
 
コッポラがらみで印象的なのは「アナの照れ顔」「ドツボにはまる美羽(自ら)」「なんだか脅迫される茉莉」です。
キャラの行動が、このささいな「コッポラ」の名でどんどん渦を巻いていく。その状態が面白いのだから、名前が面白すぎたら気がそれてしまいます。
小さい女の子たちが「コッポラ」と、その小さな口でささやいたり困ったり笑ったりする様自体が「かわいい」なのかもしれません。
 
とかいって、実は「なんとなく」がオチのような気がしたり。
 

●ナンセンス+かわいい=深読みも楽しい●

以前こんな話題で真剣に悩んでいたことがあります。

「『苺ましまろ』美羽の横っ腹をどう捉えるか問題」とオタクの視点
「苺ましまろ」の1シーンから考える、読者側のマンガの楽しみ方
これ今でも分からない。

たぶん自分の中でかまえていたミットに入らなかったため、すこーんと分からなくなったのだと思います。すんなりわかる人はうまくツボに入った人かもしれません。
そして分からない自分は頭に「???」を浮かべながら、ゾンビのようにさまよい続けます。
 
このへんも実は「苺ましまろ」ワールドのテクニックなんだと思います。
笑える人はナンセンスギャグですんなり笑えればいいのですが、分からない人に深読みさせる部分もまた、あると思います。
「意味なんてないよ」で終わるのもいいのですが、みんなでわいわい、この「かわいい空間」について考えるのも楽しさの一つだと思うのです。
先ほどの「コッポラ」の話が国境を越えて「???」をファンの間に生んだように。
 
〜関連記事〜
レッツプレイ、深読み&邪道読み。
でもまあ、マナーをおさえつつ・・・こっそりと・・・。
 

 このジャケがすごく好き。