たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

あのこはぼくの部屋にやってくる(なわばしごで)。「キラキラ☆アキラ」

●キュートな女の子●

曙はる先生は、プロフィール欄にこんなことを書いていました。
「かわいい子が書きたくて、29歳で漫画家デビュー」
なんてすばらしい歩みなんでしょう。すごい。
まあ、「かわいい」と一言に申しましても、いろいろなバリエーションがあるわけです。
自分がかわいい!と思うのはいろいろな所で言っているのですが、「ムダなくらい元気に動く子」です。
しかもその子がいつも笑顔で自分のところに来てくれたらうれしいわけですよ。たまらんですよ。「かわいい」ですよ。
でもそれは、色恋沙汰とか裏があるんじゃなくて、もう素で。ナチュラルで。かわいい、ああかわいい。
曙はる先生は、それを描きましたね。「かわいい子」を。
 

●幼なじみが窓からやってくる●

主人公の桃太郎君は、ちょっと太めの男の子。手先が器用で、運動が苦手で、おとなしくてゆったりした子。
ヒロインのアキラちゃんは、とにかく元気で明るく、みんなの人気者。
そんなアキラと桃太郎は幼なじみの大親友で、幼い時からいつも一緒ですが…。

今も一緒です。
窓の向こうにいる幼なじみっつうのはよく見るのですが、上の階からなわばしごで下りてくるっつうのはなかなかありません。
 
もうね、このアキラがめちゃめちゃかわいいんですよ。
これが下心あったりすると話しがややこしくなるんですが、アキラはそんな複雑なことを考えません。ただひたすらに「桃ちゃん遊ぼうー!」「桃ちゃん見て見てー!」「桃ちゃん宿題やったー?」と、無邪気に幼い時のまま桃太郎に接するわけです。

注・二人は16歳です。
 
ああー。どうしよう。こんな風に明るく楽しく過ごしたい。
エロいこととか今だったらそりゃ考えますが、そんなのをぶっとばして「一緒にいようー!」な子供の頃の気持ちを持つアキラに、もう赤面しきりです。
そう、ムダに明るく、ムダに元気で、ひたすら無邪気な女の子は輝くほどかわいい。さんさんと照る太陽のようです。
 
実際それは、周囲の反応によっても描かれます。
なんせ彼女はもてる。ものすごいってレベルじゃないくらいもてます。
運動抜群なのでひっぱりだこ。しかも、なんでも応援して元気づけられるチアガールもやっているのでさらにひっぱりだこ。キュートではつらつとした姿には、男性ファンも山ほどいますし、女の子にもかわいがられます。
彼女がそれを狙っていないのが、一番の魅力なんですわな。いやあ、ほんと、アキラかわいい(たまごまごはめろめろになった)。
 

●芽生える意識●

このマンガの面白いところは、そんな「無邪気」な関係の中で、桃太郎側にじわじわと意識が芽生えていくところです。
アキラはもてもてで人気者なんですよ。しかし桃太郎は地味でふとっちょでおとなしい趣味の子です。
あれ、自分なんてなあ、おこがましいかな。

それでもアキラは桃ちゃんが大好き。いつも一緒。
でもその「好き」ってなんだろう?
あんなにいつも側にいるのに、「恋人になろう」という言葉は決して生まれません。そういう考えに方向が向きません。
 
しかしながら男の子です、そりゃあね、いくら無邪気な幼なじみでも、意識はするよ。性的な意味で。

どういうシーンだったかはまあ見てもらうとして…そうそう。好きな子って…特別かわいく見えちゃうんだよね。
いつから彼女のことがかわいく見えてしかたなくなったかは分からないけれども、気づいたらなわばしごで降りてくる彼女のことが楽しみになってしまったんだな。
まあ、正直元気すぎてアキラに振り回されているところもあるんだけれども…桃ちゃんは大切な時間を今過ごしていることに気づいています。
 

●こんな二人だから●


まわりの子たちは16にもなったので、彼氏とか彼女とか恋愛とかシャバダバなのです。
でもアキラはいつもこんな感じ。桃ちゃん好き好き。進展なし。
桃ちゃんはアキラを好きなのにもう気づいていて、どう隠そうかで悶々とする日々。でも一緒にいたい。いたい。
 
なんだか「もてない男が一方的にかわいい無邪気な子を好いてるマンガ」にも見えてしまうのですが、この作品はいびつながらも二人が見事なまでにバランスとれていることを、ほんのりと描いているからたまらないんだなあ。

桃ちゃんもとても純粋な子なのです。ありのままのアキラを、ありのままにすべて受け入れます。
どんなに脱線することがあっても、アキラを見捨てません。アキラが笑顔でいるためにはどうすればいいのかを真剣に考えます。
そして、アキラの失敗も成功も、喜びも悲しみも、本気で感じ取れる人間なのです。
アキラは相当無茶な子なんですが、それは桃ちゃんに対する絶対的な信頼ゆえであることも、また確か。
 
どうしても大人になると、「カップルなら彼氏彼女の線をひかなきゃ」「恋愛らしい恋愛をしなきゃ」と、決まり切った線を引くことに躍起になってしまいがち。
でも、それぞれの「好き」って、ここからここまでが恋愛とか、そういうものじゃないですよね。
100人いれば、100通りの感情がある。
だから、この二人はお互い、何らかの言葉にならない感情をお互いに抱いているんだけれども、それはぼくらには完全には把握できないし、それでいいんだと思うんです。
最後に、とても印象的な二人の表情を。

なわばしごで行き来する関係は、どこに向かうか分かりません。
でも、今この瞬間の、この関係が、この二人にとってかけがえのない物だってことだけは確かです。


二人の周りに出てくるたくさんの脇役達が、またいい味出してます。
最後の方に出てくる漫研の牧さんが猛烈にキュート。
妹本は、むんこ先生と曙はる先生の同人誌をまとめたものです。