たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

作品に対価を払うことは、自分のためになる。胸をはれ!

WEB拍手より。永遠のテーマのようなお話。

たまごまごさん、いつも更新ありがとうございます。楽しく読ませていただいてます。
 
一つ、質問があって筆を取りました。エア筆ですけれど。
たまごまごさんは「対価」についてどう思われますか?
良い作品への対価、とでも言いましょうか。最近はファイル共有サイト、動画サイトなどでいろいろな作品を、買うこと無しに見ることができます。
それらをデータとして手に入れることもできます。
 
自分は「好きな作品はお金を払って見たい」と思っていて、最初は一通りレンタルして見るんですが
「あれ?このお金って、レンタル屋が儲けてるだけで作者やスタッフは儲からないよな」と考えたりします。
「まとまったお金が入ったらDVD買おう」と思うのですけど。
ある日、先輩とマリみての話をして盛り上がっていると「俺も途中まで読んだよ、データで」という人がいました。自分とその先輩は「いや、あぁいうのは本媒体で読まなきゃ駄目だ」ということで全巻かしました。
「あのアルバムは手元に持っていたいから、データで落としたくない」と、長い間聞けてないCDもあります。
 
でもその一方で、こういうこと言うとマズイかもしれませんが違法アップロードサイトを使って
エロ同人誌を読んでしまったりもします。LOで「あれは駄目な行為だ」と言われ、頭を殴られたような感じになりました。それ以来、LOは本屋で買うようにしています。
 
好きな作品を「対価を払うべきだ」「データで無く現物を見てくれ!」と、胸を張って人に勧めたい場合他のすべての作品も対等に対価を払わなければいけないのでしょうか。
いや、そうしなければいけないのは分かっています。作り手の側からすれば、手を抜いた作品なんて無いのでしょうし。
 
このサイトに出会って、いろいろな素晴らしい作品を知ることができました。
pillowsだってむんこ先生の四コマだって、プリキュアシリーズだってマリみてだって
ここで知った作品はちゃんと対価を払って楽しみました。
対価を払う価値があるとか無いとか、主観で決めるのは良くないかもしれないですが
(対価を払う価値が無いと思ったから、共有サイトで見たという言い方もできてしまうので)
それらは「払う価値がある」作品ばかりでした。
 
すべてに対価を払う、というのが完璧な正解であるにきまっているので
たまごまごさんに意見を聞いたといって、この疑問は解決するわけではありませんが

対価を払う払わないの問題に関しては、当然のごとく「払うべき」、終わり、という結論があるので何とも言えないんですが、それだけだとアレなので少し整理してみます。
 

●「借りる」行為●

まずレンタルです。
レンタルは一応、自分の知っている範囲では、レンタル料の一部が制作者に入る仕組みになっている、という建前があります。
たとえば以前も少しとりあげた「レンタルコミック」ですが、これもレンタルした料金の一部が作者に入るようにはなっているそうです。
(実際に検証して作家さんに聞いたら現状はどうなのか、までは知りませんが…)
CD・DVDもそのへんはしっかりしているはずなので、そこに関しては信じて借りて問題ないと思います。むしろレンタルする金額も、お金を払っているのですから「対価」でしょう。
そして気に入ったら買いましょう。お金を払って手元においておくのは本当に宝物です。
なので、「おすすめを人に見せたい」時は当然レンタルでいいと思います。
加えて、むかーしからそうですが「友人に貸してあげる」なんてのは対価払ってませんが、布教としてそりゃ禁止するわけにいかないと思いますし、それでいいと思います。じゃないと図書館とか違法になってしまいます。
なあに、本として読んで、本当にいいものは、人間は買うんです。感動したら買うよ絶対。本はそういう力があるよ。
 

●対価を払う「仁義」●

はて、ネットの流通については、不正アップロードはいくらへりくつこねても「だめ」なものは「だめ」なのでそれ以上言えません。よね。
ここで、あらためてちょっと、LOを例にとって考えてみたいと思います。
正直、LOはものすごくぶっちゃけたことを言ってるんですよね。
 

発端はこの3月号でした。
ロリコンに春は来ない」で話題になって隠れてしまっていたのですが、この号の意見広告がかなり珍しいものでした。

以前ここで『漫画の違法アップロードをやめてください』と訴えたところ
COMIC LOに関する違法なデータの流通が減ったと伝え聞きました。
なにかあるたびにインターネット利用者の倫理観の欠如が言われている中で
話しの通じる「まともな人」がいてくれたことに、とても嬉しくなりました。

決して怒ってないんですよね。
たとえば、コメントをくださった方。自分はどなたなのか存じませんが、これを書くのはとても勇気のいることです。だって「失敗しました」というのを反省した上で描いてくださったわけです。ものすごい努力と、改心の強い念が感じられます。
で、それを責めることは決して出来ません。

私達はそんな「まともな人」に向けて、一生懸命次号LO4月号を作ります。
それが仁義を通した相手への礼儀であり、漫画雑誌本来の仕事だからです。

違法ダウンロードをしていて、そしてやめた人に「もうするなよ」とか「そういうのはやめてください」とは言いません。
仁義を貫きありがとう、それに答えます、と言っているのです。
 
これなかなか言えることじゃないです。
だって、本当は怒っても文句言えないですもの、出版社側からしたら。
しかし「仁義を守ってくれたことに感謝する」と手を差し伸べてくれました。
 
実質今、「それが悪いこと」と知らない人はたくさんいると思います。だって、当たり前みたいになってるから。それしか知らない人だっていると思うから。
もちろん、知らないことは罪ですが、知ったらやめる、そしてきちんと対価を払うなら、それでいいと思うのです。
だから、LOがはっきりと「違法アップロードはやめて欲しいのです」といい「やめてくれてありがとう」と応答するのは、読者の思いを断罪ではなく「受け止め合った」結果だと自分は思いたいのです。
読者もまた、きちんと「受け止めた」印が対価だと思います。それはとても立派なことです。「当然でしょ」といえばそうですが、あえてここは「立派なこと」と言いたいのです。
 
加えて、一つすごい事を書いています。

とりあえず注)問題にしたい違法アップロードってのは雑誌丸ごととか1話丸ごととかを指します。
漫画レビューのトリミングされた掲載は大丈夫なのでご安心ください。

これすごいですよね。
今まであらゆる雑誌で、どこも言っていなかった言葉です。
ようするに「引用の範疇であれば、認めますよ」という裏返し。引用の権利を認めてくれているんですよね。
多分このコメントくださった方もそうだと思いますが、人に伝えるときにどうしても絵を見て欲しい!という場合でも、それをどう伝えるべきかわからず、しかも仁義を貫いていてデータについて苦悩している人はたくさんいたと思います。
しかしそのごく一部だけを見せ、言葉で魅力を伝えたい!という思いを認めてくれるところも、なくはない、ということで勇気づけられる人もいると思うのです。
(LOはいいよと言っていますが、すべての出版社がそうではないことは付け加えておきます。)
 

●対価を払うことと、発信すること●

最終的に対価を払うかどうかを決めるのは消費者です。
欲しくもない物に対価を払えという強制は出来ません。
しかし、対価を払いたくなるようにする、その道筋作りはしたい、というのが心情です。面白い作品、素晴らしい作品は読んでもらいたい・聞いてもらいたいわけです。
その対価を払いたくなるくらいに気持ちを高めさせる手段はやっぱりあるんじゃないかなとは思います。思いたいです。
それに、本なんて数百円ですしね。懐が死んでしまうような額ではないです。それが不安なら、対価を払うべきか否かをネットで調べることも可能だと思います。また、対価を払って満足したなら、どんどん話題にして、「価値があるよ!」と高らかに叫んでいいと思うのです。
 
ただ、ゲームや音楽に関しては懐が痛い額なので、対価を払うかどうか非常に悩ましいところですね。
そのためなのか、ゲームの批評サイトの辛口なこと辛口なこと。でも数千円から万単位払うなら、そのくらい慎重でもしかたないだろうなと思ったりもします。
 
自ら調べ、自ら対価を払い、自ら発信する。
対価を払うことで、本物ではないデータを手にしてその作品の価値を適当に見てしまうのではなく、しっかりと手元に置いて「お金を払った分楽しもう」と心意気を決める。
対価を払うことは自分のためにもなると思うのです。
価値としてのお金を、創作物に払い、手元に置いておくこと自体が、生涯の宝物なのです。そういう「生涯の友」たる本に出会ったこと、あるのではないでしょうか。
 
違法アップロードに文句をつけるのはカンタンです。だって「だめだ」って誰しもが分かってることに文句つけるのなんてそりゃ言い返しようがないですもの。もちろん言い続けなければいけないことですが。
だけど大事なのはそれだけじゃない。「自分がしっかりと対価を払い仁義を貫いていることに胸をはること」こそが、大事なのです。誇って良いと思うのです。そしてそれは自分にとっても、作者や出版社にとっても大切な応援や勇気や、作品への愛になると思います。
漫画が好きなんだもの。
仁義は守るよ。
 

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とはいえ、これは余談なのですが…「雑誌のバックナンバーが手に入らない」ってのは違法で流通しちゃう原因の一つなんじゃないかなーなんて思ったりします。
雑誌だから、印刷はできないからどうしようもないんですよねえ。
うまーくデータ販売とかできないものでしょうか…もっちゃんとか…。
 
〜関連リンク〜
ロリコンは、春に触れず春を見る「LO 2009年3月号」(きなこ餅コミック)

今月のLOは「幸せいっぱいにこにこ!」なエロ漫画と、「性欲のドロドロと渦巻く陰鬱」が絶妙なバランスで掲載されていたと思います。「エロ漫画表現」に興味がある人にはおすすめな号じゃないかしら。
新人さんも多いのですが、LOに掲載される作家さんの絵柄ってみんな骨格がしっかりしていて、いわゆる「萌え絵」じゃないため「ああこれはLO向きだ!」というオーラがちゃんとあるのがすごいです。そしてそれらが漫画としての技術を盛り込んで描かれているからすごい。本当に持ち込み新人なんだろうか・・・。やはり独特のオーラのある雑誌だなあ。