たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ロリマンガ出版の憂鬱 〜明日はどっちだ?!〜

一応エロ漫画の話なので収納。
でもエロい話はあんまりないです。ヒット出版のロリマンガ作家さんの、憂鬱との戦いについての話です。
 
 
9月はヒット出版(「阿吽」や「ino.」を出している出版社さん。ロリマンガの量で言うと、茜新社のLOに次いでいた時期があった)から一気にロリマンガが放出されました。
いずれも素晴らしい作品なんですが、書いている作家さん達の後書きがものすごい興味深いのでちょっと紹介してみます。
やっぱり、世間の状態が不安定で…本が出るかどうかみなさん心配なのですよ。
 

●せめて、この本が皆さんの許に届きますように。●

まず、ぬきやまがいせい先生の「ささやいてあのことば」。
繊細な線と、細くて体つきを描く作家さんです。
非常に詩のような優しい内容が多く、愛情と性と少女達を流れるように描きます。

人間関係も詩のようです。少女漫画的というよりは、男性の思い描いた温かい夢の中ですね。
少女達は全員初体験。ようするに本当に好きな相手としかセックスしないのよ、というのも含め、愛情あふれる空間を描いています。むしろその空間と恋するあたたかさを描く為にエロが入っているような描写の仕方で一話ごとのページ数も多いので、じっくり何度も読みたくなる構成です。
そして何より、少女達の体はとても柔らかそうでエロい。
 
実はこの作品集、改名後の初単行本です。(改名前は拔山蓋世のPNで活動)
初単行本が出るか出ないかと言う時期に、やれ児童ポルノ法がどうのこうの言われたら不安になって当然です。
後書きで、こんなことが書かれていました。

なんとか間に合ったようですね。間に合いましたよね?…本当にだいじょうぶ?(社会情勢的な意味で)。どうにも予断を許さない昨今で、無事に出版できたかマジ心配です。みなさまの許に何事もなく届いていたら嬉しいなあ…

そりゃあ心配にもなりますよね。下手したら「単行本作業は終わったけど、印刷の段階でストップしてしまった!」「印刷したけど流通でNGが出た!」なんてことがあり得なくもない、と作家側は書店に並ぶまで心配で夜も眠れませんよ。
ましてや初単行本。自分の初子ですもの。
 
先ほども書いたようにこのマンガ、歌のような作品集です。
女の子達の気持ちを丁寧にくみ取り、ハッピーエンドに向かうため登場人物の男達もやさしく愛を注ぐ本です。それが18禁という形をなぞっていくため、このような心配も出てくるわけですが、個人的にはむしろそこがいい。
ちゃんと歌、受け取りました。受け取ることが出来ました。
 

●積極的なロリと、危機感●

次はハッチ先生の「しょがくせ」
比較的攻めの姿勢で、ロリや近親相姦を積極的に多用し、物語の鬱度を高めて問いかける作品が得意な作家さんです。
今回はそれほど鬱度は高くないですが、それでも性のもたらす無常観と、性に翻弄される人々の滑稽さ、もの悲しさがじわじわと溢れています。特に「腐の遺伝子」の業の深さと抜け出せなさ、「雪解」の一家の崩壊のなだれオチっぷりは強烈です。読む際は、心してかかった方が吉。

出てくる登場人物も、作者のハッチ先生の描写方法も、非常に感情的。怒濤のように詰め込まれた激しい感情の揺さぶりに性が絡んで、大人達と少年少女達を濁流に飲み込んでいきます。
なんせ紙の向こうから感情がセックスを通じてダイレクトに脳に押し寄せてくるもんだから、読み終わった後の疲労感が強烈。阿吽系列の中でもかなり物語性にこだわる作家さんの一人ではないかと思います。
 
さて、表紙からしてこの作品集、ぞっとすることを言い出してくれます。

ま、待って、待ってくださいよ!!!
心臓に悪いよ・・・。
後書きにも同じようなことを書いています。

いろいろと世の中が炉にきびしい流れになりつつありますが、あえてワシはこう言おう。
今が炉が読める最後の時期かもですぜっっっ!! うへへ
さあみんなで今のうちに脳内保管しましょう(笑)

あえて、言ってきました。ロリ作家さんとしては、一番言いづらいことを…。
実際、「少女天国」「ino.」はロリ専門雑誌だったので、多少ロリにおいて行き過ぎるくらいの描写をしても受け止める力がありました。しかし今はino.はアンソロジー化され、実質「阿吽」に吸収されました(編集の人員がもたなかったとの説あり、でも不明)。
「阿吽」で描かれるのは、通常のエロ漫画です。そこにロリが入るのは、専門誌でロリを描くのとちょっと違います。
正直読者側はなんのこっちゃ分かりづらい部分なんですが、ハッチ先生は「ここまではino.で、これは阿吽には難しい」という線引きがどうやら自分の中であるらしいことが、後書きに書かれています。これは興味深い点ですね。
 
とりあえず一つだけ書いておきたいことがあります。
自分はこれ、本当にハッチ先生がもうロリマンガは描けないと思って言っているわけではない、と思うのです。
まあ今もかなり物語性の強いロリマンガを描いているから、というのもあるんですが、大事なのは危機感なんですよね。
心配と不安に責めさいなまれる気持ちもあります。作家も読者も。
しかしこれ逆に取ってみましょう。
 
今後もしかしたら読めないかも知れない。
しかし今はまだ読むことが出来る。
今読めるだなんて、なんて幸せなことだろう?
そう考えるならば、作家さんは描く作品一つ一つを常に最大限の力で描くでしょう。読者は一つ一つの作品を大切に読むでしょう。
政治どうのこうのは別としても、ニッチジャンルの表現を見る際は、そんな危機感と後ろめたさは常に持っていて損はありません。いつでも湯水のように手に入る物ではないのです。
 

●皮肉、シニカル、フィクション●

不安を一気に吹き飛ばすくらいの力強さを持っていたのが、魔訶不思議先生の「自動ポルノ」。

題名で吹いたよ!
いや、いいんですよ、自動的だからね。自動的なポルノはいいですね。
もう説明するまでもなくベテラン中のベテランな魔訶不思議先生。斜めから人間の心理を切り取るような、色々なジャンルの作品を描いていますが、ロリマンガにおいては非常に攻撃的です。
攻撃的というのはサディスティックとかそういうのではありません。
マンガって、世界の鏡じゃないですか。愛情や夢を描くものが「健全」と呼ばれるならば、同時に風刺であったり毒であったり皮肉を詰め込んだ「不健全」もフィクションであるが故の面白さです。
 
この作品集は特に性を通じてシニカルな笑いとエロスをふんだんに溢れさせています。
めちゃくちゃ面白くて攻めの姿勢なのが「はたらくおこさん」。アンソロジーになったino.で最初に掲載され、本の方向性を位置づけたとんでもない作品です。
大人の仕事体験をして、疑似貨幣をもらうことができるという体験館がありますが、それのパロディ。
「私のワーク館」という建物を建てて、それって税金の無駄遣いじゃないの?赤字なのにそんなの作っている余裕あるの?と責め立てるマスコミ。とりあえず民間委託して天下りでのんびりふんぞり返りたいのに世間がうるさく苛立つ政治家。いやはや、なんともはやありそうな話だことで。

そこで取り入れられたのが職業体験の一つ、子供の「ソープ嬢体験」、っておおおーい。
 
ニヤニヤと不健全に笑える傑作なんですが、これよく考えたらすごく鋭い話ですよ。
職業に貴賎がないと言うのなら、子供に風俗やAVのことをなんと説明しますか。きちんと伝える事が出来ますか。
こっちはファンタジーだからいいですが、ファンタジーであるがゆえに現実世界の矛盾を皮肉めかして笑い飛ばします。このさじ加減には恐れ入る。
 
そんな先生の後書きは、恐ろしいほど力強い。

クソ!エロ漫画はエロ漫画が読みたい大人が読むモノだ!
これのどこが子供の人権を侵害してる!
言ってみやがれ!

読みたい人が読むんだ。いやなら見るな、と。
まったくもって正論すぎて、首を縦に振るしかありません。
そして、こう叫んでくれる作家さんがいることで…ちょっと涙が出ました。
勇気が出ました。
うん、大丈夫。
 

●だって…好きなんだもの!●

今までも何回か書きましたが、ロリコン趣味は世間に認められるべきだとは思っていません。
ロリマンガはこっそりひっそりするものだと思っています。
見たくない人もいるのだから。
ロリコンは後ろめたいことだから。
しかし、誰にも迷惑をかけないことであれば、その「好きだ」「感動したんだ」という思いに嘘はつけません。
 
ここで、コアマガジンから出ているみなすきぽぷり先生の「わたしたちのかえりみち」を合わせて紹介します。

メガストアらしく、実用度重視、エロ重視の作りになっています。徹底して「ロリコンの性を満たす」ために描かれている一冊です。元々みなすきぽぷり先生自体はエロ重視もストーリー重視も描く作家さんですが、この本はすがすがしいほどまっすぐに「涙目の女の子にエロいことをする!」で貫かれています。*1
 
この本の後書きは、マンガになっています。そのマンガも、マンガを描く少女「ぽぷこちゃん」がエッチなことをされるという徹底っぷり。
しかし、確実にこの中にはみなすき先生の思いが詰まっていました。台詞を抜粋します。

そうしたらきっと大きなお兄ちゃんのおともだちがたくさんできるからっ…
(中略)
こっ…これからっ さむいさむい時代がやって来るかもしれないけどッ…
ぽぷこちゃんは負けないで描くんだぞぉッ…
(「わたしのドキドキかえりみち198X」より)

ロリコンな読者である自分は、一喜一憂しながら日々を過ごしています。
いつ何が起きるかなんて分かりません。
極端な話、地球に危機がやってきてロリマンガどころじゃないかもしれない。明日何が起きるか分からない。
でも、「負けないで描く」のです。これは作家に向けてなのか、自分に向けてなのか、読者に向けてなのか…分かりません。
 
規制がどうなるかは、全く分かりません。
ただ、当事者として戦う作家さん、編集者さん達には様々な思いがあり、リアルタイムで戦いながら描いていることを感じさせられました。
自分に出来るのは、応援することくらいです。そして感謝することくらいです。
がんばれっ…負けないで、描いて!
 

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ささやいて、あのことば (セラフィンコミックス) しょがくせ (セラフィンコミックス)
自動ポルノ (セラフィンコミックス) わたしたちのかえりみち (メガストアコミックスシリーズ No. 231)
裏山のひみつ基地 (TENMAコミックス LO)
茜新社から出た嶺本八美先生のは、あいかわらずねちっこくて寝取られ気味でいい感じです。
 
ロリマンガを定期的に載せている雑誌自体が猛烈に減っています。専門誌は「LO」と「華陵学園初等部」、アンソロジー「ino.」「ぺたふぇち(大人キャラもあり)」くらいでしょうか、というのは規制のせいじゃなくて、単にロリよりも巨乳の需要が高いからです。雑誌にも寄りますが、アンケートでもロリ物は厳しいようで。あとはコンビニ誌でのロリNGの風潮が大きいでしょうね。
それでも数部、ロリを扱う雑誌はあります。特にLOは常に臨戦態勢です。それこそ、創刊号から。
もちろんフィクションに罪はないのですから、堂々とロリエロ欲求を満たす作品を作っていって欲しいです。しかし「どのような姿勢で描いていくのか」「どこまで描くのか」「見たい人だけが見るようどこに気を遣っていくのか」は、規制は別としても、今後個々の雑誌社に求められていく点だと思います。それがエロを商品にする際の、払うべき代償なんだろうなあと。
で、それは編集さんの仕事。
作家さん達はそんなこと気にせず、是非ともまっすぐに球を投げ続けてくださいっ!
 
〜関連リンク〜
ちゃんとしたレビューは以下も参考に。
ヘドバンしながらエロ漫画!  ぬきやまがいせい『ささやいて、あのことば』
ヘドバンしながらエロ漫画!  ハッチ『しょがくせ』
ヘドバンしながらエロ漫画!  みなすきぽぷり『わたしたちのかえりみち』
ヘドバンしながらエロ漫画!  魔訶不思議『自動ポルノ』

ちょいとヒドイことを描きながらも何だかんだで平和という一種の諧謔性には、ロリエロ漫画とそれを愛好する人間の周辺環境が現在よりももっと平和で穏やかだった時代へのノスタルジーが漂っているように僕は感じます。

これすごくいい表現ですね。
ロリエロマンガが持つノスタルジーの形はこれからも色々な作家さんによって描かれる気はします。形を変えながら。
ジャンクアーツ(ぬきやまがいせい先生オフィシャル)
アーデルハイド(ハッチ先生・ZUKI樹先生オフィシャル)
ぬかるみの向こう側(魔訶不思議先生オフィシャル)
てっちゃんハト(みなすきぽぷり先生オフィシャル)
みなすきぽぷり先生の持っている少女の幼さのとらえ方、明るそうにエロを描きながらもどす黒い淀みをたたえている作風は、強烈な印象が脳に残ります。収録されてないですが、最近だと「ゴミごっこ」の持つ明るさと暗さが傑作でした。
 

*1:ストーリー重視の方で収録されていない作品がいくつかあるので、いずれヒット出版から出るんではないかなあと期待…時間かかりそうですががが