たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「けいおん!」キャラの名前と性格を、最終回間近の今になって考える。

めちゃくちゃ面白いコメントがあったので、ピックアップしてみます。

エッグ
『今更ながら気付きましたけれど、名前の漢字の意味で、それぞれのキャラクターを的確に表しているんですね。
私の気付くのが、遅かったのかも知れませんが。』

なるほど!!!(気づくのが遅い
 
というかこれは解答のある話ではないので一概には言えないんですが、一文字の名前のキャラクターがもつキャラの性格と名前の関係を洗い出してみようと思います。
あくまでも公式ではなく一説です。
 

●唯●


「ゆい」「ただ」「い」
この言葉はすごく様々な深みのある言葉ですよね。
まず一番わかりやすいの「はい」という承諾の意味。あらゆるものに対する肯定を意味する言葉です。
逆に「唯々諾々」なんて言葉にすると「なんでも言うことを聞いちゃう」という意味になります。
全てを受け入れる「唯」。なんでも鵜呑みにしちゃう「唯」。どちらも唯ですね。
 
もう一つ、「唯一」のようにひとつだけという意味もあります。
ただひとりだけのかけがえのないもの。
ひっくり返すと「独特で他に類の無いもの」という意味もあります。
まさに、独特な感性を持ち、みんなから見てもかけがえのない存在であり、時々珍妙だったり流されたりもするけど、世界を肯定的に捉えている、平沢唯という少女を表現した漢字です。
 

●澪●


この言葉が一番意味深かも。
 
言葉の意味をとると、船の航行用の水路を差します。
といってもでかい水路ではありません。小型の船の進む道です。
軽音部は、5人の小さな部活。それを率いるのが澪だとしたらドンピシャですね。道を修正して作っていく、微力だけれどもみなが進みやすくするための大切な存在です。
また船の通った後の水の後を「水緒」からとって「澪」と呼びます。
アニメ版で言うと、軽音部の成長にともなって彼女が心を徐々に開き、3年生になってやっと恥ずかしがり屋から開花したという点でまさに「軽音部の成長の記録」そのもののような子が秋山澪です。
 
和歌などで使われる言葉では「澪標(みおつくし)」というものがあります。
澪標 - Wikipedia
航路を示す標識です。
源氏物語」の「澪標」という章ではこんな句が。

みをつくし恋ふるしるしにここまでも
めぐり逢ひける縁は深しな

澪標(みおつくし)と「身を尽くし」をかけた言葉です。
粉骨砕身し、自分の身を尽くして頑張る子。
それが秋山澪
 
文字の形的に「零(こぼ)れる」にさんずいがついているので、水が漏れ落ちる様子とも似ていますが、そういう意味はないです。
ただ、水が零れる様子と、澪が涙を流す様子はとても似ているので、語感としてはあまりにもぴったりなのです。
 

●律●


言葉の意味としては一期・二期の彼女の様子をよく見て初めて分かる名前だと思います。
そもそも元々はフリーダムでてきとーな子に見えましたから、なんで「律」なの?と。
 
「律」の語はそのまま「規律、法則、秩序」という意味があります。
あるいは基準を整える、という意味なんかもあります。「自律」なんかがそうですね。
律という子はある意味において一番めちゃくちゃな部分も多い子ですが、最終的に彼女が軽音部をしっかり見ていて、きちんと前に導いているのはご存知のとおり。
田井中律だからこそ、部長になれる。
明るくてハイテンションなノリは、軽音部を盛り上げるための基準値。そこに引き上げているのは律です。
そしてみんなの空気を読んで、楽しませる役に徹しているのも律。
トップランナーのようで「唯一」の唯に目立つ場をゆずり、ドラムとして一歩引いて基盤作りに徹するのも律。
彼女が軽音部をまとめていたこと、心配りをしていたことを考えると、厳しく「律する」の律ではなく、基準を整える意味としての「律」の名前が彼女を表しています。
追記・「旋律」の律、ですな! 中心として整える子、としてはぴったり。
 

●紬●


作中では「ムギ」と呼ばれるので「つむぎ」と言われると一瞬分からなくなりますが。
 
「紬」の文字は糸偏である見た目の通り、繭を解いて糸を引き出す、という意味から産まれた言葉。
それが転じて、物事の糸口を引き出す、という意味で使われるようになりました。
今だと「紡ぐ」で繊維を撚りあわせて糸にする、「紬ぐ」で縦糸横糸を織り込んで布にする、という使い方がメイン。
それがまた転じて、「音を紬ぐ」なんて使い方も。このへんはセンスの問題で間違いとかではなく、語感があうかどうかの文学的表現です。
琴吹紬の存在は、軽音部をつなぎとめる、一つの集団としてまとめる役割を持っています。トップとして走る唯、航路を作る澪、まとめる律。そして全員が「ムギのためなら」と言ってまとまっているシーンがなんどかあったように、彼女の笑顔のためにみんなは集まって一つの布になります。紬がれて行くのです。
彼女の持ってくるケーキや紅茶も、縦糸と横糸を組み合わせる重要な役割を果たしていますね。
 
加えて、何かを「やりたい!」と言う時、全力を尽くして楽しもうとしていたのがムギでした。まさに軽音部の行動の糸口となっていたのがムギだったことを考えると、「紬」の名は彼女にぴったりです。
 

●梓●


「あずさ」「し」。
この言葉ちょっと変わっていて、1976年までは使えない漢字でした。そのため30代以上の「梓さん」はほぼ存在しないことになりますね。
閑話休題
直接の意味は「あずさ」という木です。建築の木材として非常に重宝された木で、また弓に使われることも多い日本には馴染みの木。あずさをつかった木を「梓弓」といい、それを神事に使い、放浪する巫女を「梓巫女」といいます。
梓には他に版木の意味もあります。転じて、文字を彫って印刷に使う「出版」の意味もあります。「上梓する」で「書物を出版する」という意味になります。
そしてもう一つ。「梓」の字には大工という意味もあります。ホームセンターの回を思い出しますね。
 
梓は他の四人と位置が全く違います。4人の完成した中に入ってきて、今後次の代を育てることになるかなり特殊な位置にいます。それがアニメではかなり強調されていますね。
まず完成した4人をさらに大きく引き立たせる大工としての梓。あるいはさらに大きく引き立たせる素材としての梓。
梓の木が家具などに使われていたことを考えると、彼女が入ることで「さらによくなる」という表現になります。
くわえて「出版」の意味のように次を継ぐものという意味もあるでしょう。少なくともアニメでは唯そっくりになっている自分に気づくシーンが何度も出てきています。
木に辛い……なんて深読みも出来ますがなるべくそっちは考えたくないですね。次に繋ぐための大切な存在、と捉えたいです。
 
追記。ブクマコメで「おおっ!」というのがあったので。

梓→木質硬い→頑固で打ち解けない性格を表してるかも。でも一旦親しんだら、ずっと慕ってくれる感じ。

すごい納得。弓に使われていたあずさの木そのものが彼女の性質を表現しているかのようです。
 

●憂●


「うい」「うれ-い」「ゆう」
なんでこんな名前つけるの!?と正直最初驚きました。平沢両親、「ゆい」「うい」と似せたいだけちゃうの!?と。
言葉の意味はそのまんま。うれい、悩み、苦しみ、悲しみ、思い煩い。
ところが平沢憂のキャラはその正反対。苦しんだり思い煩ったりしません、自分のことは。
 
実は「憂」の字は「自分の思い煩い」ではなく「相手の心配をする」という意味もあります。
「憂望」という熟語はまさにその例で、「人を心配して思いやること」を表現しています。
姉の唯を心配して思いやる事のできる存在、だとドンピシャなんですよね。人のための「憂い」なんです。
加えて、側に人が寄り添うことで「優」になるのが憂です。
 

●純●


なんかもう言うまでもないですね。
ウソいつわりがないこと、純粋であること、まじりけがなくてすなおなこと。
いいことだらけの素敵な名前です。
それを「純粋な子」として表現するのではなく「ストレートでフリーダムな子」として描写したスタッフ、やりおる!
 
友人とも話していたんですが、鈴木純は自分のことに関しては「面倒くさい」などをそのまんま感情表に出します。ほんと裏表ないんですよね。
同時に人のことを一切否定しません。甘えることもおおいけど、その分ストレートに正直で、相手の気持ちを素直に受け止めるクッションになっています。
特に最新の22話での純ちゃんの「純」っぷりは素晴らしかった……。
 
二年生チームが「組み立て、次へつなぐ梓」「人を思いやることの出来る憂」「まっすぐに進み受け止める純」という組み合わせなのはなんともいいトリオだと思います。感じの語感としても。
 

●和●


「のどか」「わ」「お」。
これも文字の通りですね。まとまっている様子を表しています。
学級委員長で生徒会長……現実的な話をすればこの二つの兼任はなるべく教師側としては負担になるので避けるようにするのですが、作品としての「けいおん!」の場合、両方ともできるのは和ちゃんしかいないですよね。
 
大切なのは……これはアニメもマンガも意図していれていると思うんですが、「和」の字ってただ「まとめる」んじゃないんですよ。争いごとなくまとめることをさすんです。
和ちゃんは厳しいことはいいますが、叱りません。軽音部に対しては温情とも思えるほど協力的で、時にチート気味にすら見えますが、実はよくよく考えると一番争いの起きない最善の方法を選択しているんですよね。
ステージ利用届けを出し忘れた時も「だからもうだめです」と言ってもまとまりはするんですが、争いを避け、OKにしてあげても実は誰も困らない。だから角を立てずに穏やかにまとめてくれる、それでいいんです。無論、他に迷惑がかかるなら、彼女も別の考えを取ったかも知れませんが、問題がなければそれでいい。
和ちゃんの和の字は伊達じゃない。
 
考えてみたら「特別でひとつだけ」の意味を持つ「唯」と「二つ以上のものが穏やかにまとまる」意味を持つ「和」が一緒にいるって、すごいことですな。
 

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解釈には多少こじつけ気味なところもありますが! あくまでも一つの考え方として。
しかし「憂」や「澪」や「律」や「和」なんかの名前は原作の段階からかなり考えられて付けられているのではないかと思います。なかなか憂とか澪って名前見かけないですものね。
原作で付けたかきふらい先生もすごいですが、それを最大限まで生かして(特に律とか!)キャラクターの人間関係のバランスを描写しているアニメは本当に丁寧だなあ。
個人的には「梓」がどう「作り上げ」「引き継ぐか」が気になって本気で眠れません。
梓が、少しでもいい、幸せになりますように。
なるって分かってるけど! 祈りたいんだよ!
 
 
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 ねんぷちだとおおおお! こ、これはほしいじゃないか。
ちなみに「!」なので一期版。