たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

世間知らず女子高生暗殺者、ってキュっとくるよね。「アリョーシャ!」

近藤るるる先生は「ちょっと変わった女の子」を描く天才であると同時に、なかなか時々ネタがきわどいよね本当に。
最近出た「アリョーシャ! 」はネタ的に、特にかなりキワキワな作品です。
架空の東ヨーロッパ風の国の暗殺者アリョーシャが主人公。
旧ソレシア崩壊により分離独立したエストラキアは、力がないため現ソレシアの属国状態。それをよしとしないエストラキア過激派のクーデター「カラマーゾフ」としてソレシア大統領プーシュキンをナイフ一本で暗殺する、というなんともヤバそうな匂いのするシーンから始まります。
が!
そこはさすがるるる先生。持ち前のコメディ力で、ふんわりとこの暗殺物語を笑いで包みます。
包みますがやることは相当過激なので、ご注意。人もばんばん死にます。
いやあ、死と「高校生の幸せ」がこんなに隣り合わせだと、感覚麻痺しますね。とんでもない作品ですわ。
 

●暗殺の達人アリョーシャ●

この作品を分類するなら「コメディ」でいいと思うんですが、アリョーシャの暗殺設定はかなりしっかりと、かつ冷酷に描かれています。
人を殺すことに対して感情を持ち合わせていないんです。だから淡々と殺します。
任務を遂行したあと、自分が死ぬことに関しても感情をいだきません。

これはイメージシーンですが、このくらいたやすくやってのけます。
アリョーシャの武器は、非常に薄いナイフ。肉はもちろん、人間の骨や金属バットですら豆腐のように切り捨てます。これがアリョーシャ最大の特技です。
加えて、通常銃器のあつかいやスナイパーライフルによる遠距離射撃も得意。

こんなマイナーな武器まで登場。
コメディ要素そぎ落とすと、本当にシビアな殺し合いの物語になっています。
後半、新生エストラキア暗殺部隊が日本に潜伏し、アリョーシャを狙うシーンでのやりあいはかなりエグいシーン満載。そうか、殺し合いだもんね。
一方的に新生暗殺部隊が悪いわけじゃなく、アリョーシャもまたたくさんの人を手にかけて殺しているのです。国家規模の暗殺者たちの、音もなく命を奪い合う戦いそのものが描かれているんです。
アリョーシャの強さはハンパじゃないので、現時点では向かうところ敵なし状態。本人は「普通の女子高生になれ」と命令を受けているので、暗殺者らしさをなくそうと努力していますが、ちょっとでも殺しにかかろうとしたならば、おそらく彼女のナイフで100%、いや120%確実に殺されるよ。
るるる先生はこういう「究極を超えた強さ」を描くのも本当にうまい。
まあ、今回のメインはそこじゃないのですが…!
 

●暗殺者、幸せに目覚める●

この作品の最大の面白さは、「暗殺世界が当たり前」だった少女が、「普通」の幸せに目覚めるところにあると思います。
たとえばこれ。

アリョーシャは普段、暗殺者としての体調管理のため水とパンと干し肉しか食べていませんでした。栄養素はサプリメントや注射。とても人間的な生き方ではないです。
そんな彼女が初めて食べた、アンパンと牛乳でこの衝撃。
!?がいいですね。マガジンのマンガみたい。
アンパンの衝撃だけで1Pまるまる使う(暗殺シーンはそんなにないのに)というのがもうたまらんわけですよ。アンパンでこれだけの衝撃なんです、ケーキ食べたときの彼女のカルチャーショックときたら
 
アリョーシャには友達がいませんでした。必要ありませんでした。
おいしいものをたべたことがありませんでした。必要ありませんでした。
娯楽を知りませんでした。必要ありませんでした。
そうなんです。彼女は究極を超えた強さの代償として、一般人の楽しみを一切知らないのです。
アリョーシャにできた一番最初の友達、名雪未留と接することで、怒涛の勢いで「友情」「美食」「娯楽」を享受します。
すごいよ。今まで人を殺しても、自分が死ぬことになっても微動だにしなかった暗殺者がさ。

こんなに嬉しそうに笑うんだぜ!
かわいすぎるよ……!
エストラキアでは見たことがない、カラフルな魔法少女日本アニメに夢中になるシーンなんですが、もう子供みたいですよね。とても何人も殺してきた人間の顔じゃないよ。
未留がまたなんのとりあえもないふっつーの女の子なのがいいんですよ。一応お金持ちなのでそのへんアリョーシャの娯楽への興味に関わってはきますが、特に取り柄があるわけでもないし、美人なわけでもありません。ただ、アリョーシャのことが純粋に好きなだけです。
 
未留がとあるミスでエストラキアの暗殺者達に狙われることになってしまうのですが、アリョーシャは純粋な彼女に惹かれて彼女を命がけで守ることになります。
極めて純粋無垢な未留。冷酷な殺人マシーンから感情に目覚め始めたアリョーシャ。

二人の幸せははじまったばかり。
いや、幸せを守れるかどうかは、まだ分からないけれど。
 

●残念美人たち●

アリョーシャはものすごい美人だという設定です。
しかし日本人の男の子って、超美人だと……近寄れないんだよね。
他の国ではアリョーシャは多くの男性に言い寄られてめんどくさがってあしらっていましたが、日本では「言い寄ってくる男子がいない」。うん、超美人に対して近寄れない男心、分かるぜ。
なので「日本男子は自分を嫌っている」と思っていますが(ちなみにそれを嫌がってはいない。だって暗殺者だもん)、実は男子も女子もみんな気にしまくっているくらいなんです、アリョーシャを。
 
究極の殺し屋でありつつ究極の美人。
いやあ、至る所敵なしだな! と思いつつ、アリョーシャは超残念美人です。
なんせ今まで娯楽というか、楽しむ、という行動をとったことないので、学校生活をどう送ればいいかまったくわからないのです。
とりあえず部活を組んでは見たものの。

そんなドや顔されても、なんというか、困る。
特に「部」の字の位置が。
右側にいる子もちょっとくせものでして、どんな設定のキャラかは実際見てもらうとして、一応超絶頭のいい凄腕潜入捜査官、なのに。

行き過ぎたオタクだったりね。
どのくらいオタクかというと、秋葉原に某ウィッチーズ的なコスプレで行っちゃうくらいに。
ぱんつじゃないけど恥ずかしいよ。
うーん、残念美人。
 
結論。
「アリョーシャ!」は残念美人を楽しむ作品。ということで一つ。
 

今後、暗殺のシリアス展開と、学園のコメディ展開がバランスよく保たれていきそうで楽しみで仕方ない作品です。
アリョーシャには幸せになってもらいたいんですが、暗殺者達を華麗に返り討ちにする様子がかっこよすぎるので、それももっと見たいんですよねえ。