たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

独身ダメ系女性とナイト系男子小学生の組み合わせは反則だよ……いいね!「JOKER」

いやあ、上杉可南子先生の作品は今まであまり触れたことのないジャンルだったのですが、今回のは恐ろしいほどドストライクでした。
もう表紙のとおりですよ。
小学生男子と、ダメ系独身女性の同棲生活。
あかん、そりゃシチュエーションで負けた。まいりました。
しかもですよ。
このヒロイン今まで一切つきあったことがない(男運がないとも言う)、職業は女流棋士とか。
なにそれ面白すぎる。
完全に設定に関節技決められた感じで読み始めました。逆にそれが読む時にハードルの高さになったりするんですが、やすやすと乗り越えてくれました。
 

●騙され系女子●

ヒロインの一花はほんとしょっぱなからダメーな感じ満載の女性。
実は10代でプロになった天才女流棋士なんですが、いわゆるあれです、「二十歳すぎればただの人」
ああううおお、怖い怖い。でもそれはそうなんだよそうなんですよ、同じ実績でも10代だと評価される。しかも「女の子」がつくからなおのこと。
ところがひっくり返すように大人の世界になると、女性の立場はまだやはり将棋界では肩身が狭い様子が描かれています。
実質「ヤル気がない」上に連敗中状態なのでほんと直球で「ダメ」なのが描かれているんですが、読んでいると、まあ荒むよなあーという感覚がじわじわ来ます。このへんが女性向けコミックの面白さなんでしょうね。
しかも一度はときめいた男性がいたものの、そいつはお見合いパーティーのサクラで、150万円の預金を盗んでいった悪人。
もう踏んだり蹴ったりです。
飲んでないとやってられんわー!
 
と、そこに置いて行かれるのが小学五年生の少年。
先ほどの預金を盗んでいったやつが、息子をあずかってくれと置き去って行きます。
やってられんわー!!!
 
面白いのは、そこで同情とかする余裕が皆無なことです。
うさぎドロップ」なんかだと大人の余裕というか力強さで子どもを引き取りますが、こっちは荒んでいるところにすさませた張本人が勝手に置いていくんですもの。

またねえ……キスしたこともないような一花。
「同棲」の言葉で動揺してしまうのがなんとも……かわいい。

うん。落ち着け。
まー、逆に言えばこういう色々なもの丸出しな感じの一花だからこそ男の方も子どもを預けて行ったわけですが、預けた後警察に出頭して逮捕、連れて戻りにくるでなし。
やってられんわー!
まあ、ちょっとチョロすぎました。騙され系もいいところです。
 
本当に「昔はよかった」なんですよ、一花。

この幼さにして異常な将棋の強さ。
(将棋シーンはきっちり監修付きで描かれているので楽しめるはず)
ただでも強い一花なんですが、子供時代はほんと「ま、魔法少女?」って感じのギャップが超話題になる強烈な将棋の奇才でした。
この栄光を一度味わった後にどん底まで落とされて騙されて……。
人生変わっちゃいますね、何もかもね。
 

●頑張れ男の子●

さて、置いていかれた男の子あきら。
本来ならほっといてもいいような状況ですし、まあ人の情はあれどもそれどころじゃない……主にお金が……一花なんですが、結局あきらを引き取ることになります。
理由がこれまたへっぽこで。でも確かにこういう預け方ならありそうな展開ではあります。
最初のうちはそりがうまくあわずギスギスしている二人ですが、あきらって少年かなり男気があるんです。

ちょっとした揉め事の間に果敢に飛び込んでいくあきら。
ちなみに一花がいじめられているわけではないんですが、空気を読んでます。一花が困っているんだなと。
この下のコマいいでしょう……。
 
あきらは本当に子どもです。すごく幼い表現がたくさんされています。
等身大の小学生なんですが、同時にものっすごくこういう面では男前。
これが先ほどの「昔はよかった」にうまーくかぶさっていくんです。
少女時代にちやほやされていた一花は、大人になって相手にされなくなった。
でもあきらは一花を「女の子」と言います。
いい意味で「自分と同等」扱いしているんです。
 
最初のうちは悪い意味でも自分と同等扱いします。クラスメイトみたいな感覚です。
口も悪いし、すぐ逆らいます。
けれども大人の世界、つまり一花のいる世界を見た時に、すっごいたじろぐんです。

このへんが子どもなところ。
これは一花が六人指し将棋をしているシーン。
たまたまあきらが見かけて、すごいビビるんです。
子どもから見たら、弱いものいじめみたいですもんね。初めてみた場合、ありえない光景でしょう。
ところが一花はやはりプロ、ちゃんと勝ちます。
一花視点ではそれは大したことではないんですが、あきらから見たらもうとんでもないことなんです。

これ!
男の子だもんね! なるよね! こうなるよ!
 
自分と同じレベルの「大事な女の子」として一花を見て、同時に「かっこいい大人」として一花を見ます。
一花はこれであきらと仲よくなるんですが、あきらの方はそれ以上でした。
恋に落ちるなんて一瞬なんです。男の子だもん。

パッと見かわいらしいキスですが、舌入れてます。
うん。訂正。
あきらの父は息子に何を仕込んでいるんだ。
イイネ!
 
ここからはあきら快進撃ですよ。
いっちょまえに一花を守るナイトになります。
女性社会の人間関係のめんどくささやこじれもちょっとずつ描きながら、でもあきらは一花が大好きで守ろうとする。
この構図がもうきゅんきゅん来ます。
作中で一花が「もし小学生じゃなかったら完璧気持ちもってかれたかも…」と言っていますが、読んでいるこっちがあんたらに気持ち持って行かれるわ。
この恋の行方はなかなか楽しいことにナリそうです。
一花のグズグズな感じもかわいいんですが、とーにかくあきら君がかっこいい・かわいいので、そこを是非見ていただきたい作品です。